2004年8月3日(火)「しんぶん赤旗」

志位委員長の代表質問

衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が二日、衆院本会議でおこなった代表質問(大要)は次の通りです。


新潟・福島・福井の豪雨災害――国の姿勢が問われている

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本会議で質問する志位和夫委員長=2日、衆院本会議

 日本共産党を代表して、小泉首相に質問いたします。

 まず新潟・福島・福井を襲った豪雨災害と、台風10号による被害についてであります。私は、犠牲となられた方々に深い哀悼の気持ちをのべるとともに、多くの被災者のみなさんに、心からのお見舞いを申し上げるものであります。

 日本共産党は、ただちに対策本部を設置し、地元のみなさんと連携して、救援と復興にとりくんでまいりました。現地の実態はきわめて深刻であります。全壊・半壊した住宅が三百棟をこえるだけでなく、一万数千をこえる住宅が床上浸水で、泥に埋まってしまうという状況となりました。全国でも有名な地場産業、中小企業の工場も泥に埋まり、水田もいたるところ泥をかぶり大被害をうけました。水害の被害をうけたニット関係業者が自殺するという痛ましい事態もおこっています。

 自然災害のすべてをなくすことはできませんが、災害から国民の命をまもること、被災者の生活と営業を復興すること――これは政治の力でできることであり、国の重大な責任であります。私は、政府がそのために全力をつくすことを、つよく求めるものです。

 同時に、被災された方々の切実な願いにこたえて、国がその責任をしっかりとはたすためには、現行法を最大限に活用することはもちろんですが、「自然災害による個人財産の被害は補償しない」としてきた従来の政府の姿勢を転換し、住宅や町工場の修繕・建て替えへの直接の公的支援にふみだすべきだと考えます。首相の答弁を求めます。

改悪年金法――民意を厳粛にうけとめ、白紙にもどせ

 つぎに年金問題について質問します。参議院選挙の結果が、政府・与党が、力ずくで強行した改悪年金法にたいする、国民の「ノー」の審判をしめしたものであることは明りょうであります。選挙後の世論調査でも、実に八割の国民が、「(年金改革法は)白紙にもどしてやりなおせ」と求めております。

 これは改悪年金法が、国民に連続負担増をおしつけることで、「保険料が高すぎて払えない」という方々をいっそう増やし、年金制度の空洞化をいよいよ深刻にするとともに、連続給付減のおしつけによって、ただでさえ貧しい年金の給付水準をいっそう切り下げ、憲法に保障された国民の生存権を国みずから侵害しようとしていることにたいして、国民の怒りが沸騰した結果であります。

 さらに、「負担増には上限がある」「給付減には下限がある」という二つの嘘(うそ)にくわえて、出生率のデータ隠し、四十カ所にのぼる条文ミスなど、嘘とごまかしの限りをつくした結果であります。

 年金制度で一番大切なものは何か。それは国民の信頼であります。長い間掛け金を払い、老後に給付をうけるという、長い命をもつ制度であるだけに、国民の信頼がなければ制度が成り立つはずがありません。嘘とごまかしでつくった制度が長続きする道理はありません。

 小泉首相にうかがいたい。選挙できびしい審判がくだり、八割もの国民が「白紙にもどせ」と要求している制度が、いったい立ち行くと考えているのですか。民意を厳粛に受け止めて、改悪年金法は白紙にもどし、そのうえで国民の知恵を結集して、だれもが安心できる年金制度をつくるべきではありませんか。答弁を求めます。

消費税増税――「福祉のため」という議論に道理があるか

 消費税増税の問題が、国政の重大問題になっております。細田官房長官は、七月二十九日の会見で、「与野党の協議で引き上げの合意ができれば、三年後施行もありうる」とのべました。三年後の二〇〇七年度には消費税値上げを実行する、それまでに与野党の協議をすすめ、増税の段取りをたてる――このシナリオがいまやすっかり明らかになりました。

 私が驚くのは、消費税増税をすすめる人たちが、この税金を引き上げることが、国民にどんな痛みと苦しみをもたらすかについて、あまりに無感覚であることです。たとえば、税率を3%値上げして8%にするという案もだされていますが、税率8%というのはどんな重さになるか。

 年収六百万円、四人家族のサラリーマン世帯の場合、税率5%でも年間負担している消費税は十六万円と、すでに所得税の十五万円よりも重い負担となっています。それが税率8%になれば、年間負担する消費税は二十六万円と、所得税の倍近い額に膨れ上がります。これが家計と経済にどれだけの打撃になるか、はかりしれません。

 月額五万円の国民年金で暮らしをたてているお年寄りはどうなるでしょう。月額五万円といえば、年間でも六十万円の収入です。この年金収入は、ほとんどが消費にまわることになるでしょう。税率8%になれば、このお年寄りが年間負担する消費税は約五万円となります。つまり、月五万円の年金ぐらしのお年寄りから、一月分の年金を召し上げてしまうというのが、消費税8%なのであります。

 消費税増税をすすめる人たちは、「福祉のためには仕方がない」ということを、最大の口実にしています。しかし年金や福祉というのは、立場の弱い方々の命と暮らしを支えるという大事な役割をもった制度であります。消費税とは、そうした立場の弱い方々に重くつらくのしかかる税金です。いったい月五万円の年金ぐらしのお年寄りから、一月分の年金を召し上げることを、「福祉のため」といって合理化することが許されるでありましょうか。「福祉のため」といって、福祉を破壊する税金を引き上げることは、本末転倒もはなはだしいものだと考えますが、この根本問題についての首相の見解をうかがいたい。

 日本共産党は、税金の使い方と集め方のゆがみを土台からあらためる――すなわち第一に、国と地方と公団で年間四十兆円をこえる公共事業費、年間五兆円にのぼる軍事費に縮減のメスを入れること、第二に、この十数年間に、大企業への減税をやりすぎたために、日本の大企業の税と社会保険料負担が、ヨーロッパ諸国の半分から七、八割の水準にまで下がっていることに目をむけ、大企業に徐々に世間なみの負担責任をはたさせること――これらの改革をおこなえば、消費税に頼らなくても安心できる年金、医療、介護の制度を築くことは可能だという提案を、明らかにしています。

 私は、こうした国民の暮らし第一の改革をすすめることは、日本経済の六割をしめる家計を温め、経済の健全な成長をうながし、企業活動の長い目での発展にもつながるものと確信するものであります。

イラク派兵問題と憲法改定問題――「日米同盟」最優先の国でいいのか

 つぎにイラクへの自衛隊派兵問題と、憲法改定問題について質問いたします。

 小泉首相が、この三年間とってきた外交政策は、「日米同盟」――日米安保条約を、国の行動の最高の基準にするというものでした。アメリカがイラク戦争をはじめれば、「日米同盟のため」といって賛成する。アメリカがイラクに自衛隊を派兵してくれといえば、「日米同盟のため」といって派兵する。そして、イラクの占領軍が「多国籍軍」になったさいには、「武力行使を伴う多国籍軍への参加は憲法上認められない」というこれまでの政府見解を、まともな説明なしに覆して、これも「日米同盟のため」といって、ブッシュ大統領にさっさと参加の約束をして帰ってくる。小泉首相がやってきたことは、「日米同盟のため」の一言で、すべての思考を停止させ、世界でも異常なアメリカいいなりの道をすすむことではありませんか。

 重大なことは、小泉首相が、この間違った道に、さらに大きく踏み込もうとしていることであります。首相は、かねてから憲法九条の改定を公言してきましたが、選挙戦のなかで「集団的自衛権の行使のために改憲が必要だ」と、発言をエスカレートさせました。この発言が意味するものは何か。私は、端的に二つの点を質問したいと思います。

 第一に、「集団的自衛権」とは、日本が攻撃されていなくても、米国が戦争を始めたさいに、ともにたたかうということにほかなりません。これは、日本を「米国とともに海外で戦争をする国」につくりかえることを意味するものではありませんか。はっきりした答弁を求めます。

 第二に、それでは米国がおこなっている戦争とはどのような戦争か。イラクに対しておこなったのは、先制攻撃の戦争です。しかし国連憲章は、武力攻撃が発生した場合の自衛の反撃と、国連安保理が決定した場合以外には、武力行使をかたく禁止しているのであります。イラク戦争は、この国連憲章をふみやぶった無法な侵略戦争であり、だからこそ世界の六十二億の人口のうち、五十億の人口をかかえる国々がこの戦争に反対・不賛成の態度をとったのであります。日本を「米国とともに海外で戦争をする国」につくりかえることは、日本を国連憲章をふみやぶる無法国家に転落させることを意味するものではありませんか。はっきりとした答弁を求めるものであります。

 アーミテージ米国務副長官は、「憲法九条は日米同盟の妨げ」といいました。しかし二十一世紀の日本国民にとって、ほんとうの「妨げ」はどちらか。わが党は、二十一世紀の日本がなくすべきは世界に誇る憲法九条ではない。異常なアメリカいいなり政治の根源にある日米安保条約こそなくすべきだ、それに代えてほんとうの対等・平等・友好の日米関係こそ築くべきだと考えるものであります。

日本歯科医師連盟からの政治資金疑惑について

 最後に、日本歯科医師連盟の膨大な政治資金をめぐる疑惑について、二つの点にしぼって、質問いたします。

 一つは、橋本元首相への一億円のヤミ献金問題であります。これは一派閥、一議員の問題ですまされることではありません。元総理のかかわる犯罪事件として、きわめて重大であります。何のためのヤミ献金だったのか、このヤミ献金が何に使われたのか――小泉首相は、総理・総裁として、責任をもって調査し、国民と国会に報告すべきではありませんか。

 二つ目は、日歯連から自民党にたいして、この三年間で届けられたものだけでもなんと十五億円をこえる巨額の献金がなされていますが、この献金の原資は、国民が払っている医療費であり、医療保険料などであるということであります。「財政難」を口実にして、国民には医療費の値上げなど耐え難い「痛み」をおしつけながら、自分たちは医療費や保険料から献金という甘い汁を吸って恥じない――この態度はとうてい国民の理解を得られるものではありません。

 わが党は、企業・団体献金の全面禁止を強く求めていますが、わけても国民の保険料などを原資とする企業・団体からの献金はすみやかに中止することを要求するものであります。

 以上、二つの点について、小泉首相の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。


志位委員長への首相答弁

 衆院本会議(二日)での日本共産党の志位和夫委員長にたいする小泉首相の答弁(要旨)は次のとおりです。

 【災害対策について】 防災は国民の生命、身体、財産の安全に直接かかわる行政の基本的責任の一つであって、政府、地方自治体、地域、ボランティア団体などが一体となって、防災対策をいっそう推進してまいりたいと考える。

 【自然災害の被害の補償について】先の通常国会の被災者生活再建支援法の改正によって、住宅の再建等を支援する居住安定支援制度を創設し、解体撤去費やローン利子など、被災者が住宅を再建、補修する際に現実に負担する経費を幅広く支援の対象とした。この制度を活用した被災者の生活再建支援に、最大限努力してまいる。

 なお個人の住宅本体にたいする公費での支援についてはさまざまな議論があり、今後さらに議論を深めていく必要があると考えている。

 【改悪年金法の白紙撤回について】先の国会で成立した改正年金法の内容を国民にいっそう説明するなど、その施行に向けた準備をすすめることとしたい。

 国会審議においては、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的な見直しをおこなうべきとの議論があった。このため政府として、社会保障の在り方に関する懇談会を設置し、七月三十日に第一回の会合をおこなったところである。今後ともこのような議論を通じ、国民の理解が得られる年金制度となるよう努力していく。

 【消費税について】少子高齢化が進展するなか、あらゆる世代が広く、公平に負担を分かち合い、社会保障等の公的サービスを安定的に支えるため重要な税であると考えている。今後とも消費税について、積極的な議論は、私も歓迎するところだ。社会保障の在り方に関する懇談会においても、年金、医療、介護などの社会保障制度全般について、税、保険料などの負担と給付のあり方などを幅広く検討していただくなかで、消費税のあり方についても十分に議論していただきたいと考えている。

 【日米同盟について】わが国は世界の問題を世界の国ぐにと協調しながら解決していく原動力としての、世界の中の日米同盟をいっそう強化する方針だ。そのためには、これまで同様、あらゆるレベルで率直かつ緊密に政策協議を行っていく。アメリカいいなりとの指摘はあたらない。

 【集団的自衛権の行使と改憲について】憲法解釈の変更によって、集団的自衛権を認めるべきだとの意見があることも私は承知している。私としては、便宜的な解釈の変更によるものではなく、今後、正面から憲法改正を議論することにより解決をはかろうとするのが筋であろうと考えている。

 なお、イラクにおける米英の武力行使については、国連決議に基づくものとして理解しており、これが国連憲章を踏み破った無法な侵略戦争であるとの指摘はあたらないと考える。

 【日歯連からの政治献金について】日歯連の政治献金にかかわる疑惑については、現在、捜査当局において一連の事件を捜査中であり、その状況を見守りたいと思っている。いずれにせよ、政治に対する国民の信頼は改革の原点であり、国民の信頼を得ることができるよう、政治資金のあり方について、政治にたずさわる者一人ひとりが襟を正して対応していかなくてはならないと考える。

 【国民の保険料などを原資とする企業、団体からの献金中止について】企業・団体献金は、民主主義のコストとしての政治資金の調達方法の一つであり、政治団体が一定の規制のもとで、かつ透明性が担保された形で受け取ることは、必ずしも悪であるとは私は思っていない。