2003年11月3日(月)「しんぶん赤旗」

テレビ党首討論

志位委員長が論戦


 日本共産党の志位和夫委員長は二日、フジテレビ系「報道2001」、NHK「日曜討論」に相次いで出席し、各党党首と、イラク問題や雇用・年金問題、憲法問題などについて討論しました。出席者は、志位氏のほかに、自民党・小泉純一郎首相、民主党・菅直人代表、公明党・神崎武法代表、社民党・土井たか子党首、保守新党・熊谷弘代表でした。


志位 「これ以上の外国軍いらない」が世界の大勢

自・公 「ひるんではならない」と派兵姿勢

イラク問題

 「報道2001」では、イラク問題で小泉首相が「(日本が)ひるんだら、もっとイラクは混乱する」と派兵を強行する姿勢を表明。神崎氏は「ひるまずテロとのたたかいをやらなければいけない」と同調しました。

 志位氏は、国連組織や赤十字に対するテロは許されないとのべるとともに、現在の事態の根底には、イラク国民の中に米英占領軍に対する怒りと憎しみが深く広がっていると指摘。「いま国際社会がやるべきは、米英軍主導の占領支配から、国連中心の復興支援に枠組みを移す。このもとで、日本は非軍事の人道支援をやるべきであって、憲法をじゅうりんした形での派兵は中止すべきだ」と強調しました。

 “「戦闘地域」には派兵しない”とごまかす小泉首相に対し、“米軍がいるかぎり、そこが攻撃対象になる”というサンチェス米駐留軍司令官の言葉を紹介。「米軍がいるところが『戦闘地域』なのだから、そこに自衛隊がいけば、そこが『戦闘地域』になる。これが真実だ」と批判しました。

 また、小泉首相が「イラク人の中では早く自衛隊がきてくれれば歓迎するという声も多くきかれる」などとのべたことに対し、志位氏は、アラブ連盟のムーサ事務局長が“もう外国軍はいらない”とのべたことを指摘。仏独中ロ印各国をはじめ、イスラム諸国機構もふくめ、「軍隊を出さない」というのが世界の大勢だと反論しました。

 「いま米英軍が撤退したら困るというのは、国際社会の声だ」という小泉首相に、志位氏は「これ以上の軍隊はいらないというのが世界の声であり、現地の声だ」「(われわれは)国連中心の枠組みに移せといっている」と反論しました。

【関連】


志位 家計消費を活発にするためにも社会保障を主役に

首相 「即効薬、万能薬ない」

景気・雇用問題

 景気・雇用・中小企業問題について、小泉首相は「(景気回復の)即効薬はない。万能薬もない」とのべ、痛みを伴うこれまでの小泉「構造改革」を進めていくとのべました。菅氏が「景気回復の起爆剤になる」と強調したのは、新たに二兆円の税金投入となる高速道路料金の無料化でした。

 これに対して、志位氏は、「経済の力の六割は家計消費ですから、ここを活発にすることが一番のカギだ」として、(1)社会保障を予算の主役にすえる(2)長時間労働、サービス残業を一掃して安定した雇用をふやす(3)「不良債権早期処理」のかけ声でやられている貸し渋り・貸しはがし、金利引き上げをただし、中小企業への金融支援を行う−ことをあげました。

 このなかで、日本は国と地方で社会保障にあてる予算は29%なのに、欧米では四十数%であり、税金のつかい道をかえれば、医療、介護、年金の安心した制度が築けると強調。また、第一生命経済研究所の試算では、サービス残業をなくしただけで百六十万人の雇用が増え、国内総生産(GDP)を2・5%押し上げることを紹介しました。

 また、小泉首相が三百万人雇用創出を、神崎氏が五百万人雇用創出計画をアピールしたのにたいし、志位氏は「安定した雇用という点が大事だ」とのべ、若者の雇用問題にかかわって、中小企業が六年間で若者の正社員を三万人増やしているのに、大企業では百八万人も減らし、パート、アルバイトにおきかえていると告発。「使い捨て労働」のようなやり方を政治の力で改め、安定した雇用を増やすことが大切だとのべました。

 また、中小企業問題では、小泉内閣の不良債権処理のなかで貸し渋り・貸しはがしが横行し、二年半で中小企業に対する貸出残高が四十七兆円も減少したことを指摘。「中小企業への金融締め付けを改めなければ本当の意味で日本の産業は成長しない」とのべました。


志位 国際社会全体の課題と位置づけるのがカギ

民主、公明 経済制裁を主張

拉致問題

 「報道2001」で、北朝鮮問題をめぐって、菅氏が「(北朝鮮を)テロ指定して、送金を停止する措置をとるとマニフェストに盛り込んだ」と経済制裁を主張したのにたいし、志位氏は、「経済制裁というのは現時点でとるべき手段ではない。六カ国協議が原則再開で合意になるなど、交渉が前にすすみ出そうとしている」と指摘しました。

 そのうえで志位氏は、「拉致問題を解決する上で一番カギになっているのは、日朝二国間問題にとどめず、国際社会全体がとりくむ課題と位置づけることだ」と強調。拉致問題をきちんと解決することが、ラングーン事件、大韓航空機事件など北朝鮮がおかしてきた国際的無法行為全体の清算につながり、北朝鮮が国際社会の仲間入りをする契機となりうるという理解を広げる重要性を力説しました。

 これにたいし小泉氏は「現時点で日本は経済制裁を考えていない」とのべましたが、神崎氏は、「経済制裁も辞さない強い姿勢を持つことが大事」とのべるなど、与党内の違いもでました。

 討論のなかで、拉致実行犯とされる北朝鮮工作員の釈放を要求する署名に応じたとして、社会党、社民連時代の菅氏、公明党などの態度が問われる一幕もありました。


志位 給付水準維持は「三つの改革」で可能

自民、公明、民主 給付減、負担増で一致

年金問題

 「日曜討論」では年金の問題が議論になり、民主党が追加マニフェストで将来の年金給付水準を現役世代の収入の50−55%、保険料負担を20%と発表したことで、自民、公明とともに将来の負担増、給付減で足並みをそろえました。

 志位氏は「給付水準は現行維持が私たちの目標です」として、当面とりくむ「三つの改革」((1)基礎年金への国庫負担を二分の一にただちに引き上げる(2)安定した雇用を増やし年金の支え手を増やす(3)百七十五兆円の積立金を計画的に活用する)を説明しました。また、将来的には国と事業主の負担により「最低保障年金制度」を創設するとのべ、「小泉さんは大企業の国際競争力をいうかもしれないが、ヨーロッパと比べ日本の大企業の税と社会保険料の負担率は五−八割だ。世間並みの負担を大企業に求めれば給付の充実も図れる」と主張しました。

 国庫負担引き上げに必要な二・七兆円の財源についても「道路特定財源は国費分だけでも四兆円ちかくあり、一般財源化すれば二兆円程度のお金をつくれる。公共事業費や軍事費にも切り込む」と説明。世論調査で「歳出削減で年金財源をつくるべき」が58%にのぼったことも紹介し、「国民には年金改悪を来年待ったなしで押しつけ、国庫負担引き上げは先送りでは不信を広げるばかりだ」と指摘しました。

 これに対し公明党の神崎代表は「行政経費のムダ遣いをなくすというのは安定的な財源ではない」と攻撃。司会から「所得税の定率減税、年金課税の見直しは一定以上の所得がある人には増税ですね」と問われ、「確かに増税になります」と認めました。

 小泉首相は「公共事業を毎年カットして景気回復できるのか。ますます景気を冷やして年金などに税金を使えというのでは大増税国家になる」などと発言。志位委員長は「ムダな道路に税金が使われ続ける自動装置がある国は他にない。そこにメスを入れなければ消費税を上げざるを得なくなる。これがあなた方の道だ」と批判しました。

 民主党の菅代表は、基礎年金部分に消費税をあてるにあたって「2%強の増になると試算している」ことを明らかにしました。