2007年7月9日(月)「しんぶん赤旗」

テレビ党首討論

志位委員長の発言(大要)

NHK「日曜討論」


 日本共産党の志位和夫委員長は八日、NHK「日曜討論」で、参院選の争点などについて各党党首と討論しました。他の出席者は安倍晋三・自民党総裁、小沢一郎・民主党代表、太田昭宏・公明党代表、福島瑞穂・社民党党首、綿貫民輔・国民新党代表、田中康夫・新党日本代表で、司会は影山日出夫NHK解説委員。志位委員長の発言(大要)は次の通りです。


今国会を振り返って

安倍内閣――「数の暴力」でくらしと平和を破壊する暴走

 番組ではまず、先に閉幕した通常国会の総括がテーマとなり、安倍氏は、教育、経済関連法案の成立など「実績」を強調し、太田氏は「国民投票法が成立したことは歴史を画する」などとのべました。小沢氏は「問題は、法律が何本通ったかでなく、その中身」と語りました。志位氏は次のように強調しました。

 志位 数の暴力がこんなに荒れ狂った国会はないと思います。

 一つは、暮らしを壊す暴走です。いま国民の中では「年金をまともに払えない政府が、増税にだけ熱心だ」という怨嗟(えんさ)の声が起こっています。この六月から住民税の大増税が庶民の家計を直撃していますが、今年度予算で定率減税を廃止して庶民に一兆七千億円もの増税を強いた結果です。そういうことをやっておきながら、一方で大企業や大資産家向けには、一・七兆円の減税をする。これは全く逆立ちした、今の貧困と格差という実態にさらに追い打ちをかけるひどい問題です。

 もう一つは憲法を変える方向への暴走です。先の国会で、教育基本法を改悪する、それから防衛省への格上げ法を強行する。それに続く改憲手続き法の強行です。この全体から見えてくるものは、日本を「海外で戦争できる国」にしようではないか、「美しい国」というけれども、実際は戦前・戦中の体制への逆戻りです。

 私たちは、このような暮らしを壊し、平和を壊す暴走に正面から立ち向かい、ストップをかけたいと思います。

赤城農水相の架空事務所費問題

「問題ない」と言うのなら領収書を公開すべきだ

 テーマは赤城徳彦農水相の架空事務所費問題に移り、小沢氏が「うそをついていないといいながら説明できないというのは筋道が通らない」としたのにたいし、安倍氏は「昨日、赤城大臣は三十分以上、会見をおこない説明した」「だんだんこの事務所の占める比率が低くなったのだろう」などとのべ、太田氏も「農水相から直接、連絡をいただいた。報告を聞いた限り違法ではない」とかばいました。志位氏は次のように批判しました。

 志位 まず、架空でないということをおっしゃったが、実家(の事務所)については赤城さんのお父さんも、お母さんも、「使っていなかった」と証言されている。政治団体の責任者が、事務所をこの十年使っていなかったとおっしゃっている。ですから、架空でなかったといっているのは赤城さんただ一人で、もうみんながそう証言している以上、この食い違いは説明がつかないですね。

 それからもうひとつ、(安倍氏が)二〇〇五年の数字を挙げられました。〇五年はたしかに光熱水費が月八百円ぐらい、ぜんぶあわせて二百七十七万円ですけれども、この十年間をずっと見てみますと、たとえば一九九九年は(事務所費などが)年間千九百十五万円も出ているんですよ。こんなに上下があって、このときは、光熱水費だけでも、年間百三十一万円出ている。

 この全体が本当にまともな支出だったのか、公表された分だけをいまおっしゃられたけれども、もしも、不明朗な点がないというなら、領収書をつけてきちんと出させる必要がある。だから総理、領収書をつけて出すという約束をここでやってくださいな。そうしないと疑惑は晴れませんよ。

松岡前大臣をかばいつづけた誤りをくり返すのか

 この提起にたいし、安倍氏は「ルールに従って説明してもらえばいい」などとし、領収書提出を否定しました。

 志位 法の枠組みということになりますと、いまの法律の枠組みでは、結局領収書の添付は義務付けられていないわけですよ。結局出さないということになるじゃないですか。そういうやり方を松岡(利勝前農水相)さんのときにもとってきた。「私は法律にのっとってやってます、疑惑はありません」と、それをただいい募ってきた。そして「ナントカ還元水」ということも出てきた。それをあなたがかばってきたから、ああいう痛ましい結末にもなったと思うんですよ。

 松岡さんのときにも任命責任と、罷免しなかった責任が生まれた。これをまた繰り返そうとしているわけですね。法の枠組みということになったら、領収書を出さないということですから。そうじゃなくて、疑惑がないというなら領収書を出すべきで、この場で言明しなかったらこれは、罷免するしかないですよ。

年金問題 どう解決

まず納付記録の1億人送付を
突き合わせ作業をすすめるうえでも効果的

 「消えた年金」問題では、政府・与党の対応策について、小沢氏が「国民の批判が高まって初めて泥縄式にいろいろやっているが、それだけで不安が消えることはない」と主張。そのうえで司会者は志位氏にたいし、全加入、受給者への納付記録通知について、「これは共産党もかねて主張されてきたことだが、これはある程度評価できるか」と問いました。

 志位 はい。私たちはこの問題について、政治的な責任について、歴代の政府の責任は批判いたしますけれども、解決にあたっては、党利党略ではなくて、与野党が、国民第一という立場で知恵を出し合って、協力すべきは協力して解決すべきだという立場でいろいろな提案をしてきました。

 とくにすべての年金受給者、加入者など、一億人のみなさんに、納付履歴をすみやかにお伝えする必要があるという提案を繰り返しやってきました。今度の、政府の対応策のなかに、それが盛り込まれたということは、私たちは一歩前進だと評価しております。

 ただし、時期が結局来年の四月から十月ということになっている、これは遅すぎる。いますぐ、まずコンピューターの中にある年金履歴をお知らせするという作業をすぐやるべきだ。そうすれば、つながっているというふうに確認できた方は安心できますし、ちがうという方は、是正を求めることができますからね。きちんとそのデータがあれば、コンピューターのなかでの突き合わせの作業も、ずっと役に立つと思うんですよ。

 ですから、来年度に送る必要はない。政府の計画ですと、照合をやって、そのうえで通知するということになっているわけですけれども、私は、まず通知して、そのデータも含めて、突き合わせの作業をやることがよっぽど効率的だと、そして国民の不安も解消されると、このように思います。

消費税増税

税率引き上げは絶対反対
参院選後に決めるやり方は国民に白紙委任状求めるもの

 この後、テーマは年金財政、消費税増税問題に移りました。安倍氏は「抜本的な税制改革の議論の時に(消費税の値上げ議論を)おこなう」とし、太田氏も「消費税ありきではない」などとごまかしました。

 志位 (安倍氏は)さきほど、「税制の抜本改革をやる」とおっしゃった。それをやるのは秋なんですよね、総理の計画では。そのときに、「消費税も含めて抜本改革をやる」といわれているわけですね。そして、「消費税を上げないなどとは一言もいっていません」とおっしゃった。さきほどの民放番組では、「上げなくてもすむ可能性がある」と、これは逆にいえば上げる可能性もあるということをおっしゃっているわけですね。

 私は、この場できちんと総理に明言していただきたい問題があるんですね。秋に「抜本改革」をやるっていうんでしょう。だったら、そのさいに消費税を上げるのか上げないのか、共産党は絶対に上げることは反対ですけれども、もしも上げる可能性があるっていうのだったら、そのことをきちんと、この選挙で審判を仰ぐべきで、上げないなら上げないということを明言するべきです。国民に白紙委任状を求めるようなやり方はよくない。

 これには司会者も、「志位さんからも話があったが、選挙前に消費税の話をはっきりさせないでいいのか」と指摘。安倍氏が「責任政党はできることしかいわない。いったことは必ずやらなければいけない」などとのべ、話をはぐらかすと、司会者は再度、「論議は選挙のあとになってしまう」とのべました。