2001年2月11日(日)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が、九日の衆院予算委員会でおこなった総括質問(大要)を紹介します。
志位和夫委員長 私は、日本共産党を代表して、森総理に質問いたします。
志位 まず、KSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)汚職についてであります。
自民党にかかわる金権腐敗事件は、戦後、数々繰り返されてきたわけでありますが、このKSD汚職というのは、これまでにない新しい悪質な特徴があると、私は思います。それは、自民党に流れ込んだ二十億円以上ともいわれる政界工作資金の原資、元手が、不況で苦しむ中小企業のみなさんの共済掛け金であった、この点であります。
KSDというのは、ご存じのように、もともとは中小企業の経営者、圧倒的多くは零細業者のみなさんを対象にして、災害補償の共済を運用することを目的とした公益法人であります。業者のみなさんがけがで働けなくなったときのために、月二千円の共済掛け金を払う。年間二百五十億円の収入があります。ところが、そのうち本来の災害補償に使われているのは八十三億円。残りはほかのところにまわっていた。
ロッキード事件、リクルート事件、ゼネコン事件、いろいろありました。しかしこのとき、政界にワイロとして流れたお金の元手は、大企業が稼いだもうけです。その一部が渡ったんです。こんどは中小企業の共済掛け金のなかから、自民党がお金を吸い上げた。ここに新しい問題点があると思います。中小企業のみなさんが災害に備えて、みずからの福利厚生のための掛け金と思って出したお金が、自民党の「福利厚生」に使われていた(笑い)。これが、今度の事件の特別な悪質さであります(「そうだ」)。私は、この事件を見ますと、自民党も落ちぶれるところまで落ちぶれ果てたという感を強くするわけであります。
わが党のおこなっている「KSD汚職告発ファクス・メール」というのがありますが、たくさんの声が寄せられます。中小業者の方々からの怒りの声であります。「保険として納めた掛け金を自民党が食い物にしたのは許せない」「詐欺にあったような悔しさだ」「自民党は掛け金を返せ」。こういう声であります
まず、総理にうかがいます。総理は施政方針演説のなかで、KSD事件について「残念」の一言しかいわれませんでした。私はこれを聞いて、率直に(いって)驚きました。さすがにその後の本会議の答弁で、「党所属議員から逮捕者が出たことはおわびする」、こうのべましたけれども、この問題というのは、個々の自民党議員の不祥事にとどまる問題ではありません。不況に苦しむ業者のみなさんの共済掛け金から自民党そのものに巨額の資金が流れていた。これがこんどの問題の本質であります。(ヤジで騒然)
ですから、この問題について、自民党そのものにお金が流れていたことについて、党の責任者として責任を感じないのか、痛みを感じないのか、反省や謝罪はないのかということを、まず率直にうかがいたいと思います。
森喜朗首相 今回のKSDをめぐる事件につきましては、いま志位議員からご指摘があるまでもなく、政治に対する信頼を損なうというきわめて深刻なものであるということは、受けとめております。したがって、本会議でも私は率直におわびを申し上げておりますし、また、一言で片付けるようなそういう姿勢を私はとっておりません。
ただ、KSDに関しては、いま古関前理事長が逮捕され捜査はすすめられておりますから、その捜査については、われわれもできる限り党の部分としては協力していかなきゃならんだろうと、そう申し上げてきたところです。
ただ、いまお話のなかに、あたかも党がそのお金を吸い上げていく、そういうご発言はまさにこじつけであって、私どもとしてはKSDという団体、そしてそれを支援してくださるみなさんが、みなさんのお気持ち、浄財のなかから党員を集め、党員として参加してくださった、そのことを手続きとして私どもはしっかりと認めて受けとめてきたわけでありまして、しかし結果としていろいろな問題が生じておることは、これは私は率直に認めます。したがって、これらについて改めるところは即刻改めなければなりませんし、捜査は行われていることでありますから、それと並行して党としても十分協力していかなければならんし、そういう結論が出れば出たなかで、自民党としてもどういう対応ができるかみんなでまた協議していかなきゃならんと思っているところです。
志位 いま総理は、「党に流れているという指摘はこじつけだ」といいました。これはこじつけでもなんでもない、事実そのものであります。
まずこのパネルをご覧いただきたい(パネルA)。いままで判明しているだけでもKSDの資金は、四つのルートを通じて流されています。
まず第一のルートは、私は「トンネル献金ルート」と名付けましたが、そういうルートであります。財団法人KSDからKSD豊明会を通じ、自民党豊明支部を通じ、豊政連を通じ、そして自民党を中心に百十二氏への陣中見舞い、パーティー券などに流れた。これは政治資金収支報告書などで明らかなお金であります。
そもそもKSDというのは公益法人ですから、政治献金ができません。そこでKSD豊明会という任意団体をつくって、これをトンネルにして政治資金を流した。これを自民党の支部が受け取っているんですから、自民党にお金が流れ込んでいるじゃありませんか。九五年から九九年の五年間で、二億数千万円のお金がこのルートで流れております。
第二のルートは、私は「党費肩代わりルート」と名付けましたが、このルートであります。小山前参議院議員、村上参議院議員、彼らを比例の名簿の上位に載せるために、KSDが幽霊党員をつくり、党費の肩代わりをおこなったということは、広く指摘されております。後でこの問題は詳しくやります。
ここでは、九一年から九九年の政治資金収支報告書を調べましたら、推計で約十八億円ものお金が自民党本部に流れ込んでいる。約四十四万六千人分の党費の肩代わりの疑惑であります。
第三のルートは「広告費ルート」。これはみなさんの機関紙、自民党の「自由民主」という機関紙の広告費として流れたお金です。これは判明分、九八年から二〇〇〇年の三年間分だけで、二億四千万円であります。これは事実上の政治献金と同じであります。
最後に、第四に、「ヤミ献金ルート」であります。「ヤミ献金ルート」というのは、これは額はわかりませんけれども、すでに報道等で明らかになっただけでも、一億円以上の金が、これは個々の議員ですけれども、渡っております。小山孝雄前参議院議員、額賀福志郎前経済財政大臣、自民党の国会議員六人から八人、村上正邦参議院議員、彼らにヤミのお金が渡った。これが四つ目のルートです。
重要なことは、第一のルートから第三のルートまで、これはすべて自民党そのものにお金が流れ込んだという問題なんです。第一のルート、第二のルート、第三のルートは、自民党の豊明支部、そして自民党本部、ここにお金が流れ込んでいる。私たちが自民党が丸ごとKSD資金に汚染されているというのは、このことを指していっているのであります。
志位 さて私は、この問題について、きょうは一つひとつただしていきたいと思うんですけれども、まず第一のルートからいきますから、よくお聞きください。一つひとつやりますから。第一のルートの「トンネル献金ルート」であります。この「トンネル献金ルート」というのは、KSD豊明会から自民党東京都豊明支部に、五年間で二億五千七百四十万円が渡っているのは、政治資金収支報告書で明らかなんです。これは間違いのないお金の流れです。
そうしますと、(KSD)豊明会から(自民党東京都)豊明支部に渡った二億五千七百四十万円の原資は何か、元手は何かということが問題になります。私は豊明会の実態から見て、この政治献金の元手は財団法人KSDからKSD豊明会に、九年間で二百三十億円流れている補助金以外にありえない。つまり会員さんの共済掛け金以外に、自民党に流れた政治献金(の元手)というのはありえないと思いますが、これはどういう認識でしょうか、総理、認識をお答えください。
首相 KSDにいたしましても、豊明会にいたしましても、私ども自由民主党がつくったり、あるいは自由民主党が管理・運営している団体ではございません。それぞれのみなさんのなかに、これまで不祥事が発覚したり、いろいろ問題点があることは承知をしておりますから、いまそのことで捜査をされているわけでしょ。ですから、その捜査が判明しない間に私どもとしてはそのことについていま、あるいはまたその資金の流れがどうであろう、こうであろう、あなたはいろいろ推定でおっしゃっているわけでしょうけれども、われわれはそのことについて容認するわけにもまいりませんし、われわれは相談をして、そういう形をつくったものでもないわけであります。ただ、非常にこのことについてはわが党としても深く反省をしなければならない点は多々ございます。ですからあえて協力しなければならんことは、捜査にしっかり協力もしていきたいと申し上げているところです。
志位 総理のご答弁は、要するに原資については知らないということですね。そういうことだったと思います。しかし私は、これは、知らないではすまない問題だと思います。そこで資料配布をお願いしたいと思います。
総理、その資料をよく読みながら、お聞きください。もちろんご存じの資料だと思いますが、これは、KSD豊明会の九五年度から九八年度までの収支決算書であります。四年分です。これは正式に旧労働省から私どもがいただいたものですから、あなた方から出た資料であります。
それぞれの年の収支が書かれているわけでありますけれども、わかりやすく議論する上で、こういうパネルを作ってまいりました(パネルB)。これは、KSD豊明会から自民党東京都豊明支部への政治献金が始まった九五年度(平成七年度)のKSD豊明会の収支決算書の概略のパネルであります。この年には、KSD豊明会から(自民党)東京都豊明支部にたいして八千五百四十万円の政治献金がなされております。この八千五百四十万円の原資はいったいどこから来たのか。この表をご覧ください。そこに詳しい表がありますから、そっちを見てくださっても結構です。
これを見ますと、左は収入の部、右が支出の部でありますけれども、KSD豊明会というのは三つの収入しかありません。上からいいますと、「KSD補助金収入」、「会員負担金収入」、「雑収入」、三つしかないんです。この三つのどこかから政治献金が出たということになるわけですね。
一番下の「雑収入」は五十一万円しかありませんから、五十一万円から八千五百四十万円のお金が出てくるわけありませんから、「雑収入」から出たということはありえません。
つぎに、真ん中の「会員負担金収入」というのが二億五百四十六万円ありますけれども、これは、KSD豊明会がいろんな福利厚生活動をやる、そのときの一部会員負担金であります。支出の部の「福利厚生費」を見てください。この費目と、「会員負担金収入」の費目がぴったり一致している。「スポーツ関係」「旅行関係」「文化・教養関係」「現代生活向上関係」「青年部関係」「婦人部関係」「特別企画」と、全部費目が一致するでしょ。ですから「福利厚生費」の一部負担金が「会員負担金収入」なんですよ。これは明らかなんです。そして、この「会員負担金収入」が全部「福利厚生費」に支出されたというのは、「会員負担金収入」が二億五百四十六万円にたいして、「福利厚生費」は五億六千六百五十四万円ですから、こちらが額が多いんですから、これは「会員負担金収入」が全部これに使われたことは明らかであります。この点について、野党の共同プロジェクトチームがKSD自体にお聞きしましたら、七井國雄さんという理事さんが、この負担金というのは「使いきり」でこっちに使われている、「福利厚生費」に使われていると明言されました。となりますと、これは「福利厚生費」に使われているお金ですから、「会員負担金収入」から八千五百四十万円の自民党への政治献金が出てきようはずもありません。
残るは一つです。「KSD補助金収入」の二十三億九千百四十二万円。ここからあなたがたへの政治献金は出た。これ以外、説明のつけようがないじゃないですか。その表を見たって明らかでしょう。この点はどうですか。はっきりお認めください。簡単な話です。
首相 先ほど申し上げましたように、そのKSD問題については、いま捜査をしているところですね。いま、志位議員がそうして計算をなされば、それはそれなりの一つの論理立てかもしれません。KSD財団ですか、その会計の処理について、おおやけ的なこと、あるいは私的なこと、混然一体となっていたということで、これは、新聞を読んだところですがね。そういうことで、労働省からも、たびたび指導も受けていたというふうにも聞いております。したがって、その会計処理等については、私どもも、そういうことを細かにすべてを承知しているわけではありませんが、先ほどからたびたび申し上げておりますように、いまそのことは捜査をいたしておるところでありますから、その中で、いま志位さんが示されたものはわかりますけど、ですが、その問題を、そういう計算を私に認めろといわれましても、そこはやっぱり、きちっとした捜査の結果を見て、われわれは対応していかなきゃならん、と思っております。
志位 捜査するまでもなく、捜査の前にきちんと出された資料ですよ、これは。政府から出された資料だけでも、これだけでも、もう明らかではないかと(「そうだ」「どうして認められないんだ」)。どうしてこんな簡単なことが認められないのか。捜査の結果を待つまで何もやらないというんだったら、総理大臣として、この問題にふたをするという態度じゃありませんか(「そうだ」)。だめです、そんな答弁じゃ。
総理がなかなかこういう簡単な問題をよくおわかりにならないようなんで、厚生労働大臣の坂口さん。そうでしょう、これは。それ以外にないでしょう。政治献金の出所は補助金以外にないでしょう。共済掛け金以外に。あるとしたら、どこに出所がありますか。
坂口力厚生労働相 いま、それこそ調査中でございまして、ここのところがどうなるかというところは、地検の調査を待ちたいというふうに思っておりますが、われわれはわれわれで調べてはおりますけれども、そこには一定の限界がございます。やはり、いままでわれわれが聞いておりましたのは、そういうことではなかったということでありましたけれども、やはり、いままでのKSDの質問には無理があるということも承知をしております(志位「何に『無理がある』といったのですか」)。いままでのKSDの主張には(志位「主張には無理がある」)無理があるということも、私たちもそう思ってはおりますが、しかし、さりとて、いま示されましたように、具体的にこうだと決めつけられましても、そうだというふうにいうわけにもまいりません。
志位 「KSDの説明には無理がある」というふうにおっしゃいましたね。つまり、これまで労働省は、政治献金は「(KSD豊明会の)自前の収入から出していた」という説明をやっていたわけです。「自前の収入」というのは、「会員負担金収入」から出してきたと。しかし、これはもう「福利厚生費」に使われている。これはもうこの表を見ただけで明らかなんですよ。これは事実なんです。あなた方が出してきている表なんです。これまでの説明で「無理なところもある」と、いうふうに認められました。「無理なところがある」だけじゃなくて、明々白々じゃないですか。では、いったいどこから出たというんですか。八千五百四十万円の政治献金。どこから出たんですか。
首相 ですから、そのことをいま捜査解明をしておられるわけでしょう。(笑い)
志位 だから、この表を見れば明らかじゃないですか。(KSD豊明会の)収入というのは「補助金」か、「一部負担金」か、「雑収入」しかない、この三つしかないんです。「雑収入」から出ようがない。「一部負担金」からも出ようがない。それでは「補助金」からしか出しようがないではないですかと(ヤジで騒然)。では、どこから出たんですか。八千五百四十万円。どこから出たんですか。
首相 ですから、そうしたことも含めて、いま捜査をしているわけでしょう。私どもは、その捜査を待ちたいし、まして、いまあなたのように、なにか自民党がそういうルートをつくって、自民党が吸い上げているかのようなことを、決めつけておっしゃっているわけでしょう。私たちは、党として、党員を、KSDのグループが、わが党の参議院議員を支持してくださった。これは党議で、グループで決定してくださったことだと思います。どういう手続きをしたのか、私は承知しておりませんがね。しかし、少なくとも支持をしてくださって、そして二人の参議院議員を応援していただいたわけです。そういうなかから、党員をつくって出していただいた。その手続きは、まったくまちがってないわけです。しかし、いま、いろいろあなたから指摘がありましたように、厚生労働大臣もお話しのように、確かに無理な点もあります。ですから、そういう真相の解明を待って、われわれとしても十分、その対応もしていきたいと申し上げているわけなんです。
志位 「無理な点」というのはどういう点ですか。
首相 厚生労働大臣が「無理な点」とおっしゃったのは、どの点か、私もわかりませんが(笑い)、あなたがいま示された数字を、そのまま全部そうだということであれば、多少、説明のところに無理があるのかな、という感じがするということを申し上げている。しかし、あくまでもそれは、志位さん方、共産党のみなさんがおつくりになったものだということです。
志位 さきほど、厚生労働大臣が「無理なことがある」といったのは、これまでの説明が無理なことがあるということをいったわけでしょう。これまで労働省は、自前の収入から政治献金を出していたと。それについて「無理なことがある」といったんでしょう。「無理なこともある」とおっしゃったんですね。(坂口厚生労働相の方をみて)うなずいていますよ。総理、「無理なことがある」といっているわけです。私は「無理なところもある」どころじゃなくて、いまの資料で明白じゃないか(といっている)。これだけいってもあなたがこれだけ明々白々な資料を示しても、はっきり認めないというのは驚きました。
KSDというのは公益法人なんです。公益法人というのは、あなた方が九六年に出した閣議決定でも、「設立許可および指導監督基準」について、「後援会等特定個人の精神的、経済的支援を目的とするもの」は、「公益法人として適当でない」といっています。だから、政治献金はできないんですよ(「そうだ」)。それを(KSD)豊明会というトンネル団体をつくってやった。もうこれは動かぬ資料じゃありませんか。あなたは、私が何度聞いても、政治献金八千五百四十万円がどこから出たのか、原資を明らかにできなかった。二十分間聞きましたけれども、明らかにできませんでした。全部、司直まかせだという。こんなに明らかなことを明らかにしないというのは、まさに疑惑隠しの態度で、許し難い態度だといわなければなりません。
志位 第二に、「党費肩代わりルート」についてうかがいます。
KSDによって、幽霊党員づくりと、巨額の党費の肩代わりがおこなわれていたことは、すでに広く指摘されていることであります。わが党の千葉県の比例事務所にこういう内部告発がありました。
「KSD本部から、千葉支局で一万人の自民党員をつくれ、という指示が来た。これは古関氏からいってくる。KSDの名簿、自民党後援会員の名簿、学校の卒業生名簿を勝手に使い、職員が三文判を数百個買いに走ってそろえてくる。それをどんどん書いて、本部に送っている。職員間では、“こんな仕事っておかしい”と声があがったが仕方なくやった」
幽霊党員づくりの現場のリアルな証言であります。これが事実とするなら、党費名目で巨額のヤミ献金が自民党本部に流入していることになります。そういうヤミ献金で議席を買ったということになります。総理にうかがいますが、党費の肩代わりという疑惑は広く指摘されているわけです。みんな新聞も書いてあるわけです。この疑惑について、党の責任者として責任をもって調査をやりましたか。調査をやったかどうかをお答えください。
首相 これもですね、予算委員会ですから、志位さんはそういうふうに一つの結論を決めつけておっしゃる、初めから肩代わり党員というふうに決めつけられるのは、これもまた失礼な話だと思いますよ。そういう投書もあったんでしょう。しかし、これまで多くの豊明党関連の党員のみなさんも、わが党を一生懸命応援してくれて、純粋に党員を獲得してくれた方々もいるわけですから、そういう方々も私どもよく承知をしておりますので、それなのにそういう人たちも含めて肩代わりだとか幽霊だとか、そういうふうに、あなたはそう思われるのは結構です。ですけど、それを私に認めろとおっしゃるのは無理な話です。
志位 私が聞いたのは、これだけ広く疑惑が指摘されているわけですから、党の総裁として責任をもって調査をなさったのか、なさっていないのか、ということなんです。
首相 それは捜査をいまいたしております(志位「捜査とは何ですか」)。わが党の場合、調査です。調査はもちろんいたしております。しかし手続き的には、たびたび申し上げておりますが、共産党さんにはいま初めて申し上げることになりますが、各支部を通じて、そして届けてこられるわけです。それが都道府県連支部に入るわけです。その都道府県連、東京都、千葉県あるいは茨城県にそれぞれあるわけですね。そこでまた精査をして、そして党本部に名簿が送られてくるわけです。ですから私どもとしてはそれは正式な手続きを経て、誤りのない手続きとして入られたものであると、われわれは理解をしておる。しかしこういう問題がいろいろ指摘をされておりますので、ですからどこにどういうような間違いがあったか、あるいはいまあなたが指摘されるようなことがもしあるとするならば、どういうやり方をしたのかということはやっぱり調べる必要があるということで、いま党にたいしてできうる限りの調査をして、報告をまとめなさいということを総裁として指示をしております。
志位 調査は始めているけれども、入党の手続きに間違いなかったという答弁だったと思います。
それでは、一つひとつたずねていきたいと思うんですが、これは自民党東京都豊明支部の党員数の推移であります(パネルC)。これは政治資金収支報告書によって作成したものですから、間違いありません。
九四年に四万人、九五年に六万五百二十人、九六年はゼロです。九七年に七万四千百六人、九八年に九万九百五十九人、九九年に七万六千八百二十八人です。なぜ九六年にゼロなんでしょうか。
もし実体のある支部だったら、六万人からいる党員が一気にゼロになってしまうということを、どう説明するんでしょうか。総理、どうでしょう、あなたの支部の問題ですから。
首相 そこのところ指摘を受けたことがございましたから調査をいたしますと、政治資金規正法にもとづく書類の保存期限を経過していることもありまして、詳細については確認できなかったそうでありますが、平成八年は党費納入締め切りを六月末から十二月末に変更した移行期であったために、党費納入が結果として翌年にずれ込んだ、そういう支部もあるそうであります。東京都豊明支部についてもおそらく、そういう事情があったのではないかとそういう報告を受けております。
志位 東京都の支部がそうなったというのですが、自民党に「豊明」と名のつく支部の数は、全部で四つあります。私は全部調べてみました。これも政治資金収支報告書からのものであります。九一年から九九年までのすべての経過であります(パネルD)。(棒グラフの)この青い部分は東京都、ピンクは神奈川県、黄色が千葉県、茶色が埼玉県であります。
まず首都圏三県で、どうもこの豊明支部の活動が始まったようでありまして、九一年、九二年、この二年間はだいたい二万人程度の党員を集めております。おそらく村上さんのためのものだと思います。そして九四年、九五年は五万人から七万人の党員を集めております。おそらく小山さんのものだと思います。九七、九八年は九万人、十万人の党員を集めております。これはおそらく村上さんのものだと思います。
党員総数、これを全部合わせますと、のべ四十四万六千百十二人になります。肩代わりしたとしますと党費の総額は十七億八千四百四十五万円になります。十八億円近いお金の肩代わりの疑惑がある。
この九六年を見てください。四つの支部が全部いっせいにゼロになっているでしょう。東京の支部がゼロになっているだけじゃありません。神奈川県もゼロになっている。千葉県もゼロになっている。埼玉県もゼロになっている。こんなことがありえますか。いっせいにドロンと消えちゃう。まさに幽霊支部だったことの証拠じゃありませんか。どうしていっせいに消えるんですか。説明してください。さっきの説明ではまったく納得できません。
首相 これもあなたは決めつけてお話しになっていますけれども、今、申し上げたようにこれはわが党の会計の処理上の帳簿の締め切りの問題であったのではないかといわれているわけでありまして、これは党本部のわれわれがやるのではありません。支部がまとめて上申をしてくるわけでありますから、その報告だけを見て、だれのために集めたとか、それはあくまでも憶測じゃないでしょうか。
志位 全然話になりませんよ。それでは、九六年は自民党にたいする党費は、全国で全部ゼロだったっていうんですか。そうじゃないでしょう。豊明支部だけ、どうしてゼロになるのか。みんな別々の支部なのに、どうしてそろってゼロになるのか。説明にならないじゃないですか。(「そうだ」、議場騒然)
首相 それはわが党に多くの支部がありますから、そういう会計操作をしたところもあるかもしれませんし、きちっと出したところもあるでしょうし。それはあなたの方で決めて、全部がないからみんな同じにしなきゃおかしいというのは、共産党ならそれができるのかもしれませんけど、わが党は自由にみんながそれぞれ自主的にやってることですから。
志位 七万人もの党員が九五年に登録されていながら、一気にドロンと消えちゃうと、つぎの選挙になったら、また今度は九万人の党員がぞろぞろっと現れてくると、まさに幽霊の行動です。あなたの説明は、到底国民が納得しうる説明ではありません。(議場騒然となる)
野呂田委員長 静粛に願います。
志位 具体的に、さらに生なましい話を出しましょう。私どもの「しんぶん赤旗」としてこの問題で特別取材班をつくりました。埼玉県のKSDの関係者に直接お会いしまして、党費肩代わりの実態をつぶさに聞くことができました。次のようなお話でした(議場騒然)。静かに聞いてください。
「一九九七年ごろのことだと思うが、自由民主党埼玉県連から、KSD埼玉支局に段ボール箱が送られてきた。自民党埼玉県豊明支部の代表者あてのものだった。段ボール箱を開けてみると、自民党の党費を振り込むための用紙がぎっしりつまっていた。党員の欄には、知っている埼玉県のKSD会員の名前が印刷されていた。あて先になっている自民党豊明支部の代表者に送ったら、『何だこれは、こんなものは私は知らんぞ』と文句をいってきた。
代表者も知らないというので、KSD本部で政治関係をあつかっている豊政連幹部に電話した。KSD本部では、豊政連と豊明会は同じ七階にあって、事実上一体で仕事をしている。その幹部は、『段ボールをそのまま豊政連に送ってくれ』という。会員を党員として党費を立て替えているな、とすぐにピンときた。そもそも自民党埼玉県豊明支部の代表者すら知らないことなのだから、他の会員が自分が党支部の党員だと自覚しているはずもない。その後、ほぼ毎年のように、自民党埼玉県連から、自民党埼玉県豊明支部代表者あてに段ボール箱が送られてくるが、事情がわかったので、そのままKSD本部に送っていた。本当に党員が存在するのなら、自民党埼玉県豊明支部を通じて、一人ひとりの党員あてに党費振り込み用紙を送らないといけない。しかし、そうしたことなど一度もない。そう指示されたこともない。全部、KSD本部に送った。党費を自分で支払っている自民党埼玉県豊明支部の党員なんて私は聞いたことはない。本部内の操作で、立て替えて払っていることは、疑いのないことだった」
こういう証言であります。私たちが直接聞き取った話であります。自民党の党費をどうやってお集めになるのか、いろいろとうかがいますと、だいたい毎年三、四月に党本部から、一人ひとりの党員あてに党費振り込み用紙が自民党県連を通じて支部に送られてくる。そして支部がそれを一人ひとりの党員に届けて、党費を振り込んでもらうわけでしょう。これが決まりだと聞きました。本当に党員がいるなら、党費振り込み用紙を一人ひとりの党員にわたして、一人ひとりの党員から党費を集めるという手続きが必要なはずでしょう。ところが、党費振り込み用紙が段ボールで来た。それをボーンとKSD本部に毎年送っていた。これはまさにKSDが党費を肩代わりした生なましい話じゃありませんか。実態をちょっと調べればこういうことは出てくるんですよ。総理、こういう事実を知りませんか。
首相 党員をいろいろと集めて努力してくださる、地方の支部の方、議員の方、あるいは組織の方、いろんなケースはあります。たまたまあなたがお読みになったものも、お調べになったのも、本当に確かなものなのか(志位「確かなものです」)、いやあなたは確かだとおっしゃいますけど、われわれにはわかりません。つくられたものかもしれませんしね。私は認めないとはいっていないんです。(「失礼じゃないか」の声)失礼じゃないでしょう、そんなことはありませんよ。ですから、要はそれぞれ党員の集め方については違いがあるわけでして、ですから、それを一概に、立て替えとか幽霊というような、いいかたをされるのは私どもにとっては迷惑な話だと申し上げているんです。ですから、そういうふうにしてまとめてやられる方もありますし、個々でやる方もありますし、いろいろございますよ。志位さんの党は、全員全部手渡しでやられるわけですか(志位「一人ひとりが納めます」)。全部そうですか。参考になりました。
志位 まとめてやる場合もあるんですか。まとめてやるっていうのは、だれか別に肩代わりをするという場合もあるんですか。
首相 われわれは全部下まで直接指導するわけではありませんから、いろんなやり方やってらっしゃるようです。私どもはそれを党員の下部機構といいましょうか、党員のみなさんが集めてくださることをわれわれとしては感謝をしながら、大事にしているということです。
志位 その際は、その支部はその党費をちゃんと集めてなくて、肩代わりのような形でやられていても、それは知らないということですか。それも支部の自主性ですか。
首相 ですからさっき冒頭に申し上げたように、いまそういう手続き的にいろいろ指摘もされて批判もうけていることを、われわれとしても責任を感じて、調査をいたしておると申し上げたんです。ですが、私どももみなさんもそうかもしれませんし、やはり地方には県議会、市町村議会があり議員がいるわけです。その議員が、いろんな工夫をしながら党員登録をするわけです。たとえばなかなか期限が間に合わないときには、とりあえず立て替えるときもありうるでしょう。締め切られてしまうこともあるんですから。ですから、そのためには後から回収していくというやり方をしているのもありますし、それは全部違いますよ。
志位 それでは私たちが調べた具体的な話をいたしましょう。埼玉県の自民党豊明支部はこういう実態でしたので、さらに東京、千葉、神奈川の自民党豊明支部の実態についても私たちは直接調べてみました。それぞれの支部の「代表者」として各都県に届け出がされている方に直接お会いして、支部の「代表者」にお話をうかがいました。その結果は驚くべき結果でありました。
まず、自民党の東京都豊明支部の「代表者」として届け出が出されている方にお話をうかがいましたら、こういうお話でした。「自民党東京都豊明支部の代表者になったという認識はない。政治資金収支報告書の書類が回ってきたこともないし、はんこを押したこともない。自民党豊明支部の会合が開かれたことも、出たこともない」。知らないというのです。この人が東京都の「代表者」とされているのです。
次に、自民党千葉県豊明支部の「代表者」として届け出が出されている方にうかがいました。「代表者になってますか」と聞きましたら、「それは知りません。全然知りません。自民党員になったことはありません。自民党の党費を払ったこともありません」。「代表者」(とされている)の方がこうお答えになっているのです。
もう一人。自民党神奈川県豊明支部の「代表者」として届け出が出されている方にもお会いしました。その方は、「自民党については、入党した記憶もないし、党費を支払った記憶もない。代表者になることも了承していない。自民党神奈川県豊明支部については全然知らない」。
埼玉県の自民党豊明支部の「代表者」は、党費振り込み用紙について「私は知らない」という。東京、千葉、神奈川の自民党豊明支部の「代表者」は、そもそも代表者になったことも知らないという。千葉と神奈川の「代表者」の方は、自民党員ですらないというんです。あなた方が正規に届け出をされている「代表者」の方です。にせの届け出をされていたということになるんですよ。四つの支部とも「代表者」がこうなっているわけですから、支部丸ごと幽霊支部だった、このことのまさに証明ではありませんか。私たちは直接、全部お会いして聞いたのです。あなたはこういう調査をやっていますか。調査をやるとあなたは言った。調査というんだったら、まず四つの豊明支部の代表者にあって、どうなっているんですかと聞くのが順番でしょ(「そうだ」の声)。これは公にされている支部ですし、代表者も公にされているんですから。やりましたか、こういう調査を。
首相 私たちの党の内部の問題でありますから、党の内部の関係者で調査を進めていると思います。私もいま、自分の立場で自分が動くというわけにいかないものですから。おそらく志位さんがお歩きになって四人の方にお尋ねになられたんですか。私はそこはわかりませんが、もし共産党の方だと名乗られたり、あるいは「赤旗」ですと名乗られたら、私は必ずしもそのまま答えないかもしれませんね。それはわかりませんよね。
志位 この問題についてお尋ねがありましたので、お答えいたします。「しんぶん赤旗」の特別取材班として、「『しんぶん赤旗』です」と名乗って調査をいたしました。ですから、この問題は私どもの責任を持った調査です。あなたはこの問題で、支部の代表者に対する調査をしてないわけでしょ。内部の問題ではありませんよ(議場騒然)。私はこの問題で、あなたは総理として自民党総裁として、いったいどういう認識をもっているのか、このことを本当に問わなければならないと思います。まともな調査を全然やってない。
第一に、かりにKSDによって党費の肩代わりがおこなわれていたら、KSD会員の共済掛け金が、巨額の規模で自民党に吸い上げられることになるんです。これは政治的・道義的責任が深刻に問われてくるんです。
第二に、幽霊党員、幽霊支部、あるいは党費肩代わりという事態があれば、立派な犯罪行為になるんです。入党申込書が偽造されていたら、有印私文書偽造罪になります。支部設立の届け出が偽造されていたとすれば、これも有印私文書偽造罪になります。れっきとした刑法上の犯罪行為になるんです。いま、あなた方に疑惑がかかっているのは、深刻な政治的・道義的責任だけじゃない、犯罪行為の疑惑もかかっているんです(「そうだ」の声、拍手)。
まともな調査ひとつやっていない。支部の代表者に会って調べることもやってないじゃないですか。一体どういう認識を持っているのか聞きたい。
首相 わが党の内部の問題を、わが党で調査をしているといっているわけです。あなたはひとりでそこに立って、まるで取調官みたいなことをやっていますが、たびたび申し上げているように、いま捜査している問題もあるわけですね。そこのところをよく見ていかなければならんし、ただ党の中の組織、党員の登録の問題はやっぱり党の責任だと思います。ご指摘をいただいたり、ご注意をいただいたりすることは、私は謙虚に受け止めます。党にとっても大変深刻な話です。私は率直にそれは認めます。ですから党の事務局をして精査をしてくださいと申し上げているのです。わが党としてはそのことをきちっとやっておりますから、その結果を待ちたいといっています。けっして、そっぽ向いていたり、いっさい看過すると申し上げているわけではないんです。
志位 自民党の内部問題ということを盛んにおっしゃいますので、申し上げておきますが、(自民党の)政党支部というのは、政治団体として公式に届け出されている団体です。政治団体として政党支部を届ける際には、その政党の支部であることを証明する「支部証明書」を添付しなければならないんです。つまり、東京都豊明支部を届け出る際には、政党の代表者であるあなたが、自民党総裁が、「支部証明書」に署名し、なつ印することになるのです。それを出さなきゃならない。ですから政党支部の問題はけっしてあなた方の内部の問題にとどまらない、ちゃんと届け出が出ている問題です。そして総裁自身が直接支部に責任を負う立場にある。(自民党の)規約からいってもそうなっているでしょ。政治資金規正法上もそうなっている。ところが、まともな調査をしてないというのが、今の現状であります。
志位 きょう出した私の疑問点、問題点にたいして、党の総裁として責任を持って疑惑の全容究明をして、国会にたいして報告することを求めます。そして、委員長にお願いしたいのですが、この問題で党費立て替え、肩代わりの疑惑がかけられている小山、村上両氏。さらに額賀氏、古関氏、こういう方々の証人喚問を強く求めます。委員会で取り計らいを願います。
野呂田委員長 ただいまの件についてはいま理事会で協議中であります。
首相 何もやってないことがわかりましたと志位さんがいうのは、これも決め付けだと思いますよ。たびたび申し上げておりますように、党は党として調査をいたしております、こう申し上げているわけですから。けっして国民に向けて私がいくら質問しても、何もやってない、そういう決め付け方は極めて無礼でありますし、あくまでもわが党はもちろん公党でありますが、党の問題をいちいちあなたに報告する義務はないと思っています。
志位 公党だから、責任を持って、国民の前に明らかにしなければならないんですよ。私は四人の支部長に会って聞いたのかと、具体的に聞いているのです。それについてあなたは答えなかったでしょう。だから私はこれは(調査を)やってない、ということを指摘したわけです。この問題であなたは本当に反省してないと思います。
このKSDの問題というのは、政官業の癒着の汚さが一番悪い形で現れた事件だと思います。私は、この真相の徹底究明とともに企業・団体献金の禁止、パーティー券も含めて、これを強く求めて次の問題に移ります。