2001年4月 5日(木)「しんぶん赤旗」

党首討論

家計を直接応援して景気回復を

国民の声示し志位委員長が迫る


 4日におこなわれた日本共産党・志位和夫委員長と森喜朗首相との党首討論でのやりとり(大要)は次の通りです。


 志位委員長 いま国民が政治にもっとも強く望んでいるのは、「この深刻な不景気をなんとかしてほしい」という点にあると思います。私はこの点について、うかがいます。

志位氏=“企業収益があがれば家計も回復する”という経済論は間違いだ

森首相=企業収益はあがったが、残念ながら家計にまわらなくなった

 志位 いまの日本経済の最大の問題点というのは、経済の六割を占める個人消費が冷え込みきっているというところにあります。とくに九七年からの落ち込みがひどいものがあります。

 総務省の家計調査によりますと、九七年から二〇〇〇年にかけまして、勤労者世帯の可処分所得は月額で二万四千円減っています。それから一世帯当たりの消費支出は月額で一万六千円減っています。ここが一番の問題点です。

 この点について、そちらにすわっていらっしゃいます宮沢財務大臣は、一月十九日の講演録のなかでたいへん興味深いことをおっしゃられています。ちょっと読み上げます。

 「国民経済全体の回復過程におきまして企業設備、あるいは企業利益というものは回復しつつあることは疑いのないところでございますが、それが家計消費というものに一向に連動していかないということ。私自身は実は昨年の夏ごろに、企業もそうなれば、家計もそうなるだろうと期待していたことが、間違いであったということになるわけでございます」

 たいへん、私は正直なご発言をされているなというふうに興味深く読みました。

 “企業の収益があがれば、やがては家計の消費も回復する”――これが政府の経済論だったと思います。しかし、当の財務大臣がこれは「間違っていました」とはっきりおっしゃっている。総理も一年間を振り返ってみて、この考え方は間違いであったと、同じ認識をもちますか。正直に、端的に、一言でお答えください。

 森首相 経済は生き物ですから、わが国のバブルの崩壊以後の十年間というのは、たいへん大きな、われわれもまた予測できないような事態がいろいろとございました。とくに(平成)九年、十年、まさにデフレスパイラルなどの危機的状況にあったことも事実であります。

 そのなかから小渕前政権、そして私と、この危機的な状況を脱するような施策を考える。そのために思いきった財政出動もいたしました。そして減税もいたしました。さらに、そのあと守りの再構築といいましょうか、金融を安定させるための金融二法等で対応いたしました。なんとか落ち着かせてまいりました。

 そういうなかから、確かに経済、いわゆる民間の企業もようやく躍動的にもなり、設備投資も増えてきました。企業も非常に収益が増えてまいりました。しかし、いまご指摘がありましたように、また宮沢財務大臣のお話にもありましたように、残念ながら、それは家計に回らなくなったといいましょうか、消費が思うようにすすまなくなった。最近のデフレ傾向といいましょうか、物価というものが、ここ三年ほどほとんど上がっていない、消費者物価。まあ物価が上がらないということは、国民にとってはある意味ではとてもすばらしいことなのかもしれません。しかし、上がらない分だけ、やっぱり所得として考えてもいいのかもしれません。いろんな見方があると思います。

 それから国民のみなさんも、価値観も多様化してしまいましたし、物を買うということについての、いろんな意味での工夫もおこなっておられるということにもなります。

 一方、企業はやはりリストラを進めていかねばならないのですから、企業がリストラを進めていけば、当然、賃金の問題も出てきます。雇用・リストラの問題も出てくるわけでありますから、そういう意味では家計部門、消費部門がはかばかしくなかったというそういう経緯を、私は宮沢財務大臣が申されたのだろうというふうに思います。間違っているとか間違ってなかったということではなかったと思います。

 志位 企業の収益が回復しても、家計に回らないという事実は、お認めになったと思います。それは結局、いま総理がいわれた財政出動にしても、公共投資の上積みだとゼネコンに回っちゃうわけですよ。それから金融対策にしても、大銀行向けの七十兆円の枠組みをつくると。銀行支援なわけですよ。このやり方では家計がよくならないというのが明りょうになったと。これがいまの状況だと思うんです。

志位氏=日銀調査でも「雇用不安の解消/消費税率下げ/年金などの将来像明らかに」が国民の願い

森首相=緩やかな景気回復が必要

志位氏=大不況は失政の結果。自民党、公明党の総退陣を

 志位 私どもは先日、「緊急経済提言」を発表しました。そして、総理にもお届けしました。“企業の収益さえよくすれば、家計がよくなる”ということが成り立たなくなった以上、直接家計を応援する政治が必要だということで、三つの提言をいたしました。

 第一は、消費税の問題ですが、これは五%に値上げしたところから大不況が始まっているわけですから、三%に引き下げる。

 第二に、社会保障の問題ですが、医療、年金、介護、雇用保険、これで今年で三兆円、来年で一・五兆円もの負担増が計画されていますが、これを凍結して、将来の安心できる体系をつくる。

 そして第三に、雇用危機の対策に乗り出して、とくにサービス残業(ただ働き)についてはただちになくして雇用を増やすと、これをめざしていくと。

 この三つの提言をしましたが、私は総理にお示ししたいのは、日銀が調査月報というのを(昨年)十二月に出しています。ここで、「生活意識に関するアンケート調査」というのをやっておりますが、ここで「あなたはどの項目が実現すれば支出を増やすと思いますか」、この設問にたいして上位三つの答えは、一位が「雇用や収入の不安の解消」で四五・九%。二位が「消費税率の引き下げ」で四二・六%。三位が「年金改革や財政赤字に対する指針を示し、国民負担の将来像を明確化する」で三五・〇%。これは私たちの提言と一致するわけです。やはり、家計を直接応援して景気対策をやるべきです。この国民の声にこたえるのが政治の責任じゃありませんか。いかがでしょう。

 首相 大変、申し上げにくいんですが、共産党のみなさんは、そういう一部分だけをとらえて、そこだけをこうすればいい、ああすればいいということになるわけですが、基本的には、日本の経済はやっぱり、緩やかな回復基調から安定的な経済の成長に歩ませていくということが大事なんじゃないでしょうか。そのことによって、国民のみなさんが収入もあり、企業も栄えていく。それが、この社会全体がそれによってふくらみを増していくということになるんじゃないでしょうか。

 志位 九七年と今年を比べて、消費税増税で五兆円、それから、社会保障の負担増で五兆円、そして、リストラ応援の政治で五兆円もの所得を家計から奪った。この失政の結果が、いまの事態を生んでいるわけですよ。ですから、これは総理一人がやめたところで解決する問題じゃない。自民党、公明党は経済失政の責任をとって、総退陣願いたい。このことを申し上げて終わりにします。(拍手




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