2001年1月 8日(月)「しんぶん赤旗」

21世紀の日本の政治

NHK「日曜討論」志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は、七日放送のNHK「日曜討論」に出演し、山本孝NHK解説委員のインタビューにこたえて、二十一世紀にのぞむ党の姿勢や参議院選挙、通常国会への対応などについて話しました。大要は次のとおりです。


新しい指導部──

21世紀の民主連合政府を展望先々まで活動できる体制に

 山本 志位さんに委員長として(「日曜討論」に)きていただいたのは初めてですが(志位「よろしくお願いします」)、不破さんから志位さんへの世代交代の狙いはどこにあったのですか。

 志位 私たちは二十一世紀が、大きな政治の転換が求められる世紀だと思っています。二十一世紀の早い時期に、国民が主権者として本当に主人公といえる民主主義の日本をつくることを目指して、民主連合政府をつくるという大きな目標をもっています。

 そういう二十一世紀を展望して、先々まで活動できる指導体制をつくろうということで、常任幹部会という指導機関も二十名いるのですが、そのうち十二名が四十代、五十代になって、この機構が発足して三十一年で平均年齢が一番若くなっています。

 ですから、当面の問題で大いにがんばりながら、長期的視野でも大いにしっかりやっていきたいと思っています。

綱領の見直し──

国民に分かりやすい表現へ原則あるから柔軟対応できる

 山本 二十一世紀に向けて若返ったということですね。そこで党の規約を全面的に改定したり、自衛隊の活用を認めたりしていますが、この「現実路線」をすすめていって、党の政治路線を決めた綱領の見直しはどういうふうにすすんでいくんですか。

 志位 綱領についても、国民のみなさんが読んでわかりやすい表現にするという宿題が残っているというのが、私たちの共通の確認なんです(山本「なかなかむずかしいですね」)。

 いまの綱領の骨格になっているのは一九六一年の大会で決めたものなのですが、そのときは路線問題をめぐって党内でずいぶん論争がありまして、その論争の中でみんなの議論を集約していっていまの綱領をつくったんですね。まず資本主義の枠内で民主主義的変革をやる、そして先の社会にすすむという綱領なんですが、つくった当時は国民にたいするアピールというよりも、党内の意思統一という側面が強かったのです。

 内容では何度か一部改定をやって、非常に現代的なものになっていて、自信をもっているのですが、表現は当時のものの痕跡といいますか、名残があるので、わかりやすくするという宿題をやらなくてはならないということです。

 山本 内容的には自信をもっているというお話ですから、内容は変わらないわけですね。

 志位 私たちの基本的な綱領の考え方というのは、さきほど「現実路線」とおっしゃいましたが、たとえば外交問題をとっても、安保をなくしていく、そして本当に中立・独立の日本をつくるというのが綱領の一つの大きな目標です。そういう原則をしっかりもっているからこそ、東南アジアや朝鮮半島の問題など、さまざまな面で、安保廃棄前の外交活動もかなり自由かっ達にやっているのです。原則をもっているからこそ、柔軟な対応ができるというのが真実なんですよ。

資本主義の制度のりこえる条件が生まれる──党名は大切に使う

 山本 原則は動かさない。ほかの党からは党名も変えたらどうかという話もありますが、どうですか。

 志位 私たちはいまの資本主義の社会が未来永劫(えいごう)つづくという立場に立っていません。新しい世紀になって世界の資本主義の状況をみてみましても、貧富の格差はひどい、失業は史上空前、金融投機がひどい――この矛盾に満ちた制度が未来永劫つづくという立場に私たちは立っていません。二十一世紀は百年あり、この百年のうちには資本主義を乗り越える条件が地球的規模で生まれてくるという展望を私たちはもっていますから、この名前は大事に使っていきたいと思っています。

参議院選挙──

自公保政権への厳しい審判とともに、どこをどう変えるのか中身を論議

 山本 そこで参議院選挙ですが、去年の総選挙では六議席減らしましたね。共産党をとりまく環境はきびしくなってるんじゃないかなという感じもしますが、今度の選挙にどうとりくんでいきますか。

 志位 前回(総選挙)は相手の側も構えて、ずいぶん攻撃もしてきたというなかで、私たちの主体的力も足りないというなかで、残念な後退だったわけですが、今度は本当に力を蓄えて、前進を目指したいと思います。

 私たちは、とくに今度の参議院選挙で、自公保政権にきびしい審判をくだす、これは当然なんですが、そこにとどまらないで、いまの自民党政治のどこをどう変えるのか、中身の転換を大いに議論したいと思うのです。

 二十世紀の後半、自民党が半世紀、政権をやってきたのですが、どの分野でもゆきづまっています。たとえば経済の問題でも、大企業のもうけを応援するというのが政治の仕事だというのでやってきましたが、これではいつまでたっても景気はよくならない、財政もひどくなるという状況が起こっています。

 外交も、いま東アジアで平和の大きな流れが、ASEAN(東南アジア諸国連合)でも、朝鮮半島でも起こっているときに、アメリカまかせで軍事一本やりというやり方が時代錯誤になっています。

 ですからかなり大きな政治の中身の転換ということを大いに議論して、自民党政治に代わる、本当の意味で国民が主人公になる新しい日本の旗印を高々と掲げて、がんばっていきたいと思っています。

野党協力問題──

国会共闘は発展させる立場で、選挙はそれぞれの立場で政権打倒を

 山本 その政策転換をはかっていくには、まず与野党逆転をしなければならないということになるんだろうと思いますが、そのためには野党全体の選挙協力というのも欠かせないのではないだろうかという気がするんですが、共産党は一線を画していますね。協力しませんですね。これはどういうふうにお考えですか。

 志位 野党でいまできる協力というのは国会共闘だと思うのです。私たちと他の野党との関係では。これは新しい国会でも、KSD(疑惑)の問題もありますし、公共事業の無駄づかいの問題もありますし、いろんなことで発展させていきたいと思います。協力して自公保を追い詰めていく仕事を大いにやっていきたいと思います。

 ただ選挙となると、共同の意思とともに、基本政策の合意が必要なのです。参議院選挙となりますと任期は六年あります。この六年のあいだにはあらゆる問題が起こります。憲法の問題、消費税の問題、社会保障の問題、教育の問題、いろんな問題が起こるときに、基本政策の合意がないと、お互いに責任を負えなくなるという形になる。そういうところまでは機が熟していないので、これは独自にそれぞれがたたかっていくということではないでしょうか。

 山本 基本政策の合意が大事で、合意できるところだけいっしょにやっていこうというんではちょっと…。

 志位 選挙協力ということになりますと、六年間の任期中、いわば委任状を与えることになるわけですから、かなり基本的な政策の合意が大事です。この問題では一致がないわけですから、ここは割りきって。東と西から両方からはさみうちで自公保を倒すということは、逆に割りきってやったほうがうまくいくんですよ。

 山本 なるほどね。政権を打倒するんだというお話ですが、打倒したあと、当然のことながら野党が連合政権をつくろうという動きになってくると思うんですが、そういう条件になれば、そのときには連合政権には加わっていくわけですね。

 志位 これは選挙の結果がまだ出ていないわけですから、その結果の展開いかんですね。私たちの基本的な政権の構想というのは、さきほどいった、いまの自民党政治をおおもとから変える民主連合政府をつくるということなんです。

 ただ、それにいたる過程で、かりに政権勢力が過半数を割るという条件ができて、そして(野党間で)一致できる、よりましな一致点があれば、そういう政権の協議に応じるという方針は変わりありません。しかしいま、まだそういう条件があるわけではありませんし、それを目標にできる状況も、いま現在あるわけではありません。

 山本 今度の選挙で与野党の逆転が実現できるとお考えですか。共産党はどれぐらいの議席を目標にしているのか。

 志位 与野党逆転というのは、私たちだけでどうこうできる問題ではありませんから、私たちは「(自公保に)きびしい審判を」といっているんですが、私たち自身としては、六年前に獲得した八議席を必ず確保して、三年前に獲得した十五議席を上回りたいというのが目標です。

通常国会──

景気、外交、教育…21世紀の日本をどうするか骨太な論戦を

 山本 さきほど景気対策あるいは外交政策についてお話がありましたが、通常国会がいよいよ始まります。どう取り組んでいきますか。

 志位 やはり大きな、骨太の論戦をやりたいですね。二十一世紀の日本をどうするかという論戦をやりたい。経済の問題でも、いまの景気の状況をみますと、大企業の収益はかなり回復しているが、家計消費はかつてない冷え込みが続いているという「二極化」は、経済企画庁もリポートで認めましたね。

 ですからいまのやり方をやめて、家計を応援する政治に切りかえる。とくに社会保障――介護、年金、医療の不安をなくす。あるいはリストラの応援はやめて、雇用を増やすために政治が責任を果たす。家計を応援する政治に切りかえるという、経済の問題でも大きな転換が必要です。

 教育の問題も(山本「『教育改革国会』ですからね」)重視していきたいと思います。いま、一つの大きな問題として、「学力の危機」ということがいわれますでしょう。文部省の調査でも、「(学校の)勉強がよくわかっている」とこたえた子どもさんが、小学校の場合四人に一人、中学校は二十一人に一人、高校になりますと三十人に一人なんです。「勉強がよくわからない」、そして「勉強がきらいだ」という結果が出ているわけです。

 かなり深刻な「学力の危機」が起こっている根底には、競争主義で子どもをあおりたて、追いこんでいって、ふるいわけをするという、長年のやり方がゆきづまってしまったというところに一番の問題があるので、こういう問題も国民のみなさん、多くの方々が心配されていることですから、正面から取り組んで、どの子にも基礎・基本の学力について、わかるまで教えるという学校教育を目指して、これも大いに論戦も、運動もやっていきたいと思っています。

教育基本法──

主権者を育てる理念を大事に見直しには反対

 山本 教育基本法を見直そうということを森首相はさかんにおっしゃっていますが、この問題はどうですか。

 志位 私は、まさに教育基本法の理念をしっかり実行してこなかった結果が、いまの教育の危機を招いていると思うのです。教育基本法では教育の目的として「人格の完成」といっています。つまり主権者としてきちんとした判断力のある、そういう知識もある主権者をしっかり育てるのが教育基本法の大事な理念です。

 そして第一〇条で大事な規定がありまして、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」とあるのです。つまり戦前の反省にたって、特定の国家目的のために教育を使うというようなやり方はもうやめて、不当な国家の支配を受けないで、自主的・自律的な現場の創意によって、国民に直接責任を負ってやるというのが教育基本法の理念です。まだ形は見えてきませんが、どうやらこのあたりを取り払おうというのが(教育基本法改悪の)最後の狙いだろうと思うので、そこをうんと警戒していきたいと思います。

 山本 教育基本法の見直しは反対だと。

 志位 反対です。