2007年7月20日(金)「しんぶん赤旗」

テレビ朝日「報道ステーション」

志位委員長 大いに語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、十八日夜放映のテレビ朝日「報道ステーション」に生出演し、キャスターの古舘伊知郎氏のインタビューにこたえました。志位氏の発言(大要)は次のとおりです。


宮本顕治さんの死去――大きな仕事をした大きな人

 古舘 宮本(顕治元議長)さんがなくなられました。

 志位 大きな仕事した大きな人だったと思います。戦前、あの苛烈(かれつ)な弾圧のなかで、獄中十二年、反戦・平和を貫きました。それが戦後の憲法になって、生きていると思います。

 古舘 十二年間は主に網走の刑務所に。

 志位 網走に行ったのは最後の時期です。ずっと獄中で裁判闘争をやっていますから。その裁判闘争の記録を見ても、よくああいう難しい状況のなかで、あれだけ理性的なたたかいをやったと思います。

 古舘 三十代半ばで書記局長に選任されたときのことが先ほどでましたが、鮮明に覚えてらっしゃいますか、その瞬間。

 志位 それは覚えています。

 古舘 一言で評しづらいと思いますが。

 志位 えらいものがまわってきたなという思いでした。ただ、きたものは引き受けようと、思い切って飛び込んだという感じです。

新潟県中越沖地震――被災者支援とともに、原発の「安全神話」を大本からただす

 古舘 たいへんな地震(新潟県中越沖地震)が起きて、志位さんも原発(柏崎刈羽原発)のほうに行かれて視察されたそうですが、どうでしたか。

 志位 被災地では、お年寄りの方が多く、健康の面でのケアが非常に大事だと感じました。それから、二度目の震災ですから、心のケアも大事です。

 原発では、驚いたことがあります。なんと自力で火事を消す能力がないんです。それで、変圧器が二時間燃え続けたわけです。

 古舘 (すぐには)消防車も来なかった。自前の消防隊が出動できなかった。

 志位 どうしてなのかということを調べて、問い詰めたのですが、消火の専門の部隊がないのです。

 古舘 ないのですか。

 志位 ないのです。訓練もしていない。この問題は、二年前の六月にIAEA(国際原子力機関)が(柏崎刈羽原発を)名指しで、そういう部隊をつくりなさいと、訓練もしなさいと、いっていたのです。

 古舘 IAEA、原子力機関から勧告があった、二年前に。

 志位 私どもの(党の)国会議員が、それをきちんとやりなさいということを、政府に迫って、政府も(改善を)約束していたのです。にもかかわらず、部隊がなかった。

 私は、これは、非常に深刻だと思うんですよ。といいますのは、仮にもっと大地震が起こった場合は、それこそ、消防車が来られない可能性もあるわけです。そうなったら原発が自力で消火できないとなったら、非常に深刻な事態になるわけです。

 やっぱり、この根っこには、原発は安全だという安全神話がある。ですから、打つべき手が、消火の問題でも打たれない。それから、ああいう放射能が混じった水が流れ出る。ここを大本から変えないとだめだと思いますね。

 古舘 そうですね。さまざまな問題が、浮かび上がってきましたが、そもそも職員数人によって黒煙が上がったときに消そうとしたけれども、断水によって、消火がかんばしくいかなかった、消防車も来なかったと、そういうような形で情報が流れましたが、どうも志位さんのお話を聞いたうえでは、根本的な問題があったようですね。

 志位 大問題です。これは、IAEAからの勧告を無視したという問題です。ですから、これは政府の監督責任にもなります。

「ストップ貧困」――貧困をなくすこととともに、貧困に落ち込む不安をなくす社会を

 古舘 さて、今回の選挙戦全般の話に目を移したいと思います。まあ世の中は、競争化社会のなかで一方で影の部分が、格差という言葉がいわれて久しい。共産党のマニフェストを読ませていただくと、まずタイトルとして大きくうたっているのは、格差ではなくて、「ストップ貧困」と、はっきりとわかりやすい言葉でうたっています。そのあたりのことをちょっと。

 志位 「格差社会」といわれますが、いまの日本は、社会全体が豊かになるなかで格差が広がっているのではないのです。働く人の収入がどんどん減るなかで格差が広がっているわけですから、問題の本質は貧困だと思います。ワーキングプアということがいわれます。ネットカフェ難民、介護難民、医療難民…。難民という言葉が使われます。貧困が一番の問題です。

 古舘 もうけているのはどこですか。

 志位 大企業です。大企業のもうけはバブル時の経常利益の一・八倍です。しかし、働いている人の所得は減り続けている。(大企業は)ここから(利益を)吸い上げているわけです。働き方も、正社員を減らして、パート、派遣、アルバイトに置き換えて、いわばモノのように使い捨てにしています。この仕掛けが貧困を生み出しているわけです。

 古舘 定率減税の撤廃、住民税増税とあり、生活用品の値段も上がっています。これはもう増税と同じではないのかと。

 志位 生活用品の物価が上がると増税(と同じ)効果があります。そこに定率減税の廃止、それが原因となって住民税の増税です。お年寄りの世帯に通知がいって(税額は)二―四倍です。サラリーマンはだいたい二倍。これはもう怒りが沸騰しています。

 一方で、今年度は、大企業と大資産家向けには一・七兆円の減税をやっているのです。定率減税(廃止)の増税分が一・七兆円です。庶民から吸い上げて財界にばらまくというやり方をやるというのは、まったく間違っています。

 古舘 共産党が伸びて、そういう政策を実現するとなったときに、一方で経済発展についてはどう考えますか。

 志位 (経済の)一番の基本になるのは家計消費、個人消費です。経済の六割は家計の消費です。これをあたためていく政策が一番大事です。

 家計をあたためようと思ったら、まず雇用をまともにする必要がある。不安定雇用を改善し、正社員を増やしていくという方向にする必要がある。

 社会保障も、介護も医療も切り捨てていくという今のやり方でなく、また生活保護まで切り捨てて餓死者が出る事態をただして、くらしの支えにする必要がある。

 そして税金については、(政府は)住民税増税、そして消費税の増税までやろうとしていますが、こういう庶民増税ではなく、空前のもうけをあげている大企業、大資産家――バブルの時と比べて、法人全体で利益は一・五倍、二十兆円の利益を増やしているのに、法人税は四兆円も下がっています。つまり、法人税を下げすぎた。特権的な大企業の減税制度をつくりすぎている。これを世間並みに、もうけ相応に、税金をとるべきところからとる。そして消費税をあげないという対策を総合的にやって、貧困をなくします。

 私たちが「ストップ貧困」といっているのは、貧困をなくすという意味と、貧困に落ち込む不安をなくす――貧困の方だけでなく、いまは貧困ではないが、いつ落ち込むか分からないという不安をなくす社会をつくりたい。それらをすべて含めて、「ストップ貧困」という言葉にこめました。

政治とカネ――「事務所費」が問題になった閣僚で、だれ一人領収書をだした人はいない

 古舘 「政治とカネ」の問題ですが。庶民は厳しい視線を向けています。

 志位 この間の「事務所費」問題は、私たちが追及し、大きな問題になりました。しかし、どれひとつとして、その使途をきちんと明らかにした閣僚はいない。領収書を出した人はいないわけです。

 赤城徳彦農水相の問題でも、党首討論で安倍首相をただしたら、首相は「月八百円の水光熱費で大臣をやめさせるのか」といいます。あまりいうものですから、赤城さんの実家のある自治体の水光熱費の基本料金を調べてみましたら、水道、電気の基本料金だけで月二千六百五十五円です。八百円という数字も、変な話になってきます。

参院選挙後の対応――「たしかな野党」として正論を唱えることが、政治を動かす力に

 加藤千洋朝日新聞編集委員 「たしかな野党」として独自性を発揮していますが、選挙後、参院議長選挙や首相指名選挙で、民主党に協力する選択肢は用意していますか。

 志位 参院議長については、第一会派が議長、第二会派が副議長というルールがあります。ルールにのっとって、議長候補が公正で民主的な運営をする人なら、全党一致して推すのが当然です。

 それから、(選挙後)どういう展開になるか予断をもっていえませんが、どんな状況になっても、私たちは「たしかな野党」という立場で、国民の利益を守って正論を唱えます。そのことが、政治全体に良い方向の作用を及ぼすことがありうると思います。そういう役割を果たしていきたい。

 かりに安倍・自公政権が、衆院での多数を背景に大暴走をやってきた場合には、国会の中では民主党といろいろな連携をとって、暴走を止めるということはありえます。

 ただ政権ということになりますと、憲法問題など、考え方が違いますから、協力は難しいですが、国会のなかではいろいろな対応がありえます。

 共産党が正論をいうことが、国会の全体を動かすという局面も生まれるかもしれません。

 古舘 国民には政党助成金に不信や疑問があります。「赤旗」を売って、売り上げがあって、政党助成金を受け取っていない共産党は独自です。その独自路線は失ってほしくないという方は多いと思います。一方、ある方もいっていましたが、「左翼の公明党たれ」と。つまり、護憲などで、野党で一致団結した方がいいという見方もありますが。

 志位 いま安倍政権が、憲法をこわす、増税をやると暴走をやっているわけです。私たちは、暴走に対して立ち向かっていくという「たしかな野党」の役割をしっかり果たします。そのなかで、たとえば護憲という問題で連携が可能な条件が生まれたら、われわれはいつでも門戸を開いています。ただ、民主党との関係では、民主党は憲法を変えるという方針ですから、そこでは違いが出てきます。

与党になる可能性――いま「たしかな野党」としてがんばることが、未来の「たしかな与党」への一番の道

 古舘 それはわかるのですが、「たしかな野党」も与党になるという可能性は。

 志位 与党になるということは、当然、展望に入っています。そのときには、アメリカとの関係で、安保条約の問題があります。いまどき軍事同盟は、世界でなくなってきているわけです。軍事同盟をなくして、アメリカとの関係を対等にしていく。そういうことを軸にしながら、本当の民主的政権をつくります。

 ただ、いまそれをやるのは早いですから、いまは「たしかな野党」でがんばることが、未来の「たしかな与党」になるということの一番の道です。

 古舘 (非改選あわせて)十議席になれば、国会の党首討論とか、いろいろな流れができますので、がんばってください。

 志位 ありがとうございます。