2005年2月4日(金)「しんぶん赤旗」
「いま本格的な増税路線に踏み出したら、景気と経済はどうなるのか」――三日の衆院予算委員会。日本共産党の志位和夫委員長の質問は、小泉内閣がねらう増税・国民負担増路線がいかに無謀で危険なものか、核心をつく追及でした。小泉首相は、ごまかしと開き直りで逃げようとしましたが、やりとりを通じて増税路線の道理のなさが浮かび上がりました。
竹腰将弘記者
志位氏 家計の所得が減っている時期に、増税路線に踏み出したことが、戦後一度でもあったか。
小泉首相 経済指標その他については、後ほど担当大臣から答えさせる。
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志位氏が、定率減税縮小・廃止の増税路線をただした場面。志位氏はむずかしいことをきいたわけではないのです。家計の所得(家計が一年間に企業などから受け取る所得の総額)が大きく減り続けるなかでの増税に踏み出すことは、戦後の歴史でも例がありません。そのことを首相として認識しているか、確認したものです。
首相は答えませんでした。そのかわりに「定率減税の半減といっても、来年一月からの千八百億円で、配慮してあり、影響は少ない」などと先回りして弁解しました。
しかし、この論法は無理。これからの二年間というわずかな期間に、定率減税の縮小・廃止で三・三兆円という増税を庶民に押し付けるのが、政府・与党の大方針だからです。増税を一気にやるか、じわりとやるかの違いにすぎないのです。
増税をしても大丈夫だという根拠として、首相が持ち出したのは「民間主導の回復力」。“企業部門が回復を続け、家計部門に波及して、ゆるやかな回復に向かう”という、あまりにも甘い「経済見通し」です。
大企業は史上最高の利益をあげ、一方で労働者・国民の雇用・生活不安はますます深まる――「景気の二極化」がいまの日本経済の実相です。志位氏が政府の統計資料で示した通り、大企業がいくらもうけても、それは国民のくらしには波及せず、リストラ・賃金抑制でますます国民の所得が減らされていく―。
志位氏は、「『今後、所得がのびていくから大丈夫』というがなんの根拠もない。(橋本内閣の)九兆円負担増の大失政の二の舞いになることを強く警告せざるをえない」と強調しました。
竹中経済財政担当相 (雇用者報酬は)私たちの見通し、実績見込みでは(平成)十六(二〇〇四)年度から上昇に向かう。十七年度もそれが上昇に向かうだろう。
志位氏 竹中大臣、虚偽の答弁をされては困りますね。
景気への影響をめぐる首相と志位氏のやりとりをみて、さっと手を挙げて、答弁にたったのが、竹中平蔵経済財政担当相。
竹中氏の主張は、要するに、企業の業績が上向くなかで、家計所得も上向くだろうという政府の経済見通しを言っただけ。その議論を補強しようと持ち出したのは「雇用者報酬」(賃金)の上昇。しかし、志位氏がいうように、まさに虚偽の答弁です。
雇用者報酬についてみても、上昇したのは二〇〇四年の四―六月期にほんのわずかプラスになっただけ、そのすぐ後の七―九月期には、再びマイナスになっていること、厚生労働省の家計調査をみても二〇〇四年全体で所得の減少がまったくとまっていません。志位氏はこの事実を示し、「雇用者報酬がプラスという竹中大臣の発言は、まったくなんの根拠もない。あたかも今どんどん伸びているようなことをいうのはおやめなさい」とたしなめました。
さらに、竹中氏が答弁で、「構造改革」はまだ途中で「労働分配率はまだ下げどまりになっていない」とのべたことについて、「それなら、もっと所得も落ちるということになる。語るに落ちる答弁ですよ」と切り返しました。
志位氏と竹中氏の論戦の核心は、「企業が栄えれば国民生活もよくなる」という政府の経済見通しが正しいのかということにゆきつきます。
志位氏はこの問題で、内閣府が昨年十二月に出したリポート『日本経済2004』で、“80年代までは、企業の利益と給与とは高い相関関係を持っていた。企業の利益がのびれば、給与ものびた。しかし95年以降はむしろ逆相関が強まっている”という分析をしていることを示しました。
志位氏は「あなた自身が所管している内閣府のリポートを使って、『企業の利益があがっても、家計の所得はあがらないじゃないか、逆相関じゃないか』といったことに、だれもまともな答えがない」と追及しました。求められもしないのに、三度も答弁席に出てきて、長々と話しながら、これについてなにもいえなかった竹中氏。竹中氏は「私の説明をよくご理解いただいていない」とのべましたが、自分の所管する内閣府のリポートさえ「理解」していないのが、竹中氏です。
志位氏 「増税でなく歳出削減で無駄な税金の使い方を徹底的に直すことであります」というのが首相の公約。それにてらせば、新たな無駄遣いに乗り出しながら、庶民に増税など許されない。
小泉首相 公約は守っている。
志位氏が、二〇〇二年七月の参院予算委員会での小泉首相の答弁を示し、総額一兆円を超す関西空港二期工事をはじめ、来年度予算案で大型公共事業を復活させたことを「公約違反」と追及した場面。
自民党席はエキサイト。副大臣席も含め、「なにが無駄遣いだ」などとヤジがとびました。一度決めた巨大プロジェクトは絶対やめない――「改革」をいう小泉首相のもとでも自民党の体質はまったく変わっていないことが浮き彫りになりました。
小泉内閣がふみだした二年間で七兆円もの大負担増路線が経済も暮らしも破壊すると追及した三日の志位委員長の質問。「経済問題で政府は、会社がよくなれば従業員にまわると答弁していたが、そうでないことはサラリーマンとしての実感からよくわかる」(六十五歳の男性)など党本部に電話やメールで感想が寄せられました。
「中学生の娘が志位さんの質問を聞いて、『たいへん共感したので、ぜひを電話してくれ』というので、電話しました」という東京の女性は、「娘は『パパの給料が減り、消費税の負担が増えれば、とても暮らしがたいへんになる。私のおこづかいも減る。ぜひがんばってほしい』ということでした」とことづけました。
新潟から電話をかけてきた年配の女性は、「小泉首相がいかに企業の側に立っているか、よくわかりました。志位さんのいわれるように、正社員が本当に少なくなっていて、食品のスーパーでは大変な状況です」とパート労働の大変さを訴えました。「使い方が激しいのです。竹中大臣の『企業の業績がよくなった』なんてうそっぱちですよ。志位さんはちゃんと事実を示して言っているのにどうしてこんな答弁しかできないのか。竹中大臣は虚偽の答弁ですよ」と怒りがおさまらない様子でした。
神奈川の女性は「二十代の娘がいますが、朝は四時三十五分に出て行くんです。それでも夜は遅いんです」と語りました。「志位さんの質問と娘の働き方を見て、働く人の正当な賃金はないと思いました。所得の分配で、労働者が過剰に取りすぎていた、というその一言で、『構造改革』が力のあるものの政策だということが本当によくわかりました」