2004年7月1日(木)「しんぶん赤旗」

年金改革、財源問題

「きわめてすっきり」と森永さん(経済アナリスト)

志位委員長ラジオ番組に電話出演


 日本共産党の志位和夫委員長は三十日朝、ラジオ局のニッポン放送に電話出演。参院選の手ごたえ、年金問題などについて経済アナリストの森永卓郎氏らの質問に答えました。その大要を紹介します。


 森永氏 志位さん、おはようございます。

 志位委員長 おはようございます。志位和夫です。

 森永 全国遊説されていて、今の段階で手応えはいかがですか。

 志位 たいへん強いものがあります。昨年の総選挙は率直に言いまして、「二大政党制」というキャンペーンがずいぶんやられまして、ずいぶん苦労したものでしたけれど、あの総選挙から半年たちまして、どうも「二大政党」では政治はよくならないな、という声がずっと広がってきて、本当に政治を変える党は日本共産党だ、という期待が広がりつつあるのを感じます。

最低保障年金の財源は?

 報道部・遠藤竜也デスク 本題に入るんですけれども、今回の選挙、やはり多国籍軍の話と、なんといっても年金の問題が争点の柱になっています。共産党の主張の場合、月額五万円を支給するという最低保障年金制度があるんですよね。これは全額国の負担ということなんですが、お金の捻出(ねんしゅつ)の仕方をうかがいたい。

 志位 私たちは、いまの政治を土台から変える改革が必要だということを訴えているんです。

 一つは税金の使い方の改革なんです。これはヨーロッパに比べると、とってもいまゆがんだ状態にあることがわかります。ヨーロッパに行きますと、社会保障に使う税金が、公共事業の何倍というのが当たり前です。たとえばフランスでは三倍、ドイツでは五倍と、こっちのほうが主役なんですね。ところが日本では、公共事業に国と地方と公団などで年間四十兆円、社会保障に二十五兆円と、逆の使い方になってるんですね。ですから、ここは本当に、社会保障を予算の主役にすえる大きな改革をやろうじゃないかというのが一つなんです。

 森永 ようするに無駄な公共事業を削れってことですね。

 志位 ええ、それが一つです。同時にもう一つ、それだけで高齢化を支えられるかというと、やはり新しい負担がどうしても必要になってくるわけで、その負担をどこに求めるかが問題のもう一つの大きな焦点だと思うんですね。私たちは、消費税に求めるのは絶対反対です。

 私たちの考えは、大企業が払っている税金がいまどうなっているか、ここに目を向ける必要があるということです。私が調べて驚いたのは、十六年前と比べて、大企業が払う法人税がうんと減っている。十六年前には年間二十八兆円あったんですよ。それがいま十五兆円なんです。

 つまり、この間、税率を引き下げてきたために、どんどん減ってですね、半分ぐらいになっちゃった。いまの日本の大企業の税と社会保険料の負担の水準というのは、ヨーロッパに比べて、だいたい五割から七、八割だというところまで減っちゃった。ですから、これはヨーロッパ並みの負担に、徐々に戻してゆこうということで、歳入のほうもきちんと確保する手だてをとる。

 この二つの大きな土台からの改革をやれば、国民の新たな負担なしに安心できる制度をつくることができる。日本はそれだけの経済の力を持っている。そういうふうに考えています。

年金の給付はどうなるのか?

  森永 年金給付について最低保障年金を、当面五万円とおっしゃっています。これを導入した場合、たとえば今まで国民年金の保険料を払ってきた人たち、これはどうするお考えですか。

 志位 最低保障年金というのは、これはすべての国民に五万円を国庫で保障するわけで、これはもう例外なく五万円なんですね。

 国民年金の場合には、それに上乗せして、たとえばいままで五万円給付されていた方は、その半分の二万五千円上積みする。ですから七万五千円になるというような仕掛けなんです。ですからだいたい国民年金の層でいいますと、平均して二万から三万円の上積みができる。いまの国民年金の水準は非常に低い水準で、月額だいたい平均四万六千円ぐらいの、本当に低い、とても生きていける水準ではないんですね。ですからそれをせめて七万、八万というぐらいの水準は、どんな方であっても保障できるようにまずしようじゃないか、と。

 厚生年金のほうも最低保障ができますと充実する。女性を中心にまだ月額十万円以下って方もすごく多いですよね。厚生年金の場合でもそうです。そういう方々の年金も上積みになります。年金給付されている方の全体の八割は底上げになる、減る人は一人もいない、という設計なんです。

大金持ちの税金はこれでいいのか?

  森永 税源の問題に戻ります。志位委員長がさきほど大企業から税金をとるっておっしゃっていた。実はこれ私の個人的な提案でラジオでも申し上げたんですが、所得税の最高税率っていうのは一九八六年に70%だったんですね。それが37%ということで、ほぼ半分になっている。先進国と比べると、日本の所得税の最高税率が一番低いわけです。だから大金持ちは税金払ってないんです。

 志位 ええ、その点も非常に大事だと思います。私たちの政策では、高額所得者、大資産家などの方々の所得税も下げ過ぎだと思っています。そういう方々にも応分の負担を求めるという方策を示しています。

 ですから法人税の問題とあわせて、所得税も累進を強めるということによって、全体でだいたい八兆円ぐらいの歳入が確保できる、と。歳出のほうはさっきの無駄遣いをただして十兆円ぐらいのお金が国と地方で出てくる。あわせて十八兆円ぐらいのお金はいまの(経済の)力でも出せるんですね。

 もちろん十八兆円を全部年金にあてるわけじゃないんですが、借金財政もただしながら、社会保障を充実させる道が開けるし、最低保障年金制度をつくる財源もまかなえるという考えなんです。

日本からいなくなってしまうのでは?

  森永 お話はよくわかるんですけど、こういう主張をすると必ず反対する政党が共通して「そんな大企業とかお金持ちを痛めつけるような政策をとると、みんな日本から有能な人が出ていってしまうので日本経済はガタガタになってしまうぞ」と反論してくる。どうお答えになりますか。

 志位 いま大企業にアンケートとって海外に進出する理由は何かと聞いても、税金の問題をあげる企業はあまりないですね。実際、たとえばトヨタがフランスに子会社を出していますでしょ。フランスの場合、大企業の払っている税と社会保険料の水準は日本のちょうど倍ですよ。そこへもちゃんと子会社を出して、現地では日本よりずっと高い負担をしながら、商売をやっているわけですね。ですから、外国で負担できて日本でできない理由はないと、私は思います。

 森永 それは個人についても同じですか。個人の税率を高めたら出ていっちゃうぞということにはならない、と。

 志位 私は所得税が高くなったから日本を出ていこうという人はいないと思いますね。やはり別の問題だと思います。

 森永 はいわかりました。志位委員長、ありがとうございました。

 志位 ありがとうございます。

 森永 きわめてすっきりした。

 遠藤 そうですね、共産党というと多国籍軍反対という意見が非常に多くて、その部分だけクローズアップされがちなんですけれども、逆にこうやって年金のことについて聞けるっていうのはさすが森永さん。

 森永 きわめてすっきりした議論ですけど、私は、大金持ちが出ていっちゃうというなら出ていけっていうと思いますけど。(笑い)