2003年6月12日(木)「しんぶん赤旗」

イラク戦争支持の根拠 首相答えられず

党首討論 志位委員長が追及


 十一日におこなわれた、日本共産党の志位和夫委員長の小泉純一郎首相に対する党首討論の大要は、次のとおりです。

志位 情報操作で、国民を欺き、戦争に導いたのではないか。
   大量破壊兵器をめぐって米英で責任追及の火の手があがっている

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志位委員長(右)の追及に、すりかえ答弁する小泉首相=11日、参院第1委員会室

 志位委員長 いま「イラク新法」なる新たな自衛隊派兵法が問題となっておりますが、日本共産党は、イラクへの復興支援はあくまで国連中心におこなわれるべきであって、無法な戦争にもとづく軍事占領をつづけている米英軍の支援のために自衛隊を派兵することは、イラク国民の意思にもとづくほんとうの復興にも逆行する、憲法も蹂躪(じゅうりん)する。わが党はこれに反対であるということを、まず表明しておきたいと思います。

 私が、今日質問したいのは、総理には、「イラク新法」をうんぬんする前に、国民に明らかにすべき重大問題があるということです。それは大量破壊兵器の問題です。

 バグダッドが陥落して二カ月になりますが、いまだに大量破壊兵器は発見されておりません。そのもとでいま米英両国では、ブッシュ大統領やブレア首相が、戦争突入のさいに繰り返しおこなった言明――「イラクは大量破壊兵器を保有している」という断言、断定、これには根拠がなかったのではないか、情報を不正に操作し、国民を欺いて戦争に導いたのではないか、という疑惑が広がり、議会でも追及の火の手があがっております。

 ここに持ってまいりましたが、米国の『タイム』誌では「大量消滅兵器」という皮肉な題名のついた特集もおこなわれています。

 (イラクの)核兵器開発の「根拠」とされた情報は、IAEA(国際原子力機関)に「お粗末な偽造文書」と否定されました。テロリストとの結びつきの「根拠」とされた情報は、大学院生の論文を借用してねつ造したものであることが判明しました。アメリカの国防情報局(DIA)が「化学兵器が存在する信頼できる十分な証拠はない」と、昨年の秋、報告していたことも明らかになりました。つぎつぎと根拠が崩れていく。

 私が、最近注目して読んだのは、ニクソン大統領時代に大統領法律顧問であったジョン・ディーン氏が、最近の論文で、この問題の本質は何なのかということを、鋭く提起していることです。

 それは、ブッシュ大統領が「イラクが大量破壊兵器を保有している」ことを「明快かつ断言的」にのべていたこと、ここに問題がある(ということです)。ディーンさんは、その事実を列挙しながら、こうのべています。

 「ウォーターゲート事件以後三十年で、これは私が見た初めての、ウォーターゲート事件が顔色なしとなる可能性をもつ政治スキャンダルだ。もし、ブッシュ大統領が意図的に、イラクを支配するための軍事行動を議会に承認させ、国民に支持させるために、情報を操作し、偽ってつたえたとすれば、それは醜悪きわまる不正行為だ。…合衆国憲法の大統領弾劾条項にいう『重罪』となるだろう」

志位 首相はいかなる具体的根拠にもとづいて、「イラクは大量破壊兵器を保有している」と断言したのか

首相 フセイン大統領が見つかっていないから、大統領は存在しなかったといえるか

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イラクの大量破壊兵器保有を断定していた小泉内閣メールマガジンの「らいおんはーと」(傍線は編集部)

 志位 これは、首相自身にも問われる重大問題です。総理もまた「イラクが大量破壊兵器を保有している」ということを、ディーン氏の言葉を借りていえば「明快かつ断言的」にのべ、それを戦争支持の最大の理由としたからであります。

 ここに持ってまいりましたが、「小泉内閣メールマガジン」、ここにもそのことがのべられています。総理に一部お渡ししたい(「メールマガジン」のコピーを渡す)。

 戦争開始一週間前、三月十三日付、「この問題は、…『全世界対大量破壊兵器を持っているイラク』の問題であることを忘れてはいけないと思います」。断定しております。つぎに三月二十日付、戦争が起こった当日ですが、「問題は、大量破壊兵器を保有するイラクの脅威に私たちがどう対峙(たいじ)するかです。…これが(戦争)支持の理由です」。戦争が起こって一週間後、三月二十七日付、「この問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないことにあります」。すべて「小泉純一郎です」と始まる、あなた自身が主語になった、首相自身の発言として、断言しているんですよ、(大量破壊兵器の)「保有」を。

 そこで、私はうかがいたい。いったい総理は、当時、いかなる具体的根拠にもとづいて、イラクが大量破壊兵器を「保有している」と断言したのでしょうか。端的にお答えください。

 小泉首相 これは、過去、(イラクは)化学兵器等を自国民に使ってまいりました。また、国連の査察等に対して、イラクは疑いを払しょくするような行動をしてこなかった。完全に破棄しましたという証拠を見せなかった。あるいは査察団が来ても追い返した。そういうことから見れば、ほとんど多くの国が、(イラクが)大量破壊兵器を保有している、化学生物兵器を保有しているということに対しての多くの危険性を抱いていた。

 現に、フセイン大統領はいまだに見つかっていないんですよ(場内爆笑、騒然)。生死も判明していない。フセイン大統領が見つかっていないから、イラクにフセイン大統領は存在しなかったということを言えますか。言えないでしょう。生死もまだ分かっていない。存在も分かっていない。

 大量破壊兵器も、私はいずれ見つかると思いますし、いまイラクの復興支援づくりに各国が協力しようとしています。私は今後、イラクの大量破壊兵器がどのようなものになっているか、注視していく必要があると思います。

志位 (大量破壊兵器保有の)疑惑があるということと、「保有している」と断定することとは違う

首相 (答弁不能に)

志位 アメリカの主張をうのみにして、おうむ返しにのべただけ。こんな首相に 「イラク新法」を語る資格はない

 志位 これは驚くべき答弁です。まさに答弁不能に陥っての詭弁(きべん)そのものです。私が聞いたのは、あなたが「(イラクが大量破壊兵器を)保有している」と断言した具体的根拠を聞いたんです。根拠を一つも言えないじゃないですか。

 過去持っていたということは事実です。しかしあなたがいったのは、現に持っているという断定をしたんですよ。その根拠がどこにあるのか私は聞いたんですよ。

 (イラクが)国連査察団の疑惑に答えていない(という)。疑惑はたしかにあります。疑惑があるということと、「保有している」と断定することは違うんですよ。

 ブリクス委員長が六月五日に国連査察団の報告を(国連安全保障理事会に)出しています。そこで何と言っているかといいますと、「これまでの査察団の査察によって証拠は見つかっていない」「このことは必ずしも、そのようなものが存在していないことを意味するものではない。しかし、行方不明だからという理由だけで、それが存在しているという結論に飛躍することは間違いだ」。

 あなたはその「飛躍」をやっているんですよ。私が聞いていることわかりますか(首相、首を横に振る)。あなたはですね、疑惑の段階の問題を、断定していったわけです。その根拠はどこにあるかと聞いているんです。もう一回聞きます。

 小泉首相 国連のたび重なる決議において、イラクは破棄したことを証明しろということを証明しなかった。疑惑はあるということを志位さんも言った。それでは今、志位さんもないという、全くないという、断定して言えるのか。(志位「そんなことは言っていない」)そうでしょう。だから私は、今までの疑惑があることを認めてその説明責任はイラクが果たさなければならない。

 志位 私は、疑惑があるということは言っているんです。しかし、疑惑ということと、(「保有している」という)断定ということは違う。その根拠を聞いたのに、あなたは答えられない。結局、アメリカの言っていることをうのみにして、おうむ返しにしただけじゃないですか。こんな総理に「イラク支援」をうんぬんする資格はないということを言って、私は質問を終わります。(拍手)


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