2001年6月7日(木)「しんぶん赤旗」

党首討論

集団的自衛権の研究問題

志位委員長 憲法守る気迫の追及


 「憲法の枠内での集団的自衛権の研究なんてありえない。憲法破壊の研究はきっぱりやめるべきだ」。六日おこなわれた小泉純一郎首相との初の党首討論で、日本共産党の志位和夫委員長は鋭く首相を追及しました。その気迫の論戦を再現すると――。

志位氏 戦争法での米軍支援―武器・兵員輸送、燃料補給―これ以上何をやるというのか

小泉首相 周辺事態は何があるかわからないから研究

 志位委員長 私は、集団的自衛権と憲法九条の問題について質問いたします。

 総理は、憲法九条のもとでは、集団的自衛権の行使は禁止されているという政府解釈は尊重すると、おっしゃられていますが、一方で、次のようにおっしゃられています。「もし、日本近海で、日米がいっしょに共同活動をして、そのときに米軍が攻撃を受けた場合、日本は何もしないでいいのか」。こうおっしゃって、集団的自衛権について、「研究する余地がある」と繰り返しておられます。

 しかし、総理は「何もできない」かのようなことをおっしゃるが、あなたがたは一昨年、ガイドライン法というのをおつくりになった。それで、この法律は、私たち憲法違反の戦争法だときびしく批判しましたけれども、政府が「周辺事態」だと認定すれば、海外で戦闘中の米軍にたいして、自衛隊が燃料・食料の補給、武器・弾薬・兵員の輸送、破損した兵器の修理、傷病兵の医療、通信活動、捜索・救援、さまざまな支援ができる仕組みがつくられました。

 総理は、「何もできない、できない」というけれども、これだけのことができる仕組みがつくられたわけであります。私たちは反対しましたが。これで、いったい何が不足しているというのか。これ以上なにを「研究」してやろうというのか。具体的にお答えください。

 小泉首相 具体的な状況というよりも、これから何がおきるかわからない。そういう点については、いろんな議論がありますから、研究の余地がある。いままで、憲法九条のそのものについても、自衛隊すら憲法違反という議論がありました。いっさいの戦力は保持できない。だから、戦車を戦車といっちゃいかんとか。特車といわなければいかんとか、もういろいろな議論があったわけです。

 しかし、この憲法九条のもとでも、自衛隊は本当に戦力でないのか、たたかう力がなければ、自衛の役割をはたすことができないのではないか、という議論をする方のほうが多くなってきた。そして、いまでは、当初は自衛隊は憲法違反だといっていた方たちも、個別自衛権は認めるであるとか、憲法九条があるけれども、自衛隊は憲法違反ではないというふうに、だんだん、変わってきている。

 そういう点につきましても、確かに集団的自衛権について、権利はもっているけれども、行使できないというのが、いまの憲法解釈です。そういう点につきまして、周辺事態というのは、どういう事態がおこってくるのかわからない。いままでできなかったことでも、できるような点が多々でてきました。あるいは、PKOもそうです。自衛隊を海外に派遣することは、いっさいできないということだったのが、PKO活動だったら、自衛隊を派遣してもいいではないか、という議論になってきた。そういう点において、わたしは集団的自衛権においても、いまだ想定できない、いままでできない、ということについて議論があるかもしれないが、そういう点も含めていろいろ、研究する余地があるのではないか。また研究してもいいのではないか、といっているのです。

志位氏 「後方地域」を越えた支援は絶対ないと断言できるか

小泉首相 できないといってきたことはできない。「後方地域」とは何か研究の余地はある

 志位 私の質問に対して、具体的にお答えになりませんでした。では、具体的にもっと聞きます。

 政府は、ガイドライン法がつくられたときに、憲法が集団的自衛権の行使を禁止しているために、つぎの二つの活動ができないと説明しました。

 第一は、直接の武力行使。

 第二は、米軍の武力行使と「一体化」した後方支援。つまり、戦闘地域・前線地域まで出ていって、米軍の支援活動をやることはできないのが建て前だ、といってきました。

 総理は、集団的自衛権について、「研究する」とおっしゃるわけですけれども、具体的にいった場合、これまで日本ができないとされていたこの二つの行動――これは政府自身が「できない」といってきたわけですから――直接の武力行使、戦闘地域・前線地域までいった米軍への支援活動、この二つの問題、これは、あなたの「研究」の対象ですか。それとも、これは「研究の対象にはしない」と断言できますか。イエスかノーか、端的にお答えください。

 首相 いままで「できない」といっていることはできないんです。その他の分野で、いろいろ事態が起こってきたときに、研究の余地があるのではないか。

 志位 そうしますと、これまで、「米軍の武力行使と一体化する後方支援はできない」といっておられましたね。つまり、後方支援というのは、戦闘地域ではできない。「後方地域」でしかできない。この「後方地域」を越えて活動するということは、研究の対象には絶対にしない、と断言できますか。「後方地域」を越えて米軍への支援はやらない、と断言できますか。

 首相 いままで歴代政府が「できない」といっていたことはできない。しかし、後方地域とは何か、という問題がでてきた場合、この定義についてはいろいろある。それはまた、研究の余地があるのではないか。

 志位 いまのは、たいへんごまかしの答弁です。結局、後方地域、後方支援、(定義が)さまざまあるといいますけれども、この問題についてはっきり(「研究」を)否定しないというのが、重大な点だと思います。

 私は、結局、「集団的自衛権について検討する」というのは、いま「後方地域というのは(研究の余地が)いろいろある」といってごまかしましたけれども、これまで「できなかった」というところまで乗り越えて、海外での共同の戦争をやると、この道を開くものとして、私は、「憲法の枠内での集団的自衛権の研究」なんてありえない、これは「憲法破壊の研究」しかありえない、これはきっぱりやめるべきだということを申し上げて、質問にいたします。