2000年2月16日「しんぶん赤旗」

衆院予算委員会、志位書記局長の総括質問

小渕内閣に政権を担う資格なし


日本共産党の志位和夫書記局長が十四日の衆院予算委員会でおこなった総括質疑(大要)を紹介します。


異常国会

志位氏「“官邸が国会に圧力”と報道――ことは憲法の三権分立にかかわる重大問題

官房長官「覚えはない。報道の是正も求めない」

選挙制度は国民の参政権にかかわる問題との認識はあるか

 志位和夫書記局長 日本共産党を代表して小渕総理に質問いたします。

 まず、こんどの国会の冒頭での異常事態の原因と責任が、どこにあるかについてであります。私は、端的に、三つの問題をただしたいと思います。

 第一に、強行された定数削減法とはどういう性格の問題かという点であります。総理は答弁で、”民間もリストラをやっているから議員もリストラをやるのは当然だ”という趣旨のことをのべられました。私たちは、大企業のリストラ万能論にもちろん異議をもっておりますが、問われている問題は、まったく次元を異にする問題だと考えております。

 憲法にあるように、国会議員というのは国民の代表者であって、国民は国会議員を通して政治に参加いたします。総定数を削減するというのは、国民の参政権の切り縮めとなります。まして、現行の(小選挙区比例代表)並立制のもとで民意を反映する唯一の部分である、比例代表の定数をのみ削減するというやり方は、二重に国民の参政権を切り縮めることになると考えます。

 この問題についての総理のご見解をうかがいたいのですが、問われているのは、議員の身分とかそういう問題ではなく、国民の参政権が問われたんだという、この認識はおありになりますか。

 小渕恵三首相 施政方針演説でも申しあげましたが、定数削減につきましては、国家公務員の削減、地方議会の定数削減、民間の経営合理化へのとりくみなどをふまえ、また国民の世論の声も十分勘案して、国会においてもまず改革を進めることが大切だということで、三党でお話し合いをされまして、定数削減につきましての法律案が提案され、これが通過いたした、ということでございます。

 数が多ければ参政権が十分反映されるか、少なければ反映されないかということを、数のうえで論ずることはなかなか難しいと思います。世界中の国ぐにのそれぞれ議会における議員の数をみましても、アメリカが二億五千万おられましても、上院は百人、下院は四百三十五人ということで、それで民意が反映されないということでもありません。したがってそれぞれの国においては、それぞれの国の状況がございますけれど、今回の定数削減につきましては、冒頭申しあげました各種の問題を総合的に判断して、必要なことである、と判断させていただきました。

 志位 この問題についてさまざまな意見がおありでしょう。ただこの問題の性格が、つまり選挙制度を変えるということは、国民の参政権にかかわる問題になるかどうか、ということを聞いたんです。これは、実は、与野党間で決着ずみの問題なんですよ。

 二月八日に衆議院議長の「見解」がだされました。私たちは、これは(異常事態をひきおこした)原因と責任が明確でありませんでしたから、受けることはできませんでしたが、しかし、その(議長「見解」の)中で、「現行選挙制度に係る諸問題については、国民の参政権に係る重要問題」であるので、慎重にやっていくと(書いてある)。これは与野党も認めた。つまり選挙制度の問題というのは、そういうリストラとか、そういう問題とは違うんだと、(議員の)身分の問題とかそういう問題とは違うんだ、国民の権利の問題なんだということは、これは自民党も認めたんですよ。与党もみんな認めて、議長「見解」になっているんです。ですからそういう性格の問題だということは、お認めになりますね。この議長「見解」は。

 首相 参政権の問題といいますか。国民が政治に参画をするということを適切に反映させていくということについては、これは民主主義の基本でありますから、当然と心得ております。

 志位 だから選挙制度の問題は、そういう問題にかかわるかという、選挙制度の問題が国民の参政権にかかわるかということを聞いているんです。イエスかノーか。

 首相 民主主義において、議員を選任するということは国民の参政権の大きな問題でございます。

 志位 お認めになりました。結局、選挙制度の問題について、国民の参政権にかかわる問題だということをお認めになりました。したがってつぎの問題に進みます。

与党だけで選挙制度改変を、このような乱暴なやり方で強行したことはあるか

 志位 第二に、そういう重大な性格をもつ問題を、与党だけで「冒頭処理」という方針を決めて、国会に無理やり押しつけるというやり方は、許されるのかという問題です。

 野党が一致して要求したのは、簡単なことでありまして、こういう国民の参政権にかかわる重大な問題である以上、国民の意見をよくきき、各党の協議をつくし、そして、国会の審議も十分に保障して、ことを進めるべきであって、「冒頭処理」のようなやり方を押しつけるべきでない。この一点を野党側は要求したわけです。

 ところが与党の側は一顧だにせず、強行をはかった。衆議院では、”本会議での採決を六日待ってほしい”という議長の「裁断」が出されました。これすら与党はけって、何がなんでも一月二十七日に衆議院の本会議は通すんだと、強行をやりました。参議院は、こんどは「中間報告」という制度を悪用して、国会法を踏みにじるやり方で、強行がやられました。

 自分たちが日程を決めたら、もう野党がなんと反対しようと、議長さんが”ちょっと延ばしてくれ”といおうと、あるいは国会法になんと書いてあろうと、何がなんでも衆議院を一月二十七日、参議院は二月二日に強行するんだ、と。こういうやり方を、国民の参政権にかかわる重要な問題でやっていいものかどうかが問われている。(「そうだ」の声)

 総理にうかがいますが、選挙制度の問題について、かつてこういう乱暴なやり方がとられたことがありますか。つまり、与党だけで選挙制度の改変がおこなわれたことがありますか。また、こういう日程を決めて、出口を決めて、これを押しつけるというやり方を、かつてやったことがありますか。そういう記憶があったらいってみてください。

 首相 内閣といたしましては、国会でのご議論を、さきほどらいいろいろいわれておりますように、請求をしたり、圧力をかけたりということはあり得ないことでございます。本件においては国会において十分ご審議をいただいた結果、このような結論を得たものと理解しております。

最小限のルール、最低限の良識を、与党は踏み破った

 志位 答えてください。これまでそういう乱暴なことをやったことがありますか。総理、こういうことをやったことがありますか。

 首相 今回の結論を得るにいたりましたことは、私自身は初めての経験でした。

 志位 初めてなんですよ。これまでの自民党政権も、保守政権も、一度たりとして、与党単独で選挙制度をいじったことはないんです。それは、与党が勝手に選挙制度を自分に有利にいじるならば、永久政権になるからですよ(「その通りだ」の声)。最小限のルール、最低限の良識として、あなた方の先輩が、まもってきたんですよ。それを踏み破ったのが、こんどのやり方なんです。

「厄介なものがいったからよろしく」と官房長官から電話をうけたと参院議長は発言

 志位 私は、第三に、進みたい。そういう議会のルール破りを、ただ与党だけがやったのではない。(首相)官邸が国会とその議長に直接、圧力をかけるという形でおこなったというのが、とりわけ重大であります。

 毎日新聞が二月五日付の特集記事をだしています。「検証 定数削減 議長の仲裁失敗」というものであります。このなかで、衆院での本会議での強行が問題になった「27日夕」、青木官房長官が衆院議長に電話をして、「(本会議開会のベルを)どうしても頼みます」といった。「青木長官はベルを押せ、の一点張り」であった。それから、「法案が27日衆院を通過し、参院での扱いに焦点が移った28日正午、青木長官は今度は、参院議長室の斎藤議長に電話を入れた。『参院も議長の対応にかかっている。あんたはもう議長を5年やったわね。ひょっとして、あと1年のために内閣倒すんかね』」。

 もう一つ、これは読売新聞です。一月二十九日付で、「青木官房長官は同日――二十八日のことでありますが――斎藤議長に電話で『(自自両党が合意している)冒頭処理は二月二日までのことだ』と伝え、…二月二日までの法案成立に努力するよう求めた」。きわめて明りょうであります。

 そこで私は、官房長官にうかがいたい。衆院議長、参院議長に、法案の扱いについて、二十七日、二十八日と、電話をしたという事実はありますか。

 青木幹雄官房長官 そういう事実はいっさいありません。

 志位 法案の扱いについて、そういうことをやったことはないというお話でした。

 もう一つ、事実を示しましょう。参院の斎藤議長が二月八日に記者会見をされています。これは、その全文を(文字に)起こしたものであります。最後に、官房長官から電話がかかってきたことは認めておられます。二十八日に電話がかかってきた。なんという電話か。「そちらに厄介なものがいったので、一つよろしく(お願いします)」。「厄介なもの」、二十七日、二十八日にいった「厄介なもの」といったら、法案のことじゃありませんか。法案にかんして電話しているじゃありませんか。参院の議長が認めているじゃありませんか。いまの発言どうですか。(長官の答弁は)偽りじゃないですか。

 官房長官 私は議長には一回もお会いしたことも電話したこともありません。

 志位 どちらの議長ですか。

 官房長官 衆院議長にはありません。参院議長には、二十八日かどうか覚えてはおりませんが、電話はまちがいなくいたしました。私がした電話の内容は、これから国会が始まりますので、いろいろな面でお世話になりますという電話はいたしました。それにたいして、議長は「あんたも大変だろうけど、がんばりましょう」。そういうことでございました。ほかにありません。

 志位 まったくこれは参院議長の記者会見と異なっていますね。「国会が始まったのでよろしく」という電話じゃありませんよ。「そちらに厄介なものがいったのでよろしく」。全然違うじゃありませんか(場内に笑い)。「厄介なもの」といったら、法案じゃありませんか。

 この問題については、官房長官の公式の発言をみても明らかであります。

 一月十二日、定例会見で、「二十八日に予算書を提出いたしますので、それまでに二十名削減の問題は片づけていただきたい。処理をしていただきたい。成立することによって処理をしていただきたい」。はっきりのべています。

 それから一月三十一日の定例会見。「私は二日ごろには成立するんじゃないかと。させなきゃいかんじゃないかと、そのように考えております」

 「二日には成立させなきゃいかん」、こういって、「一つそちらに厄介なものがいくのでよろしく」、こう電話をすれば、立派な圧力じゃありませんか(「そうだ」の声)。まさに参議院に圧力をかけて、「厄介なものがいった」「二日までに成立させなきゃいかん」と、圧力をかけたのは、あなた自身じゃないですか。

 官房長官 「厄介なもの」「厄介なもの」としきりにおっしゃいますけれども、私は、少なくとも私の議員の身分にかけて、議長にたいして「厄介なもの」というようなことをいったことは一度もありません。また三十一日の私が発言したことは、こういう内容であります。私も小渕内閣の一員として、この国会、平成十二年度の予算を成立さすことがいちばん大事な内閣の仕事だという考えをもっております。そういう前提に立って、いつまでに成立することが望ましいかと、こういう質問がございましたので、私といたしましては、「できるだけ早く成立することが望ましい」と、私がいうのは当然のことでありまして、それが介入したというご指摘は当たらないと考えております。

もし事実と違う報道なら、マスコミに是正の措置を求める必要がある

 志位 できるだけ早くではなくて、「二日までには(成立)させなきゃならない」と、こういっております。あなたはいっております。それから、この問題は、あなたは「厄介なもの」といわなかったとおっしゃられましたけれども、斎藤議長ははっきりそう、あなたから聞いたといっているわけですから、これは事実がくいちがっているわけですね。

 そうしますと、あなたがどうしてもいっていないというのであれば、これは重大な事態になるんですよ。これは、事柄の性格が、たいへん重大なんです。これは三権分立にかかわる問題です。

 憲法は、この三権分立の大原則のなかで、憲法第四一条で、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と、明確に規定しております。「唯一の立法機関」というのは、国会だけが立法できるという意味だけではありません。国会は、他の国家機関の干渉や介入を受けずに、排他的に立法権を行使できるというのが、この条文の意味であります。ですから、あなたが、かりに、報道のような行為をしたとしたら、あるいは斎藤議長がいっているような行為をしたとしたら、三権分立に違反する重大な問題になってくる。こういう重大な問題なのです。(「その通り」の声)

 しかも、こんど問われている問題というのは、内閣の行政権とはかかわりありません。内閣が出した法案でもありません。予算案でもありません。条約でもありません。行政権とかかわりない、国会の構成の問題だからこそ、議員立法という形で、国会に提起されたわけであります。これを、かりに報道のとおりあなたが発言していた、あるいは参院議長のいうとおりいっていたとしたら、まさに三権分立のじゅうりんになるわけですから、もしも事実と違うならば、その是正の措置をきちんととる必要がでてきます。とったんですか。

 官房長官 私が発言した覚えのない、責任をもってこの場で申しあげていることを、それを前提にしていろんな議論をされるのは非常に迷惑でございます。(場内騒然)

 志位 この問題の性格は三権分立にかかわる問題だから、もしもこれが違うというのならば、マスコミにたいして、「これは事実と違う」と是正の措置を求めるべきですよ。参院議長にたいしても求めるべきですよ。これをやったのか、やってないのかと聞いているんです。事実を答えてください。

 官房長官 もし私がいっていることが疑問だとされるならば、斎藤議長に直接お確かめになるほうが一番いいと思います。斎藤議長がいった通りが新聞で報道されるかどうか、そういうことも含めてお確かめいただきたいと思います。

 志位 私たちは、確かめたうえで斎藤議長の発言を紹介いたしました。斎藤議長の発言は新聞でも報道されましたし、私たちも確かめました。ですから、これは、明りょうな問題なんです。

 私が聞いているのは、これだけの重大な問題なんだから、もしもこれが事実だとしたらたいへんなことになるわけですよ。三権分立のじゅうりんなんですから。あなた自身もたいへんなことになるわけですよ。だったら(事実と違うというのであれば)、その是正の措置を求めるのが当たり前でしょうということをいっているんです。やったのか、やらないのかということを聞いているんです。イエスかノーか答えてください。

 官房長官 私は予算委員会という公の場でそういう発言はいたしておりませんと責任をもって申しあげておるところでございます。

 志位 ようするに是正の措置を求めるつもりはないということですか。

 官房長官 いった覚えのないものが是正の措置を求める気持ちはありません。

 志位 あなたが覚えがないというからこそ、是正を求めなければならないんじゃないですか(「そうだ」の声)。是正の措置をとるのか、とらないのか。

 (官房長官が答弁にたたない)委員長、私は簡単なことをいっているんです。官房長官に、(議長に)そういう圧力をかけてきたんですかということを聞いたんですね。官房長官は圧力をかけてないとおっしゃった。しかし、この問題というのは三権分立にかかわる重大問題だから、もしあなたのいうことが本当のことだったら、是正の措置(を求めること)が必要でしょうということを、私は聞いているわけです。マスコミでみんな報道しているわけですから(場内騒然)。マスコミに是正を求めることが必要でしょう、といっている。

 官房長官 圧力をかけていないものが、いま議員がおっしゃるようなことをすべきじゃないと私も考えております。圧力をかけた覚えはいっさいありません。覚えがないものが議員がおっしゃるような是正の措置をする余地はございません。

 志位 官房長官、論理が逆なんですよ。覚えがないんでしょ、あなた。覚えがないのに、新聞はですね、あなたが覚えがないことを…(場内騒然、志位「静かにしてください。静かにさせてください」。委員長「ご静粛に願います」)。覚えがないとあなたはおっしゃっている。しかし、新聞には圧力をかけたと書いてある。だからもし、その覚えがないというんだったら、これは三権分立にかかわる大問題だから、ちゃんと是正してください、というのが当たり前じゃないですかと、その措置をとらないんですかと聞いているんですよ(「その通り」の声)。なんでこんな簡単なことに答えられないんですか。

 (官房長官が答弁に立てなくなり、議場騒然。議事が約三分間中断、各党理事が委員長席の周りに集まり協議)

 志位 もう一度質問します。この問題について官房長官は、衆参の議長に圧力をかけた覚えはないということをおっしゃいました。しかし報道のほうは、その圧力の事実を生なましく伝えております。そしてこの問題は三権分立にかかわる重大な問題です。したがって、もし圧力をかけたことがないというのであれば、マスコミにたいして是正の措置を求めるということが当然ではないかと私は聞いているんです。これにたいしてお答えください。

 官房長官 マスコミにたいして是正の措置をとれということでございますが、私は「毎日」の記事はみませんでした。「読売」の記事はみました。みましたので、その次の朝、こういう間違った記事を書いてもらっては迷惑ですと、「読売」には申しあげました。「毎日」の記事はみていなかったので、そういうことは申しあげませんでした。

 志位 毎日新聞にはどうするんですか。読売新聞に迷惑だといわれて、読売新聞は記事を撤回しましたか。毎日新聞は撤回しましたか。

 官房長官 (野党の)みなさんは単独審議だといわれ、またわれわれ(与党)三党は審議拒否だという。そういう非常に難しい雰囲気のなかで新聞、テレビがいろいろな報道をされることは、私は時には間違いもあろうと、そういうふうに日ごろ解釈をいたしておりまして、あまり難しく考えてはおりませんでした。三権分立ということは非常に重いものであるということは、私も議員の一人として十分承知をいたしておるつもりであります。

国会に汚点を残した暴挙厳しい反省を求める

 志位 全体のきょうのやりとりを通じて、どっちかの事実ですよ。報道が真実であるのか、報道通り圧力をかけたのが真実であるか、私はそうだと思います。この全体の経過をみれば。

 もうひとつは、あなたが三権分立という(問題の性格の)重大性を理解していないかということですよ。理解していないから、きちんと是正の措置もとっていない。これだけ報道されているのに、まともな是正の措置もとろうともしない。こういう問題だということを、最後に私は申しあげておきたい。

 私は、こんどの事態は、ほんとうに議会のルールを壊した大きな汚点を、与党は残したと思いますよ(「その通り」の声)。このことにたいするきびしい反省を求めて、つぎの議題に移ります。(拍手)

 財政再建

志位氏「“財政再建は景気回復後”というが、景気が回復すれば赤字が解消にむかう展望が開かれるのか」

蔵相「かりに2%成長でも税収増は1兆円あまり。簡単にはいかない」

「二兎を追うものは、一兎をもえず」景気回復するまでは、財政再建の計画と展望を示さないということか

 志位 つぎに財政再建の問題です。来年度予算が執行されますと、二〇〇〇年度の国と地方の長期債務残高は六百四十五兆円、GDP(国内総生産)比一・三倍にのぼります。首相一人の代で百一兆円もの借金を増やしたという計算です。

 これがどんなに異常なものか。第二次大戦の敗戦末期の一九四三年の国と地方の借金が当時のGDP比一・三倍ですから、まさに敗戦末期という深刻な事態です。このときの「解決」方法というのは、直後に敗戦がおこり、三百倍という悪性インフレがおこり、国民の財産を帳消しにするかたちでのかっこ付きの「解決」がはかられたわけです。

 総理にまずうかがいますが、総理は「二兎(にと)を追うものは一兎をも得ず」ということを繰り返されておりますが、これは、景気が回復するまでは財政再建の計画と展望は示せなくてもやむをえない、ということをおっしゃってるんでしょうか。景気が回復するまでは、財政再建の計画は示さなくてもしようがない、こういう考えでしょうか。

 首相 せっかく国会で成立をさせていただきました財政改革法案をも凍結をせざるを得ない状況でございますので、まずは経済を回復し、景気を回復して安定的な経済回復ができるよう全力をあげていくことは現下の重要な諸点と考えております。

財政破たんの要因は構造上のゆがみ――景気回復の手だてをとりながら、財政再建の展望を示すのが政府の責任

 志位 それではつぎにうかがいます。経済が回復軌道に乗った場合、財政状況が好転する見通しがあるんでしょうか。

 総理の諮問機関である経済戦略会議では、「二〇〇一年度には二%のセン在成長力軌道に復帰する」ということをのべておられますが、それでは、かりに二%程度の経済成長の回復に復帰したとすれば、税金の入りが増えて財政再建の展望が開かれる、財政赤字の解消の道が開かれる、こういう状況になるんでしょうか。

 宮沢喜一蔵相 そんなに簡単なことではないと思いますね、この財政再建は。たださきほど申しあげましたように、経済がちゃんとした軌道に乗らなければやりようがありません。(場内に笑い)

 志位 だから私は、乗った場合にどれぐらいの税金が入ってくるんですかと聞いているんです。二%の場合、どのぐらいの税金ですか。

 蔵相 ふつうに考えましたら、経済成長率が形式、ノミナルで二%なら、まあ、その一・一倍。(志位「弾性値でね」)弾性値で一・一と考えるのが常識でございますね。非常にいいことがあるかもしれませんけれど、あんまりそういうことは予定しないほうがいいと思います。

 志位 ようするに、税収弾性値が一・一ということになりますと、二%かける一・一でだいたい二・二%。そうしますと税収が五十兆円ぐらいですから、一兆円余りということですか。それでよろしいですか。

 蔵相 そう考えるのが、まあ安全だと思います。

 志位 これが現状なんですよ。つまり政府のいうような二%回復軌道に乗ったにしても、国の税収の伸びは一兆円余り。ところが、いまの国の歳出入のギャップ、国債の発行というのは三十二・六兆円でしょ。ですからそのわずか三十分の一しか税収は出てこないんですよ。

 いまの財政赤字というのはそういう性格をもっている。経済企画庁が、『平成11年経済の回顧と課題』という”ミニ経済白書”というのを出しました。私は、興味深く読みました。これをみても、一九九一年度から九六年度の財政赤字の拡大は、GDP比で七・六%拡大しているのですが、そのうち景気(後退)によるものは一割、〇・七%。残りの九割の六・九%は構造的要因、構造的な財政のゆがみが要因になって起こっている。これは統計からも出てまいります。

 ですからこの文書では、「累積した政府債務は単に景気の回復によってもたらされる税収等の増加のみでは解消し得ない」。これは共通の認識だと思うんです。

 そうであるならば私は、つまりいまの財政破たんというのが、たんに景気悪化でもたらされたものではない――この試算では、その要素は一割程度で、残りの九割は財政のゆがみで起こっている――とするならば、経済回復が軌道に乗ったら、そのあかつきには財政再建の計画を立てるというのは、これはおかしな議論になるんじゃないか。

 私は、そうであるならば、景気が回復してから財政再建の計画を立てましょうということではなくて、景気回復のために真に有効な手だてをとりながら、同時に、財政再建を先送りにせずに、国民にたいしてこういう方向で財政を再建していく、その展望と計画を示すのが政府の責任じゃないか。(「その通り」の声)

 景気が回復して、財政がずっと好転するんだったら、まず景気回復してその先で考えましょうという理屈も成り立つかもしれない。そうじゃないんですから。そうじゃないとお認めになったんですから、そういう段階論じゃなくて、景気回復のための手だてをとりながら、財政再建の道を示す必要がある。これは政府の責任です。いかがでしょう、総理。

 蔵相 けさほども(民主党の)菅委員に申しあげましたとおり、現在でもいろんなことをしてなるべく景気回復に向かわせよう、あるいは財政を悪くしないようにということはやっております。やっておりますが、まさに志位委員がおっしゃるように、これだけ財政が悪いわけでございますから、これを立て直すとすれば、たいへんな長い時間がかかるのみならず、実は財政ばかりではなくて、税制も中央・地方の関係も、それからおそらく二十一世紀における日本の経済社会のあり方までしませんと、本当の解決は私はできないんだろうと思っております。

 しかしそれならどうせそうなら、できるだけ早くやったらいいかと申しましても、数字のない計画はおそらく国民に信用していただけませんから、何年間にここまでやりますということを申しあげなければ、第一、共産党が国会でこれでよしとおっしゃらんでしょう(場内爆笑)。そういう性格のものなんですから、それはやっぱりその時がこなければやれないじゃないですか。

ばく大な財政赤字が国民の財政への信頼を失わせ、景気にも悪い影響を与えている

 志位 たしかにいまの財政赤字の解決策というのは、一定の段階を追って、一定の長期の展望でとりくまなければならないと思います。これは歳入の面での改革も必要でしょう。歳出の面での改革も、両面必要です。私ども近く提案をだすつもりでおりますが、両面の改革が必要です。しかし、私は、景気の回復にとっても、国民にとって、財政の明日がみえないということが、非常に大きなマイナス要因になっていると思うんですよ。

 思い出すのは、一九九五年十二月に、財政制度審議会が出した「財政の基本問題に関する報告」です。この時に、”「時限爆弾」が爆発寸前だ”というところまで財政がひどくなった。この事態をたいへん問題にした報告でした。ここで、財政赤字がどういう影響を経済に及ぼすかということをいろんな角度からのべています。中長期的な影響だけではありません。あらためて読みなおしてみて、なるほどと思ったのは、「膨大な財政赤字は、財政政策に対する国民の信用を失わしめることにもなる」と書いてあるんですね。これは非常に深刻な問題だと思います。

 国民からみれば、六百四十五兆円も借金がある。これはやっぱり、大増税が待っているのか、それとも悪性インフレが待っているのか、それとも社会保障の切り捨てなのか。こういう将来への不安から消費を手びかえる。これが景気に悪い影響を与える。まさに財政にたいする信頼がないということが、景気の問題を深刻にさせるわけですよ。

 ですから、総理にいいたいんですけれども、景気が回復してからという段階論ではなく、景気回復のための手だてをとりながら、きちんと財政再建の展望を明らかにする。これは最小限の政府の責務だ。これができなければ、そういう政府は政権にいる資格はない(「そうだ」の声)。そこをはっきり申しのべておきたいと思います。

公共事業

志位氏「90年代、公共事業費を増やしているのに雇用は減っている――ゼネコン型公共事業の積みましあらためよ」

蔵相「公共事業費のGDP効果が減りはじめているのは事実」

経企庁長官「ここで公共事業減らしたら雇用が落ちる」

公共事業をいくら積みまししても民需回復に「バトンタッチ」しないのはなぜか

 志位 つぎに、それでは、いまは景気の本格回復にとりくむというんですが、私は、政府の方針では、はっきりいって財政破たんがひどくなるだけではなくて、景気回復の展望も開けないと思います。財政も、景気も、共倒れの方向だと思います。

 景気回復というならば、その主役になるのは、経済の六割を占める家計消費、個人消費をあたためることです。ところが来年度予算(案)をみますと、高齢者世帯で、医療・介護・年金の三つで、合計二兆円もの給付減・負担増です。また負担増路線です。

 国民からすいあげて、どこにばらまくかといえば、国と地方で、年間五十兆円にのぼる公共事業にあいかわらずばらまく。

 私は、このばらまき政治、公共事業へのばらまき政治というのは、九〇年代にはいって、ほんとうに異常な姿になったと思うのです。

 第一に、九〇年に、日米構造協議がやられて、そのなかで、アメリカからの外圧に屈して、十年間で総額四百三十兆円の「公共投資基本計画」がつくられました。それが九四年には六百三十兆円にふくらんで、「総額さきにありき」と、なにがなんでも使い切るという方式が、公共事業の異常膨張に拍車をかけました。

 第二に、「景気対策」の名で、公共事業積み増し政策が、無規律・無制限にとられるようになったことです。九二年の宮沢内閣以来、合計十一回の「経済対策」がうたれました。そのなかで、七十一兆円にのぼる公共事業の積み増しがおこなわれました。異常なかたちで公共事業が膨張したんですね。

 こうして、だいたい日本の公共事業費をみますと、八〇年代の前半には、国と地方で二十数兆円台の額でした。それが、九三年以降くらいから、国と地方で年間五十兆円のお金が公共事業に使われる。こういう異常な体制がつくられました。

 私が問いたいのは、この公共事業積み増し方式の「景気対策」というのが、はたして景気に役立っているか、という問題です。景気回復というのは、GDPの数値があがればいいという問題ではありません。民需の回復、民間の需要の回復につながって、はじめて自律的な回復といえます。とくに(経済の)六割を占める家計消費の回復につながってはじめて、景気の自律的回復といえます。

 ところが、公共事業にいくら積み増ししても民需にバトンタッチしないわけですよ。私は、毎年の『経済白書』を注意深く読んでおります。九六年版の『経済白書』ぐらいから、公共事業をずっと積み増ししてきたけれども民需にバトンタッチしない、「バトンタッチが課題だ」ということをずうっといっています。九六年もいい、九八年もいい、九九年もいい、この”ミニ白書”でもいってます。「公需をふやしても民需にバトンタッチしない」。たしかに民需は、この前の一月の『月例経済報告』をみましても、個人消費は冷え込んだままですよ。(民間)設備投資もマイナスです。総理にお聞きしたいんですけれども、これだけ公共事業にジャブジャブお金をつぎこんで、どうして民需のほうにバトンタッチしていかないのか。その原因はどこだとお考えでしょうか。

 蔵相 公共事業にいろいろ不能率なところがあるということは、私は、事実だと思っていますし、政府もいろいろ改めているんですが、だからといって、日本のインフラストラクチャーを、もうこれでいいんだということは絶対ならないと思います。いまのわが国の現状をみてますと。そこは一緒になさらないでいただきたいと、ぜひ、お願いしたいんです。

 もう一つ、公共事業をやってて、だんだんこれがGDP効果がどうも減りはじめているということも、どうも事実のようにみています。一つは、やはり地方にそれだけの財力がなくなっているものですから、その単独事業というものが、どうしても思うように動いていないということが大きいだろうと思います。しかし、それは、いまの民需が低いのは、だからではなくて、いま消費に結びつかないのは、私はインフラが進んでいるからだと思います。これはやむをえないと思ってるんです。

 ですから、インフラの線が落ちついたら、家計簿の収入が増えて、支出がふえるであろうと、いうことを期待してますが、その間にはやっぱり公共事業がその支えをしていかなきゃならないというのが、私どもの考えなので、公共事業をやってるから民需に結びつかないんだということは、二つのことが違うことを結んでおっしゃってるような気がいたします。

巨大型開発では、中小の建設業者には仕事がいかない

 志位 インフラの整備といいますけれども、私たちは、下水道とか、公園とか、そういう生活のためのインフラの整備は必要だと思っています。ただ、この間の公共事業のあり方というのは、あまりに巨大開発、目的がさだかでない、採算がさだかでない、そういう巨大開発にお金をつぎこんで、その結果、経済効果もあがらない、このことの繰り返しなんですよ。

 もう一つ違う角度から、総理にうかがいたいんです。公共事業というものが、あなたはつなぎ役だといったけれども、いずれは(民需に)バトンタッチしなければならないという認識は一致しているでしょう。民需の回復にバトンタッチするうえでは、この公共事業が雇用を増やすことが不可欠だと思います。雇用が増えてはじめて所得が増えます。所得が増えてはじめて消費が増える。消費が増えれば、その消費財を生産するためのいろんな諸部門に波及効果が及んで、はじめて経済の自律的回復が軌道にのるというのが、ケインズの理論ですね。雇用が増えてはじめて、公共事業は本当に景気対策として効果をあげたことになるんです。総理にうかがいたい。率直な認識をうかがいたいのですが、総理は、この間の公共事業積み増し政策が雇用を増やすうえで役に立ったとお考えでしょうか。

 首相 建設業の就業者の数だけでも日本は六百六十二万人。全就業者数の一〇・二%。うち従業員千人以上の建設業者は五十万人。ちなみに農業の就業者は三百八万人でございます。これをみましても、公共事業を担当しておる建設業における就業者がこれを支えておるという面もあるわけでございまして、そういった意味を考えれば雇用の面におきましても、大きな効果があったということはいえるんだろうと思います。

 志位 雇用の面に効果があったというんですけれども、私は、こういう表をつくってきました。(パネルを示して)これは、建設省が毎年、「公共工事着工統計年度報」というのをだしています。それをそのままグラフにしたものです。

 この調査は、全国の建設業者のうち、年間三千万円以上の工事を請け負っている建設業者を対象にサンプリング調査をした統計資料です。建設省に問い合わせしますと、全体の傾向を反映したものだというお答えでした。それをこのグラフにしますと、こういう数字になります。

 これは、赤い棒が公共工事費、青い棒がその公共工事に働く人の数です。一番左は八五年度の数字です。真ん中が九〇年度、一番右が九八年度です。赤い棒をみていただければ分かりますように、公共工事費は八五年度から九〇年度にかけては十一兆円から十四・六兆円に増えました。この八〇年代後半の時期は、青い棒、就労者数をみましても百二十・六万人から百二十九万人に増えております。

 ところが、九〇年代をご覧ください。公共工事費は、九〇年度の十四・六兆円から九八年度は十六・六兆円に増えました。ところが、就労者数は百二十九万人から八十五・九万人に減りました。これは建設省の数字ですから、私は加工しておりません。そのままグラフにしたものです。ですから、とくに九〇年代に入ってむちゃくちゃなやり方で公共事業を積み増してきたやり方は、就労者の数を増やしていないんです。減らしているんです。

 これは、まさにゼネコンに吸い上げられてしまう。いま、巨大型が多いですからね。これに、みんな吸い上げられちゃって、ゼネコンの不良債権の処分に使われるかもしれないけれども、中小の建設業者さんには仕事はいかない。だから就労者数が減ってしまうのです。これはどうお考えでしょうか。事実ではありませんか。

 堺屋太一経済企画庁長官 公共事業と申しましても、やはり生産性の向上が進んでおりますし、いろいろ工夫をこらして人員は減らしていると思います。けれども、もしここで公共事業を減らしたら、この間、年末に少し前倒しをしたものですから、施工が落ちて、すぐ建設に従事する人の数が減りました。ここで公共事業を減らしたら雇用が落ちることは間違いないと思います。

 志位 「生産性の向上」といわれた場合に、これは巨大型のところは本当に「生産性」が向上しているんですよ。たとえば東京湾横断道をかける。深いトンネルを掘ったり、大きな橋をかける。これはほとんど人は使っていません。こういうところは「生産性」が向上しているのです。ゼネコン型、巨大型のものには、まさに雇用効果はないんですよ。ここを改めるべきではないか。

 経済企画庁長官が、確かにこの数字はこの通りだけれども、これをもっと減らしたら就業者がもっと減っちゃうんだという話ですけれども、公共事業はただでやっているのではありませんよ。みんな借金でやっているのではありませんか。ですから、私は、こういういまの財政運営のあり方というのは根本から改める必要があると思います。

財政改革の二つの提案――公共事業の異常膨張にメスをいれ、社会保障に手厚い財政を

 志位 私は、二つの提案をここではしたいと思います。

 第一は、財政破たんの要因になっている五十兆円の公共事業の異常膨張というものにメスを入れて、全体の規模は思い切って縮減する。そして、公共事業の中身はゼネコン型・巨大型から、雇用の拡大に結びつく福祉・生活密着型に転換する(「その通り」の声)。これが第一の提案です。

 第二に、社会保障にこそ手厚い財政に切り替えるということです。社会保険の財政危機が、いまさまざまいわれておりますが、その原因は、八〇年以来の公費支出の圧縮政策にあります。社会保障の財源のなかの公費負担が占める割合は、八〇年当時三三%であったのが、九七年には二四%に、九%減っております。これは、社会保障の財源全体が九十兆円ぐらいですから、九%といいますと、八兆円ぐらいのお金を、公費から引き揚げた(ことになる)。ですから、ここにこそ、手厚い財政を使う。これが、社会保障の充実にも、景気の回復にも役に立つ。

 私は、そういうゼネコン型から福祉型に財政を切り替えるなかで、財政の再建の展望を描いていくということが、いま、政治に求められているということを主張したいと思います。この問題は、これからも議論を続けたいと思います。

吉野川可動堰

志位氏「稼動堰中止も一つの選択肢として住民と話し合え」

建設相「選択肢は種々ある」としつつ、計画に固執

住民投票で審判を受けたのは、「何がなんでも可動堰建設」の政府の態度

 志位和夫書記局長 もう一つの角度から、公共事業の問題点を検討したい。いま、日本列島にあふれている――ゼネコン型といいました、巨大型といいましたけれども――公共事業の共通する特徴をあげますと、目的がさだかでない、採算性がさだかでない、環境保全に配慮がない、これが特徴だと思います。

 その一つの象徴として吉野川可動堰(かどうぜき)の問題について聞きたい。これは江戸時代からある天然の青石を使った第十堰を取り払って、約一千億円をかけて巨大な可動堰をつくる計画でありますが、これにたいしては住民投票の結果、圧倒的な「ノー」の審判が下りました。私はまず総理にうかがいたいんですが、なぜそういう審判を住民が下したと思いますか。

 小渕恵三首相 第十堰の事業は一徳島市のみならず、吉野川流域全体の方がたにとって重要な施策であると考えております。事業を進めるにあたりましては、地域全体とよく話し合うことが重要であり、その具体的な進め方については治水を担当する建設大臣が責任をもって対処いたします。なぜかと問われれば、この第十堰の重要性について十分な理解を求められなかったということであり、この二市六町にあたる住民のみなさんのご意見もお聞きをするということであれば、おのずとその考え方というのもまた、それをいかに反映すべきかという問題になろうかと考えております。

 中山正暉建設相 これは、高知の本山町から端を発しまして、瓶ケ森(かめがもり)水源、そこから百九十三キロありまして、河口は千メートル、それから可動堰からちょっと北の方へいきますと、これは百五十メートルに大変狭まっております。(志位「時間つぶしやめてくださいよ」)そして、さきほど先生も選挙制度の問題でおふれになりました、いわゆる日本国憲法の前文には、日本国国民は正当に選挙された(志位「時間つぶしやめてください」)国会を通じて行動するということでございましたので、私は国土庁長官も兼ねてございます。ですから自然災害に備える。これは治水保険も何もありません。ですから災害が起こったときにどうするのかというと、その責任をもつのが私でございますので(志位「委員長、委員長」)。これはいままだ調査費しかついておりません。何もお金がついてない状況で、まだこれから二十年ぐらいかかって実施することでございますので、四国全体の問題でございますし、日本人の命の安全に私どもは責任をもっておりますので、これはその一地域のご意見としてうけたまわりたいと思います。

 志位 徳島市は、一地域といいますが、吉野川流域の人口の圧倒的部分を占めています。そしてその周辺も、自治体の世論調査をみましても、たとえば、藍住町では可動堰反対が六六%、堰直下の(徳島市)国府町佐野塚では可動堰反対がほぼ一〇〇%、上板町では住民投票すべきが六九%、石井町では住民投票すべきが五五%。やはり流域全体の声なんですよ。これだけの声を、なぜ無視するのかということが問題になるわけです。

 総理は、理解が得られなかったといわれました。なぜ理解が得られなかったかといいますと、「可動堰先にありき」、「何がなんでも可動堰建設」という態度を変えない、この態度こそが、私は住民の審判を受けたんだと思います。(「その通り」の声)

堰の二大目的の一つ――「利水」を97年に建設省が撤回したのに計画の再検討はなかった

 志位 この問題について、いくつかの角度から聞いてみたいと思うのですが、第一に、当初の目的の一つだった利水が、目的から撤回された時点で、計画を再検討したのかという問題です。

 建設省がこの可動堰の具体的計画を策定した九一年八月の「吉野川第十堰建設事業計画書」をみますと、可動堰建設の目的について、一つは、「治水」をあげております。「洪水の安全な流下」です。もう一つは、「水道用水」をあげています。「徳島市、鳴門市、松茂町及び北島町に対し…水道用水として新たに三万立方メートル(一日あたり)の取水を可能ならしめる」。この二大目的でスタートして、(工事の)図面も引いているわけです。これがスタートでした。

 ところが、この利水の計画は、途中で建設省自身が撤回をしています。それがこの文書です。「第十堰の利水について」。これは一九九七年八月十八日付の建設省の文書ですが、これをみますと、「第十堰改築事業への都市用水としての依存はなくなる」。もう利水では必要ないんだ、ということになりました。

 つまり、最初は利水と治水で出発した事業が、途中から利水という大目的がなくなって、二大目的のうち、一つなくなったわけですね。なくなった時点で、計画を中止することを含めて、抜本的再検討をしたのでしょうか。したか、しないか、端的にお答えください。時間つぶしはだめですよ。

 建設相 先般も住民の代表の方がた、市民の代表の方がた、いわゆるこの運動をされた方がたにお目にかかりまして、予算委員会もすんだら、現場に入りたいというお話をしてございますが、当然のことながら、第十堰については、関係住民の意見を聞くために、平成七年から約三年間をかけまして審議委員会、それから、平成十一年からこれまで十九回実施してきました対話集会、また、平成八年の公開での模型実験等を従来から実施をいたしております。しかしながら、また洪水時に堰上げを生じてしまう固定堰である現第十堰を、可動堰に改築し、洪水位を下げることがもっとも重要だということが、十分理解されなかったことは、今回の住民投票につながったものと思っております。(志位「聞いてることに答えなさい」)今後は従前に増して、これからいろいろな現場での知恵を、現在の裁量が最良だと思っておりますが、これから未来の裁量にあわせて最良というものを築きあげていこうと、かように考えております。

 志位 聞いたことに答えないで長ながとやられると困るんですよ。利水という目的がなくなった時点で、中止を含めた再検討を建設省はしっかりやったのかと聞いているんです。やったのか、やってないのか。一言で。

 建設相 あらゆる問題で検討いたしております。

 志位 これはやってないんですよ。そのときの第七回第十堰建設事業審議委員会に、この先はもう利水がいらなくなったという報告書が提出されて、そのまま認められてしまったのです。利水という目的がなくなれば再検討すべきなんです。利水という目的がなくなれば、可動堰がいいのか、あるいは堤防という方法でもやれるじゃないか、いろいろな選択肢がその段階で広がったはずなのに、やらないわけですよ。

 あなた方は、対話集会を何度もやったという。しかし、対話集会をやるごとに住民の人は参加しなくなったのです。なぜ参加しなくなったかというと、あなた方が、「可動堰先にありき」という結論を変えないからです。

河川法改正で「環境の整備と保全」が明記されたのに、計画は再検討されなかった

 志位 第二に、つぎの問題をうかがいます。九七年の五月に抜本的な改正がおこなわれた河川法というのがあります。この精神、理念は、私たちは、まだ不十分な点は残されていると思いますが、一歩前進の内容が含まれていると思います。改定された河川法では、「住民の意見の反映」を求めるとともに、それまで治水と利水だけで川の問題を考えていたのを、「環境の整備と保全」を目的の中にはっきり書き込んだ。対等のレベルで書き込んだ。そういう河川行政をおこなうことを改正河川法では求めました。

 可動堰の建設というのは、ヘドロがたまるなどの水質の汚染が心配されています。生態系に深刻な悪影響をおよぼすことが心配されています。それから生活環境という点でも江戸時代からずうっと地域の人たちに親しまれてきたわけですから、これを守ってほしいという願いは切実であります。

 ですから、九七年五月に河川法が改正されたら、改正河川法の目的の中に「環境の保全」が書いてあるのですから、ここの時点で立ちどまって、このやり方はいいのか、再検討してしかるべきだった。私は、こう思いますが、改正河川法に照らして、中止も含めた再検討をやったのでしょうか。

 建設相 河川法一六条二の四というもので、住民の意見を十分に聞くと。当然のことながら、これからまだあと二十年ばかりかかる計画でございますので、いま、すぐにでもやるようなお話でございますが、そうではございませんで、環境保全その他の問題、住民のお気持ち、それからまた、四十七市町村にかかわることでございまして、四国全体の問題もごさいますので、そういう意味で、私どもは慎重にまた大きな幅をもつ計画の検討も加えて、これから対応してまいりたいと、かように思っております。

 志位 これも、端的にお答え願いたいんですよ。九七年五月に河川法を改正しました。そのあと河川法の改正の精神を踏まえて検討をやったのかということです。この事業について、この精神に照らすならば、このまま進めつづけていいのか、それともストップして引き返したほうがいいのか、真剣な検討をやったのかどうかを聞いているのです。

 建設相 私が就任しましたのは、昨年の十月三日でございます。その時点でうかがいました話では、十分に検討をしておるということです。

 私は、第十堰建設事業審議委員会の議事録を読みました。その議事録を読んで、第九回の審議委員会、これは九八年一月二十二日に開かれているんですけれども、”改正河川法の精神を踏まえた議論をまともにしていない。これは問題だ。やっぱりこの審議委員会でも議論が必要じゃないか”ということをおっしゃった方がいます。それを受けてどういう議論がされたのかと思って、つぎの第十回の審議委員会の記録をみてみましたけれども、ほとんど議論らしい議論がないんですよ。可動堰はもう決まったことだからやる。そういうことで全部すすんでいるんですね。ここが問題なんです。

「治水」――住民運動が示している対案について、真剣な検討をおこなったか

 志位 第三に、もうひとつ違った角度から聞きたい。治水という問題が最後に残るわけですけれど、「百五十年に一度の洪水に備える」という治水でありますが、住民運動は可動堰に代わる対案をしっかり示しておられます。それは、現にある第十堰を改修して、堤防の補強をすればよい。これが住民運動の対案でありますが、建設省はこの対案について真剣な検討をおこないましたか。

 建設相 三十六年間日本にいましたヨハネス・デ・レーケが、明治十七年に吉野川にいきまして、この固定堰は将来禍根を残すという話が、百年以上あるわけでございます。明治十七年ごろにも改修の話がありましたが、そのときに反対をなすったあと大洪水が起こっておりますので、いま先生がおっしゃったように、これからの問題は地域の住民の方がたに参加していただいて、ゼロから出発をやりなおしましょうという話を私はいたしておきました。住民投票をして運動をされた方がたと、これからお互いにゼロから出発しなおしましょうという話をしておきましたので、その点、よろしくお願いします。

 志位 また私の質問に答えてくれません。私が質問したのは、住民が出している案というのは、現在の第十堰を撤去しないで、それを残して補修したらいいじゃないか。そして、堤防の補強をすればすむことじゃないか。そのほうが安上がりだし、そして長く親しんできたものを残すことになるじゃないかというこの案を、代替案として検討したんですかと聞いているんです。

 建設相 建設省の専門家の連中に聞きますと、堤防をかさ上げしただけで水の圧力が変わるそうであります。それがかえって危険を招くような専門的な立場もあるようでごさいます。いま八メートル(志位「検討したんですか」)、鮎喰川の両堤防と、それから吉野川の堤防、八メートルございますが、徳島はこの三本の堤防で守られております。そこで、いま先生のご指摘がありましたように、いろいろこれから住民の方がたの意見を聴取して最善の方法を生み出したいと申しあげて、お答えといたします。

工事中止を選択肢の一つに――そうしなければ住民の信頼をさらに失う

 志位 いくらあなたに聞いても答えないので、建設省の文書をもってきました。「第十堰改築事業代替案について」という代替案を検討した文書です。これを全部読みました。たしかに、代替案を五つ検討しています。しかし、五つとも全部、現にある第十堰を撤去することが前提になっている。なぜ撤去するのかと私たちが聞くと、危険だからだとあなた方はおっしゃる。しかし、二百五十年にわたって洪水から守ってきたわけです。

 いま老朽化が進んでいる、とおっしゃる。しかし、老朽化が進んでいるのは、コンクリートを張り直せば、これは間に合うではないか。海底にでっかいトンネルを掘ったり、大きな橋をかけたりする技術力をもっている日本の建築技術をもってして、二百五十年前の江戸時代につくったこの堰が改修できない道理がないじゃないかと。つまり、第十堰ははじめから撤去だと、そして可動堰ははじめからつくると、この姿勢が問題だと思うんですよ。

 建設大臣にいいたい。住民のみなさんとよく話し合う。これを、ぜひやっていただきたいんですけれど、話し合うさいに、可動堰の計画は白紙に戻して、話し合う(「その通り」の声)。白紙に戻してというのが大事です。結論が先にあって、結論を押しつけられるだけだったら、もうかなわない。これが住民の気持ちなんですよ。白紙に戻して話し合ってもらいたい。

 建設相 一八六六年に水害が起こって以来、七十年周期説とか、それから百五十年周期説がありまして、いまの可動堰はちょっと川の流れとははすになっております。むかし、吉野川が非常に蛇行しておりましたのをまっすぐにした。そのゆがんだままの固定堰がいまございます。それこそ先生がおっしゃったように、いまの技術で一番最良の道を選びたい。

 さきほどから何度も申しあげてございますが、白紙というわけにはいきません。この暴れ川、日本で三番目のあばれ川、四国三郎といわれておりますこの暴れ川を、私どもはしっかりとこれからのみなさんの安全のために、いまわれわれ同じ世代で事故が起こるかどうかわかりませんが、自然災害というものが必ずこの日本列島には、いろいろな急流がありますものですから、そういうものにたいする河川行政の責任者としては白紙撤回ということはなかなか不可能かと思います。

 志位 洪水がおこったときの堤防の問題について、さっきいわれたので、ひとことつけくわえておきますが、建設省がやられた洪水の水位のシミュレーションも、たいへん過大なものだという点で、専門家のあいだでも意見がわかれている問題です。専門家のあいだで強い批判があるということを申しあげておきたい。

 結局、きょう聞いていても、可動堰はどうしてもつくる。そして、何がなんでも可動堰だ、利水がなくなっても可動堰だ、新しい河川法ができても可動堰だ、治水という問題でも、住民が合理的な代替案をだしても、白紙撤回しないという、この何がなんでもという姿勢が、住民のみなさんから審判を受けた、この反省が必要だと思う。(「そうだ」の声)

 建設大臣にもう一点、白紙撤回できないということをいわれたので、これは平行線になると思うので、私たちは白紙撤回を求めるけれども、では住民と話し合うさいに、中止ということも選択枝の一つとして話し合う、中止という選択肢ももって話し合う、この用意はありますか。

 建設相 さきほど、再三申しあげましたように、ゼロの起点に返って話し合いましょうというのが、先生のおっしゃる意味でございます。ですから、白紙撤回というのはできません。

 いわゆる多摩川の固定堰が、どんどん堤防が削られていって、真新しい家がどんどん川の中へ倒れていくのを、何年か前にテレビで見たことがございます。ですから、それと同じ効果をもつものが固定堰でございますので、岩津から先へいきますと、私はこの間ヘリコプターで全部見てまいりましたが(志位「だから、中止という選択肢をもつかどうか」)、固定堰のうえの岩津は百五十メートルしか幅がありません。その先には、もう堤防もありません。ですから(志位「時間つぶしはやめてください」)、そういう川をどうするかというのは、専門家の意見も十分聞きたいと思います。

 志位 だから、話し合うさいに、あらかじめ結論をもたないで、いろんな選択肢をもちなさいといっているんです。工事を中止するという選択肢も、選択肢の一つとしてもって話し合いなさいと。最低そのくらいの姿勢がなければ、住民のみなさんからも、本当に信頼をもっと失うことになる(「その通り」の声)。こういっているんです。この選択肢をもつかどうか、これを聞いているんです。

 建設相 (徳島)県のお立場も、それから三十二万の、早く改修してほしいという促進の署名も、私はお預かりしております。このあいだは、反対をされた方が、十万二千六百五十九票ありました。賛成の方も、九千三百六十七ございましたから、賛成の方がたのご意見も、それから地域、流域のみなさんのご意見もちゃんと聞いて、私どもはそれに対応して(志位「選択肢は」)、選択肢は、種々あります。

 志位 種々の中に、中止が入りますか。

 建設相 中止ということは、私は、河川行政を預かる者として、責任の放棄だと思います。それはできません。

 志位 私は、治水計画を中止しろといっているのではないんです。可動堰計画を中止して、ほかのものにかえるという代替案を選択肢の一つとしてもつかどうか。もう一回答えてください。

 建設相 すべてが選択肢でございます。

 志位 中止も選択肢として考えていいですね。

 建設相 白紙撤回はいたしませんと申しあげてきました。

 志位 中止を選択肢の一つとして話し合いますか。

 建設相 中止というのは、河川全体にたいするわれわれの責任の放棄でありますから、それはするわけにはまいりません。私どもは、なんらかの最善の手をうつということでございます。

「開発至上主義」はもう世界で通用しない

 志位 どうしても、その姿勢を変えようとしないわけですよ。中止を選択肢として、住民と話し合わなければ、私は、住民の理解はえられないと思いますよ。(「その通り」の声)

 いま、そういう開発至上主義というのが、問題になっているわけです。愛知万博でもそうじゃありませんか。万博の国際事務局から、結局、万博というのは隠れみので、大規模開発が目的だったということで、厳しい批判がやられて、見直しを余儀なくされている。開発が至上にあって、そのために治水という問題を持ち出すとかというやり方、この開発至上主義はもう世界に通用しない(「その通り」の声)。そういう時代になっているということを、しっかりご認識ねがいたいと思います。

沖縄・名護新基地

志位氏「96年に米国『耐用年数40年以上』と確認しながら98年知事選で『15年返還』を公約、背信だ」

防衛庁長官「コメントを差し控える」

沖縄サミットで基地の異常な実態と解決を世界に訴える意思をもっているか

 志位 つぎに、沖縄サミット(主要国首脳会議)の問題についてうかがいます。

 首相は、サミットの開催地として沖縄を選ばれたわけですが、沖縄から世界にむけて、どういうメッセージを日本政府が発信するかが、私はいま問われていると思います。

 沖縄県民の意思は、私は明りょうだと思います。県当局の企画開発部が協力して、時事通信がおこなった県民対象の意向調査では、「サミットにあたって世界にもっとも訴えたいこと」の第一位は「米軍基地問題」で四五%、第二位は「県民の平和を愛する心」で三三%です。”基地と平和”、これがメッセージとして、沖縄の県民のみなさんが世界に訴えたいことであります。

 沖縄の米軍基地の実態というのは、成り立ちからみても、現状も、世界に類のない異常さをもっていると思います。

 米軍占領時に、住民を八カ所の収容所に強制的に囲いこんで、米軍は一番いいところを基地にとりました。私は、沖縄の嘉手納基地を視察にいったさい、住民の方の一人が、基地の中を指さして、「あそこが私の家のあった場所なんです」ということをおっしゃったのが忘れられません。嘉手納基地にしても、住民が住んでいたところを全部基地に取り上げて、住民は細ぼそとした狭い場所に追いやられて暮らしている。

 そして、(一九)五〇年代にはいって、いわゆる「銃剣とブルドーザー」による基地の拡大がおこなわれました。突如、武装米兵が乗り込んできて、鉄砲を突きつけて、住民を強制的に外へ追い出して、家を全部ブルドーザーで壊す。追い出された住民にあてがわれたのは、黒いテントだけだった。こういう状況で、基地の拡張がやられました。

 そして、いまなお、施政権が返還されたのちも、沖縄県の面積の一一%、沖縄本島の面積の二〇%は米軍基地に占領されております。犯罪、事故、騒音、環境汚染、あるいは経済振興の障害等々、基地の重圧にいまだに県民のみなさんは苦しんでいらっしゃる。

 ですから、私は、沖縄でサミットをひらくというならば、この異常な実態を世界に知ってもらう。そして、その解決のために努力をしたいということを、堂々と世界に訴えるということが、首相の責務ではないかと考えますが、総理、いかがでしょうか。

 首相 沖縄県が、わが国の基地の七〇%、その県内に存在を占めておるわけでございまして、そういう意味でわれわれは、常にこの基地の整理、統合、縮小をめざして、SACO(日米特別行動委員会)の最終報告を実現するために、全力をあげて努力をいたしたい。これが、基本的立場であります。

 サミットにつきましては、今回、九州・沖縄で開催することとなり、首脳会談が沖縄・名護市でおこなわれることになりましたが、先進八カ国におきましては、広く全世界の問題について話し合い、二十一世紀における世界の平和と安定をめざして、とくに経済の面から、この問題を取り上げていくことが趣旨でございます。そういった意味で、沖縄県のかかえている問題を、問題の提起としておこなうことではありません。

 しかし、同時に、沖縄県でおこなわれるということによりまして、各国の首脳も、この状況等、十分理解する機会になれば望ましいと考えておりますが、沖縄県に多くの基地をもつということは、あくまでも、わが国ならびに極東の安全のために必要な日米安保条約にもとづいておこなうことであり、このことによって、日本国の安全を確保しているという趣旨でございますので、その点につきましては、冒頭申しあげましたように、今後とも県民の理解を求めながら、基地の整理、統合、縮小をめざして、全力をあげていくということだろうと思っております。

「15年返還」は、「国際情勢の変化」がおこるまでアメリカに要求しないのか

 志位 いまの総理の答弁を聞いて、本当に驚きました。政府は、少なくとも米軍基地の整理、縮小という方針をもっている。しかし、サミットでそれを沖縄県の問題としていうつもりはないということをおっしゃられました。私は、これは本当に総理の言葉として情けない思いで聞きました。これだけの基地の重圧で苦しめられている島で、サミットを開きながら、その問題にフタをしようと、これは本当に情けない政府だと思いました。

 沖縄では、名護市での新しい基地建設が問題になっているわけですが、この問題を含めてつぎにもう一つ聞きたい。名護市の新しい基地の建設というのは、普天間の基地のたんなる移設にとどまりません。最新鋭の新しい基地をつくるというのがこのねらい目です。

 この前の沖縄の県知事選では、現(稲嶺)知事は、この基地の提供について、「十五年の期限」を付けることを、県民に公約しました。選挙で知事を支持・推薦した自民党は、この公約に共同責任を負っているはずであります。総理は、「十五年の期限」について、アメリカ側に堂々と要求し、その実現のために交渉する用意はあるのかどうか。

 このことは本会議でわが党の不破委員長がただしたのですが、それにたいする首相の答弁は、「国際情勢の変化に対応して、米国政府と協議していきたい」というものでした。これは、言葉を変えますと、「国際情勢の変化」が起こるまでは、この問題を協議する意思はない、そういうことでしょうか。総理、お答えください。「十五年期限」の問題です。

 首相 本会議でもご答弁申しあげましたが、代替施設の使用期限につきましては、政府としては閣議決定にあります通り、国際情勢もあり厳しい問題であるとの認識を有しておりますが、沖縄県知事および名護市長からの要請がなされたことを深く重く受けとめ、先般これを瓦防衛庁長官および河野外務大臣から米側にたいしてそれぞれ取り上げたところでございます。

 政府といたしましては、閣議決定にある通り、国際情勢の変化に対応して本代替施設を含め在沖縄米軍の兵力構成等の軍事体制につき、米国政府と協議していきたいと考えております。政府といたしましては、あわせて国際情勢が肯定的に変化していくよう外交努力も積み重ねてまいると答弁申しあげましたが、同様の答弁をいま申しあげたところでございます。

 それからさらに、さきほど、沖縄県の状況についてサミットで取り上げるべきだということの話がございましたが、サミットそのものは(昨年のサミットが開かれた)ケルンでも相談してまいりましたが、その他のテーマについていま検討しておるわけでございまして、書記局長、自分で、自分の考え方でご決定して、その通りである、こういわれましても、まだ今後こうした問題についての議論というものはこれからどのようなテーマでお話しするかということについては決定していないわけでございまして、決めつけられるということはありえないことであります。沖縄県でおこなわれるという意味からも世界の首脳がこの状況というものを理解をするいい機会であるということはさきほど申しあげた通りでございます。

 志位 取り上げる意思がないということをおっしゃられたので、私はさっきいったんですね。ただ、世界の首脳がこれを理解するいい機会になるようにねがっているということをいまおっしゃられたので、そういう行動を求めたいと思います。

 いまの回答のなかで、国際情勢が変化するまでは協議するのは先送りにするというのが、ご答弁だったと思うんですが、ここで委員長、資料配布をおねがいしたいと思います。二枚の資料です。

「耐用40年以上」は米国の要求にこたえて、日米で確認――公式文書でもあきらか

 志位 これは、一九九六年十一月二十日に提出された「海上施設に係る技術検討・評価報告書」と題する文書です。これは日米両国の代表からなる「普天間飛行場代替ヘリポート検討のための特別作業班」、「SACO」のすぐもとにある機構ですが、「SWGF」といいますが、「SWGF」=「特別作業班」のもとにある「技術支援グループ」=「TSG」が作成した文書です。「TSG」は、「SWGF」の指示をうけ、海上基地にかんする検討をおこない、この報告書を作成し、「SWGF」の日本側共同議長に提出しています。

 この五ページ目をご覧になってください。五ページ目をみますと、「海上施設の技術的検討のための前提条件」という項目がございます。「海上施設の技術的検討のための前提条件は、米側作成資料及び日米SWGF等の協議に基づき、また情報のないものについては日本側で仮定した上で作成し、あくまで技術的検討のための条件のもとに、日米SWGF等で確認した。その概要は次のとおりである」として列挙されております。第一に「システムの大きさ」、第二に「主要施設」、第三に「立地条件」、第四に「設計外力」、次のページに第五に「その他の要求事項」とあります。

 「その他の要求事項」のアイウエオのオのところに、「耐用年数は、四十年以上とする」と明記されております。重大な確認であります。この文書には、注がついておりまして、コメ印は日本側で仮定したものだということが書いてあります。この「耐用年数は、四十年以上とする」との項目は、コメ印をふっていませんから、アメリカ側の要求にこたえて、「日米SWGFで確認した」ということになります。

 この報告書はたいへん重大なものです。わが党が独自に入手いたしました。ただ、念のため、防衛庁に文書の所在について確認いたしました。そうしましたら、もう一枚、お手元にあるような文書の回答がやってまいりました。「(平成)8・11・20に審議したTSGからSWGFへの報告書の中には、米軍の運用所要等の非公開にすべきものも含まれているので、これを公表することは、日米の信頼関係を損ね、円滑な日米安保体制の運営に支障を来すことになるので、公表は差し控えさせていただきたい」というのが防衛庁の答えでした。すでに、この報告書の存在自体認めたわけですね。

 私は本当に重大だと思うのです。すでに九六年の十一月二十日までには、日本側はアメリカ側と海上基地について、「耐用年数は、四十年以上とする」という確認をやっているわけですよ。ところがその二年あとの九八年の沖縄の知事選挙では、あなた方が推薦した知事候補は「十五年以内に返還してもらう」というのを公約に掲げ、あなた方はそれを推したわけですよ。日米間で、「耐用年数四十年以上」ということを合意しておきながら、知事選挙では「十五年返還」ということを平然と口にして、そういう候補を当選させる。これは、たいへんな背信じゃありませんか(「その通り」の声)。たいへんな背信です。お答えください。(場内騒然)

 瓦力防衛庁長官 ただいま志位委員からご指摘がありました、このTSGならびにSWGFについてお答えをいたしますが、普天間飛行場の代替へリポート案として、海上施設につきましては、平成八年十月に関係省庁の技術者等で構成される技術支援グループTSG、および部外有識者によって構成される技術アドバイザーグループTAGを設置いたしまして、その技術的可能性の検討をおこなったものでございます。これらのグループの会議の場における審議に使用されました資料の中には、米軍の運用所要等の非公開にすべきものも含まれております。かかる資料を公表することは、日米の信頼関係を損ね、円滑な日米安保体制の運営に支障をきたすことになりますので、公表は差し控えさせていただいたところであります。

 おそらく委員は、この資料につきましては入手されておるであろうという想像のもとでございますが――きょうは配布されましたから、そのままお持ちでございますが――これは以前に、もうすでにいろんな各案の研究はいたしますが、このたびの事態というのは、新たな事態もふまえておりまして、沖縄の問題というのは新しい出発点を迎えておるわけでございますから、このことにつきましてはそれ以上は承知しませんが、公表すべきものであるかどうかにつきましては米側の意向もあり、これは公表するにふさわしくないという判断に立っているわけです。

 志位 一点だけうかがいます。このときに、「四十年以上の耐用年数」ということを確認したということ、この事実はお認めになりますか。

 防衛庁長官 それも含めまして私は、コメントを差し控えさせていただきます。

恥ずべき二重外交――この問題での資料提出を委員会に正式にもとめる

 志位 私は、こういうものを隠すことが、日米間の信頼を損ねる(「その通り」の声)。私は、この問題について、委員会に資料提出を正式に求めたい。これは米軍の運用上とかいいましたけれども、米軍の作戦に関係ないですよ、耐用年数の問題なんか。こういう問題について、「四十年」という確約を結んでおきながら、これとは違う二重外交をやるという、恥ずかしい姿勢はない、こう思います。

 こういう政権には、もう本当に早期の解散で信をあおぐことを重ねて私たちは要求して質問を終わります。(拍手)



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