2002年10月31日(木)「しんぶん赤旗」

イラク問題 平和解決を迫る
志位委員長が小泉首相に


 日本共産党の志位和夫委員長は三十日の党首討論で、緊迫を増す米国によるイラクへの軍事攻撃問題をとりあげ、日本政府が戦争回避と平和的解決のために力を尽くすよう求めました。小泉首相とのやりとりを再現すると――。

志位 イラク攻撃反対の意思表示を

首相 戦争によらない解決のため外交努力すすめる

 志位委員長 日朝国交正常化交渉が継続中でありますが、わが党は、「日朝平壌宣言」にもとづいて、拉致の問題、核(兵器開発)の問題など、道理ある解決に向けた努力を引き続きおこなっていただきたいと、強く求めたいと思います。

 私は、今日は、イラク問題について質問いたします。米国のブッシュ大統領が、「イラクへの軍事攻撃が必要となるかもしれない」と公言したことにたいして、世界から非常に強い批判の声がおこっております。

 わが党は、この間、緒方靖夫参議院議員を団長とする訪問団を中東諸国に派遣しました。わが党の代表団は、ヨルダン、エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦という、まさに中東の心臓部に位置する諸国の政府と会談しました。

 それからアラブ連盟、イスラム諸国会議機構というアラブ世界、イスラム世界の国際組織とも会談しました。どの会談でも一致して確認されたのは、イラク攻撃に反対し、この問題の平和的な政治的な解決をはかるという点です。ここでは強い一致が得られました。

 会談のなかでは、「イラクの攻撃に賛成するアラブ人は一人としていない」という声もありましたし、

 「イラク攻撃は中東における地獄の門を開けることになる」という声もありました。

 そして同時に、中東諸国の政府から共通して出されたのは、日本政府にたいする強い要望でした。「中東の民衆は日本に非常に強い親近感をもっている。それは日本がこの地域への植民地支配を過去やったことがない、そういう国だからだ。だから日本政府は、この問題で独自の役割を果たすことができる。ぜひ、戦争回避のために日本政府が行動してほしい」という声が共通してあげられました。

 私は二十二日の代表質問で、総理にたいして、「この問題の解決はあくまでも政治的交渉を通じておこなうべきであって、戦争に訴えてはならない。イラク攻撃に反対と明言すべきだ」ということをのべました。しかし答弁では、さだかな答えは返ってきませんでした。この場で再度うかがいたい。イラク攻撃は反対だ、ということを言明していただきたい。いかがでしょうか。

 小泉首相 まず、これは本会議の答弁で申し上げましたように、国際社会がイラクを攻撃しないで済むように、イラクがはっきりした態度をとるべきだと思うんです。それは、いままでの国連の安保理決議、これを誠実にイラクが履行することが前提であります。

 いくつかの国連決議がなされています。それを即時、無条件、無制限にイラクが履行すべきだと。そうすれば、もう攻撃する必要はないんですよ。

 それについていま、国連を通じて日本は、国際社会に働きかけている。まず、アメリカに対しましてもはっきりと、国際協調が最も大事だと。そういうことでアメリカもいま、国連の場で外交努力を続けているし、日本としても戦争を行わないでこの問題が解決できるように外交努力を懸命にすすめるべきだと。その考えに変わりありません。

 志位 いまいわれたように、イラクが国連の決定に従って大量破壊兵器を廃棄するという義務を負っているのは当然です。

 私たちの代表団も、イラクのハマディ国会議長らと会った際に、「あなた方は国際社会に隠し立てをしたり、あざむいたりしてはいけない。この問題(大量破壊兵器の問題)について真剣に真実を明らかにしなさい」ということをいいました。

 その際の会談では、先方も、「八つの大統領施設を含めて、すべての施設、場所について、無条件の査察に応じる」という言明を、十月十三日にいたしました。

 そうしますと、やはりその査察を実行に移せば、ことが済むわけですね。ですから戦争に訴える必要はまったくなくなる。やはりこの点で、なぜ戦争反対をはっきりいえないのかということが、問題になってくると思います。

志位 国連決定ぬきの先制攻撃認めぬと言明すべきだ

首相 国際法破るとは考えられない

志位 (日本政府の)自主性が問われる

 志位 もう一問、聞きます。ブッシュ大統領は、「もし国連が決断できないなら、われわれは平和のために同盟国を率いてサダム・フセインを武装解除する」といっております。すなわち必要とあらば、国連の決定なしでも、アメリカの勝手な判断で、イラクへの軍事攻撃をおこなう、ということを言明しているわけですが、これは国連憲章違反になります。

 国連憲章では、国際的な武力の行使というのは国連の決定が必要だ、個々の加盟国の武力行使というのは侵略された場合の自衛反撃に限る、というのが国連憲章ですから、先制攻撃というのは国連憲章違反になります。

 私は総理にうかがいたいんですが、国連の決定ぬきの一方的な軍事行動については、これは絶対に認められないと、これは最小限、この場で言明していただきたい。いかがでしょうか。

 首相 アメリカはいろんな選択肢を残しておりますが、現在、アメリカは国連決議履行に全力を尽くしていると思います。そして国際協調、国際法に違反するような戦争は毛頭考えていないと思います。

 いま国際法に違反するような、そういう行動をとったらどうするかということを予断するのは、私は適切ではない。私は、国際法、国連のなかでいまアメリカを中心とした各国が何とか国連の権威を損なわないように、そしてイラクが戦争なしに危険を、大量破壊兵器除去に努めるように懸命に努力中ですから、その努力をわれわれは強く支援する。そして日本としてもこの外交的努力を続けるということが、現在での、私はとるべき措置だと思っております。

 志位 (国連の決定なしに)武力攻撃をやるというのは繰り返しいっているわけですから、それにたいして「ノー」といえないのは、これは(日本政府の)自主性を問われるということを指摘して、終わりにいたします。