2004年10月19日(火)「しんぶん赤旗」

説明できない小泉首相

年金財源で定率減税廃止

志位委員長質問


図

 年金改悪に組み込まれていた定率減税廃止。働きざかり世代にたいし保険料を毎年毎年引き上げるだけでなく、大増税まで押しつける改悪計画を、日本共産党の志位和夫委員長が十八日の衆院予算委員会でとりあげました。国民の知りたいことを説明できない首相答弁。底知れない改悪の中身がまた浮かび上がりました。

国庫負担上げの目的と矛盾

働き盛りに負担重く

 志位氏 二分の一への引き上げの財源を、働きざかり世代を直撃する庶民大増税でまかなうのは、引き上げの目的に反するではないか。

 小泉首相 定率減税の段階的縮小も一つの選択肢だ。

 改悪年金法では、基礎年金の国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げることを大前提としています。その「財源」として定率減税の縮減を「一つの選択肢」だと明言した小泉首相。志位委員長は、基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げは、そもそも働きざかり世代の負担軽減が目的だったはずと追及。根本的な疑問をつきつけました。

 前回の「改正」年金法の審議で、当時の丹羽雄哉厚相は、「保険料率の引き下げという観点から、基礎年金の国庫負担は二分の一までできるだけ早くしなければならない」(二〇〇〇年三月七日、参院国民福祉委員会)と答弁しています。

 働きざかり世代の保険料引き下げのための財源に、働きざかり世代への大増税をあてる――「これでは何のための二分の一への引き上げということになるではないか」。

 厳しく迫る志位氏に説明できない小泉首相。「年金制度を持続可能なものにするため」と紋切り型の答弁で庶民大増税を正当化するだけで、「道理のないことをやろうとしている」(志位氏)首相の姿勢が浮き彫りになりました。

 「どこかに財源を求めなければならない」という首相にたいし、志位氏は、二分の一への引き上げの財源は、無駄な道路づくりの温床となっている道路特定財源(年間五・七兆円、国税分で三・四兆円)の一般財源化、無駄な公共事業費の縮減、軍事費の削減など、歳出の見直しで確保できると対案を示しました。

なぜ庶民だけに大増税

大企業減税はそのまま

グラフ

「大企業収益」は、資本金10億円以上の全産業(金融・保険業を除く)の経常利益。出典:財務省「法人企業統計調査」
 「家計収入」は、民間企業が支払った給与の総額。出典:国税庁「民間給与実態統計調査」

 志位 なぜ定率減税だけを縮小・廃止するのか。

 首相 全体をにらみ税制改革の中で考えていかなければならない。

 一九九九年からの「恒久的減税」は、景気回復のためとして、国民向けの所得税・住民税の定率減税(三・五兆円)のほか、大企業向けの法人税率引き下げ(二・七兆円)、お金持ち向けの所得税・住民税の最高税率の引き下げ(〇・五兆円)がセットで実施されました。

 ところが国庫負担引き上げの財源として大企業向け減税は外されたのです。しかし実際に景気が回復したのはどちらか。志位氏は政府のデータを示しました。比較したのは、九九年から五年間の大企業の収益と家計収入の推移です。(グラフ)

 上向きは大企業の経常利益。十二兆円から二十一兆円に九兆円増加しています。下向きは家計。給与総額が、二百二十三兆円から二百四兆円と十九兆円も減っています。

 志位氏は「収益が回復した大企業減税はそのまま、収入が落ち込んだ家計の足をさらに引っ張る定率減税廃止だけに手をつけようとするのは説明がつかない」とのべ、国民の納得する答弁を要求。

 小泉首相は「消費税引き上げができないなか、ほかの財源を考えなければならない」とごまかし、なぜ庶民大増税だけかの問題には答えません。

 十数年間で、法人税負担は二十八兆円から十五兆円に軽減されました。大企業の税と社会保険料負担は国民所得比で12%。イギリス16%、ドイツ18%、フランス24%に比べ低水準です。志位氏は「定率減税廃止は時期尚早」とした民間研究所のリポート(別項)を示し、「結局、年金の財源が足りなくなったら、とりやすいところから取るという姿勢で、これでは年金不信をひどくするだけだ」と小泉「改革」の正体を指摘しました。

国民欺く「後出し」の手法

反省まったく示さず

写真

パネルを示して小泉首相を追及する志位和夫委員長=18日、衆院予算委

 志位 法律が通ったあと「保険料上げるだけじゃない。増税もお願いします」というのは、国民をあざむくやり方だ。

 首相 今でも決めていない。これから議論する。

 政府が改悪年金法を強行するさいにとった姿勢で一貫していたのは「国民にできるだけ都合の悪い情報は知らせないで国民をごまかしていく」というやり方です。同じ手法で定率減税の縮小、廃止を国民に押しつけようとする小泉首相に、志位氏は「国民をあざむくやり方だ」と国民の怒りを代弁しました。

 この間、政府は改悪年金法の審議中、「保険料は上限固定」「給付は現役世代の50%を確保」と国民に偽りの説明を行い、日本共産党の追及で偽りを認めざるをえなくなりました。改悪法の成立後には、法律の前提となる出生率のデータを国民にひた隠しにしてきたことが発覚しました。

 庶民増税についても昨年十月の党首討論で、志位氏が、基礎年金国庫負担引き上げの財源を「庶民増税に求めることはないとはっきりいえるか」とただしたとき、「まだ決めていない」と答えた小泉首相。今回も、定率減税廃止の実施を「選択肢の一つ」と認めながら、志位氏に突っ込まれると「今でも決めていない」。国民だましにまったく反省はありません。

 志位氏は「国民を幾重にもあざむいた改悪年金法は白紙にもどし、やり直すこと」を求めて、質問を締めくくりました。

「定率減税縮小が個人消費に与える影響」と題した日本総合研究所のリポート(九月一日発表)から

 「定率減税の半減によって、個人消費は一兆二千七百二十二億円減少すると試算。これは二〇〇三年度の個人消費の0・45%に相当」「定率減税廃止の目的は基礎年金財源であるが…、将来の年金制度に対する不安感が払拭(ふっしょく)されないなか、当座しのぎのために最も手をつけやすい部分を利用して取り繕うといった印象がぬぐいきれず、国民の理解を得ることが難しい」