2003年2月12日(水)「しんぶん赤旗」

CS放送朝日ニュースター

志位委員長語る

国民負担増、不良債権、イラク情勢について


 日本共産党の志位和夫委員長は、十一日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、経済問題、イラク情勢、いっせい地方選に向けた取り組みなどについて、質問に答えました。このなかから、経済問題の一部とイラク情勢についてのべた部分を紹介します。聞き手は、朝日新聞記者の峰久和哲氏でした。

4兆円負担増――経済の6割を支える家計を無視する暴論

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CS放送・朝日ニュースター「各党はいま」でインタビューにこたえる志位委員長(左)。聞き手は峰久和哲朝日新聞記者

 峰久 (予算委員会の総括質問で)志位さんが非常に強調しておられたのは、これから国民負担がどんどん増えてくるという問題ですね。社会保障しかり、税金しかり。この問題について、政府側の答弁ぶり、どのように評価されますか。

 志位 私は社会保障と、庶民増税とあわせて四・四兆円という規模での負担増が計画されていると告発したんです。

 一つは、国民の健康が破壊されるという問題、二つ目は日本の経済が壊されるということ、そして三つ目に財政や社会保障の土台も支え手を弱くすることで崩してしまう、「持続可能」でなくしてしまうという三つの角度から問題を提起したんです。

 私は一言で印象をいいますと、(首相が)何も考えないでこれだけの負担増をおしつけようとしている――このことにびっくりしましたね。

 たとえば、私が「これだけの負担増をやったら、家計にどういう影響が出ると考えているんですか」と聞いても、およそ家計への影響についての認識がないのです。私が「標準世帯だったら、これだけの負担増になって九兆円の負担増のときよりももっとひどいことになりますよ」と試算を出しますと、小泉さんはなんと答えたかといいますと、「家計だけが問題じゃないでしょう。減税をやって企業がうるおえば、そのうち家計にまわってくる」というようなことを平気でいうんですね。あの答弁には驚きました。

 つまり、経済の六割を支えている家計消費、ここを「家計だけが問題じゃない」ということをいって、いわば度外視して考えるという経済論というのは、およそこれは日本の経済についてイロハを欠いた議論だと思いましたね。

 私は、思いおこすんですが、九七年に九兆円の負担増というのがやられまして、消費税の増税とか医療費の値上げとかがやられました。あのときに、ずいぶん橋本さん(首相)と論戦をやったんですよ。あのときは、それでも政府の方にはそれなりの論がありましてね。景気を回復させるには「二つの主役」があるんだと。一つは家計消費だと、もう一つは企業の設備投資だと、とくに中小企業だと。この二つのエンジンがちゃんと動き出さないと景気というのは前に動き出さないんだといっていましたよ。政府の『経済白書』などでも。

 私は、“その点では間違いない。しかし、この二つのエンジンに九兆円負担増をかけたら、両方ともだめにするじゃないか”という議論をやって、家計への影響を試算して、こんなふうにひどいことになるというパネルを出したんですね。橋本さんは、それをみて「このパネルは一つの見識だ」というふうに評価しつつ、しかし、「(経済には)余力があるからそれをさらにこえてなんとかなる」という見通しをいったのが六年前の論戦だったのです。

 政府なりに経済をこう立て直すんだというのがあって、それに矛盾することをやっているという一定の自覚もあって、しかし、見通しをはずしてああいう失政になったというのが六年前だったんです。

 今度は家計への影響と聞くと、“家計だけみてどうするんだ、大企業に減税やっているんだからそのうちよくなりますよ”と。経済の六割を担っている家計をどうでもいいという発言をするというのは、もう経済運営の資格なしと思いましたね。

「不良債権」問題――小泉・竹中路線の空理空論ぶりは現実で明らかに

 このあと、志位氏は、一方で従来型の大型公共事業でバラマキをやりながら、国民には負担増を強いるという政府の「デフレ対策」の矛盾を指摘。自民党内で小泉首相に「政策転換」を迫る勢力も、こうした「悪い需要対策」しかないことを明らかにしました。

 「不良債権」処理問題でも、小泉・竹中路線が「空理空論だったことが現実をもって立証されている」として、次のようにのべました。

 志位 竹中さんたちは、“不良債権処理をともかく時間を決めて、二―三年で処理する”というふうにいって、“銀行の帳簿をきれいにすれば、お金がよくまわるようになって、成長分野にお金が回るようになる。そうすれば、日本の経済は活発になるんだ”と、簡単にいえば、こういう議論だったんです。

 ところが、私は、この前の予算委員会でも示したんですが、中小企業家同友会がやった調査をみますと、中小企業への貸出金利を引き上げる動きが起こっているんですが、どこがターゲットになっているかといいますと、赤字企業が一つのターゲットになっているんですが、やや黒字のところもターゲットになっている。つまり、いわば成長分野、発展の機会をもった分野、ここからも情け容赦なくお金をとりたてて、そして、どんどん業績を悪くする方向に働いている。

 赤字の企業もこの不況のなかで生きて、がんばっているんですから、これは適切な支援があれば、再生の可能性は持っているんですが、それをつぶすだけではなくて、黒字の企業も、資金繰りを困難にするところにきている。(竹中氏らの議論は)現実と違うじゃないですかというふうにいったら、まともな答えができませんね。

 十二月三十日に「ETV2002」という番組が放映されましたが、大田区の中小企業の特集をやっているんですよ。

 ある中小企業がものすごい技術力を持っている。ガラスの加工をやるさいに、ガラスを台座にとりつける新しい技術を開発して、アメリカ、ヨーロッパ、韓国、世界八カ国で特許を持っている。国際見本市に出したら、五百社から問い合わせや反響があった。ものすごい技術です。ところが、それだけ技術を持っていても、金融機関はどこもお金を貸してくれない。東京都の信用保証協会にいっても貸してくれない。どこも貸してくれない。だから、成長の機会が奪われてしまっているという話があったんです。

 そうしましたら、一月二十日の日に、経済財政諮問会議で、そのことが話題になったようなんですよ。私が、議事録を読んで面白かったのは、奥田さんというトヨタの会長が、それを見たらしくて、“テレビを見たら、あんなに優秀な技術を持っているところにお金が回っていない。そうするとここで議論していることと、現実の世界はまったく違うということになる。たいへんだ。こんなことでは日本の経済よくならない”ということが問題になって、竹中さんたちは、あたふたしているのです。

 結局、二―三年というふうに期限を決めて、銀行のバランスシートから落とすというやり方は、もう本当に中小企業全体をダメにして、成長分野もダメにする。それから、いま苦境でがんばっている企業はつぶしてしまう。こういう方向に働いていく。まったく空理空論で、足で立っていない。頭で立っている。銀行の帳簿はきれいになっても、日本の中小企業が全部ばたばたつぶれてしまったら、もう日本の明日はないわけです。そういう間違った道をいまやろうとしているというのが、非常にはっきり出てきたと思いますね。

イラク問題――査察継続による平和解決か、中断して戦争への破局かの重大局面

 峰久 今のイラクの状況についてどういうふうに分析しておられますでしょうか。

 志位 UNMOVIC(国連監視検証査察委員会)と、IAEA(国際原子力機関)という二つの国連の査察機関が、この間、査察活動をやってきました。その結果が、中間的に国連安保理に報告されたわけですが、イラクが十分に協力しているとはいえないという問題はある、同時に、大量破壊兵器を保有している「決定的証拠」はない、査察の継続が必要だということが報告されたわけです。

 その後、安保理の外相会談がやられて、そこで、多数を占めたのは、査察を継続し、強化すると(いう意見です)。フランスもロシアも中国もドイツも多くの国々が継続強化という方向を出したわけです。

 それに対してアメリカは、「もうゲームオーバーだ」ということをいって、査察は打ち切るんだといっているのです。

 いま端的に問われているのは、国連による査察を継続し強化して、査察という手段で平和的解決をあくまで追求していくのか、それともこれを中断して、戦争という破局の道を選択するのかという、これが問われているわけです。

 その点で、私は、小泉首相に、「査察の継続・強化ということを言いなさい」ということを言ったのですが、言わないんです。「状況を見て判断する」としか言わないんですね。アメリカの顔色をうかがって。これは本当に情けない態度で、私はこれは事実上、戦争の方向を応援するにひとしい、歴史に汚点を残す答弁だということをきびしく批判しました。

 査察が有効であること、査察によって解決できるということは査察団も言っているし、国際の世論なのですから、この道を進むべきです。

 つい最近、IAEAとUNMOVICの代表がバグダッドに入って、イラク側といろいろな査察の進め方についての協議を行って、一定の前向きの方向が出たということが報道されています。イラクがさらに協力を強めるということが言われた。いくつかの問題は残っているようですが。ブリクスさん(UNMOVIC委員長)もエルバラダイさん(IAEA事務局長)も、査察の継続を要求しているわけですよ。ですから、この道を進んであくまでも平和解決をめざすべきです。