2004年7月4日(日)「しんぶん赤旗」

党首討論

何が問われ、何が明らかになったのか


 公示直前から六回にわたっておこなわれた参院選での党首討論。年金・消費税、景気・雇用、イラク、憲法の熱い焦点で、なにが問われ、なにが明らかになったのか――。


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党首討論で発言する日本共産党の志位委員長(右)と小泉首相(2日放映の日本テレビから)

年 金

安心の制度は税の使い方・集め方にメスいれてこそ

 年金問題で問われたのは、国民の七―八割が反対する年金改悪法の強行で失われた国民の信頼を取り戻し、安心できる制度をどうつくるかでした。

 ところが、自民、公明両党は「だれがやっても給付は減らし、保険料は上げざるをえない」(小泉純一郎首相)「改革をしようとしたら、給付を抑制して、負担を増やさざるを得ない」(公明党・神崎武法代表)と開き直るだけ。

 民主党は改悪法の「白紙撤回」をいうものの、負担増・給付減では自公と同じで、違うのは負担の方式だけです。岡田克也代表は「財政の効率化とかムダ遣いをやめることも大事だが、それだけでは足りない」とし、消費税増税を主張。自民は「右のポケット(=保険料)」、民主は「左のポケット(=消費税)」という違いだけです。

 これにたいし、日本共産党の志位和夫委員長は「改悪法はご破算にしてやり直すべきだ」と主張するとともに、予算の主役に社会保障をすえるなど税金の使い方にメスをいれる改革を提起。税金の集め方でも、「ヨーロッパの水準の五割から八割に下がった大企業の税と社会保険料の負担を元に戻す方向で応分の負担を求める」と主張。年金制度を貧しくしている「経済のゆがみ」を土台から立て直し、国民だれもが月五万円の「最低保障年金」を受け取れる制度を提案しました。

消費税

弱者に重くのしかかる増税許されない

 自民・公明が二〇〇七年度から消費税増税を狙い、民主も年金財源として消費税3%を上乗せし二〇〇七年度に実現をめざすなか、弱い人にもっともしわ寄せがいく消費税増税を許すのかどうかが問われました。

 増税論議の先頭にたったのは民主党です。岡田氏が「消費税を年金の財源として使うかどうか」と与党に迫ると、小泉首相は「年金だけの消費税を導入すると、医療保険も介護保険も消費税という議論になってくる」といっそうの増税路線を示唆。公明党の神崎代表も「社会保障全体を考えると、消費税の引き上げが避けられない」と同調しました。

 社民党の福島瑞穂党首は「小さな政府で消費税、消費税といわれても納得いかない」といいつつ、新聞インタビューでは「将来、考慮の余地はある」(「読売」三日付)と発言。阿部知子政審会長は消費税の上げ幅を「3%ぐらいだろう」とのべています。

 志位氏は「(自公と民主が)二〇〇七年度に消費税の増税に合流していく」動きを告発。「社会保障は立場の弱い人を支える制度であって、立場の弱い人に重くのしかかる消費税増税には反対」ときっぱりのべました。

景気・暮らし

本物の景気回復は家計と中小企業の応援で

 景気と暮らしをめぐって自民・公明は、「不良債権の早期処理」をはじめ「構造改革」路線をあげて、「改革の芽は出てきた」(小泉首相)「構造改革は着実に進んでいる」(公明・神崎氏)と発言。小泉首相は「大手がよくなれば中小もよくなる」と大企業の“おこぼれ”で経済がよくなる考えを示しました。

 志位氏は「芽が出た」のは一部大企業だけで、小泉内閣の三年間で中小企業への融資が五十兆円も減り、サラリーマン世帯は六年間で平均所得が六十八万円も減っていることをあげて、「中小企業と家計を支える政治でないと景気はよくならない」と指摘。社会保障の切り捨てなど国民負担増をやめて家計を応援すること、中小企業を金融と経営の両面から支えることを主張しました。

 民主党の岡田氏は「(改革の)マイナスを手当てするのが政治だ」とのべ、「構造改革」路線への批判はなく、「不良債権処理は遅すぎた。もっと迅速に」と速度を競い合う姿勢を示しました。

雇 用

リストラ支援やめ長時間労働・サービス残業ただせ

 雇用問題をめぐって与党は「小泉改革で失業者が増えるといわれたが減ってきた」(小泉首相)とのべる一方で、フリーターの増加など深刻な青年の就職難にたいし「若者に職に早く就くことが大事だという認識を持ってもらうか」とのべ、若者に責任を転嫁する発言をしました。

 志位氏は、政府がリストラを支援するもとで正社員が四百万人減らされてパートや派遣などの不安定雇用に置き換えられていることを指摘。フリーター増加もこうした政治のゆがみに原因があるとのべ、大企業のリストラや不安定雇用の拡大に歯止めをかけ、長時間労働や「サービス残業」をただして安定した雇用を増やすことや、「同一労働・同一賃金」など均等待遇のルールをつくることなどを提案しました。

 民主党の岡田氏は、不安定雇用の増加について「悪いとかいうつもりはありません」と容認しました。「雇用の構造改革」の名で小泉内閣がすすめる「雇用破壊」とたたかえない姿勢です。

イラク

多国籍軍参加は憲法違反、自衛隊撤退を

 憲法よりもブッシュ米大統領への約束を最優先し、自・公政権が強行したイラク多国籍軍への自衛隊参加――。志位氏は、政府がこれまで「武力行使をともなう多国籍軍に自衛隊が参加することは憲法上許されない」としてきたことにも反すると追及。多国籍軍参加は、米軍によるイラク住民の無差別虐殺など「無法行為、残虐行為の共犯者になることを意味する」と批判し、自衛隊のすみやかな撤退を求めました。

 小泉首相はまともな説明もできず、「(自衛隊の活動は)いままでの活動と変わらないのに、なぜ、問題があるのか」と開き直るだけ。神崎氏も「問題はまったくない」と繰り返しました。

 岡田氏は、イラクからの自衛隊撤退を求めたものの、条件が整えば、「自衛隊を送ることについてかならずノーというわけではない」と表明。与党側からも「岡田さんは昨年、イラクに暫定政府ができれば多国籍軍参加も検討するといっていた」と矛盾をつかれました。

憲 法

「集団的侵略」許さず、9条を国づくりに

 党首討論でも、憲法が大問題になっています。

 首相は「アメリカが日本を守るために一緒にたたかっているのに、米軍と共同行動できない、集団的自衛権を行使できない。これはおかしいじゃないか」とのべ、憲法改定で集団的自衛権を憲法に明記すべきだとの考えを表明しました。

 志位氏は、これまで「集団的自衛権」の名でおこなわれてきた戦争が、米国のベトナム侵略や旧ソ連のアフガン侵略だったことを強調。さらに米国が、イラク戦争で発動した先制攻撃戦略をとっていることを指摘し、「いまアメリカと一緒に戦争をやるとなったら、『集団的自衛』どころか、『集団的侵略』をやる国になってしまう」と批判しました。

 憲法九条は世界でも注目される先駆的な条項で、「これを守りぬくために、本当に国民的な共同を強めて力をつくしたい」と表明しました。

 岡田氏は「(九条の)文言を変えることになると思う。もう少し明確にした方がいい」と九条改憲を表明。神崎氏も「(党内では)国際貢献をもっと積極的にできるようにしてはどうかという議論も出ている」とのべました。

 福島氏は「憲法九条改悪を許さない」と主張しています。しかし、村山内閣時代の「自衛隊合憲」「安保容認」の方針は、いまだに見直していません。