2006年3月10日(金)「しんぶん赤旗」

「ODA改革」、米軍再編、歴史問題

CS放送 志位委員長語る


 日本共産党の志位和夫委員長は八日放送のCS番組・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、「ODA(政府開発援助)改革」、米軍再編、アジア外交と歴史問題について語りました。聞き手は、朝日新聞の本田優編集委員。


ODA
貧困・飢餓解決のためにこそ

 ――ODA改革で、政府の「海外経済協力に関する検討会」が報告書(注)を出しましたが。

 志位 これまでのODAは、国際協力銀行(JIBC)が所轄する円借款、国際協力機構(JICA)が所轄する技術協力、外務省が所轄する無償資金協力の三本立てでした。今度の報告書では“政府系金融機関の一本化”という小泉首相の号令先にありきで、JIBCの国際金融部門を一本化される政府系金融機関に統合するというもので、ODAのあり方をどうすべきかを根本から問い直す中身がありません。

 もっとも改革すべきは、世界の貧困と飢餓の解決のための効果的支出が必要だということです。

 日本は主要国と比べても、貧困・飢餓対策の支出割合が少なく、日本の大企業が海外に出ていく際の経済インフラづくりにお金が使われています。これを見直していくべきです。

 財源問題でいうと、国連のミレニアム・サミットは、二〇一五年までに貧困人口を半分にするために四百八十億ドルが必要としています。これは全世界の年間の軍事費の5%にすぎず、“軍事費を削って人道支援を”と提起しています。その先頭に日本が立つ必要があります。五兆円もの日本の軍事費を削り(人道支援に)充てていくべきです。


  ODAの円借款を実施してきた国際協力銀行について、その国際金融部門を政策金融機関に、円借款部門を国際協力機構に統合することなどを提言しています。二月二十八日に安倍晋三官房長官に提出されました。


米軍再編
世界でも異常な米国いいなりに矛盾噴き出す

 ――米軍再編に臨むアメリカの戦略をどうみていますか。

 志位 アメリカの狙いは二つあると思います。一つは、地球規模での米軍の態勢を、海外遠征のための“殴り込み部隊”として強化すること、もう一つは、その戦争に同盟国を本格的に引き込んでいくことです。この二つの狙いからみれば(在日米軍再編は)イラク型の侵略戦争に、基地と自衛隊という両面で日本を動員する仕掛けづくりになっています。これを許さないたたかいに大いに力をそそぎたい。

 ――ヨーロッパは、米軍再編にやや距離を置いているように見えます。

 志位 同じ同盟国でもヨーロッパは、イラク戦争でも、ドイツ、フランス、ベルギーが反対するなど理性的態度を示しました。ところが日本は、アメリカのやることは全部賛成という対応で、これは米軍再編にもはっきり表れています。

 ただこれには国内では、自治体の激しい批判を呼び起こし、矛盾が噴き出しています。

 ――米軍再編での日本側のコスト負担をどうみていますか。

 志位 これまでも国内の基地強化に「思いやり予算」という形で費用が使われてきました。

 もともと「思いやり予算」は、基地を貸す以外には、駐留経費は米軍の負担とした日米地位協定に反するものです。これに加えて、グアムへの海兵隊移転費まで日本の国民の税金で払う動きが出てきました。米国領に新しい施設をつくるのに税金を注ぐことになれば、今までの「思いやり予算」という無法な枠さえ超えてしまいます。世界でも、こんな異常なことをやっている国はありません。

歴史問題
戦後世界秩序への挑戦

 ――対中国政策はどうすべきでしょうか。

 志位 (行き詰まりの)一番の根源は、歴史問題です。靖国参拝に固執し、批判を受けると“批判をする方が悪い”と居直るというのが小泉首相の態度です。

 日独伊がやった戦争は侵略戦争であり、絶対に繰り返してはならないというのは、戦後世界の共通の土台です。これに反する行動をとれば、中国、韓国との問題にとどまらず、日本と世界の問題になります。ここを改めることがなによりも大切です。

 首相は、既成事実を積み重ねてしまえば解決すると考えているようですが、これはまったくの考え違いです。

 ――世界の秩序にかかわる問題だと。

 志位 そこが大切です。首相の靖国参拝は、世界の秩序に対する挑戦であり、そこをアメリカも問題にしてきていることに目を向けるべきだと思います。