2007年8月29日(水)「しんぶん赤旗」

CS放送「各党はいま」

志位委員長が語る

どうみる安倍「改造」内閣、どうのぞむ秋の臨時国会


 日本共産党の志位和夫委員長は二十八日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、安倍改造内閣をどう見るか、秋の臨時国会にどうのぞむかについて、朝日新聞の坪井ゆづる論説委員の質問に答えました。その要旨は次の通りです。


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(写真)朝日ニュースター「各党はいま」で、インタビューに答える志位和夫委員長

 ――改造内閣の印象は。

 志位 「人心一新」で改造をやられたということですが、任命権者の安倍首相本人が居座ったままですから、一新のイメージはまったくありません。一新されるべき人が任命したわけですから、どんな顔ぶれを並べてみても、そこには新味もなければ、期待感もでてきません。

 全体の布陣をみれば、改憲、タカ派志向の強い人たちを配置したという印象です。私たちは、前の安倍内閣の発足の際に、「靖国」派内閣と命名しました。すなわち、靖国神社のとっている立場、過去の日本の戦争は正しい戦争だったという間違った立場を共有する人たちが圧倒的多数を占めているという問題点を指摘しました。今度の内閣も、私たちが数えたところでは、首相を含め閣僚十八人のうち、「靖国」派、すなわち日本会議議連、あるいはその関連団体に属している人が十二人です。基本的に改憲・タカ派、「靖国」派内閣という点は変わらず、前の体質を引きずっていると思います。

 もう一ついうと、「政治とカネ」であれだけ厳しく批判されたにもかかわらず、文部科学大臣に伊吹さんを留任させています。伊吹さんは事務所費問題でまともに説明していないわけですね。きちんと領収書も明らかにさせることなく、こういう方を留任させるということは、国民の審判に対する挑戦です。

 ――安倍さんの責任が問われてくると。

 志位 今度の選挙で、国民は自公政治に二重の審判を下したと思います。

 一つは「構造改革」路線という、弱肉強食で貧困と格差を拡大してきた路線にノーという審判が下された。

 もう一つは、「戦後レジームからの脱却」、「美しい国」づくりをスローガンにして、「靖国」派のイデオロギーを押しつけ、改憲を最優先課題としてきましたが、これにノーという審判が下された。

 この両方の審判を受けたのに、少しでもまともな方向に変わろうとうかがわせる陣容はどこにもありません。この問題については、安倍首相自身が、“基本路線は支持された”といっているのですから、変わりようがないということになりますが。

テロ特措法延長問題―「対テロ」戦争の六年間の全面的検証を

 ――秋の臨時国会をどう見ていますか。

 志位 与党はテロ特措法の延長を最大の課題としていますが、特措法による約六年間の「対テロ」戦争支援なるものが何をもたらしたかの総決算をおこない、きっぱりと延長をやめさせることが一つの大きな問題となります。

 国際的な司法と警察によるテロリストの捜索と捕捉という努力を尽くすことなしに、アメリカは報復戦争という手段に訴えた。このやり方自体が間違いであり、国連憲章の精神も踏みにじっているという問題が、戦争の初めからあったわけです。

 その結果、アフガニスタンがどうなっているかの全面的な検証が必要です。一昨年、昨年と状況がずっと悪化して、南部やパキスタン国境地帯でタリバンが復活する。それにたいし米軍を中心に軍事掃討作戦をやる。民間人の死者がますます増える。そこでさらにタリバンが影響力を増やすという悪循環が広がっています。米英軍などの死者が増え、民間人の死者も増え、結局、戦争ではテロはなくならないということが結論です。その戦争を支援する法律がテロ特措法ですから、きちんとした検証のうえにたって、やめるという判断をすべきです。

 しかも、実際はアフガンだけではなくて、イラク戦争をおこなっているアメリカ軍の艦船にも給油活動をやっているということが明らかになっています。米軍としてはイラク戦争もアフガン戦争も中央軍が一体となってやっており、そこに給油しているわけですから、アフガンだけでなくイラク戦争にも使われているのです。脱法的な運用がおこなわれていることもきちんと明らかにする必要があります。

テロの根をたついちばんの道は

 ――アメリカ側からは、やめてもらったら困るという声が聞こえますが。

 志位 アメリカによる「対テロ」戦争というやり方自体が失敗だったことを六年間が証明しているわけです。戦争ではテロはなくならない、テロをなくすには国際的な司法と警察の力により犯人を捕捉、逮捕することが必要であり、同時に、テロの温床である貧困を国際的な努力でなくしていくことも必要です。そういう非軍事の方法でこそ、本当にテロの根を断つことができるということが一番重要な教訓です。

 アメリカを含めてアフガンに軍隊を展開している国の世論調査では、「軍事掃討作戦は失敗だからひきあげるべきだ」という声が多数となっています。世界を見れば、もともと軍事行動に参加していない国の方が圧倒的多数なんですから。

日米同盟という根本問題を正面から問う

 志位 さらに、この問題では、日米同盟という問題を正面から問うていきたいと思います。いまどき軍事同盟が絶対で、とくにアメリカが絶対などという国が世界にあるのか。世界で軍事同盟が解体あるいは機能不全の傾向にあるときに、日本だけが、「世界の中の日米同盟」ということで、世界のどこででもアメリカにつきしたがうという軍事同盟体制を二十一世紀も続けていいのか。この根本問題を私たちは提起していきたいと思います。

 ――臨時国会での他のテーマは。

 志位 参院選で争点となった問題について大いに提起していきたいと思います。国民の暮らしを守るという点では「緊急福祉1兆円プラン」を提案しました。その実現をめざしたい。障害者「自立」支援法の応益負担をもとに戻す問題や、来年に計画されている児童扶養手当の削減計画を中止させる問題など、国民の切実な暮らしを守る公約実現の活動を大いにやっていきたいと思います。

「三つの異常」をただす本物の改革のビジョンを大いに示して

 志位 もう一つ、国会で日本共産党がめざす日本改革のビジョンを大きく打ち出して、政治の根本の問題点をつく論戦を重視したいと思います。

 私たちは日本の政治には「三つの異常」があると主張してきました。

 一つは、過去の侵略戦争を正当化する異常で、「従軍慰安婦」の問題とか、歴史をゆがめる教科書問題とかさまざまな形で出ています。

 二つ目は、日米同盟絶対、異常なアメリカいいなりという国のあり方の問題です。

 三つ目は、財界・大企業の横暴勝手がこんなにまかり通る経済社会でいいのか。たとえば税金の問題では、財界・大企業、大金持ちにたいするいき過ぎた減税を放置したままでいいのかという問題です。

 この「三つの異常」をただす本物の改革が必要です。自公政権については「ノー」という審判が下ったわけですが、それではどういう日本が求められているのか、われわれとしてのビジョンを大きく打ち出して、「三つの異常」をただしていく本物の日本改革をやろうじゃないかという大きな論戦をやっていきたいと思います。

 「三つの異常」をただせといえるのは日本共産党だけです。それを大いに示し、わが党の役割を発揮していきたい。いまの政治の行き詰まりを打開しようと思えば、「三つの異常」にメスを入れる改革をやらないと出口はありません。私たちが大いに奮闘すれば、国民の認識と共産党の主張が接近していくという可能性、必然性が大いにあると思っています。