2005年6月26日(日)「しんぶん赤旗」

どう見る日本の
国連安保理常任理事国入り

賛成だが条件が必要

民放番組で 志位委員長が発言(大要)


 日本政府は、国連のアナン事務総長が安保理常任理事国の拡大を含む国連改革を提案したことをとらえ、常任理事国入りに全力をあげています。日本共産党の志位和夫委員長は二十五日放送のテレビ東京系番組「西川きよしの目玉報道」(二十三日収録)に出演し、この問題で見解を明らかにしました。民主党の岡田克也代表、社民党の福島瑞穂党首らも出演しました。(放送では編集のため一部カットされました)


世界とアジアから信頼される
国になることこそ大切

憲法九条との関係

 初めに、常任理事国入りへの賛否が問われました。岡田氏は「賛成」、福島氏は「条件つき賛成」。志位氏は「賛成だが条件が必要」として、次のようにのべました。

 志位 日本が、国連憲章にもとづいて「戦争のない世界」をつくる目的をもって、より重要な役割を果たすという意味で、常任理事国に入ることには賛成です。ただ、それには条件があります。

 まず、二ついいたいんです。

 一つは、世界とアジアに信頼される国になることです。日本やドイツ、イタリアがおこなった侵略戦争への反省のうえにつくったのがいまの国連です。ですから、これを覆すような行動、小泉さんの靖国神社参拝のような行動は、とってはなりません。

 もう一つは、アメリカいいなりの国から脱して、自主外交の国になる。たとえばイラク戦争というのは、国連憲章で説明できない侵略戦争です。ああいう戦争を支持して派兵するというのではなく、本当に自主外交の国になる。

 そのうえでもう一つ残った問題があります。それは憲法九条との関係です。いまの国連憲章には「軍事参謀委員会」という規定があります。常任理事国はそこに代表を出して、国連が行う軍事活動の戦略的指導を行うという規定があるのです。この規定のままだと、九条と相いれないということになります。

 国連改革全体のなかでアナンさんも「軍事参謀委員会」の規定の見直しを提起しましたけれども、それ自体が議論になっているわけです。そのもとで常任理事国への軍事的な義務付けをなくす方向での憲章の改定、これが実現されたら、九条と両立するようになる。私たちは九条を断固生かしていく立場ですから、(常任理事国入りのためには)この立場での憲章の改定が必要になってくる。そういう条件が整えば賛成できるということです。

多数派工作

 日本政府は、国連総会で加盟国の三分の二の支持を得るために、「多数派工作」に血道をあげています。番組では、その模様がVTRで紹介されました。その感想を含め、志位氏は次のようにのべました。

 志位 常任理事国入りというのは、無理に多数派工作をやったり、あるいは経済援助との引き換えで支持を集めて無理してなるものではないと思います。世界とアジアの国から自然と日本が推されて、ぜひやってほしいという信頼が集まってなるものです。そういう国になる努力が必要だと思います。

 その点でいうと、中国も韓国も(日本の常任理事国入りに)反対の方向が強いですね。やはり一番の問題は歴史の問題で反省がないからです。そういう国は近隣諸国から信頼されません。(小泉首相は)靖国神社への参拝一つとってみても、改めようとしない。いちばんやるべき、アジア諸国の信頼を得る努力をやっていません。

 それからさっき、アメリカいいなりじゃだめだといいましたが、日本は被爆国であるにもかかわらず、たとえば国連総会で核兵器廃絶の決議が出ても賛成しないわけです。アメリカの顔色をうかがって。こんなことでは、やはり信頼を得られない。

 岡田 それは理想だけど、それだけではすまない部分もある。

 志位 アジア諸国の信頼を得る努力をせずに、多数派工作をやるというのは逆立ちしているということです。

 岡田 数少ないチャンスだから、このチャンスをつかもうという努力は必要だ。

 志位 (ほんとうに)やるべきことをやってないことが問題です。

 出演者の森本敏・拓殖大教授からも「志位さんがいったことはひじょうに大事で、周りの国から支持されて出るのが、選挙のありようだ」との声が出されました。

中韓とどう向き合う

 番組は、もう一つの論点――「中国、韓国とどうつきあうか」に移りました。志位氏はフリップに「歴史への反省を行動で示す」と書いて、こうのべました。

 志位 これが大事なところなんです。四月に(インドネシアの)ジャカルタで開かれたアジア・アフリカ首脳会議で、小泉首相は「侵略と植民地支配への反省とおわび」ということをいいました。ところがその後、靖国神社参拝問題について参拝を前提にした答弁をして、大きな反発を呼び起こしました。

 靖国神社に参拝することはどういう意味を持つか。靖国神社に「遊就館」という軍事博物館があります。そこへ行きますと、あの戦争は「自存自衛の戦争だった」「アジア解放の戦争だった」――つまり「日本の戦争は正しかった」という、当時の戦争指導者の言葉そのままの戦争肯定論を書いてありますよ。

 そういう神社へ参拝することは、小泉さんがどんな「信条」を持っていようと、日本政府として侵略戦争の正当化に公認のお墨付きを与えることになる。私はこの前の(衆院)予算委員会で小泉さんの姿勢をただしたら、小泉さんは「靖国の考えと政府の考えは違う。誤解しないでくれ」といいました。しかし「誤解しないでくれ」といっても、行動でお墨付きを与える行為を取っているわけですから、言葉を行動で裏切ったら信頼されない。

 歴史への反省を行動できちんと示すことが必要です。靖国参拝は、きっぱり中止すべきです。この決断を求めたい。

 これに対して森本氏は「対中・韓感情が悪くなったのは、中国や韓国の一方的な行動に原因がある」とのべました。志位氏はこうのべました。

 志位 中国はいま、経済の発展に一番力を入れていて、良好な国際関係、平和的な環境を望んでいると思います。もちろん、反日デモに見られたような暴力はいけないと、私たちも中国に直接いいました。しかし、もっと根っこにある歴史問題での、いわば言葉を裏切る行動は、中国の人たちを非常に傷つけていますよ。これを見なくてはいけないと思います。

 アナン事務総長が提起した安保理改革案 アナン事務総長は三月二十一日、包括的な国連改革案を提案しました。

 このなかで、現在拒否権を持つ五つの常任理事国と拒否権を持たない十の非常任理事国で構成される安全保障理事会については、理事国の数を見直すとともに、軍事参謀委員会の廃止を盛り込みました。

 軍事参謀委員会については、国連憲章第四七条で、「安全保障理事会の常任理事国の参謀総長又はその代表者で構成する」「安全保障理事会の下で、理事会の自由に任された兵力の戦略的指導について責任を負う」などと規定されています。

 アナン事務総長の改革案では、「憲章そのものについても…軍事参謀委員会を廃止するために改定すべきである」としています。

 この提起には異論も出されています。九月の国連首脳会合に提案予定の「成果文書」草案では、「安全保障理事会に対し、軍事参謀委員会の構成、任務、活動方法を検討し、今後の活動のための勧告を総会に提出するよう要請する」とされました。