2006年2月9日(木)「しんぶん赤旗」

米軍再編二つの矛盾が噴き出す

CS放送 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、八日放送のCS番組・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、米軍再編問題にかんして、自治体との矛盾、防衛施設庁談合事件の影響、米国の世界戦略などについて、質問にこたえました。そのうち、自治体との矛盾、談合事件の影響についての部分を紹介します。聞き手は、朝日新聞の三浦俊章論説委員。


■自治体との矛盾――全国でいよいよ深刻に

 ――自治体との重要な交渉の役割を果たす防衛施設庁の談合事件がとどまるところを知らない広がりをみせています。この問題を踏まえて、米軍再編の状況をどうごらんになっていますか。

 志位 米軍再編という名で在日米軍基地の強化、日米の軍事一体化という方向が押しつけられてきたわけですが、ここにきて二つの大きな矛盾が噴出してきています。

 一つは、自治体との矛盾です。全国百三を数える自治体の首長、あるいは議会が米軍基地強化に反対という態度を明らかにし、自治体ぐるみのたたかいが大きく広がる状況があります。これは、米軍基地強化の内容とともに、やり方があまりにひどいことへの怒りが大きいですね。

 小泉首相は、二〇〇四年十月に「地元の自治体と事前に協議をし、OKをもらったら、米側と交渉する」と言明していました。ところが、協議どころか情報すらまったくないという状況の中で、結論だけ押しつけてくる。押しつけてきた中身は、在日米軍の陸海空・海兵隊四軍のそれぞれについて、地球的規模での海外遠征機能――“殴り込み”機能を強化するということですから、中身もひどいけど、やり方もめちゃくちゃじゃないかと怒りが噴出してきた。

 昨年十二月に防衛施設庁の本庁の地元調整本部の事務局・総括班長という人物から、出先の防衛施設局に対して、自治体の動きをよくウオッチして、可能な範囲で自治体で反対決議が上がらないように働きかけよとのメールが送られていました。

 井上哲士参院議員がこれを示して政府を追及し、防衛施設庁もメールの存在を確認しました。地方自治への介入、圧力という事態が明るみに出ました。神奈川でも沖縄でもこのメールが大問題になっています。自治体をまったく無視した横暴、乱暴なやり方が、自治体の総反発を受けているというのが一つ大事な点だと思います。

 ――今年三月までに最終報告をまとめるという姿勢を政府は崩しておらず、アメリカは圧力を強めています。どういう展開になると思いますか。

 志位 (三月に)最終報告をまとめるといいますが、去年の十月の「中間報告」なるものが、アメリカと固めてしまったものを出したというのが実態だと思いますね。

 たとえば沖縄のキャンプ・シュワブの沿岸部につくる新基地について、名護市の側は、前市長の岸本さんも、新市長の島袋さんも、「沿岸案には反対」と言っている。ところが政府は、沿岸案を見直すつもりはまったくなく「修正案は出さない」と言いきったわけですよ。そういうなかで、名護市長の側は、「沿岸案を前提にするなら協議に応じない」と言明しました。沿岸案に反対するという点では、知事の稲嶺さんも一致するという状況です。ですから沖縄ではこの一点で団結して島ぐるみのたたかいを発展させることが、いま非常に大事になっていると思います。

 ――岩国では住民投票の話があります。どこも応じるという気配が見えないですね。

 志位 岩国の住民投票の動きは非常に重要です。市民自らの意思によってこれを拒否しようという動きで、その成功を願っています。岩国では滑走路を二本にし、一・五倍に基地を拡大するというめちゃくちゃな話ですから、これも受けられるはずもない。

 キャンプ座間を抱えている相模原、座間の両市は、市長さんを先頭に、頑強に反対の立場をつらぬいています。

 米軍再編で、大きな焦点となっているキャンプ座間、岩国、沖縄――そのどこもデッドロックになっているという状況です。これを無視して、押し付けを強行するということは絶対にやってはならないことです。

■談合・腐敗の防衛庁は、「営業停止」に    

 ――こういう事態の中で防衛施設庁の談合事件が起きていますね。これはどういう影響を与えると思いますか。

 志位 ここで、もう一つの大きな矛盾が噴き出てきたと私は思っています。

 捕まった三人の容疑者がおこなったことは、まさに氷山の一角です。実際には防衛施設庁ぐるみで、談合の仕組みが構造的につくられ、おこなわれていた疑惑がある。「しんぶん赤旗」が最近調べた結果を報道しましたが、米軍再編で焦点となっている八つの基地――三沢、横田、座間、横須賀、厚木、岩国、佐世保、沖縄で、防衛施設庁が過去四年間に発注した事業の落札率を計算してみると、97・5%になる。全国的に談合がやられてきたのではないかという疑いが深刻にかけられているのです。

 ――今度の米軍再編はまさに巨大プロジェクトですね。

 志位 はい。たとえば岩国で基地を広げるという計画が十年前からやられていますが、これも最初から談合なのではないかという疑惑が広がっています。

 もともと基地拡張工事というのは「思いやり」予算でやられています。「思いやり」予算というのは日米地位協定にも根拠のない無法なもので、本当はやってはいけないものを出している。その「思いやり」予算を使ってやった工事が談合で、税金を食い物にしたということになれば、二重の無法です。こんな二重の無法をやっているような防衛施設庁が地元の住民に「基地をお願いします」という資格があるのか。普通の会社だったらこんな談合を起こしたら営業停止ですよ(笑い)。防衛庁も、基地おしつけは、「営業停止」にすべきです。

 ――防衛庁の方は、むしろこの機会に施設庁そのものを解体し、防衛省に統合するといっています。

 志位 これは問題の焦点をそらすものです。一番の談合の根っこになっているのは天下りです。そこをあらためないで組織をいじっても解決しない。

 だいたいあの調達本部の事件(一九九八年)の時は本庁(の汚職事件)でしょう。本庁だって同じ天下りをテコにした背任と汚職がやられていた。防衛施設庁の組織いじりだけやったところで問題解決になりません。天下りの全面的禁止の方向へ踏み出すことがどうしても必要です。