2006年1月25日(水)「しんぶん赤旗」

小泉「規制緩和万能論」

何をもたらしたか

衆院本会議 志位委員長の代表質問から


 “「痛み」に耐えれば明日がある”と「構造改革」路線をおしすすめてきた小泉首相。しかし、「官から民へ」のかけごえですすめてきた規制緩和万能論は何をもたらしたのでしょうか。日本共産党の志位和夫委員長が二十四日、衆院本会議の代表質問で告発しました。


■耐震偽装

■民間まかせで建築行政に大穴

表

 国民の生命を危険にさらしている耐震強度偽装事件。志位氏は「問題の根本は、一九九八年の建築基準法改悪で、建築確認を『官から民へ』といって、民間検査機関に『丸投げ』した規制緩和にある」と追及しました。

 建築基準法「改正」の審議では、「規制緩和」を絶賛する意見(別表)が連発され、自民、公明、民主などの賛成で成立、日本共産党だけが反対しました。

 「民間まかせでは検査の公正・中立性は困難になる」とした日本共産党の警告通り、規制緩和の結果、審査・検査という業務に競争原理を持ち込み、行政の体制も強化どころか弱体化が進行しました。ゼネコンやハウスメーカーの出資を受け、審査料の割引券まで配って安値を競う民間検査機関もあります。ずさんな審査を横行させた政府・与党の責任は重大です。

 ところが、小泉首相は「(民間開放後)制度の実効性が確実に向上しており、『民間にできることは民間に』という方向は間違っていない」と強弁。責任を認めませんでした。

 被害をうけたマンションの住民からは「これは国の制度被害」と声があがっています。

 志位氏が指摘したように、建築行政に規制緩和と利潤第一主義をもちこんで「大穴」を開けた自民党政治の責任は重大です。「被害者補償と再発防止も、問題のこの根本にメスを入れてこそ解決の道がある」(志位氏)のです。

■ライブドア事件

■小泉「改革」で“錬金術”可能に

 堀江貴文社長の逮捕で政財界に衝撃が走るライブドア事件。志位氏は、「事件の根本にあるのは、自民党政治がすすめた規制緩和万能路線ではないか」と政府の責任を追及しました。

 ライブドアが急成長をはたした「錬金術」には三つの手法があります。それは、(1)一株を百株にも分割して株の品薄や値上がり期待で株価をつりあげる株式分割(2)つりあげた高い株価の株式を使って有望な企業を買収する株式交換(3)企業の合併・買収をすすめ、上場などの利益を還流する道具としての投資ファンド――というもの。

 これらは、政府がすすめてきた金融「ビッグバン」を発端に、金融や株取引をめぐるさまざまな規制が撤廃され、「貯蓄から投資へ」(小泉首相)とすすめてきたなかで可能となりました。安倍晋三官房長官は「堀江さんの仕事の成功は、小泉改革の成果、規制緩和の成果だ」とのべています。

 規制緩和万能路線が、ライブドア事件の土壌をつくったことへの認識と反省を求めた志位氏の追及に、小泉首相は株式分割や株式交換で「多くの便益がもたらされた」と評価。「定められたルールにしたがうのは当然」としながら、ルールをなくしてきたことに無反省な態度を示しました。

 さらに、「昨年の衆院選挙で自民党の幹部などが堀江氏を応援したことは別の問題」と開き直った小泉首相。

 しかし、堀江氏を「勝ち組」のリーダーとして持ち上げ、昨年の衆院選で「小泉首相、ホリエモン、私がスクラムを組みます」(竹中平蔵総務相)と、事実上の党公認のように応援したのは小泉・自民党自身です。小泉首相にその自覚がまったくないことが浮かび上がりました。

■格差社会と貧困

■夢も希望も奪う弱肉強食の政治

図
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 多くの人が感じ、あえいでいる格差社会と貧困の広がり。「格差拡大は誤解」とごまかす首相に志位氏は、生活保護世帯、教育扶助・就学援助を受ける児童・生徒の比率、貯蓄ゼロ世帯が激増している庶民生活の事実をつきつけました。

 首相は「統計データからは所得格差の拡大は確認されない」と答弁しました。

 首相が、格差拡大を「見かけ」という内閣府の資料で、いくら事実に目をふさごうとしても、同じ内閣府の国民生活白書(〇五年版)でさえ、「若年層でパート・アルバイトが増加し、所得格差が拡大している」とハッキリ指摘しています。自民党の青木幹雄参院議員会長でさえ、同日の参院代表質問で「格差が広がってきている」と懸念を示しました。

 「首相の目には、貧困と格差のなかで苦しむ庶民の姿は入らないのか」――志位氏の追及に「そうだ」の声が飛びました。

 正社員を減らし、派遣、パートなどへの置き換えをすすめた大企業・財界、それを応援したのは小泉政治です。志位氏は、労働者の三人に一人、若者の二人に一人が不安定雇用で、八割は月収二十万円未満という極端な低賃金だと指摘し、首相に責任の自覚があるかと追及。「格差と貧困で国民から夢も希望も奪い去る。こんな寒々とした弱肉強食の政治をつづけていいのか」と厳しく批判しました。

 小泉首相は、「将来の格差拡大につながるおそれがあるフリーター、ニートなど若年層の非正規化や未就業の増加、生活保護費受給者の増加などには注意が必要」とのべ、深刻な格差と貧困の広がりを将来の問題であるかのようにすりかえました。