2004年6月27日(日)「しんぶん赤旗」

本物の改革の党がのびてこそ、
暮らしと平和を守る力に

TBS党首討論会 志位委員長の発言(大要


 二十五日深夜に放映された「NEWS(ニュース)23」の党首討論会での日本共産党の志位和夫委員長の発言(大要)を紹介します。討論会には志位氏のほか、自民・小泉純一郎総裁、民主・岡田克也代表、公明・神崎武法代表、社民・福島瑞穂党首が出席しました。


何が問われるか

本物の改革すすめる立場にたってこそ、国民の願いがかなえられる 

 司会の筑紫哲也氏が日本の進路を左右するこの大事な選挙で「何が問われる選挙なのか、書いていただく」とパネルを渡しました。志位氏は「ホンモノの改革」と掲げ、次のようにのべました。

 志位 本物の改革が問われる選挙だと思っております。くらしの問題では年金をどうするのか、あるいは消費税の増税の問題、人間らしい雇用をどう増やすのかがあります。私たちは(問題の)根っこには「財界が主役」、この政治のゆがみがあると思っております。それからイラクへの派兵、憲法の問題、根っこには「アメリカいいなりの政治」がある。この二つのゆがみをほんとうに大もとから変える本物の改革、この立場に立ってこそ国民のみなさんの願いがかなえられる。このことを訴えてまいります。

「政治不信」

国民にきちんと説明する責任はたし、真剣な議論を

 次に「低投票率になるんではないかといい出され、政治にとって危機ではないかと思う」(筑紫氏)という指摘を受けて各氏が発言。志位氏は国民の政治不信に言及しました。

 志位 国民に対して、どんな政治をするにしても、きちんと説明をする。この責任を果たし、誠実に事実を国民に明らかにする政治が求められていると思います。

 年金問題でも、じつは参議院の段階になって、給付と負担の問題でずいぶん政府のいっていることが違っていたということが明らかになったり、出生率(の数字)が後から出てきたり、こういう問題が不信を招く。

 イラクの問題でも憲法との関係を説明しないで事を進めてしまう。そういうやり方が不信を招く。

 今度の選挙は、各政党が、それぞれの立場の違いはあっても、国民に堂々と自分たちの主張を示して、真剣な議論をたたかわせ、国民にみずからの説明責任を果たしながら、政治の信頼をとりもどしていく、そういう選挙にしていくべきだと思います。

日本経済

人間らしく働ける雇用、中小企業を支える政治を

 続いて経済、年金、イラク支援、憲法の四つをとりあげ、討論。小泉氏が「ようやくこの改革の芽が出てきた。いまの明るい兆しを本物にしていきたい」とのべたのに志位氏は反論しました。

 志位 景気の回復をいわれるのですが、国民には実感がない。

 たとえば総理は雇用がだいぶよくなってきたとおっしゃるが、人間らしく働ける雇用は土台から崩されつつあると思います。総理、ハローワークは、いま五時から人が急増するのをご存じでしょうか。どういうことかというと、有期雇用の方々、働きが終わってハローワークにきて次の仕事を探さなければならない。

 つまりこの五年間で、だいたい正社員が四百万人減りました。そしてパート、アルバイト、あるいは派遣労働など、非常に不安定な働き方をされている方が三百七十万人増えた。これが実態です。人間らしく働く条件がなくなっている。人間がもののように扱われているという状態で、まともな、ほんとうの意味で持続可能な経済というのはできないと思います。

 もう一点、中小企業のことをいわれましたが、「不良債権の処理」ということで大号令をかけた結果、倒産が減ったというが、それでも毎月一千件以上ですよ。中小企業にたいする金融の貸し出しは、小泉さんの三年間で二百三十兆円から百八十兆円に五十兆円減った。四分の一の金融を引き揚げました。貸しはがし、貸し渋り、すごいですよ。実態をご存じない。

 雇用と中小企業という日本経済をささえているいちばんのところをもっと大切にする観点がなかったら経済はよくなりません。

年金改革

“二つの改革”が必要、この立場がないから“負担増・給付減やむなし”になる 

 年金のテーマに移り、筑紫氏は神崎氏に「年金問題は自分たちがイニシアチブをとって“百年安心”とおっしゃいました。しかし国民の信頼がこれだけないということの責任、ギャップをどうお感じになりますか」と質問。神崎氏は「ご批判は謙虚に受けとめたい」といいつつ、年金財政をこのまま放置すると来年度四兆七千億円の赤字がでる、また六十五歳に受け取るときの年金の金額がその後比率が下がるといわれるが、物価、賃金も変動する、そうすれば必然的に七十五歳、八十五歳になった場合にパーセントが変わることはありうる、などと弁解。厚生年金給付は現役世代の平均収入の“50%を確保”すると国民を偽ったことを隠そうとしました。志位氏は次のようにきびしく指摘しました。

 志位 いまの話はいただけない。新しいごまかしをいうのですね。(神崎 どういうことですか)

 50%は(年金を)受け取るときだといいましたが、(法案審議の)最初はそんなこと一言もいってないですよ。それをいいだしたのは最後に(参議院で)いいだしたことなんです。

 もしこれやらなかったら四兆七千億の赤字が出て大変だと。じゃあ(政府の)「改革」やった場合はどうなのか。あなた方の「改革」をやった場合でも政府の試算で三兆八千億の赤字になるんです。あたかもそれを、もう四兆七千億円だけいって、来年から大変な赤字が出るというのもウソです。それを押しつけて、この改悪案をのませるというのは本当によくないやり方だと思います。

 さらに本当の「年金改革」について発言。

 志位 与党の方々の議論を聞いていますと、これから高齢化がすすむんだから、だれがやったって負担は上げざるをえない、給付は下げざるをえないと、結局こういうことですが、それをいう前に、本当の改革をやっているのかという問題が問われると思う。

 たとえば、税金の使い方の改革をやっているのか。ヨーロッパにいきますと、社会保障に使う税金が公共事業よりはるかに多い。これは当たり前なんです。

 日本の場合、年間、国と地方で四十兆円、公共事業に使っている。社会保障二十五兆円。私は「逆立ち」しているといっていますが、こういうやり方を変えて、本当に予算の主役に社会保障をすえる。これをきちんとやれば、歳出の面からもまず財源はつくれる。

 そしてもう一つ、高齢化に進んだときに新たな負担が出てきます。そのときにだれが負担するか。すぐ消費税という話になるのですけれども、この十六年間で法人税の税収が二十八兆円から十五兆円に減っている。これは、不景気もありますが、法人税をどんどんどんどん下げてきた結果ですよ。法人税を下げてしまったために、日本の大企業の税と社会保険料の負担というのは、ヨーロッパの水準の五割から八割まで下がった。ここまで下がった負担は、元に戻す方向で(大企業に)応分の負担を求めるべきではないか。

 これにたいし岡田氏が「大企業といわれましたが、企業の社会保障の負担を増やしていきますと雇用の劣化が起こる」とのべました。志位氏はすぐに反論しました。

 志位 企業にもっと負担を求めたら雇用が劣化するといいますが、私は、そのときにきちんと雇用を守るルールをあわせてつくるべきだ。それを雇用を守るルールを壊して、どんどん雇用の規制緩和をしてきたのは、民主党や自民党ではないですか。

多国籍軍

憲法のなし崩し的破壊、米軍の残虐行為の共犯者に

 このあと自衛隊のイラク多国籍軍に加わることの是非を議論。志位氏は問題の重大性を強調し、小泉氏と激しいやりとりとなりました。

 志位 この問題に国民のみなさんがなぜ不安を抱いているかといいますと、憲法がなしくずし的にどんどん崩されていくんじゃないかという不安だと思います。憲法にかかわる大問題が問われている。これまで政府は、「武力行使を伴う多国籍軍への参加は憲法上許されない」といってきたわけですね。今度初めて「参加」「一員となる」と明言された。

 これ聞きますと、「いや、指揮下に入らない」「その担保もあります」「米英政府は了解してます」とおっしゃいました。私は「了解あるんだったら、文書出してほしい」と。出てきたのはこの政府の文書です。この文書がひどいもんですよ。つまり、相手側が「政府高官」と書いてあるだけで、米国側の誰とどういう「了解」をしたのかはっきりしない。相手の名前も書いてない。相手の名前が書いてない文書を出してきて、これで「了解があるから指揮下に入らない。だから憲法上大丈夫です。もう担保があります」。これではだれも信用できませんよ。

 私は、一点だけ、この場ではっきり答えてほしい問題がある。ここには「米政府高官と了解した」とありますけれども、総理は、この自衛隊の指揮権という大問題について、了解を与えた米国側の代表は誰だかご存じなのか。

 小泉 私は、大統領とも話しているし、政府間交渉ですから。自明の議論です。日本の指揮下に入ります。日本の独自の判断で活動する。日本は武力行使はしない。人道支援、復興支援に限る。

 志位 だからそのことの保証を与えた米国の政府高官というのは、いったい誰なのか、あなたは知っているのかということを聞いている。

 小泉 公的な政府間交渉で出しているわけですから。

 志位 知っているかと聞いている。

 小泉 大統領は知っていますよ。

 志位 総理がその米国の高官の名前を知っているんですかと聞いているんですよ。

 小泉 それは政府間交渉ですから。それは部下にまかせている。

 志位 知っているんですか。なぜ、答えないのか。

 小泉 政府間交渉だから、名前を個別に出すもんじゃないですよ。

 志位 これは非常に大事な問題なんですよ。「了解」を与えたのが「米国高官」と書いてある。高官の名前が出せないわけですから、名無しの権兵衛との「了解」になっちゃうんじゃないですか。

 小泉 わかりきっているんですから。どの国もその国にふさわしい活動ができるんですよ。

 志位 なぜ相手の名前がいえないのですか。

 小泉 政府間交渉ですから。

 志位 政府間交渉だったら、藤山・マッカーサー口頭了解だって藤山大臣とマッカーサー大使、二人の名前があって初めて了解になるんですよ。

 小泉 日本はもうイラク特措法にもとづいて自衛隊をイラクに派遣しているわけで…。

 志位 これはきちんと答えてもらわなければ困る。知っているんですか、知らないんですか。なぜこんなこと答えられないのか。これは大問題ですよ。

 このあと岡田氏が「イラクの復興支援という言い方は違う。ファルージャのたたかい、これアメリカ軍がたたかっていますよ」と指摘。小泉氏は「イラクの政府が戦うというんだから、テロリストの温床にしてはいけない、と。テロの拠点にしたいというのをイラク人が防いでいる」と米軍のファルージャ攻撃を容認しました。志位氏は批判しました。

 志位 いまの総理の見解は、ファルージャのあの虐殺は当然だということですか。七百人の女性と子どもとお年寄りを虐殺した。世界中から非難された。このファルージャの戦争は「テロとのたたかい」で「当たり前だ」と。これ、米軍の作戦を支持するんですか。

 小泉 虐殺とか虐待とかは別です。

 志位 これからも米軍は、ああいう作戦をやめないといっていますよ。これは重大な問題です。

 さらに小泉氏は「米軍に協力する。ただ、指揮は自衛隊は日本の指揮下だ」などと表明。志位氏は批判を続けました。

 志位 ファルージャについての虐殺を、事実上肯定するようなことをおっしゃった。そういう立場で、多国籍軍に参加し、一員になるということになりましたら、ああいう虐殺の本当の共犯者になりますよ。これは、イラクの国全体を敵に回すことになりますよ。

 アラブ連盟のムーサ事務局長はインタビューで何て答えているか。「自衛隊は占領軍として、混乱の原因になっているだけだ、帰ってほしい」。これがアラブの声だ。

憲法改定

アメリカとともに「戦争をする国」をつくることが目的

 このあと筑紫氏が「憲法九条を変えなきゃいけないとお考えか」とのべ各氏が発言。志位氏は次のようにのべました。

 志位 九条を変える目的がどこにあるのかが、肝心な点だと思う。自衛隊の位置がはっきりしないから、書き加えるんだという、簡単な話じゃないと思います。

 これまで自民党が、いろんな自衛隊を海外に出す法律をつくってきました。しかし、九条があるおかげで海外での戦争はできない、これが建前でした。イラクの特措法だって、「戦争に行きません、武力行使はしません」とさんざん、小泉さんは言われた。これは、九条があるからですよ。

 九条を取り外してしまったら、特に、後段だって取り外してしまったら、日本国憲法の一番の特徴がなくなりますから、それこそ、海外での武力行使が自由にできるようになる。アメリカと一緒に戦争ができるような国にしていく。これが、一番の問題だと思います。

 最後に「有権者にこれだけは約束する」と各党党首が表明しました。

 志位 消費税の増税、憲法九条の改定、これは私たちの力を尽くして、そして国民のみなさんとの協力を広げて、ストップさせます。