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日朝首脳会談、イラク攻撃、
経済問題について

CSテレビ朝日ニュースター 志位委員長、大いに語る
(2002年9月25日放映)


 日本共産党の志位和夫委員長は二十五日放映のCSテレビ「朝日ニュースター」の「各党はいま」に出演し、早野透・朝日新聞編集委員のインタビューに答えました。その大要を紹介します。

 「重要な前進の一歩」といったのはどうしてか

 早野 日朝会談は、歴史的といっていいでしょう。志位さんがあの会談の直後も、これは重要な前進だというようなお話をして、小泉さんの今度の会談を支持する態度を明確にしたと思うんですが、いつもは小泉さんとけんかしていたはずなのになあ、おや、なんだろうと、こういうことなんですけどもね。どういうふうに会談を受けとめてらっしゃるのか、まずはそこからうかがいます。

 志位 今度の日朝首脳会談では、拉致の問題で痛ましい事実が明らかになるということがありましたから、国民のみなさんのなかにはいろいろ複雑な思いもあると思うのですが、大きくみますと、やはり日朝国交正常化に向けた交渉を再開しようという合意がなされたのは、「重要な前進の一歩」だと、私はその日の談話でのべたのです。

 早野 そうですね。

 志位 といいますのは、これまでは日朝間には国交はおろか交渉ルートもなかったのです。交渉ルートがないとどういうことになるかといいますと、もめごとが起こったら「目には目を」になってしまうわけですね。たとえば一九九八年の八月に「テポドン」のミサイルが打ち上げられたことがありましたね。

 早野 日本列島を越えて着弾した、あの事件ですね。

 志位 ブースター(ロケット部分)が日本海に落ちて、着弾は日本列島を越えたという事件がありました。あのころのことを思い出しますと、日本ではいつ「テポドン」が撃ちこまれるかわからない、それでは「ガイドライン」(戦争法)だということで、軍事で構えようとする。北朝鮮の方の報道をみますと、日本はアメリカといっしょになっていつ北朝鮮を攻めてくるかわからないと、こっちも軍事で構えている。この軍事対軍事の悪循環という非常に危険な状況になっていたのです。

 一九九九年の不破委員長(当時)の国会での提案がきっかけに

 志位 そこで、一九九九年の一月の国会で、不破委員長(当時)が、交渉ルートをもたないためにこういう軍事の悪循環が起こる、日朝の間でのさまざまな問題について、政府間で話し合いができるルートをつくる必要があるという提案をしました。
不破さんは、同じ年の十一月に、再度つっこんで国会の場で、日朝の間には、ミサイルの問題がある、拉致の問題がある、過去の植民地支配の清算という問題がある、さまざまな問題があるけれど、どの問題も交渉で解決すべきことではないか、だから無条件に交渉ルートを開く必要があるという提案をしました。その後、同じ年の十二月のことでしたが、村山(富市)さんが団長になって、超党派の訪朝団が組まれたんですね。
 早野 あの時は、たしか共産党も議員がくわわったんですね。

 志位 そうなんです。あの時は村山さんが私を訪ねて、「ぜひ今度の訪朝には加わってほしい」という要請があったんです。そのとき「不破さんの提言も念頭にある」ということを村山さんはおっしゃっていた。
 早野 ああ、なるほど。その脈絡があって……。

 志位 はい。そしてわが党から、穀田さん(国対委員長)と緒方さん(国際委員会副責任者=当時)と二人参加して、会談がやられた。そして、翌年から(政府間)交渉が始まったんですけれども、そのあといろいろジグザクがあって、中断したわけですが、今度は首脳会談という、トップ同士が話し合うというところまでいきまして、国交正常化に向けた交渉を再開しようという合意がつくられたわけですから、これはやはり大きくいいますと、「重要な前進の一歩」だったということがいえると思うんです。

 核とミサイルの問題での日朝合意について

 早野 さきほどの「テポドン」のお話ありましたけれども、今回の「平壌宣言」での安全保障に関する部分、核とミサイルについて、今度の北朝鮮の姿勢をどういうふうに評価しますか。

 志位 ミサイルの問題については、「テポドン」の打ち上げの時も、私の名で抗議の談話を出しました( 早野「はあはあ」)。たとえ大気圏外であっても、日本の上を飛び越すようなミサイルを撃つというやり方は、日本の平和と主権を脅かすことになりますから。ですから、今度の「宣言」で、ミサイルの発射を無期限に凍結するということをいったことは、前進だと思います。
 核の問題では、私たちは全世界の核廃絶ということが一番の筋だと思いますが( 早野「ええ」)、もちろん核兵器国が増えることをだれも望んでいないわけで、その点では「国際的合意を順守する」ということが入ったことは、これも前進だと思います。

 早野 北朝鮮は、日本との関係でいえば、いままで敵対的な関係、国際社会のなかでいうと、ブッシュ大統領は「悪の枢軸」といっている対象であり、北朝鮮の側の相当大きな姿勢の変化というふうに受けとめていらっしゃいますか。

 志位 やはり全体として、変化がみられると思います。

 早野 その姿勢に関しては、信じられるということですか。

 志位 それは今後の行動によって検証されなければなりませんが、大きな踏み切りを始めたということはいえると思います。

 拉致問題――国交正常化交渉のなかで問題の解決を

 早野 なるほど。拉致の方ですけれども、これは私たちの想像以上の、こんなことになっているのかという、驚いたわけでありますが、 志位 さんはどんなふうに……。

 志位 私にとっても、あの結果は思いもよらない、痛ましいものであって、ご家族の方々の悲しみというのは、ほんとうに深いものがあると思います。私は、その日に出した談話で、「強い抗議の意志を表明する」ということをのべました。

 早野 そうですね。相当、しかもそれについて事実の究明( 志位 「はい」)、それから責任者の処罰( 志位 「はい」)、賠償・補償みたいな( 志位 「はい」)、ところまでちゃんといっとりますな。

 志位 やはりこれは国際犯罪ですから。そして国家機関が関与したとしますと、さらに深刻な重大問題ですから。これは国交正常化交渉の中で、問題の提起をして、解決をはかっていくべきだと、私たちは考えています。そのことは十八日の党首会談でものべました。

 早野 はあはあ、終わったあとの(党首会談)ですね。

 北朝鮮が拉致を認めたことは大きな転換

 志位 ただ同時に、この問題でよくみる必要があるのは、北朝鮮が拉致問題に関しては、態度を大転換させたということなんです。ともかくいままでは「拉致はないんだ」といってきた北朝鮮が……。

 早野 「でっち上げだ」なんていってたわけですから、日本側のね。

 志位 はい。そういっていた北朝鮮が、その存在を認めて、責任を認め、謝罪をしたわけでしょ。これは大転換なんですよ。拉致をやったことは許しがたいことです。しかし拉致を認めたことは前向きの変化なのです。ここは区別して冷静に見る必要がある。
 十八日の党首会談のさいに、小泉首相はこういうことをおっしゃったんです。「先方も誠意ある態度をもって日朝間の関係改善を図る意思を感じたので交渉再開に踏み切った」。小泉さんとしても、(北朝鮮が)そこまで踏み込んだということは、予想を超えた踏み込みだったと思う。そこに「誠意ある態度」を感じたんだと思うんですよ。

 国際的な無法行為を清算できるか――国際社会への仲間入りの大きなカギ

 志位 私は、この問題は、拉致問題にとどまらない大事な意味をもっていると思います。これまで北朝鮮は、一九八三年にはラングーン事件( 早野「はい」)を起こしてますね。それから一九八七年には大韓航空機爆破事件を起こしています。私ども、そのたびごとに厳しく批判をしてきました。

 早野 あれは北朝鮮は自分たちの仕業ではないと、こういっていましたけど、日本共産党は北朝鮮の仕業だと、こういっておったわけですね。

 志位 そうです。それぞれについて厳しく批判しました( 早野「はあはあ」)。それから、(北朝鮮は)韓国との関係でも、拉致問題を抱えているわけですね。これまで北朝鮮が、国際的な無法行為をはたらいてきたという事実があるのです。
 ですから、一九九九年の一月に、不破さんが国会で交渉ルートを開けという提案したときも、北朝鮮という国が国際ルールを守らない国だということはわかったうえで、そういう国だからこそちゃんとした交渉が必要なんだという問題提起をしているのです。

 早野 なるほど。そこまで含めた……。

 志位 ええ。含んだうえで提起している。

 早野 そういう問題提起だったわけですか。

 志位 はい。その点から考えてみても、そういう一連の国際的な無法行為をやっていた国が、日本にたいする拉致という問題について、これを認めるというのは、大きな転換の第一歩になりうるのです。北朝鮮が、今後ほんとうに国際社会に仲間入りして、周りの国と友好の関係をつくるうえでは、そういう国際的な無法を清算できるかどうか、これが一番のカギになっていると思います。

 早野 この清算というのは、ある意味では根本問題だと思うんですけれども、やっぱり北朝鮮という国のまさに国家犯罪だったわけですから、あの体制そのものに原因がまずあるはずであって、たしかにこんどの姿勢の変化はみえましたけれども、あの体制のままでこれから先、ほんとうにちゃんといわば普通の国になっていくんだろうかという危ぐを、日本の国民は少なからず抱いていると思いますけれども、この点についてはどうですか。

 志位 いまの北朝鮮の体制と、国際的な無法行為の関係はあると思いますが、日本にたいして拉致問題を認めたということが一つの転機になって、国際的な無法の問題もただしていくということが、全体としてはかられるならば、北朝鮮という国が国際社会に名実ともに仲間入りできることもたしかです。

 早野 ほんとうに大きなカギですね。

 志位 そういう点でも、こんどの会談の結果というのは、私は、重要な一歩になると思います。

 朝鮮労働党と断絶状態になった経過は

 早野 なるほど。僕は誤解していないけれども、世間では、俗に「共産党は北朝鮮と親しかったんじゃなかったか」というような議論がありますけれども、これはどういう関係なんでしたっけ。

 志位 まさに国際的な無法を北朝鮮がおこなった。そういう問題にたいして私たちは批判をしました。その時先方が、敵対的な攻撃をした。それがきっかけになって(朝鮮労働党と)断絶状態になった。

 早野 なるほど。

 志位 これはまだ解決されていないというのが現状なのです。

 早野 ほかの政党も朝鮮労働党との交流で、いろんな交流団が行きましたけれども、共産党の場合はずっと参加していなかったわけですね。

 志位 この前の超党派の村山訪朝団までは参加しなかったわけです。

 早野 なるほど。

 志位 ですから、まさに断絶の原因もそこにあったわけですね。その意味でも、今度の変化というのはなかなか重要な変化だと思います。

 この問題を党利党略であつかってはならない

 早野 そういう経緯をうかがうと、今回の 志位 さんの今度の会談の評価の背景といいますか、理由もわかる気がしますけれども。これは、小泉さんは、相当、 志位 さんに感謝してませんですか(笑い)。だって、与党の方にも「なんだこんなひどい交渉してきて」という声もあるし、野党をみてみても、自由党の小沢さん(党首)なんかあまり評価していない口ぶりですし、(民主党の)鳩山さん(代表)もいろんな注文をつけているようで、どうも共産党がいちばん正面から評価してるなという感じがするもんですから……。

 志位 私が、二回の(党首)会談で話したことは、先方もたいへんにうなずきながら聞いていたという感じでした。二回目の会談が終わったあとも、自然な形で握手をしたという関係で、(会談が)終わったあと、小泉さんが(記者との)ぶらさがりの会見のなかで、「日本共産党が全面的に賛意を示してくれた」ということをいったそうですから。(笑い)

 早野 力強く感じたんでしょうな。(笑い)

 志位 私は、党首会談にでて、率直にいってほかの野党はこんな態度をとっていいのかなと思いましたね。
 (日朝首脳会談が)終わったあとの会談で、民主党の代表は(正常化交渉の再開は)「時期尚早」だったという批判をするわけです。自由党の党首は「『平壌宣言』はなんだ。あんなもの署名すべきじゃない」「国交正常化を前提にした交渉をやるべきではない」というわけです。私は、その後、「(交渉再開の決断を)強く支持する。協力をおしまない」という発言をしたわけですが、小泉さんは最後にきびしく反論しましたね。

 早野 小沢さんたちの意見についてですか。

 志位 ええ。(首相が)どういうふうにいったかといいますと、「正常化を前提にした交渉はするなというが、正常化を前提にしない交渉だったらやる意味がない」「正常化を目的にしない交渉だったら、かえって無意味になる」。正常化という目標があってこそ交渉の意味がでてくるというのは、私は、その通りだと思いますね。
 正常化という目標があるからこそ、むこうも真剣に対応するわけです。交渉がすすむわけです。私は、この問題は、党利党略であつかってはいけない問題だと思います。
 私は、党首会談で、小泉さんに「小泉さんと私は、国政のありとあらゆる基本問題で対決しているけれども」(笑い)といったら、むこうも「そうだ」といっていましたけれども(笑い)、しかしこの問題については小泉さんがやろうとしている方向は道理にかなっているから支持するということをいいました。これはもっと大局にたって、つまりアジアの平和、世界の平和という大局にたって、それから国民の利益という大局にたって、行動すべきですね。

 アジアの平和をつくるために−−道理にたった野党外交で力をつくす

 志位 私たちは、この間、東アジアに平和な環境をつくることが必要だということで、この前、不破議長が中国を訪問しまして、ずいぶん実り豊かな(早野「ええ、これもいろいろ議論してきたようですな」)ええ、交流と討論ができたということを聞きました。東南アジア諸国との友好の関係もひらいてきました。韓国のみなさんとの交流もいろんな形で始めています。やはり日本の隣の国は変えられないんですから。

 早野 引っ越しできない。

 志位 ええ、引っ越しできないんですから、周辺の国ぐにと、どの国とも、なんでも胸をひらいて対話ができる、そして友好の関係をつくるために、私たちは、野党としての独自外交をやってきましたが、その立場を今後もさらに発展させていきたいと思っています。

 早野 不破さんの最近の演説を読んでも、中国との間でやっぱり道理をもって話せば通じると、中国の現政権も道理のわかる人たちだみたいなこともおっしゃっている。いまも道理というお話をうかがって、なんか共産党も共産主義よりも道理主義なのかなという感じがね。(笑い)

 志位 私たちは、権力をもっている党じゃありませんし、もちろん軍隊をもっているわけじゃないし、もっているのは道理だけなのですけれども、その道理があってこそ動くというのが外交だと思います。
 こんどの件も、一九九九年に不破さんがおこなった(交渉)ルートを開こうじゃないかという提案が、道理にたった提案だからこそ、そういう方向にことが動いたというのが、私たちにとっては非常にうれしいことなのです。
 拉致の痛ましい事実がありますから、いろいろな複雑な思いが国民のなかにあると思いますが、国民のみなさんもどんな世論調査をみましても、だいたい六割、七割が(交渉再開という)こんどの結果を支持していますね。それから国際社会の支持は非常に高いですね。この前のASEM(アジア欧州会議)でも、非常に高く評価された。国際社会はみんな喜んでいるわけです。北朝鮮と日本が国交正常化の方向に歩みだす、北朝鮮という国が国際社会の一員になる方向に一歩踏み出す、これは世界が望んでいることなんですよ。

 早野 それは、望んでいることですからね。

 志位 ええ。そういう立場で、今後もわれわれは努力します。おおいに力をつくしたいと思っています。

 イラク攻撃に「反対」といえない――対米従属の弱点は深刻

 早野 しかし、ついでに小泉さんの支持率も上がっちゃたりして、これはちょっと困りませんか。

 志位 今度、支持率が上がったのは、日朝首脳会談の影響だと思いますよ。これはやむをえないですね。しかし、小泉さんが、すすめている内政・外交の基本姿勢にたいしては、私たちは厳しく対決していくということに変わりありません。

 早野 それではそのへんに話しを移していきます。イラクの関係でいえば、たとえば日朝会談の前の日米会談で小泉さんが、「国際協力をもう一段進めよう」とったことに関しても、共産党、志位さんたちは、「イラク攻撃するなということをいっていないじゃないか」ということを、小泉さんを責めておりましたけれども、これはやっぱりイラクに関していえば、申すまでもなくそういう姿勢でいくということですか。

 志位 そうです。いまアメリカがとっている戦略というのは本当に危ない戦略です( 早野「その後も世界戦略みたいなブッシュの発表がありましたね」)。ありました。8月15日の「国防報告」に続いて、9月20日の「国家安全保障戦略」で、「先制攻撃を単独でもやるんだ」ということを、堂々とホワイトハウスの方針として世界に向けて宣言している。そして、イラクをその最初のターゲットとして、攻撃をはじめる準備にかかっています。
 私は、同じ党首会談だったんですけれども、日米首脳会談の前だったので、はっきり日本として反対の意思表示をすべきだといいました。こんどのイラク攻撃は何の大義明文もない。9・11テロとのつながりもなんら証拠もない。大量破壊兵器を開発しているという証拠もない。しかも、イラクは国連の査察を受け入れるという方向で交渉しているわけですから。大量破壊兵器の問題はともかく交渉で解決すべき問題であって、戦争に訴えるべき性格の問題ではありません。なんの大義名分もない戦争にアメリカがのりだすのは、日本として反対すべきですということをいったんですが、日米首脳会談での小泉さんの態度は、私は情けなかったと思う。
 「国際協調を」という。しかし、「国際協調」でやったとしても、無法は無法なんです。先制攻撃というのは国連憲章違反なんですから。国の数が多くても、無法は無法。これは反対ですと、きっぱりいえなかったら、国連憲章を守る立場に立っているとはいえないんです。ですからこの問題は、私は、依然としてこの弱点は変わらない、対米関係の弱点は、深刻だということを言わなければなりません。

 早野 なかなか難しいですね。テーマ別に小泉さんと対決の形を…。

 志位 そういうなかで、有事法制についても、そういう危ない戦略を取ろうとしているアメリカといっしょに戦争をやろうという話ですから、どうしてもこれは葬らなければならない。一方で北朝鮮との対話に踏み出そうとしているわけですから、なんのための有事法制かということの説明もつかなくなっているということもいえると思います。ですから、これは厳しく対決していきます。このアメリカ従属姿勢とは、厳しく対決していきます。

 経済危機から国民生活をまもるために――4つの大切なこと

 早野 国民生活に一番身近な経済問題のほうですけれども。そうこうしているうちに、株価が落ちたり、株価については一喜一憂するなと小泉さんもいっておりますが、やっぱり失業その他の国民生活への圧迫が一向に変わらないということ。どういう手を打つか。デフレ対策をやらなくちゃいけない、このことは志位さんたちもいいんでしたっけ。

 志位 いまのデフレという状況が生まれている根本は、需要が不足している、需要の中でも家計消費が冷え込んでいるというところに一番の問題があるわけですから、ここへテコいれするというのが政治の本来の役目なんです。そういう意味での対策が本当は必要です。
 ところが小泉さんのやってるやり方というのはまったく逆だということを私は言いつづけてきました。これは七月のはじめの党首討論で提起した問題なのですが、今年から来年にかけて、社会保障の分野だけで三兆二千四百億円の負担増を強いるという計画をやろうとしている。この三兆円という数字は、だいたい同じ数字だってことが他のメディアでも出るようになって、テレビ朝日のニュースステーションを見てましたら、経済アナリストの森永卓郎さんがコメントしておられまして、「小泉内閣は橋本内閣の二の舞になろうとしている。橋本内閣の時には九兆円の負担増で景気をぺしゃんこにしたけど、小泉さんはこんな不況のもとで三兆円の負担増を押しつけようとしている。こんなことでいいのか」という発言をされてましたけれど、「こんな不景気で、こんな負担増を」というのは、ずいぶん広がって、心ある人たちの共通の批判になってきたと思います。
 こういうやり方じゃなくて、ほんとうに社会保障に対する国の責任を果たす。負担増の計画をやめるということです。これが一つです。
 それから二つ目に、いま、増税計画あるでしょ。特に、所得税の増税とか…。

 早野 減税計画もありますね。

 志位 大企業のほうは、減税なんですよ。だけど、所得税の増税、中小企業にとっても痛い消費税の免税点の引下げ、あるいは外形標準課税、こういう庶民・中小企業増税はやめるべきだ。これが二つ目です。
 それから三つ目に、「不良債権処理の加速」という名で、中小企業どんどんつぶすということをさらにやろうとしている。これは、さんざんやってきて、やってもやっても不景気がひどくなってますます不良債権が増えちゃう。この悪循環になった。この一年間だけでも一・五倍も不良債権が増えて、これはもう破たんしているんですけれども、またやろうとする。
 今度は日銀が銀行の保有している株まで買ってやって、リスク引き受ける( 早野「これはもうとんでもない話ですね」)、とんでもない話です。それまでして、不良債権(処理)をできるような環境をつくってやろうとする。これもやっぱり転換すべきだ。
 それから、四つ目に、失業がたいへんなんです。昨日も、全労連のみなさんがおみえになって、いまの失業の数が三百万人と、よくいわれるけれども、実態からすればもっとはるかに多い。家族をふくめれば一千万人だということです。ですからだいたい国民の十人に一人が失業という辛い目にあっているという事態ですから、職場での無法な首切りや転籍の強要をやめさせること。それから、失業者に対する生活保障です。これは雇用保険の保険料は上げるけれども、給付は切り捨てようという、こんな冷たいことを不景気の中でやるというやり方はあらためる。
 この四つが、いま暮らしを支える上で非常に大事です。一方で大企業向けの減税は二兆五千億円という規模でやろうというわけでしょ。大銀行には、また公的資金注入したり、日銀が株買って助けてやると、こっちでは至れりつくせりということを一方ではやっておきながら、国民は踏みつけにするというやり方は変えなければなりません。ここでもやはり小泉さんとは対決ですね。

 早野 なるほど。やっぱり、そういう意味でいうと小泉政権との対決姿勢というのは基本的には持っているということ。

 志位 もちろんそうです。国政の基本問題では、断固とした一番きっぱりした対決の立場に立っています。

 早野 臨時国会もやっぱり経済を中心に論議すべきでしょうか

 志位 経済は大きいですね。ただ、同時にイラクの攻撃の問題をはじめ世界の平和をどう守っていくかという問題も大事なテーマになってきます。
 それからもう一ついえば、原発問題をめぐって、ああいう国民の生命を粗末に扱う政治でいいのかという問題もあります。これは私たち、緊急の提言を出しましたけれども、こういう問題も大事なテーマになって来ると思います。

 早野 共産党をこれからも非常に注目して見させて頂きます。どうもありがとうございました。

 志位 どうもありがとうございました。