2004年11月11日(木)「しんぶん赤旗」

ファルージャでの虐殺作戦をただちに中止せよ

CS放送 志位委員長の発言から (大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は、十日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、三浦俊章・朝日新聞論説委員の質問にこたえました。そのなかから、イラク・ファルージャの情勢に関連した部分の大要を紹介します。


どれだけの犠牲者を出すか、はかりしれない無法で野蛮な作戦

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CS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」で三浦俊章・朝日新聞論説委員の質問にこたえる志位和夫委員長

 三浦 ファルージャの戦闘はものすごい規模ですね。ファルージャの現状をイラクの治安なり、戦争という観点からどうご覧になっていますか。

 志位 私は、非常に深刻で重大な事態が始まったと考えています。

 いまファルージャを取り囲んでいる米軍の部隊は一万数千の規模といわれています。これまでそういう作戦にたずさわってこなかった海兵隊も投入されています。非常に大きな規模の部隊がファルージャを包囲して、事実上のせん滅作戦を開始したわけです。

 どれくらいの人がファルージャに残っているかといいますと、米軍の司令官によると「(脱出した人々の)引き算をやってみれば」という話ですけれども、十万人くらいの住民が残されている。その人たちを含めて総攻撃の対象とされているという事態ですから、いま起こっていることは住民に対する無差別の殺りく作戦にほかなりません。

 これは、どれだけの民間人の犠牲者を出すか計り知れないという点でも、さらにイラクの情勢全体をどれだけ悪化させるか計り知れないという点でも、この無法で野蛮な作戦はただちに中止するということを、私たちは要求します。国際社会もそのことを強く求めるべき非常に重大な局面だと思います。

 三浦 ラムズフェルド国防長官は最後までやりぬくといっていますね。

 志位 最後までやりぬいて制圧するんだと(いっています)。

 四月にファルージャの虐殺問題が国際社会で大問題になりました。あのときは空爆中心で六百人をこえる犠牲者が出たということで大問題になったわけですけれども、あのときにファルージャを包囲した兵力というのはだいたい三千人だったんです。四月のときは市の中心部に入れなかった。

 今度は一万数千の規模で軍隊が包囲して、ともかく市の中心部まで制圧してしまおうという作戦なんです。これをやった場合、どれだけの民間人の犠牲者が出るか。考えるだに恐ろしい事態にいま直面していると思います。

 この問題をめぐっては、イラクの国内でも強い批判と抵抗が起こっています。たとえば大統領のヤワル氏が軍事攻撃は反対だと明言しました。スンニ派のイスラム聖職者協会は「攻撃が強行されるならば選挙をボイコットする」と警告し、「無辜(むこ)の人々にたいする無法で非合法的な行為」だときびしく批判しました。

住民虐殺作戦を「成功させるべき」(小泉首相)―歯止めない対米追従の異常な姿

 三浦 国連のアナン事務総長もかなりブッシュ大統領に申し入れているようですが、一方でわが国の政府なり首相の対応は、基本的にはアメリカ支持だと思いますが、この辺はどのようにご覧になっていますか。

 志位 アナン事務総長がアメリカとイギリスとイラクのアラウィ首相あてに書簡を送り、そのなかで「市街地で市民が犠牲になる危険が明白な戦闘」が行われることに強い懸念を表明した。そして「治安悪化の問題は、軍事弾圧ではなくて政治的なプロセスで解決すべきだ」とのべたということが報道されました。

 昨日のアナン事務総長の声明のなかでも、「選挙に悪影響を与える」ということからも強い懸念と批判がのべられている。これは国際社会の当たり前の声です。

 圧倒的な世界の国ぐには今度の事態に対して批判の声をあげると思います。とくにアラブ世界、イスラム世界の批判は非常に強いものになると思います。

 そのなかで、言われたように小泉首相は、「この作戦を成功させるべきだ」と(のべた)。住民虐殺計画を成功させるべきだと言い切ったのには、私は率直にいって怒りとともに驚きを感じましたね。これほどひどいやり方に無条件で支持をあたえるアメリカ追随ぶりというのは、世界の中でも際立っていると思います。

 四月のファルージャの虐殺の際には、私は党首討論で小泉さんに、「こういうやり方をやめるべきだとアメリカにいうべきだ」とただしました。あの時はそれでも、「大変遺憾な状況が起こっている」という答弁をして、ここまではいわなかったですよ。今度はもう歯止めがなくなってしまっている。大変な人命が犠牲にされることが目の前に迫っているのに、「成功させるべきだ」といって全面的な支持を与える。これは、絶対に許すわけにはいかない態度だと思います。

 三浦 背景はやはりブッシュ大統領の再選、盟友が勝ったという個人の結びつきがよく指摘されているんですけど、ブッシュ・小泉関係はいったい日米関係に何をもたらしているのでしょうか。

 志位 非常に悪い影響をもたらしていると思いますね。9・11のテロが起こった、それに対する報復戦争をアフガンで始める。これをただちに支持し自衛隊を派兵する。そしてイラクの戦争もただちに支持し、自衛隊を派兵する。

 ともかくアメリカにいわれるままに、アメリカにただ付き従って軍事干渉路線に追随するという「同盟関係」ですから、両者は。ですから、それが今度のファルージャの事態に際しては、まったく歯止めがきかなくなってしまっているということだと思います。

 自衛隊派兵の問題も非常に深刻になってきているのです。ファルージャの虐殺をやっている米軍が中心にすわっている多国籍軍に参加する形で自衛隊を派兵し続けるということがどういう意味を持つのかが、深刻にいま問われているわけですね。

 自衛隊派兵については、戦争の大義がなくなったもとで派兵を続けることがおおもとから問われているという問題がある。さらに憲法やイラク特措法に照らしても条件がなくなっているという問題がある。

 それに加えて、そういう虐殺行為をやっている米軍を支援し、協力する形で自衛隊が派兵を続けるということが、イラク国民との関係、あるいはアラブ・イスラム世界との関係で日本を取り返しのつかない立場に置く。彼らをすべて敵に回すという立場に置くということを本当に自覚すべきです。私はいまからでも自衛隊の派兵について根本からの再検討をおこない、すみやかな撤退を決断すべきときだということを強くいいたいと思います。

いま、日本国民の平和と理性の声をあげるとき

 三浦 かつてのアメリカがやったベトナム当時に比べると日本国民自体は平和を求める運動や反対が弱いような気がするんですが。

 志位 私は単純にそう考えていません。たとえばイラク戦争が始まる前後の日本国中で数万、数十万という規模で強い反対のデモンストレーションが起こりました。さらに、自衛隊派兵の節々でいろんな運動が全国で広がっていることによく目を向ける必要があります。

 とくに若い方々がさまざまなとりくみをやっていることは、非常に心強いものがあります。高校生が平和集会をやる。あるいは「戦争アカン」という人文字を若い方が大阪でやりましたね。ああいう若い方が平和のとりくみの先頭に立っているということは非常に心強いと思います。今度のファルージャの事態に際しても、緊急の抗議の行動をいろんな形で進めていきたいと思っています。

外国軍撤退にむけた措置が、イラク国民が主人公になった国づくりに不可欠

 三浦 共産党の立場として今後のイラク再建をどのような形で進めるべきであって日本はどのようにかかわるべきなのか。そのへんはどんなふうにお考えですか。

 志位 これまでの占領軍が多国籍軍と名前は変わったが、占領軍という実態は変わらないわけですね。イラクの国民に形式上は主権は返されたけれども、実態的に主権が戻ったという状況じゃない。実際は米軍が全体を占領しているという状況に変わりはないわけですね。

 やはり、イラクの状況を前向きに打開し、イラク国民が本当に主人公になった国づくりを進める、そしてそのなかで選挙もしっかりやって民主的に選ばれたすべての勢力が参加した政府をつくっていくということを考えますと、やはり占領という事態を一刻も早く終わらせるための措置が必要になってくると思うんですね。

 フランスのバルニエ外相が最近の発言のなかで、「外国軍の撤退について話し合うことが主権返還の真の旗印になる」とのべています。やはりこの外国軍の撤退にむけた措置をしっかりつくっていくと。それと並行して国連が本当に主導した支援の枠組みをつくり、そしてイラク国民が本当に主人公といえるプロセスのなかでイラク国民自身の政府をつくりあげていく、国づくりをしていくところに切り替えないと、これは道が開けないと思いますね。

 アメリカが軍事的な制圧によって、支配権を絶対に逃さないと、そのもとでいいなりになる政権を維持していく、その枠内で選挙をやらせる、そのために軍事弾圧をやるんだということを続けていては、これはいつまでたっても問題は解決しないと思います。

 三浦 一月の選挙がどれだけの規模でできるかがポイントになると思うんですが、きわめて限定的なものだとしたらまさに正統性が問われると…。

 志位 問われると思いますね。ファルージャがこういう事態になると、たとえばイスラム聖職者協会は「もう選挙に参加できない」といっている。そうなってきた場合、たとえばスンニ派といわれる人たちが選挙に参加しないということになったら、これはもう正統な政府とはいえない事態になりますから。

 選挙ということを考えてみても、選挙をやる条件をつくるんだといってアメリカはいま戦争を始めたわけだけど、しかし逆に選挙自体の条件をぶち壊しにしようとしているというのが、ことの真相だと思います。