2001年3月16日(金)「しんぶん赤旗」

CS放送 朝日ニュースター

志位委員長、明快に語る

森内閣をめぐる問題、景気対策、野党共闘について


 日本共産党の志位和夫委員長は十四日放送のCSテレビ「朝日ニュースター」の「各党はいま」に出演し、朝日新聞の早野透編集委員のインタビューにこたえて、政局などについて話しました。大要を紹介します。


 早野 森総理大臣が総裁選の前倒しということを表明して、一応「辞意表明」をしたということになりました。ところが国会では、“いや私は辞意を表明していない”という話になって、一種ちゅうぶらりんの状態と変な形となっております。きょうはこのあたりの政局の中でどう動くか、日本共産党の志位和夫委員長にお話をうかがいます。どうかよろしくお願いします。

 志位 よろしくお願いします。

 

与党向けには退陣ほのめかし公式には居すわる―――
二枚舌と責任のほおかむり

 

 早野 先週は、森退陣へのいろんな動きがあったのですが、まず最初に、野党は月曜日に内閣不信任案を提出して、あっさり否決されたような形になりました。この成果、意味、これはどういうふうにごらんになっていますか。

 

内閣不信任案は否決されたが、森内閣支える与党の連帯責任は明白になった

 志位 国民の八割、九割の方々が、森内閣は即時退陣すべきということを要望しているわけですから、その要望にこたえて野党が不信任案を出すということは、当然のことです。それに反対をしたということは、内閣を支えるという立場に立つということを自ら宣言したわけですから(早野「そういうことですね」)、そうした人たちのきびしい責任が、連帯責任として問われるということになったと思います。

 早野 それがはっきりしたと。

 志位 そういうことです。

 早野 四野党党首の間で、(不信任案の提出)時期をめぐっていろいろ議論もあったようですけれど、仕方ないことですか、あれは。

 志位 私は、不信任案というのは、一つの内閣にたいして(一国会で)一回しか行使できない大事な手段ですから、これは機が十分熟したところで(伝家の宝刀として)パッと抜くというのが一番いいだろうという主張をしていたのです。

 そういう点では、まだまだ参議院の審議で追い詰めていく場が大いにありましたから、あらゆる場を存分に活用して、国民との関係で自公保にたいする包囲網をもっとせばめて、その矛盾が一つの極点に達したところを見定めて、この伝家の宝刀を抜いた方がいいという主張をしたのですが、これは全体のなかでああいう形になりました。

 早野 野党の結束というのも一方で考えなくちゃいけない…。

 志位 そういうこともありました。

 早野 ほんとうはいまごろ出してもいいかなという感じがしますけれども(笑い)。その後、先週は自民党のなかで水面下で、森さんを、いっぺん信任したのになんとかやめさせようというような話が動いたようで、週末には自民党の総裁選の前倒しを、森さんが表明したわけです。新聞は「辞意表明」といっせいにとらえたわけですが、これはどういうふうにごらんになりますか。

 

国民の望んでいるのは森内閣の即時退陣

 志位 私は土曜日の夜、ああいう事態になってコメントを求められまして、これはまず、二枚舌であると、それから責任にほおかむりするものだと。“二枚舌、ほおかむり”ということをいったのです。(早野「なるほど。かなりきつい言葉で(笑い)」)

 二枚舌という点では、ともかく与党・自民党向けには退陣をほのめかして、当座をとりつくろう。しかし公式にはやめないで、いすわりを続け、予算案も通す、関連法案を通す、外交までやる。何食わぬ顔をして外向けにはずっといまのまま続けようというわけですね。これはほんとうに国民をあざむく、とんでもない二枚舌を続けようというもので、許されないことです。これが一つです。

 もう一つは、責任をすべてほおかむりしてしまうという作戦なんですよ。

 早野 それはどういうことですか。

 志位 どういうことかといいますと、総裁選を早めにやったとして、それにたとえば森さんが出なかったとしますでしょう。そうしたら「勇退」という形になるわけですよ、形としては(早野「なるほど」)。責務を果たして、めでたく「勇退」と(早野「諸般の情勢をみて…」)。身を引いたと(早野「立派な引き方になると」)。形としてですよ。

 つまり辞任をしないですましてしまう(という作戦です)。辞任をしたとすれば、その責任問題が問われてくるわけですが、そういうことにいっさいほおかむりして、辞任をしないで、「勇退」の花道を飾って、はれてやめるという道を森さんにはつくってやろうという、この思惑がもう一つある。

 森首相に対しては、そういうメンツを立てるという形を確保する。しかし与党の方は、森首相をかかえたままだったら、選挙に到底勝てないから、どこかでやめてもらわなければならないという思惑が働く。しかしすぐやめたら、これは国会運営がもたないし、後継選び、権力闘争をやる時間もないし、これも困る。当座は続けてもらうと、与党の側はそういう思惑ですね。

 つまり両方ともまったく党利党略、個利個略の内向きの思惑だけで、二枚舌状態がずっと続いているというのがいまの現状で、到底許されるものではありません。

 私たちは、ほんとうに国民が望んでいるのは、森内閣が即時に、実際に退陣することですから、これを強く求めていきたいと思います。

 早野 即時退陣ということですね。

 志位 そういうことです。

 早野 ところがこの二、三日になって、森さんがあまりに私はやめないということを国会でいい、次の総裁選に自分が出るみたいなことさえいうものですから、これは森さんはしばらくやめるつもりはないらしいと(いう見方もあります)。総裁選の時期とか、候補者決まっていないわけですから。またもう一度森降ろししないとおりそうにないという感じもあって…。

 志位 それはやはり与党内の矛盾なんですよ。(与党内で)降ろす側にも“大義”がないですからね。要するに自分たちが、森内閣をつくったわけですし、数々の暴言、失言、失政があっても全部かばってきたわけですし、不信任案も否決したわけですから、共同責任であって、降ろす側に“大義”がないですから。そういうもとで、降ろされる側も、ある意味で居直っているということで、先が見えなくなっている混迷状態だといえると思うのです。

 早野 こういう政治空白というべきか、ちゅうぶらりんと申し上げたんだけれど、こんなことでやって、ほんとにいいのかな、というだれしもそう思うんですが…。

 

日本の責任者がだれだかわからない――
前例のない異常な事態

 志位 ほんとうに恐るべき前例のない異常な事態だと思います。

 早野 そんな気がいたしますか。

 志位 国民に対して、無責任なだけでなくて、諸外国に対しても、日本の国の責任者はいったいだれなのか、さっぱりわからないと、(政治的に)生きてるんだか死んでるんだかわからない状態が続いているということは、ほんとうに日本の国益全体を損なうものですよ。こういう状態が一日も、続くことは許されません。

 早野 これはしかし、こういう声がつのってくるんでしょうねえ。国会内外…。

 志位 ええ、そう思います。

 

KSD疑惑、機密費問題―――
証人喚問を含め今後の追及が大事

 

 早野 森さんがここまで立ちいたったという一つの理由は、KSD事件と機密費の問題です。とくに志位さんの党の追及なんかは(疑惑が)どんな問題なのかを、浮き彫りになさったと思います。しかし、KSD事件は、司法のほうに行っちゃって、機密費の問題も予算はそのまま通ってしまったので、何にも解決がなされないまま、終わってしまうのかな、という気がしてしまって、せっかくの追及も効果としては、空振りになっちゃうのかなという気もいたしまして…。

 

KSD疑惑――党費肩代わりの問題の真相解明はかなりすすんだ

 志位 いや、そうじゃないですね。KSDについていいますと、私たちは、中小企業の共済掛け金を食いものにした、類例を見ない悪質な事件だということを追及したのですが、その一番太い資金のルートが、いわゆる幽霊党員と、党費肩代わりの問題にあると追及してきました。

 私の質問、それから参議院は筆坂さんの質問、衆参の総括質疑を通じて、だいたい、ことがらは全部明らかになりました。二十一億円くらいの、党費の肩代わりがやられていたということも明りょうになりました。政府の側は、「調査する」の一点張りなのですが、私が質問したのが、二月九日です。このときに「調査する」と約束したんですね。ところが、筆坂さんが質問したのが三月七日で、まだ「調査する」といっているだけなのです。結局調査できないのです。

 私たちがその受け皿になった、東京、神奈川、千葉、埼玉の(自民党)豊明支部の支部長さんに、直接お会いして聞いてみたら…。

 早野 かなり取材して、質問されてましたね。

 志位 ええ、そうしたら、「支部長になった覚えはない」とか、「自民党員でもない」とか、幽霊の実態が明らかになって、それを全部突きつけたもんですから。筆坂さんは、四人の支部長に会うのに、二日もあればできるじゃないかと、いったのですが、(森首相は)口濁して、結局、「まだ調査中です」の一点張りでしょう。

 調査できないんですね。調査したら、これは、実態がわかっちゃうから(早野「そうですね」、笑い)。「私は知りません」と言われてしまったら、おしまいで、幽霊だという実態がわかってしまうから、幽霊が怖くて調査できない、というのが実態だと思うんですね。

 早野 「調査中だ」でずっといくということに…。

 志位 ところがこの問題は、とうとうKSDの新理事長になった中井さんという方が記者会見やって、「実はKSDが肩代わりやっていた、だから返還要求するんだ」ということを話しました。当事者からそういう、発言が出てきたわけで、決定的になってきました。KSDの問題は、いよいよこれから先が大事です。なかなかこの党費肩代わりの問題は、司法のメスが入りづらいんですよ。

 早野 そうでしょうね。そういう予感がしますねえ。

 志位 ものつくり大学だとか、アイムジャパンの問題などは、受託収賄の問題で、わりと立件しやすいのですが、党費肩代わりといった問題まで、司法のメスが入るかどうかについては、これはなかなか難しいんですね。(早野「ええ、そうですねえ」)

 つまり、これは、ここまで明らかになった以上、国会がひきつづき、必要な人の証人喚問をはじめ真相究明の努力をつくす必要のある問題になってくると思います。ですから、これからが大事だと思いますよ。

 早野 そこは政治の解決策が、何か施されなくてはならないということですねえ。

 

機密費――
国会対策や選挙対策など党略的流用が一番の問題

 志位 ええ、機密費の問題でも、元室長が、ああいう流用をやったという問題だけではなくて、実はせんべつだとか、国会対策とか、選挙対策に、いろいろ使われていた。党略的流用ということが、一番の問題だということで追及してきました。

 私は、予算委員会で、内閣官房が作った機密費についての文書を出して、消費税導入のための対策費に使われたと、生々しく話しました。筆坂さんが、追い打ちの質問をやりまして、これを実際書いたのは、古川貞二郎さんという、当時の内閣首席参事官、いまの内閣副官房長官。

 早野 官房副長官ですね。

 志位 官房副長官が書いたものだと、筆跡鑑定を(早野「筆跡鑑定をやって」)、ええ、そうです。これを出しまして…。

 早野 あれはどう考えても同じ筆跡。

 志位 そうです。鑑定人の方は、非常に厳密な筆跡鑑定をやって、百パーセント間違いないという、断定が下りました。私たちは、二つの文書―内閣官房の文書、鑑定書を出して、書いた人まで明らかにしているわけですから、うそだというのだったら、その反証責任は、政府側にあるわけですよ。ですから、この問題も、ここまで問題が明らかになった以上、委員会としても筆跡鑑定をやるべきだし、必要な人の証人喚問も求めていく。

 早野 なるほど。

 志位 これからが大事なんですよ。

 早野 ええ。野党の共闘に水を差して悪いような気もするんですが、やっぱりそうやって国対費なりで旧野党に、流れていたということが、追及を甘くしているのではないかと、普通の国民としては、疑問も抱くんですけど…。

 

まず真相究明をすすめることが大前提

 志位 これは他の野党も、私は率直にいって責任が問われると思うんですよ。国会対策、野党対策に使われたというのは、逆にいえば、わが党以外の野党にお金が流れていたっていうことですから。歴代の官房長官からもそういう証言がありますね。

 野党も、ほんとうに自民党の腐敗政治を追及するというのだったら、自分たちについても、機密費の問題についてかけられた疑惑、あるいは問題点を自ら明らかにする。身ぎれいにする。これをやってこそ、はじめて腐敗政治の追及ができるという関係にあるわけですから、私たちは他の野党にもはっきり求めていきたいと思うのです。

 たとえばこういう問題があったのです。野党で共同で機密費の減額の修正を出そうかという話が私どもにもちこまれたことがあったのです。私たちは機密費を減額するというのは当然(という立場)なんですが、まず真相究明をやることがいまは大事であって、その真相究明をあいまいにして、たとえば官邸機密費が四分の一ならばいいかという結論は出ないのです。ですからこれは、共同提案には乗れない話だとお断りした経過があるんです。(早野「そうでしたね」)

 機密費の問題については、本当に使途が明らかにできないお金が国の予算のなかに、ある一部分はありうることであって、これは後にちゃんと公開することも含めて、必要な手だてをとるということは、ありうることなんですよ。

 しかしいま問題になっているのは全然別の問題で、さっきいったように党略的に機密費を食い物にしたという話です。そして、その食い物の一部が野党にもまわっていたという問題ですから、これはほかの野党もみずからをきちんとただす必要があります。「共産党だけは呼んでもとりにこなかった」という証言もありますけれども、私たち呼ばれた覚えもないんですけれども(早野「そうですか」)、とりにいった覚えはもちろんありません。

 この問題では、他の野党もきちんとする必要があるということはいいたいですね。

 早野 そこが本当の意味で変わっていかないと自民党への失望が野党への期待につながっていかない。この二つの問題は今後もきびしくただしていってもらいたいと思います。

 志位 はい。

 

いまの経済危機と打開の方向をどう考えるか

 

 早野 世界に目を転じますと、世界株同時安みたいで、アメリカの株も下がる、日本の株も一万二千円を切ってしまう、ヨーロッパも飛び火しているらしいという事態。国民としてはとりあえず、生活一生懸命やっているけれども、これから先どうなるんだろうと。このあたりはどういうふうに見通されているのか、それからどういうふうに立てなおしていくのか。このあたりはどうですか。

 志位 まずいまの株の暴落という問題ですが、アメリカの株の暴落自体はアメリカの経済自体がこの間バブルだったということは、これは常識の話ですから(早野「そのようですね」)、これは一つの崩壊の過程が進んでいるということだと思うんです。

 日本も、それに影響されているという面はあるんですけれども、日本のいまの株の暴落というのはそれだけに解消してアメリカのせいだからしようがないということでは決してない。日本の経済が、もしほんとうにしっかりしていたら、アメリカの株が落ちた分、資金が日本に回ってくるということもあるわけですからね。

 早野 むしろ、そういうことだったんですけどね。

 志位 そうならないというのは、日本の経済自体が大変な問題を抱えているわけです。株というのは実体経済を映す鏡なわけですよ。つまり、実体の経済がいまほんとうに荒れ果てている、冷え込みきっているというところにいまの一番の問題があります。実体経済のなかでも、経済の六割を占める家計消費が九二年以来、八年連続マイナスなわけです。ずっと下がりつづけている。

 早野 家計消費がね。

 

97年いらいの所得、消費の大きなおちこみ――
三つの要因

 志位 とくに九七年以降がひどいんですね。九七年以降の数年間で家計消費、可処分所得、両方ともマイナス四%くらい、減っているんですね。つまり、小渕内閣、森内閣のもとで、「景気重視」といいはじめてから、この一番の経済の主力がうんと冷え込んでいる。これが一番のいまの問題で、ここに直接のテコ入れをすることが政治の責任だと思うんです。

 なぜ、こう冷え込んできたのかというと三つくらい問題があると思うんです。

 一つは、九七年に消費税を引き上げて、増税政策で国民の所得を奪った。

 早野 一連の国民負担増がありましたね。

 志位 二つ目に、社会保障の問題で、介護、医療、年金、それぞれ給付カット、負担増。ここでも国民に犠牲を負わせて将来不安をひどくつくりだした。

 三つ目に、リストラ応援の政策をとったということです。「産業再生法」をはじめ、大企業がリストラをやればやるほど、減税をやってやるという仕掛けをつくって(早野「そうですね」)、大企業の全体をリストラの競争に駆り立てた。

 リストラの競争というのは、私たちは、(大企業が)それを始めたときにきびしい警告をやったんです。一つ一つの企業にとってみれば、バランスシートを回復して収益があがるかもしれない。しかし、社会全体がリストラ運動をやったら、所得が下がる、消費が下がる、景気が悪くなる。結局、この悪循環にはまってしまったら、企業の収益もあがらなくなる。このリストラ運動を社会全体で競争をはじめるということになったら、たいへんな景気の破局につながるということを警告したのです。いまの事態というのは、まさにそういう事態が起こっている。

 つまり、リストラをどんどん各企業がやる、所得が下がる、消費が冷え込む、需要が落ち込む、デフレが起こるわけです。デフレが起こって、ますます企業の収益自体があがらなくなる。そしてまたリストラをひどくやる。この悪循環に、いま日本の経済は、陥っているわけで、ここを絶つことが非常に大切です。

 対策ということでいうならば、いまいった三つの問題点があるわけですから、逆の対策が必要なわけですよ。

 早野 なるほど。

 

家計を直接応援し、草の根から経済があたたまり発展する方向に政策転換を

 志位 一つは、税についていいますと、消費税の増税なんて声が財務相からあがっていることはとんでもないことで、増税やらないということをはっきりさせることは当然です。それからいま全労連が三%に戻せという要求を掲げています。きのうの「日経」をみましたら、アメリカのエコノミストからもやっぱり消費税減税しか手がないという声があがっています。これは当然の声だと思いますね。

 早野 それによって消費の喚起。ここが冷え込んでいるのが、景気の基本的な不振の理由ですからね。

 志位 二つ目に、ことし一年間をとってみても、社会保障の関係だけで二兆円以上の負担増、給付減があるんですね。この計画、それから将来的な切り捨ての計画をやめて、社会保障という面での安心と将来の展望をきちんと示すこと。

 三つ目にリストラ応援策をやめることですね。リストラ応援の法制度はすべてやめる。逆に労働時間を短縮して雇用を増やす。サービス残業をなくして雇用を増やす。こういうまともな方向に経済政策、雇用政策を転換するという、かなり思いきった政策転換をはかる必要があると思います。

 早野 いまいわれたリストラその他も構造改革だと、従って痛みをともなうという議論がありますが、それは違いますか。民主党などでも構造改革論がかなりあるもんですから。

 志位 そこもかなりの考えの違いがあるんです。構造改革の名でやってきたことは、一つはリストラ競争と、もう一つは規制緩和です。だいたいこの二つです。

 そのリストラ競争の結果がいまの事態を生んでいるというのはさっきいったとおりです。個々の(大企業の)目先の利潤追求をただ奨励するという政策ではなくて、もっと中長期的な経済の発展を見通して、国民の家計をしっかり応援する、そして経済が草の根からあったまって成長していく方向に切り替える必要があるわけです。構造改革という言葉でいわれてきた中身が間違っている。

 規制緩和の方も、たとえばその名前でやられてきたのは、たとえば大店法をなくして地元商店街を荒らしてしまう。これは一見効率よくみえるけれども、その地域にとってはかけがえのないコミュニティーを壊すわけですね。

 早野 そういう要素は確かにあるんですが…。

 志位 これは、ヨーロッパでも商店街を守るという方向になっている。これは長い目でみたら、その地域の経済、あるいは生活、文化にとってかけがえのない財産ですから。そういうものをどんどん壊していっていいのかが問われていると思うんです。

 

どの野党が伸びれば
自民党政治を変えられるのかを
野党間で大いに論争したい

 

 早野 ほんとうはそこをとことんつめて考えなければいけない時期なんですが、政治空白ということでどうしたものかと思うんです。

 自民党大会が昨日あって、自分たちはたいへんな逆風にあっている、しかし自分たちが政権からおりて相手に渡せるのか、四つの野党がまとまるという話になっているが、政権構想があるのか、経済政策の違いは調整できるのかと。とにかく共産党がはいっている政権にゆだねられるのか、と、自民党のいつもの(やり方で)最後になると悲鳴あげるようないい方で、野党政権なるものは幻想だと強調して、支持をつなぐという作戦がみえるわけです。

 この展望はいかがですか。野党で結んで政権をつくるという…。

 

野党関係――
一致点での共闘とともに、相違点はおおいに議論を

 志位 四野党のあいだで可能な共闘というのは国会内共闘なんですよ。国会内で森自公保政権を一刻も早く退陣に追い込むという共闘では大いにいっしょにやっていけると思うんです。あるいは、本当に限定的ですけれども、予算の組み替え要求も出しました。これは一歩前にすすんだと思うんです。

 早野 これは明らかに政策のところで調整がありました。

 志位 しかし、機密費一つとってもさっきいったような問題が出てきます(早野「そうですな」)。それから経済政策でも、構造改革のようにはっきりいって百八十度違うような問題が当面の問題でもあるわけですね。ですから、(森自公保内閣を)倒すところまでは一致できますけれど、そのあとの展望について、野党間で私たちの党とその他の党に共通の政策上の一致があるわけではありません。それは一つの事実ですから。

 いまの状況で大事なことは、都議選と参院選という審判の機会があるわけですから、ここで自公保政権にきびしい審判をくだす。そしてもう一つは野党の間でも大いに競争する。いったい国民の利益からみて、どの野党が伸びれば、本当の意味で政治を変える力になるのか、いまの自民党の政治、汚れきった、腐りきった国民不在の政治を転換する一番力のある野党はどの党なのかということを、あらゆる問題で議論しあって、大いに論争もやって競争もやっていくのが、私たちの立場です。

 早野 そのあたりの結論がほしいという気がします。自民党はほとんど「拒否政党」になっています。そのときに野党がどうなっているのかは、自然の国民の心配であって…。

 

「きれいな力で新しい日本を」――
日本共産党の躍進をめざす

 志位 今度のKSDや機密費というのは汚れたお金で政治をゆがめるというところに共通項があります。それにたいして、ほんとうにこの汚れた政治を大掃除していく必要がある。“きれいな力で新しい日本を”、というのをキャッチフレーズにしているんですけれど、やはりきれいな清潔な政党が伸びてこそ、いまの政治を変えられるというところを真正面から訴えて、いまの事態を突破したいと思います。

 早野 わかりました。どうもありがとうございました。