2003年4月24日(木)「しんぶん赤旗」

イラク大量破壊兵器問題

真実明らかにするには国連の査察が不可欠

党首討論 志位委員長が提起


  二十三日におこなわれた党首討論での、志位和夫委員長の質問はつぎのとおりです。


志位 復興支援は二つの原則で――無法な戦争を追認しない、国連主体で

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志位委員長と小泉首相との党首討論=23日、衆院第一委員室

 志位和夫委員長 私は、イラク問題の現状についての日本共産党の基本的立場をのべるとともに、小泉首相に質問します。

 米英軍が圧倒的な軍事力でフセイン政権を崩壊させたもとで、国際社会が、イラクの復興支援にどのような立場でのぞむのかが問われています。

 わが党は、二つの原則的立場をしっかり握って、とりくむべきだと考えております。

 第一に、イラクの復興支援にあたっては、米英両国による無法な戦争の追認はおこなわないということであります。

 米英が、軍事力で「勝利」をおさめたとしても、この戦争が無法な戦争だったこと、おびただしい人命を失わせた非人道的な戦争だったことには、いささかも変わりはありません。

 もしもこの無法な戦争を追認しますと、米国政府が公式にいま宣言している「先制攻撃戦略」、これを丸ごと追認することになり、ことはイラクにとどまらず、世界の平和ルールそのものが根底から損なわれてしまう。ですから、無法な戦争の追認をやってはならないということが第一です。

 第二に、イラクの復興支援の主体となるのは、国連をおいてほかにない。国際社会は、国連が復興支援の中心的役割を担うことを確認して、その枠組みのもとで、米英軍のすみやかな撤退をはかることが必要です。そうしてこそ、イラクの新しい政権を、イラク国民の意思を真に代表するものとすることができると考えます。

 いま米国が取り組んでいるような軍事占領組織をつくり、それをテコにして、米国いいなりの政権をつくろうという動きは、軍事力をもって外から自分に都合のよい政権をおしつける、新しい植民地主義ともいうべき、無法に無法を重ねるやり方であって、私は絶対に認めるわけにはいかない。

 日本政府が、この米軍の軍事占領組織に要員を派遣することが伝えられておりますが、これは国連憲章からも日本国憲法からも絶対に認めるわけにはいきません。国連中心の復興支援の枠組みを、一刻も早くつくることが必要です。

志位 大量破壊兵器の有無を検証できるのは国連査察団のみ――国際社会で声広がる

 志位 以上がわが党の基本的立場ですが、総理にただしたいのは、イラク戦争のそもそもの発端とされた大量破壊兵器の問題です。

 米英が戦争を起こすときに、最大の理由としたのは、「大量破壊兵器の武装解除」ということでした。

 総理も、戦争を支持する唯一の理由として、一カ月前の国会で、つぎのように言明されました。「フセイン政権が大量破壊兵器を保有している危険がある。この兵器がテロリストにわたったらたいへんなことになる。したがって大量破壊兵器を廃棄するという大義にたって行動している米国の戦争を支持する」。こうおっしゃいましたね。

 しかし、肝心要の大量破壊兵器は、現在にいたるも発見されておりません。これは事実であります。

 最近になって、米国のラムズフェルド国防長官は、「(大量破壊兵器について)何かを発見できるとは私自身も思っていない」、「発見は困難」だと言い出しました。米国当局が「困難」だと言い出した。

 こうした事情のもとで、国連による査察を再開させるべきだという声が、いま広がっています。

 国連査察団のブリクス委員長は、「国連安保理が決定すれば、いつでも復帰する用意ができている。二週間以内にイラクに戻れる」とのべるとともに、「たとえ米英軍が大量破壊兵器を見つけたといっても信頼性が問題となる。国連の査察チームでなければ信頼されない」と、国連による査察再開の重要性を訴えております。

 エルバラダイ事務局長も、国連査察団の活動再開を求め、「疑わしい物質が見つかったとしても、それを米国が独自に検査するだけでは不十分だ」として、大量破壊兵器の有無の検証ができるのは国連査察団のみだと訴えています。

 欧州連合(EU)のパッテン対外担当委員も、ロシアのプーチン大統領も、国連査察団の復帰を要求しております。

 総理にうかがいたいのですが、総理は一カ月前、国会でこうおっしゃった。「今日の国際社会において、大量破壊兵器の保有の有無は、うやむやにして放置しておけるような問題ではない」。もちろん、「うやむや」にできない問題です。真実を世界に明らかにし、問題の解決がはかられるべきです。

 そのためには、国連の査察団を復帰させ、査察を再開することが、不可欠だと考えますが、総理は当然、これは賛成されると思いますが、賛成かどうか、端的にお答えください。

首相 可能な状況になるなら査察団が入るのが望ましい

志位 米国は反対している。「望ましい」というなら米国にはっきりというべきだ

 小泉純一郎首相 基本的に、査察団が大量破壊兵器を捜査といいますか、見つけるような環境ができるようになることは重要だと思っています。当面、治安状況等困難でありまして、査察団もいまの状況で査察ということに対しては適切でないと思っていると思っています。しかるべき査察団が入っても、査察活動ができるような状況になれば、私は、査察団が入るのはのぞましい。当面においてはまだ、そのような状況にはないと思っております。

 志位 今日の未明に、国連安保理でこの問題についての非公開の協議がおこなわれ、そこでブリクス委員長は「求めがあれば、いつでも戻る」という立場を明りょうにしております。総理は今、(国連の)査察団によって査察がおこなわれることがのぞましいとおっしゃいましたね。

 そこで、うかがいます。米国は反対しているわけです。米国のグロスマン国務省次官は、「派遣できない」といっている。それからフライシャー大統領報道官、ホワイトハウスは、「これは不必要」だといっている。アメリカは反対しているんです。アメリカに、これはきちんと査察は必要だと、はっきりいうべきじゃないですか。どうですか。

 首相 状況が可能になれば、査察団が活動するのはのぞましい。しかし、いまの状況で、いまの治安状況が優先されるべき状況で、査察が有効に機能しない段階では、それは無理からぬことではないか。私は将来、査察を実施に移して大量破壊兵器廃棄に向けて、それぞれの国が協力するのは、私はのぞましいことだと思っています。

 志位 ブリクス委員長は、ただちに今戻る意思はあると言っているのに、これをはっきりいわない。アメリカが反対しているのに、その反対の立場は成り立たないとはいえない。それでは私は、大量破壊兵器の問題でまじめに真相を明らかにして解決するという立場ではないといわざるをえません。以上をのべまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)