1999年1月26日「しんぶん赤旗」

衆院予算委

小渕内閣に日本の舵取り担う資格なし

志位書記局長の総括質問(大要)


志位委員 私は、日本共産党を代表して、小渕総理に質問いたします。

 まずお聞きしたいのは、日本列島を覆っている戦後最悪の不況から国民の暮らしをどう守り、日本経済をどう立て直していくかという問題についてであります。

 今回の不況の著しい特徴が、国民経済の六割を占める家計消費が著しく冷え込んでいるところにあること、消費大不況にあることはだれも否定できない事実だと思います。

 私、ここに持ってまいりました、経済企画庁が出した「平成十年経済の回顧と課題」という冊子がありますが、大変興味深く読みました。これを見ますと、次の点を指摘していました。まず一つ、九七年春以降の景気後退局面においては個人消費が景気後退の先導役を務めたこと、二つ目、現状において消費は引き続き低調であり、景気低迷が長引く要因の一つとなっていること、そして三つ目は、消費は外部からのショックがなければ自律的に景気回復をつくり出すことはできないということ。つまり、消費税増税をきっかけに起こった消費の冷え込みが景気全体の後退の先導役を務めた、現状でも消費は低調であって景気回復の足かせになっている、そして消費は自力では盛り返すことができない、これを盛り返すには外部からのショックが必要だという認識であります。

 私、これはなかなか的確に今の現状を診断したものだと読みました。

 ところが、小渕内閣が今やろうとしている対策は何か。消費を喚起する対策として四・三兆円の所得減税をやるという。しかしこれは、もう既にたびたび問題になってまいりましたが、最高税率引き下げと定率減税を組み合わせ、四兆円の特別減税を打ち切るかわりに行われるために国民多数が九八年に比べて九九年が増税になる、いわゆる標準世帯で年収七百九十四万円以下、納税者の大多数が増税になる、これは明瞭であります。

 私、政府統計をもとに家族構成ごとに増減税の試算を行い、それを合計してみました。そうしますと、増税となる中低所得層は総額で約一兆円の増税、減税となる高額所得層は総額で約一・三兆円の減税であります。

 まず総理の基本的な認識をお伺いしたいんですが、不況で今最も痛めつけられている低所得層、中所得層から一兆円を吸い上げて高額所得層に一・三兆円を移す、こういうことを今の景気のもとでやっていいものかどうか、こういうことをやったら今の経済に一体どういう影響を及ぼすのか、これについて総理がどういう認識をされているか、まず端的に伺いたいと思います。総理、どうぞ。

小渕内閣総理大臣 現在極めて厳しい経済的環境であることは承知をいたしております。

 そこで、共産党の御意見を常々聞いておりますと、消費税を下げれば消費がすべて回復してかなり景気の回復に大きな影響を与える、こう言っております。

 私は、もちろん消費税が景気に対して大きな影響を与えていないとは申し上げませんが、しかし、先ほど加藤委員が十年前のお話をされましたが、三%で初めて消費税を導入した時点、いっとき、本当にわずかの間は、それは全体的に消費が減退しましたが、直ちに戻ってまいりました。ですから、必ずしも消費税だけが大きな影響を与えるとは私は言いがたいと思っております。諸般の情勢、先ほどお話がありました将来への不安その他のことも含めまして、もろもろの状況があって消費の問題はあると考えておりますので、政府といたしましては、あらゆる政策を遂行することによってこの問題については取り組ませていただきたいと思っております。

 さらに、減税の問題について、それの影響する階層その他についてお話がありました。しかし、本年度行いました二回にわたる特別減税、こういうような形で減税を行っていくことは、将来にかかって構造的な税制改正をきちんとやるということの重要性も一方ではあるわけでございまして、こうした特別減税を歴年にわたりまして続けていくことは、最終的には日本の税制をゆがめていくことになる、こういうことでございまして、その点につきましては、どのような影響がこれあり、それに対する政府としての考え方につきましては先刻来大蔵大臣から御答弁いたしておりますが、必要があればぜひ大蔵大臣からも御答弁いただきたいと思います。

志位委員 総理、私が聞いたのは、あなた方がやろうとしている今度の所得減税、これをやったらどうなるか、中低所得層から一兆円もの増税をやる、こういうことをやったら一体どうなるのか、景気に対してどういう影響を与えるのかということを聞いたんですよ。あなたは何にも答えていない。いいですか。その問題についてきちんと答えないので、もう少し景気の実態に即して議論をしたいと私は思うんですね。

 ちょっとこのグラフを見てください。いいですか。総理は、消費税の増税をやってもその効果はいっときで、回復してくると言いましたよ、さっき。そんなことはない。よく見ていただきたい。これは、勤労者世帯の可処分所得、すなわち給与から税や社会保険料を差し引いた手取りの給与と、消費支出がどのように推移したかのグラフであります。九六年度に比べて、九七年度、九八年度がどう推移したかを総務庁の家計調査からつくったものであります。

 これを見ていただきたいんですが、赤い棒が可処分所得の動き、青い棒が消費支出の動きです。九七年度を見ていただけばわかりますように、可処分所得は大きく減りました。これは九兆円の負担増の影響です。九七年度は、それにさらに消費マインドの冷え込みが加わって、消費支出はさらに落ちています。

 問題は、九八年度を見ていただきたい。九八年度も引き続き可処分所得はさらに落ち、消費支出も落ちているんですよ。九八年度というのは、四兆円の特別減税をやった年でしょう。四兆円をともかく国民に戻した年ですよ。戻した年なのに可処分所得が落ちているということはどういうことか。勤労者の実質の収入がどんどん減っているということですよ。総務庁の統計を見ても、十六カ月連続で勤労者の実質賃金は低下している、こういう経済情勢にあるわけですよ。

 いいですか、こういうときに、この九八年と比べても、納税者の大多数に増税をかぶせちゃっていいものかどうか、こんなことをやったら経済が大変ではないか、景気に対してどういう影響を与えるのかということを私伺ったんですから、総理、きちんと答えてください。総理。いや、総理、総理に聞いているんですから。

宮澤国務大臣 このたびの所得税の問題につきましては、けさほど詳しく冬柴委員に御説明を申し上げましたので繰り返しません。

 今、志位委員のお話を承っておりますと、非常に御説明がよく考えておられまして、何かことしも四兆円の減税があるはずだった、そんなふうに聞こえますですね。ことし四兆円の減税があるはずだったんではないんですね、四兆円の減税は昨年一年限りなんですから。そこのところは、あるはずのものをさらに一兆何千億円値切っちゃったというのは、それは全く間違いでございます。ほうっておけばことしは減税はなかったのですから。それを四兆三千億円減税しているということが事実じゃないですか。

志位委員 私が聞いたのは、いいですか、勤労者世帯の大多数で、去年の、九八年の納税額に比べて九九年の納税額がふえることは間違いなかろう、それが景気にどういう影響を与えるかということを聞いているのですよ。

 いいですか。一年限りのものであろうとなかろうと、減税をやったという事実に変わりはないのです。そして、家計からしたら、九八年の納税額と九九年の納税額を比べざるを得ないのですよ。そして、増税になったら財布のひもを締めざるを得ないのです。そうしたら景気に悪い影響が与えられるのじゃないですかと聞いているのですよ。

 ちゃんと答えてください。総理、今度は総理です。大蔵大臣が何度答えてもしようがない。総理です。きちんと答えてください。

宮澤国務大臣 御議論は、今回の減税が減税であるかないかということを実は議論していただきたいので、政府は所得税で四兆三千億円の減税をしているわけですから、そのことに私は間違いはないでしょうということを申し上げている。

 そこで、可処分所得のお話がありました。私は、それには幾つか理由があると思うので、そこは間違いだと申し上げていません。つまり、可処分所得が減っているのは、全体の所得が減っているか、あるいは限界消費性向が落ちておるか、あるいはその両方であるか、そのどっちかでございますから。いいですね。(志位委員「可処分所得と消費性向は関係ない」と呼ぶ)いやいや、そうでしょう。ですから、可処分所得は確かに減ってきたが、ことしも可処分所得が減るだろうと推測する理由は私は別にないと思いますね。消費性向は幾らでも変わりますから。

志位委員 可処分所得と消費性向は別の話でしょう。消費性向というのは消費マインドの話でしょう。可処分所得というのは、実際にどれだけの手取りの給料があるかという問題ですよ。この問題については、統計を見ても十六カ月連続実質賃金マイナスという実態があるのですよ。だから、こういう実態が出ている、この問題についての経済にどういう影響を与えるかということの御認識、本当に吟味がないのか。

 私は、もう一枚、こういう図を見ていただきたいのですね。これは、九七年と九八年度を比較した場合に、収入階層別の可処分所得と消費支出の関係であります。これは、赤い棒が可処分所得、青い棒が消費支出です。これは総務庁の家計調査からつくったものであります。これを見ていただけるとわかりますように、勤労者平均でも、青い棒、赤い棒ともに前年度割れをしておりますね。

 ただ、これは所得階層によって明暗が出ているのですよ。左の方は中低所得層、いわゆる五つの所得階層の分位で見た場合に、第一分位、第二分位、第三分位の平均値です。今度の政府の税制改定では、大体八百万ぐらいまで増税になりますから、第三分位といいますと大体年収八百万ぐらいまでの層ですから、増税の対象になる層です。増税の対象になる層で可処分所得が平均以上に落ち込み、そして消費支出はうんと下がっているでしょう。一番右の方は第五分位、高額所得層の推移です。こちらは所得、消費とも伸ばしているのですよ。

 いいですか。九八年というのは特別減税をやった年です。特別減税というのは定額方式だったわけだから、その是非は別にして、下に厚い減税だったわけですよ。しかし中低所得層は、それであるにもかかわらず、所得が減り、消費はうんと減った。高額所得層は自力で所得も消費も伸びているのです。こういうときにあなた方のような税制改定をやっちゃっていいものかということを聞いているのです。

 今度の税制改定というのは、ただでさえ所得も消費も落ち込んでいる中低所得層に増税をかぶせ、自力で所得、消費を伸ばす力を持っている高額所得層に減税をやってやるというものでしょう。これは逆さまじゃないか。こんなことをやって景気に大丈夫なんですか、景気をもっと悪くするんじゃないですかということを私は聞いている。

 今度は総理、お答えください。総理、お答えください。総理。

宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは……(発言する者あり)

中山委員長 御静粛に願います。

宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは、そこが実はポイントじゃないということなんですね。まず、その可処分所得が減ったということも、私はそうだと思っているのです。それから、消費支出がしたがって影響を受けたということもそうだと思っているのです。

 しかし、問題は、実は消費がどうなるかということなんで、それは消費性向によって決まるじゃありませんかということを申し上げているわけですね。可処分所得が低くなれば、消費性向が同じなら、それは消費は減ります。しかし、可処分所得が仮に低くなっても、消費性向に変化があれば消費は逆に上がるのであって、そのことはさっき志位委員が経済企画庁の文章を引用されて、この低い消費は何か外的な刺激がないと上がらないと言っている意味は、所得が小さいからと言っているのではないのですね。消費するというマインドが出てこないということをあれは言っているのであって、したがって消費性向を問題にしなければならないのだということを申し上げているのです。

志位委員 いいですか。消費というものが二つの要因で決まるというのは、私もそんなもの百も承知で聞いているのです。消費を規定するのはまず所得ですよ。つまり財布の中身がどれだけあるかです。もう一つは消費性向、消費マインド、財布のひもがどれだけ緩いかです。この二つの要素で決まるのですね。

 この二つの問題で、私は、少なくとも所得も消費もこういう実態にあるではないか、そのときに、そういう所得も消費も落ち込んでいる層に増税をかぶせちゃっていいものですかということを聞いているのに、あなたはお答えにならないわけだ。さっきから何度も聞いているのに。

 いいですか。それで、消費マインドということをおっしゃいました。じゃ、今度の減税やったらこれは消費マインドがどうして温まるんですか、あなた方の減税やったら。これは温まると考えているのですか。今度は総理に聞きましょう。

堺屋国務大臣 その今お挙げになりました文章は私どもの書いたものでございますけれども、確かに所得が減っている。これは、税制の問題ももちろん、減税したのでございますが、不景気で下がっている。これに対する不安が一番大きいのですね。

 だから、今我々にとって大事なことは、これから景気が回復するという信認を与えることでございまして、将来どんどん下がるという、まさに今九七年と九八年だけお示しになりましたけれども、他のケースも見ますと、消費税が上がったときでも消費性向が下がらなかったとか、上がったときもございます。去年まさに下がったのは、不景気でさらに将来悪くなるというこの不安感があったのです。

 したがって、今恒久的な減税をやりまして将来の見通しがよくなるという心理を与えなければいけない。それが一年限りの特別減税では、その効果は、なかったとは言いませんが少なかった。ことしはこういう恒久減税をやりますから、そういう点ではかなり大きな効果が上がるだろうと考えております。

志位委員 いいですか。今の説明ですけれども、恒久的な減税だから今度は安心して使ってくれるだろう、要するにそういうことでしょう。マインドは温まるだろうと。

 しかし、こういう世論調査がありますよ。NHKがことし、今月の一月十九日に発表した世論調査ですが、総額九兆円の減税で買い物や旅行などに使うお金をふやそうと思いますか。これに対して、思うという方は一〇%。それから思わないは八三%ですよ。

 それで、これはもちろん将来不安という問題がある。将来不安をつくり出したのはあなた方だ。雇用の問題だって社会保障だって、あなた方が将来不安をつくっている。それから雇用の不安、社会保障の不安と並んで景気の不安があると言いました。私は、庶民に増税をかぶせるやり方が景気を悪くして、そこでも不安をつくっているのじゃないかということをさっきから何度も聞いているのですよ。

 これは、例えば、大蔵省が試算したものがあります。いいですか、大蔵省が試算したものでも、年収五百万の世帯、標準世帯で九万三千二百五十円の増税ですよ。それから、年収六百万では六万八千九百円の増税です。年収七百万では四万二百円の増税です。これだけ九八年に比べて九九年に税金がふえたら、これは消費マインドだって冷え込みますよ。だから、景気にどういう影響を与えるのか、このことを私これだけ聞いても、まともに吟味した様子がないですね、あなた方の内閣は。

 九兆円の負担増のときにも私聞きました。九七年の四月、あのときも消費の伸び方というのは、ようやく弱々しいながらも消費が回復しているその途上でしたよ。そのときに九兆円もの負担増をばさっとかぶせちゃっていいのか、日本の経済は大丈夫かということを随分、橋本前総理と論戦しました。大丈夫だ大丈夫だと言ってその増税をかぶせた結果が今日の状況じゃないですか。それと同じ失敗を繰り返そうとしている。

 国民の大多数に、去年に比べてことし増税を押しつける。その吟味もなしに、今のこの経済情勢の中でそんなことをやっちゃって大丈夫なのか。私は第二の失政になるということを言っているわけですよ。総理、これは総理です。これ、経済に対する何の影響もないというのですか。こんなことをやって経済、足を引っ張る影響を及ぼさないというのがあなた方の考え方ですか。総理、総理に聞いているのです、総理に。

小渕内閣総理大臣 しばしば申し上げていますように、増税増税、こう言われますけれども、今年度につきましての四兆円の特別減税というものをベースにして物事をはかって増税という言葉は、大変誤解を生みやすいではないかと思いますよ。そして、その方々が一体所得税も含めてどの程度の所得があり、それに対しての減税額があるかということの論議をいたしませんと、今回の増税がすべからく景気に大きな影響を与えてと言われることは、これはむしろ悲観的な考え方をますます増長することになると思っておりまして、今回行いますことを総合的に、政府の今回の税制改革につきましても御理解をいただきたいと思っております。

志位委員 私、あなた方の内閣は本当に今の経済の問題を考えていないと思う。私は、一般的にどういう税制がいいかという議論をしたんじゃないんです。経済の現局面の問題について、消費がどうなっているか、所得がどうなっているか、この問題をあなた方の政府が出したデータをもとにきちんと示しました。このもとでそういうことをやったら、あなたは増税じゃないと言ったけれども、家計から見たら、九八年と九九年、増税になるというのは、これはもう避けようのない事態なんですよ。こういうことをやっちゃって大丈夫なのかとこれだけ聞いても、これに答えない。私、こういうやり方を続けるということは、本当に経済のかじ取りをあなた方に任せるわけにいかないという思いを強くしました。

 私、真剣に景気回復を考えるならば、減税方式の根本的な切りかえが必要だと思います。所得の落ち込み、消費の落ち込みで苦しんでいる中低所得層にこそ手厚い減税をやるべきであって、私たちは消費税を三%に戻す減税こそその最も効果的手段であると考えます。

 政府も先ほどの経企庁の文章で、消費は外部からのショックがなければ盛り返すことはできない、こう認めています。この外部からのショックというのは、所得をふやすことと消費マインドを温めることですよ。この二つですよ。

 消費税の減税というのは、総理、これは景気論としてお尋ねしますけれども、所得をふやす。つまり、二%減税をやることによって、全世帯に実質二%の賃上げと同じ効果ですから、実質所得をふやすという効果がある。それから、毎日の売り買いで一番の重圧になっているのはやはり消費税ですから、これは消費マインドを温めるという効果もある。所得をふやし、マインドを温めるという、これは二重の外部からの一番のインパクトになる、こうお思いになりませんか。総理、どうでしょう。総理です、総理に聞いているのです、それ。総理に聞いているのです。

宮澤国務大臣 それは私、間違いなことを言っていらっしゃるとは思いませんけれども、つまり消費税が減れば、例えばそれは百五円のものが百三円になるわけですね。問題は、その節約された二円がさらに消費に移るかどうかという、それが消費マインドの問題じゃありませんか。ですから、消費税を減らせばそれだけ負担は楽になる。しかし、その楽になった二円がもう一遍消費になるかどうかというところが消費マインドじゃないのかと思いますよ。

志位委員 消費税という減税が、消費して初めて減税は生まれる、そういう意味では、減税効果が一〇〇%上がる減税であるということは、もうこれは明瞭です。

 それから、消費マインドということをおっしゃいましたけれども、大手のスーパーや、まあ百貨店なども一部やりましたけれども、還元セールに見られるように、やはりそういう需要を生むんですよ。これは消費マインドの効果なんです。

 今度は総理にもう一つ、総理、お答えにならないので、もう一つ別の角度からお聞きしたい。

 私、政治の信頼という問題がこの税制の問題で問われていると思います。総理は、新春の記者会見で、国民の政治に対する信頼を確立することが何よりも経済再生などの前提でありますとおっしゃられた。どうすれば政治への信頼が回復するのか。私は、もっと国民世論に素直に耳を傾ける、そうしてこそ政治の信頼が回復するんじゃないか。

 この問題は、国民の世論は明瞭ですよ。一月一日に朝日新聞が世論調査を出しました。そこで、最高税率の引き下げに賛成ですか、反対が六一%ですよ。それから、望ましい減税の方法は何ですか、消費税率の引き下げが六八%ですよ。あなた方はこの問題、ずうっとこの間拒否し続けているけれども、国民の声はもう明瞭なんです。

 私、総理に伺いたいけれども、総理の姿勢というのは、これだけ明瞭なのに、国民が反対している最高税率の引き下げはやる、国民が切望している消費税の減税は拒否する、そういうことで、あなたが年頭の会見でおっしゃった、政治に対する信頼がどうして回復できるのか。どうですか、まさに政治に不信を広げているのがあなた方の姿勢じゃないか。どうですか。なぜこの国民の声にこたえないのか、言ってください。

小渕内閣総理大臣 しばしば本会議でも、税は低いことが国民の望まれることであるということは十分承知をしておるということは申し上げております。

 ただ、これを消費税で考えるか、あるいはまたその他の税で考えるかということは、総合的に政府としては判断して決断いたしておるわけでございまして、今回、この消費税問題につきましては、御案内のように、これを福祉の関係として、今後とも本予算についてもひとつ限定的に考えるということを考えると、この予算によりまして、介護も含め、あらゆる社会保障のことに問題を起こさない、給付を下げない、こういう形で考えておるために大きな税源になっておることにつきましても国民の理解を強く求めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。

志位委員 私は、きょう、まずこの税制の論議で、今の経済にとってあなた方のやろうとしている税制改定がどういう効果を持つのかを大分聞いたのに対して、答えなかった。

 あなた方は、消費税の増税という第一の失政をやりました。そして、今度、所得税の減税についても国民の大多数に増税をかぶせるという第二の失政をやろうとしている。消費税の減税の拒否というのは第三の失政になりますよ。

 私、これはあなた方がどんなに拒否しようと、国民のこれを願う声というのは広がらざるを得ないので、この問題、引き続き強く求めていくということを申し上げて、次の問題に移ります。

 次に伺いたいのは、財政破綻と自治体問題についてであります。

 日本経済の重大問題は、深刻な不況と同時進行でかつてない財政破綻が進んでいるというところにあると思います。今年度末の国と地方自治体を合わせた借金総額は、長期債務残高でありますが、五百六十兆円、来年度は六百兆になると言われていますが、年間の国内総生産約五百兆円を大きく上回りました。この財政破綻が国民に何をもたらすのか。私は、地方自治体がその矛盾の最も有害な集中点に今なっていると思います。

 今、全国の地方自治体は戦後最悪の財政危機に直面しております。全国の自治体の借金は、一九九〇年度には六十七兆円だったのが九八年度末には百六十六兆円に、約百兆円膨れ上がりました。国民生活にとって重大なことは、この財政危機を口実にして、地方自治体の最も重要な役割である住民の福祉、医療、教育のための施策を根こそぎ切り捨てていく動きが全国各地で起こっているということであります。

 まず総理の基本的認識を伺いますので、よく聞いていただきたい。いいですか。九〇年代に入っての自治体のこの財政危機の原因が一体どこにあると考えているかということについてであります。もちろん、この間バブル経済の破綻によって税収の停滞があったことは事実です。問題は、そういう状況であるにもかかわらず、莫大な借金に頼って公共投資の無謀な膨張政策が行われてきたということにあるのではないか。

 政府の統計をもとに試算してみますと、一九八〇年代後半の五年間での全国の自治体での公共投資は、年平均十九・二兆円です。それが九〇年代に入って急膨張し、年平均三十・三兆円。年平均で何と十一兆円ですよ、十一兆円の膨張が起こりました。

 このグラフを見ていただきたいのですが、これは、一九九〇年代に入っての地方自治体の公共事業費の膨張額の累積と借金の残高の推移であります。これは政府の資料からつくりました。自治省の行政投資実績等々からつくりました。青い棒の方が公共事業費の膨張額の累積です。八〇年代後半の水準に比べて累積ベースでどれだけ公共事業が膨らんだかという数字でありますが、見ていただければわかりますように、九八年度、累積で百兆円膨らんでいるのです。赤い棒の方は借金の残高でありますが、これは、九〇年度が六十七兆円だったのに対して九八年度が百六十六兆円ですから、こちらも大体百兆円膨らんだ。公共事業を八〇年代後半に比べてこれだけ膨らませた、百兆円膨らませたそっくりその分が大体借金の増大につながっている。一目瞭然になってまいります。

 私、これはまず事実の問題として総理の認識を伺いたいので、きちんと答えていただきたいのですが、今の自治体の財政危機の問題について、この財政危機の一つの重要な原因が公共事業の膨張にあったという事実は、これはお認めになりますね、総理。総理、どうですか。

小渕内閣総理大臣 一つの要因であったことは事実であると思います。

志位委員 一つの要因である。重要な要因であると私たちは思いますが、要因であるということはお認めになりました。

 そこで、その責任がどこにあるかというのが次の問題であります。

 自治体の責任はあると思いますよ。地方の責任はある。地方もこれを進めたわけですから、地方自治体の責任はもちろん大きい。しかし同時に、私は、政府が重大な責任を負っているということを指摘しなければなりません。

 第一に、九〇年代に入っての自治体の公共事業の異常膨張の出発点になったのは、九〇年にアメリカの外圧に屈してつくられた四百三十兆円の公共投資基本計画であります。これは、九四年には六百三十兆円にさらに膨張されました。この基本計画では、地方自治体が公共事業拡大で重要な役割を果たすべきだという、いわば号令がかけられました。

 第二に、九二年の宮澤内閣、あなたのときからです、宮澤内閣以来八回にわたって行われてきた、景気対策の名での公共投資積み増し政策に自治体を動員してきた。毎回毎回、自治体に公共投資の重荷を背負わせてきた。これで、八回の景気対策で、累計六十四兆円に上る公共投資積み増しが行われ、地方財政に巨額の負担を背負わせた、これは事実だと思います。

 それから第三に、自治体を動員する手法として、国が補助金を出さない地方単独事業を奨励し、押しつけてきたことであります。そのため、これも宮澤内閣の九二年からでありますが、それまでは公共事業をやる場合に、二、三割は一般財源からの支出が必要だった地方単独事業について、全額借金で賄うことを認める仕組みをつくりました。こうして、野方図な単独事業の拡大が進みました。

 このグラフを見ていただければわかりますように、この青い棒のうち、濃い部分が単独事業の膨張分ですよ。全体で百兆円公共事業が累積で膨張したと言いましたけれども、そのうち約八十兆円は単独事業の膨張分です。これらの事実を見ますと、まさに政府主導で自治体を異常な公共投資積み増し政策に駆り立てて、その結果として今日の深刻な財政危機を招いたのではないか。

 この点は、総理に伺いましょう。総理は、歴代自民党政府がやってきたこと、この重大な責任をどう認識されておりますか。反省はないのですか。はい、総理。

小渕内閣総理大臣 政府の責任、こう言われますが、まず、地方団体が多額の赤字財政を抱えて厳しい状況にあることは承知をしております。ただ、それがゆえに、すべて今日までに行われました政策そのものが誤りであったがごときお考えには、私どもは賛同できない。

 確かに、借金は残高があるかもしれませんが、そのことによって全国の自治体そのものが平均化して地方の発展につながっておるし、そのことは、その地域の経済状況を活性化し、かつまた雇用も拡大しておるわけでございまして、そうしたものがきちんと背景にあるわけでありますので、そうしたこととの中でこの残高と事業のあり方、あるいはまたその地域の経済の状況というものを総合的に判断して是非を論ずる必要があるのではないかというふうに考えておりまして、そういう意味で、景気対策や社会資本の整備、国がすべて押しつけておるようなことを言われますけれども、地方としても全力でその地域の責任者がこれを発展させようという努力、そういうものが強く政府をしてこれを推し進めさせていただいたということでありまして、決して、国がこれをすべて押しつけた結果こうなったというお考えは、私はあり得ない、こう考えています。

志位委員 国に全然責任がないかのような答弁をされたので、私は驚きました。本当に、はっきり言って驚きました。

 経済の活性化と言われたけれども、そういうまさに公共事業の積み増しをどんどんやってきたために財政破綻が起こって、それを理由に今福祉の切り捨てがどんどんやられているのですよ。それが地方から景気を冷え込ます要因に今なっているのですよ。あなたは御存じないのか。国が押しつけたんじゃないと言いますけれども、押しつけた証拠なんて山ほどありますよ。

 これは宮澤内閣時代の自治省の通達ですけれども、地方単独事業を景気対策としてやることになったから、ぜひあなたのところも積極的にやってくれ、そして、別途調査を行う、やったかどうかの調査も行う、そこまで言っていますよ。まさに押しつけてきたんじゃないか。

 自治体は何と言っているか。大阪府が、財政健全化方策というのを今つくっています。これは福祉切り捨ての計画として大問題になっておりますけれども、この大阪府が、なぜ建設事業がふえたかについて、このような分析をしております。建設事業、公共事業が増加している要因としては、「国において「公共投資基本計画」に沿った社会資本整備の推進や平成四年度以降の数次にわたる景気対策により公共事業関係予算が増額されてきたことなどによるものである。」

 やはり国の政策の結果そうなったというのは、これは自治体の方からも上がっているわけですよ。だからといって、自治体の責任がないとは言いませんよ。しかし、国の責任があるのは明瞭なんです。

 もう一つ資料を出しましょうか。

 これは自治省が出している資料でありますけれども、自治体はもう単独の公共事業を消化する能力はないのですよ。これは、地方単独事業費の見込み額と決算、見込みがどれだけで実際使われたのはどれだけかという数表ですけれども、一九九三年度、四千五百六十七億円の未消化があります、全体の二・四%です。九四年度、一兆二千四百三十一億円の未消化があります、全体の六・七%です。九五年度、一兆九千五百四十二億円の未消化があります、全体の一〇・〇%。九六年度、二兆九千二百二十一億円の未消化があります、全体の一四・六%です。

 毎年あなた方は地方財政計画の中で単独事業の計画を決めるけれども、使い切れないわけですよ。その力はもうないのです。使い切れないとわかっていて毎年毎年自治体に単独事業をやれというやり方は、果たしてこれはいいのかどうか。これをずっとやってきたわけでしょう。

 あなたは国の責任がないようなことをおっしゃいますけれども、挙げて地方の責任であって、国の責任は一切ないということですか。地方の財政がこんなひどい状況になっているのに、国の責任は一切ない、自分たちはかかわりないというのがあなたの態度ですか。きちんとお答えください。総理。総理に聞いているのです、総理。

関谷国務大臣 公共事業の一番大きなところを担当いたしております建設大臣の関谷でございます。

 先生の今までの御指摘をお伺いいたしておりますと、何も国の責任がゼロであるとはどなたも言っておりません。いやいや、総理はそんなことおっしゃっていませんよ。

 それから、地方は今でも、ダムであるとか道路であるとか住宅であるとか、そういう社会資本整備に大きな要望を持ってきておるわけでございまして、今回、国幹審を行いまして、高速道路の二車線を四車線にするとか、新しい高速道路の施行命令を出しましたときの地元の方々の感謝の声は、もうごまんと来ておりますよ。それは、地元は、何も負担がないところがそれを受けるなんというところは一つもありません。負担のないところに我が建設省あるいはそういう関連のところが押しつけるなんということは、一切いたしておりません。

志位委員 ダムだとかなんとか言いましたけれども、全国でむだなダム、むだな港、むだな空港、たくさんつくっているじゃないですか。

 それで、あなたに、いやいや、ちょっと待って。総理に伺っているのです。

 今、こちらの方から、責任がないとは言わないというふうにおっしゃいました。総理も同じ認識ですね。こういう財政危機をもたらした責任が国にもあるという認識は、これは総理も同じですね。総理、どうですか。

小渕内閣総理大臣 いかにも地方のそうした問題は地方の責任でなくして中央の責任であるがごとく申されますから、お互い、これは地方も国もお互いこうした状況を越えていかなきゃならぬということにおきましては、その責任の側面というものは持っておるだろうと思います。

 しかし同時に、地方は地方としてこれから発展をしていくためには、国と協力して、今建設大臣が申されましたように、地方の要望というものを完遂するためには中央としても全力で協力をして、両々相まって地域地域の発展に寄与しておるのでありまして、赤字財源の問題だけを取り上げていくということはあり得ない、こう考えています。

志位委員 地方の要望でいろいろな事業をやっているということですけれども、地方が出している要望、単独事業も補助事業もいろいろあるでしょうけれども、公共事業の中身が、私は、もう一つ吟味しなきゃならない問題があると思う。

 先ほども答弁がありましたけれども、住民型でない、ゼネコン型とでも呼ぶべき大規模開発が中心になっている。多くが、開発に乗り出してきたものの、採算がとれず、借金を一層膨れ上がらせる悪循環に陥っております。

 例えば、東京都の臨海副都心では、雪だるま式に借金が膨らみ、既に都財政で巨額の穴埋めをしています。大阪のりんくうタウン、泉佐野コスモポリスでも、破産の後始末のために府財政を圧迫する財政支出が行われている。全国至るところに、つくってはみたけれども船は来ないで釣り堀になっている港がたくさんある。

 その一方で、本当に必要な公共事業にお金が行かない。小中高の公立学校の施設整備費は、調べてみましたら驚きました。八〇年度は五千七百十三億円、これをピークに、九九年度予算で一千六百三十八億円、そのため、全国の学校で老朽化した危険校舎が放置されたままという状況があります。

 総理は、この問題を指摘した我が党の不破委員長の本会議での質問に対して、市町村等の毎年の事業計画に支障が生じないよう所要の予算を計上するとともに、近年は、耐震性向上のための補強改築事業等にも力を注いでいると答弁をされました。

 そこで、総理にさらに伺いたいのです。

 私、全国を回りますが、実態は大変深刻です。例えば、神奈川県の県議会で、高校生の子供さんを持つお母さんからこういう訴えがされました。相模原の高校では、二階の踊り場の天井の壁がごそっと落ちて、今は立入禁止になっています。横浜の青葉区の高校でも、校舎の壁の化粧板が崩れ落ち、生徒の自転車がめちゃめちゃになりました。トイレの悪臭と汚れには言葉もないといいます。どうしても子供たちの荒れの状況と施設の荒廃は重なって思えてなりません。子供は県民の宝です。その宝に予算を注いでくださいという訴えであります。

 私、全国の状況を調べてみました。各年の地方財政白書を調べたところ、こういう一つの数字が出てまいりました。公立高等学校の危険校舎の面積が九〇年代に入ってどうなっているかという数字ですよ。これを見ますと、一九九〇年に二十五・五万平米だったものが、九七年には四十六・二万平米に、倍近く伸びているでしょう。

 ですから、こういう問題を放置しておいていいのか。公共投資、むだなものには膨大なお金を使っているけれども、本当に必要なこういうところにお金が回らない。公共の危険校舎は放置されている。これでいいのでしょうか。

 これは総理がお答えになったのですね。本会議で改築事業に力を注いでいるというふうにお答えになったので、私は、責任を持ってここで総理に答弁していただきたい。これは放置してはまずいですね。これはきちんと直すと、総理に答弁願いたい。総理、どうぞ。総理、総理です。

中山委員長 所管大臣ですから、建設大臣関谷勝嗣君。

志位委員 総理に聞いている。建設省、関係ないでしょう。時間がもったいないです。総理に聞いている。

関谷国務大臣 先ほどのダムの件について一言述べさせていただきますが、先生御指摘のように、今、社会……(発言する者あり)まあ、聞いてください。先生が御要望されておるような流れに、今、社会資本整備の流れはそういうふうになりよるわけでございます。それで、国民の生活を豊かにする方向に社会資本も大きく動いております。(発言する者あり)

中山委員長 御静粛に願います。

有馬国務大臣 公共学校につきましては、一つは、学生数、生徒数が急激に上昇したときには予算をふやしました。それ以後ずっと減ってきているのですね。そのことが一つあるのです。

 それから、その後、確かに国立学校等々に対しまして、私は非常に心配したことがあります。そういうことで、国立学校に関する文教施設費は一時補正で非常にふえました。そういうことの努力はいたしております。

 それからもう一つは、公立学校に関しましては、地震対策というふうなことで相当今努力をしているところです。

志位委員 総理に答弁を求めます。

 この公立高校の危険校舎、これは直ちに解消していただきたい。

小渕内閣総理大臣 必要とあるところがありますれば、政府はその責任を負って対処いたします。

 ただ、単純に、公共事業がむだであるということの反面として、今御指摘のような点を御指示されるということは、これは間違っておると思います。公共事業は公共事業なりに、しっかりとしたその地域社会に対する責任を負っておるわけでございますので、もし不必要とあるということがありましたら、そのことを御指摘の上で今のような御論議をしていただきたいと思います。

志位委員 必要とあらば整備するということだったんですけれども、文部省の基準でこれは危険校舎と認定しているんですから整備が必要なんですよ。ところが、私、調べてみてもう一つ驚いたことがあるんです。

 九九年度予算案では、高校の危険校舎の改築のための国の補助金を廃止しようとしているんです。これは御存じですか。これまでは、国から事業費の三分の一までの補助金が出ておりました。それを九八年度限りで廃止して、九九年度からは全日制の危険校舎の改築は県の単独事業にする、こういう計画になっているんですよ。危険校舎が解消に向かっているんならともかく、ふえているんですよ。ふえている最中に補助金をなくしてしまって、国がこれから手を引いていいものか。

 総理は、必要だったら整備するとおっしゃいました。だったら、こんなとんでもない計画をやっているんだったら、役所をしかりつけてでもそういうことはやめて、きちんとした整備をする。国が手を引くのはやめて、国が責任を持つべきだ、こう思いますが、いかがですか。総理、どうですか。

有馬国務大臣 文部省といたしましては、国立大学もそうであります、先ほど申しましたように。それから、公立高校も随分心配はしております。今、非常に努力をして調査をし、さらなる努力をするつもりでおります。

志位委員 調査をし、努力をするという答弁でしたので、これはぜひ補助金をカットするなんてむごいことはやめてくださいよ。いいですか。

 あなたも大学の学長をやっていらしたころは、国立大学の校舎も大変荒れた状況があって、本当に心を痛めた一人だと思うので、ぜひ公立高校の補助金カットみたいなことはやめるべきだということを言っておきたい。

 私がなぜこの問題を取り上げたかといいますと、全国で、国と地方自治体で五十兆ものお金を公共事業に使いながら、地方自治体で三十兆以上ものお金を公共事業に使いながら、大事なところにはお金は回っていないということは、よっぽどむだなところに回っているということの逆な証明だからですよ。

 私、自治体の財政危機の原因というのは、この二十年来の開発型政治の自治体への押しつけにあると思います。これが要因であるということは政府もお認めになった。そして、特に九〇年代に入って政府がゼネコン型の大規模開発に自治体を動員してきたことにある。この責任があるということの責任の一端をお認めになった。

 そうであるならば、解決方法は明瞭なはずであります。やはり大規模型の公共事業には思い切って縮減のメスを入れて、そして公共事業はこういう教育など本当に必要なものに思い切って重点化する。そして、つくられた財源を福祉や教育に回す。これが本当の地方財政の立て直しの大道であるということを申し上げておきたいと思います。

 次に、私、ガイドラインの関連法案について質問いたします。

 ガイドラインの法案は、周辺事態への対応として、アメリカが武力行使に踏み切った場合に日本がそれに軍事的に協力するという仕組みをつくろうとするものであります。私、二つの角度から総理に問題点を伺いたい。

 第一は、アメリカの武力攻撃が先制攻撃として行われた場合、つまり、相手方の武力行使に対する自衛反撃でないケース、そういうケースでも日本は米軍の活動に協力するのかどうかという問題であります。

 これは架空の設定の問題じゃありません。昨年十二月十七日から四日間にわたって、米英両軍によるイラクへの一方的な軍事攻撃が行われました。日本政府はこれに直ちに支持表明をしました。総理の名前でしました。これは、同じ事態がアジア太平洋地域で起こったら、日本が支持にとどまらず米軍に協力する、ガイドラインが発動されるという危険を浮き彫りにするものとなったと思います。

 私、支持表明を行った小渕総理にまず端的にお伺いしたいと思いますが、あなたは、この米軍への支持声明を行った際に、その瞬間、国連安保理でどういう協議が行われていたか、知っていましたか。知っていたら、それを吟味した上でこれを支持されたのですか。どうですか、支持声明をされたその瞬間、国連安保理での協議の状況、知っていらしたかどうか。

小渕内閣総理大臣 ちょうどそのときは、私、ASEANプラス3でハノイに滞在しておりましたが、刻々その状況につきましては報告を得ておったところでございます。

志位委員 だから、武力行使の直前に国連安保理でどういう協議が行われていましたか。ちょっと今ここで言ってください。

中山委員長 高村外務大臣。

志位委員 総理の認識を聞いているのです。総理がどういう認識を持っていらっしゃるか、総理の認識を聞いているのです。どういう認識で支持表明をしたかを聞いているのです。

高村国務大臣 イラクの問題について、UNSCOMの査察をイラクが拒否していることについてどう対応するか、そういったことについて協議が行われていたわけであります。

志位委員 まさにその瞬間は、イラクに対して国連安保理としてどういう対応をするかの協議がされていたわけです。

 武力行使の直前にどういう協議が国連安保理で行われていたかについて、私、突っ込んで調べてみました。アナン国連事務総長が十二月十五日付で国連安保理議長あてに書簡を送っております。この書簡、インターネットでとりましたが、これであります。

 これは、IAEA、国際原子力機関が行っていた核兵器の査察についての報告書、それからUNSCOM、国連大量破壊兵器廃棄特別委員会が行っていた生物化学兵器の査察についての報告書を添付して、国連安保理に提出されております。

 その書簡の中でアナン事務総長は、IAEAの報告書ではイラクは必要な協力を提供したと書いています。つまり、核兵器の疑惑は基本的に晴れたという認定ですね。もう一つ、UNSCOMの報告書ではイラクの全面的協力は得られなかったと結論づけているとしているということが書かれています。こちらはまだ不十分だと。そして、この二つの報告書を受けて、次のような問題提起を安保理に対して行っています。

 報告に含まれている所見と結論に照らし、総合すれば、理事会は以下の三つの可能な選択肢の検討をされるでしょう。一つ、一九九八年十一月十七日以降の経験は、現時点で経済制裁の包括的見直しの方向に進むための十分な基礎を提供していない。二つ、イラクは全面的協力を提供してはいないが、全面協力することを示すためのもうしばらくの時間を与えられるべきである。三つ、理事会は、一九九一年以来の全期間に軍縮分野で何が達成されたのか厳密に知ることは十分に重要であるという前提に立って、経済制裁の包括的見直しを進めたいとするであろう。この三つの選択肢を出しているのです。

 アナン事務総長が提起した三つの可能な選択肢というのは、経済制裁を続けるか、それとも、その包括的な見直し、経済制裁の解除につながる措置をとるのか、それとももうしばらく時間をかけてイラクの協力を見守るか、この三つなんですよ。軍事制裁をやるかどうかなど全く選択肢の外であります。平和的な解決に向けた問題提起がアナン事務総長からなされ、各国がまさに協議を始めていたその瞬間に一方的な軍事攻撃が開始された、これが事の真相です。

 総理に伺いますが、あなたは、アナン事務総長のこの書簡、そしてその書簡を受けて安保理で協議が始められていたその最中に一方的な軍事力行使がやられた、これは国連無視だと考えませんか。これは何の問題もなかったというふうな認識ですか。これは、支持声明をやられたのは総理ですから、総理に伺いたい。総理、どうぞ。

小渕内閣総理大臣 今、アナン事務総長のレターにつきまして御紹介がございました。恐らく、国連の安保理も含めまして、公式あるいは非公式に種々の話し合いも進められておったのかもしれません。その経過につきましては、ニューヨークの我が方の大使を初め、報告を外務大臣が受けておって、恐らく諸判断の要素にしたとは思います。

 ただ、私が最終的に結論をいたしましたのは、たび重なるイラクのこの安保理決議に対する違反に対しまして、米国としてはこれに対して対処いたした、こういうふうに認識をいたした次第でございます。

志位委員 たび重なるイラクの安保理決議に対する重大な違反が行われたから武力行使は当然なんだというのが日本政府の見解でしょう。もちろん、イラクがUNSCOMの査察に全面協力しなかったという事実があるわけですから、これは安保理できちんとこれに対する対処の方針を決めるのは当然ですし、イラクの態度はその点は批判されなければなりません。しかし、だからといって一方的に軍事制裁をやる権利がアメリカにあるのかという問題なんですよ、問題は。いいですか。

 あなたは、国連決議に対する重大な違反があった、だから当然なんだということをおっしゃったけれども、十一月十七日以降、国連の査察が再開されているわけですね。それ以降、イラクの行為が停戦決議六八七の停戦条件を崩すほどの重大な違反だということをいつ安保理は認定したのですか。安保理は認定していますか。たびたびの重大な違反と言いますけれども、十一月十七日以降のイラクの行為が安保理決議の停戦条件を崩すほどの重大な違反だということをいつ安保理が認定したのですか。総理、あなた今言ったでしょう、そういうふうに。いつ認定したのですか、安保理で。安保理の認定を聞いているのです。総理、総理に聞いているんです。

高村国務大臣 国連決議六七八によって、加盟国がイラクに対してしかるべき措置をとるということは認められていたわけであります。そういう中で、いわゆる多国籍軍が形成され、しかるべき措置を行っていたわけでありますが、安保理決議六八七によって、それをイラクが受諾をして、そして停戦が成立した。そして、その六八七についてたび重なる違反が行われた。そして、さらにたび重なる警告も行われた。それにもかかわらず、守らなかった。そういう中で、六八七の停戦の状態の基礎がなくなった、そういうことによって六七八でまさに攻撃をした、こういうことでございます。

志位委員 いつ認定したのですか。いつ認定したの。

高村国務大臣 もともと、そういう六七八によって加盟国によって認められているわけでありますから、六八七の基礎がなくなったということを国連安保理で認定する必要は必ずしもあるとは思っておりません。

志位委員 これは、本当に今重大な答弁をされました。六八七の停戦条件が崩されたという認定は安保理でなかったということですよ。安保理でそんなことを認定してないんです。

 それで、そういうもとで一方的な軍事力行使をやるということは、本当に重大な国際法違反ですよ。

 さっきの問題に続けたいと思うのですけれども……(発言する者あり)認定してない、認定していないでしょう。

高村国務大臣 安保理の中で、六八七の決議に違反があったということは認定をしております。(志位委員「だから、いつやったんですか。いつの決議で」と呼ぶ)私は、それは……

中山委員長 外務省から答えさせましょうか。(志位委員「いや、あなたに言ったんだよ」と呼ぶ)

高村国務大臣 そんなこと、質問通告もないのに、今いつと言ったってわかりませんよ。

加藤(良)政府委員 お答え申し上げます。

 一番近いところから申し上げますと、十月三十一日にイラクはUNSCOMとの協力を全面的に停止するということを言ったわけでございます。それを受けて、十一月の五日に安保理は、決議一二〇五を採択いたしまして、十月三十一日のイラクの決定を決議六八七及び他の関連決議の重大な違反として非難したわけでございます。そして、イラクに対して、その決定の撤回とUNSCOM及びIAEAへの協力の再開を要求いたしました。

 それから、委員が御指摘になりました十一月十七日の後も、イラクは十一月二十五日には文書のアクセスを拒否いたしました。それから、十二月十一日には金曜日の査察を拒否いたしました。十二月九日にはバース党本部への査察を拒否いたしました。(発言する者あり)

中山委員長 ちょっと答弁が済むまで待ってください。

加藤(良)政府委員 そういうことを受けまして、先ほど既に外務大臣から答弁がございましたように、六八七の停戦決議の基礎が崩れた、したがって、六七八により武力行使を容認されたその状態に戻ったということで必要な行動がとられた、そのことについては常に警告が発せられていた次第でございます。

志位委員 これだけ聞いても何にも示せませんでしたよ。

 いいですか。今役人が挙げた決議一二〇五というのは、確かに十月三十一日にイラクが一たん査察の停止の声明をやりました。それに対して、十一月五日に安保理が重大な違反という決定をやっています。しかし、それを受けて、十一月十七日に査察は再開されたんですよ。再開された結果として、二つの報告書が出てきたんじゃありませんか。それを受けて、重大な違反という認定は安保理でやってないんですよ。あなた方の一方的な認定なんだ。だからこそ、安保理で、この武力行使はもう国際法違反だという声がたくさん出たんです。

 先ほどの話に戻しますけれども、総理、いいですか、国連安保理では、アナン事務総長の書簡を受けて、非公式の協議は始めておりました。平和解決への真剣な努力が続いていました。それがまさに一方的な軍事攻撃でめちゃくちゃにされた。武力攻撃を受けて行われた安保理の議事録を見ますと、そのことへの怒りと憤りが多くの国から表明されております。

 これは、インターネットからとった安保理の議事録でありますけれども、これを読んで私は、本当に日本政府の対応には情けなくなりましたよ。

 例えばスウェーデンの代表。この空爆は、安保理のメンバーが非公式協議の会議で、イラクの協力に関するUNSCOMの最新の報告と事務総長の書簡について話し合いが行われているまさにそのときに行われた。遺憾なのは、軍事行動が事実となる前に最新の事態についての我々の評価の結論を引き出す機会さえなかったことだ。

 ブラジルの代表。理事会が事務総長に提唱していたように、イラクに科された制裁体制についての包括的見直しを行う準備をしていたまさにそのとき、国際社会が別の困難に直面させられたことは遺憾なことである。我々は事務総長が書簡の中で提案していた三つの選択肢の論議に参加することを期待していた。ところが、現実には安保理はみずからの結論に到達する機会を逸することになった。

 もう一つ、ガンビアの代表。けさ、UNSCOMの最新の報告書に続いて事務総長が提案した選択肢を見ながら、我々は、これが我々が陥っている窮地から抜け出す一つの可能な方向を示していると考えていた。武力が使われたことは不幸なことであり、嘆かわしいことだ。

 アナン事務総長は武力行使について、国連と世界にとって悲しむべき日というふうに言いました。

 安保理の十五カ国のうち、これは議事録を見ましても、中国、ロシアは武力行使を厳しく批判し、フランスも遺憾を表明しました。はっきり支持を表明したのは、米英を除けば日本だけですよ。情けないじゃありませんか。

 私、総理に伺いたい。

 国連事務総長が三つの選択肢という形で平和解決のための提案を行い、安保理でそれに基づく協議が始められていたまさにそのさなかに一方的に武力行使を行う、こういうやり方が国連無視でないというんですか。何の問題もない、これはあなたの見解ですか。今度は総理に伺う。今度は総理、答えてくださいよ。総理、総理。委員長、総理。

小渕内閣総理大臣 今回の米英の対応につきましては、今いろいろ御紹介ありましたが、世界各国いろいろな反応をしたことは事実でございます。しかし、我が国としては、我が国の立場に立って、この対応につきましては責任を持って対処いたしたところでございまして、先ほどのお話のように、国連の決議に対しましてこれがしばしば重大な違反を犯しておるということについて対応したことについて、日本政府としてはこれを認めて適切な対処をした、こう考えております。

志位委員 国連安保理の決議に根拠はないんですよ。さっき、もう詳細に言ったでしょう。UNSCOMとIAEAと二つの報告書を受けて、アナンさんの書簡を添えて、イラクの行為がどういう決議に照らしてどういう行為なのかということをまさに判定する、その協議をやっていたんですから。国連は何にも判定していない中で一方的に軍事制裁、軍事力行使をやるというのは、本当に国際法に無法を持ち込むことになります。

 私、このイラクの事態というのは二つのことを浮き彫りにしていると思います。アメリカが、国連も国際法も無視して一方的な軍事攻撃、先制攻撃を行って恥じない国である。日本政府が、アメリカのやることなら何でも賛成と追従する自主性のかけらもない国であるということ。私は、そういう両国が協力して海外の軍事協力に乗り出すこのガイドラインというのは、本当に危険なことだと思います。

 そこで、もう一つさらに伺いたい。

 イラクに対してアメリカが行ったことは偶然じゃありません。これはアメリカの一九九五年の国防報告、これを見てみますと、「軍事力を行使することがあるケース」として、次のように述べています。「米国の死活的な利益がおびやかされるケース」、こう述べて、次のように続けています。「死活的な利益とは、米国または主要な同盟・友好国の生存にかかわる場合、米国の緊要な経済利益にかかわる場合、もしくは米国または同盟国に対する将来の核脅威を伴う場合、である。米国が死活的な利益への脅威に直面していると判断した場合には、その脅威を抑止し、あるいは終わらせるために軍事力を行使する用意がなければならない。その場合にはまた、米国の死活的な利益が将来受ける脅威に対する予防措置として行動することも必要である。」

 いいですか。国連憲章では、国連が決定する行動以外は加盟国が勝手な武力行使を行うことを禁止し、その唯一の例外として、国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、武力侵略が行われた場合の自衛反撃を挙げているわけですよ。ところが、アメリカは、この国防報告でも明らかなように、自衛反撃以外でも軍事力を行使する戦略を持っている。これに述べられている「米国の緊要な経済利益にかかわる場合」とか「将来の核脅威を伴う場合」とか「将来受ける脅威に対する予防措置」とか、こういう軍事力行使というのは、自衛反撃としてではなくて先制攻撃としての軍事力行使であることは明らかであります。

 総理に伺います。

 総理は、参議院での我が党の筆坂議員の質問に対して、米国に先制攻撃戦略というものがあるとは承知していない、こう述べましたけれども、政府の公式文書で、国益のためとあらば自衛反撃以外での軍事力行使、先制攻撃をやるとはっきり書いているじゃありませんか。

 私、総理に伺いたい。

 周辺事態への対応として、アメリカがこの国防報告にもあるような先制攻撃を行った場合でも、ガイドラインを発動して日本は協力するんですか、それともそういう場合は拒否するんですか。これは総理に伺いたい。総理、どうですか。

小渕内閣総理大臣 米国は、単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでなく武力の行使ができる旨規定されているわけでなく、一般国際法上の自衛権行使の要件とされている必要性及び均衡性に基づいた上で、急迫かつ圧倒的で、他にとるべき平和手段がないような明白な必要性がある場合には、自衛権を行使するに当たって、自国を無能にするような第一撃を相手から受けて現実の被害が発生するのを待たなければならないということはないとの考えであると承知をいたしております。

 したがいまして、米国は、国連憲章によりまして国際法上違法な武力行使を行わない義務を負っておる。したがって、同盟国としてこれを遵守することを確信いたしておるわけでありまして、ただし、米国の個々の行動については確定的な法的評価をおろし得ない、こう考えております。

 なお、先ほどのお話をお聞きいたしておりまして、サダム・フセイン本人かどうかわかりませんが、イラク側の主張をそのままにお示しをされておられるようにお聞きをいたしておりまして、我々は、かつて十年前にイラクがクウェートを侵略をし、その後核兵器に対する不安や化学兵器に対する不安があって、国連としては十分対処したことに対し、そのことに対して十分な答えをされておらないということから今回の問題が発生しておるわけでございまして、イラク側の御主張そのままに御紹介をされることそのことは、御党のお考えかどうかわかりませんが、誤解をされるゆえんではないか、このように考えております。(発言する者あり)

中山委員長 御静粛に願います。

志位委員 驚きました。私は国連の文書を言ったんです。いいですか、国連の事務総長のアナンさんがどういうふうに判定しているか、この問題について言ったので、イラクの問題、イラクの立場を言ったわけじゃありません。とんでもない。

 イラクが査察に対して十分協力しなかったという問題点がある、しかし、そういう問題点が起こったときに、アメリカは制裁権を持っていないですよ、その問題点が起こったときに対処する権限を持っているのは国連しかないんですよということを言ったんです。そんな使い分け、その区別もわからないで何を言っているのか。

 それで、アメリカは違法な軍事力行使を行わない、こういうことをまた繰り返すわけですけれども、もう一つ、これ一九九八年の国防報告ですけれども、こっちはもっとすごいですよ。「軍事力を使用するかどうか、いつ使用するかについての決定は、なによりも、かかっている米国の国益によって導かれるべきである。」米国は国益を守るためなら何であれ必要な行動をとるであろうし、必要なときには、一方的な軍事力の使用も含まれるであろう。一方的な軍事力の使用というのは、国連の支持がなくても、アメリカは単独で、必要とあれば武力攻撃をやるということなんですよ。これは毎年の国防報告で、毎回書いているんです。

 しかも、アメリカは口で言うだけじゃない、実際にやっている。昨年のイラク攻撃だけじゃありません。八〇年代に入っても、八三年のグレナダ攻撃、八六年のリビア攻撃、八九年のパナマへの侵略。この三つのケースはすべて先制攻撃そのものですよ。三つとも国連総会でアメリカに対する非難決議が上がっている。アメリカの武力行使は国際法違反だという非難決議が国連総会で上がっております。

 もう一回総理に伺いたい。きちんとお答えにならないので伺いたいのですけれども、グレナダやパナマやリビアなどのように、国連総会が国際法違反と非難するような武力行使をアメリカが行った場合でも、政府がこれは周辺事態だというふうに判断した場合には、ガイドラインを発動し、米軍の軍事行動に協力するんですか、それとも、そういう場合には協力をはっきり拒否するんですか。これは拒否するのかどうか、拒否するならはっきり言ってください。総理。

高村国務大臣 我が国は、国際法上違法な武力行使に対しては、一貫してこれに反対するという立場であります。

 グレナダ、リビア、パナマに対する米国の行動でありますが、日本は米国だけでなくて、他国の行動について、あらゆる場合にその法的評価がどうであるかということを下しているわけではありません。グレナダ、リビア、パナマに対する米軍の軍事行動は、我が国は当事者でもなく、すべての事実関係を把握しているわけではないわけでありますから、確定的な法的評価を申し上げることはできないわけであります。

 周辺事態の場合は、我が国はまさに当事者でありますから、きっちり我が国として事実関係を把握して主体的に判断する、こういうことです。

志位委員 先制攻撃の場合はどうですか。先制攻撃の場合は、これは参加するんですか、外務大臣。アメリカの方から武力攻撃に打って出た場合は、これはどうするんですか。

高村国務大臣 委員がおっしゃる先制攻撃という場合をどういう場合に特定して、そのときの状況によって……(志位委員「侵略がない場合です」と呼ぶ)侵略が全くないような場合に、先制攻撃を米国がするとは思っておりません。

志位委員 あなた、本当に情けない。アメリカはもうさんざんやっているじゃないか。グレナダのときにどういう侵略がありました。自国民の保護という口実でアメリカは侵略したじゃないですか。

 法的評価ははっきりしないということをおっしゃったけれども、じゃ、どうしてリビアやパナマのときに国連決議に、非難決議に反対するんですか。法的評価もはっきりしないのにみんな国連決議に、非難決議には反対する、アメリカのやることには何でも賛成、本当に情けない国だ。

 私、第二に、これだけ言っても先制攻撃への協力は拒否しないというところに、ガイドラインのこの問題の一つの危険があると思うんですが、もう一つの問題は、ガイドラインで日本が引き受ける行為とは何かという問題であります。

 政府は、日本が引き受けるのは米軍の軍事活動の後方地域支援だ、補給、輸送、医療、通信などの活動で、戦闘が行われていない後方地域で行うものだから、武力攻撃と一体化せず、憲法違反ではないという説明をしてまいりました。

 しかし、これは総理に伺いますからよく聞いていただきたいんですが、ここで言われている兵たん活動というのは、戦争行為と切り離せない、まさに不可欠の構成部分であります。兵たんなしの戦争なんてありませんよ。区別などしようがない。当然、相手国はそれを攻撃対象とするでしょう。

 総理に伺いたいんですが、米軍の軍事活動への後方支援を行う自衛隊が、相手側から攻撃対象にならないという保証はあるんですか。保証はあるんですか、攻撃対象にならないという保証。総理。

高村国務大臣 世界には無法な国家というのがあるわけでありますから、何にもしなくたって、攻撃を受けないという保証はないわけであります。

志位委員 戦争行為であるかどうかというのは、日本政府の勝手な線引きで決まるわけじゃありません。国際社会で、あなた方が言っている後方地域支援なるものがどのように扱われるかが問題であります。

 これは訳でありますけれども、アメリカ軍の、海軍省が作成した「指揮官のための海軍作戦法規便覧」というのがあります。これは、「海上における合衆国海軍の作戦を規律する国際法及び国内法の基本原則を説明している。」と書いてあります。これは一九八七年に作成されたものでありますけれども、この第八章に、何を攻撃目標にするかということの法規が書いてありますよ。これを見ますと、補給、輸送、通信などで敵国の戦争遂行に貢献する働きをしているものは、たとえ第三国の商船であっても攻撃対象とされる旨が明記されています。

 例えば、次の場合も攻撃対象として例示されている。敵国の軍隊の補助艦としての立場で行動している場合、これはすなわち物資の輸送とか軍艦に対する補給の業務に携わっているような場合であります。それから、敵国の軍隊の情報システムに組み込まれているかまたはいずれにせよそれを支援している場合、すなわち、通信、偵察、早期警戒などの業務に携わっている場合であります。

 このガイドラインであなた方が後方地域支援と呼んでいるものは、アメリカの戦争法規、これは戦争の際の国際法規の常識と言っていいと思うのですけれども、これではすべて攻撃対象とされる性格のものであります。これは何もアメリカだけの基準じゃありません。カナダもドイツも同様の海戦法規がつくられております。

 日本が幾ら、これは武力行使と一体じゃない、後方支援は違うんだと言っても、国際的には攻撃対象になるとアメリカ自身が言っているじゃありませんか。すなわち、これは戦争行為として扱われているというのが国際社会の実態じゃありませんか。攻撃対象となれば、攻撃されれば、そこが戦闘地域になるのです。これはまさに武力行使と一体じゃありませんか。総理、どうですか。総理に伺いたい。

野呂田国務大臣 ちょっとこの法律の定義を見ていただきたいんですが、第三条の一項の四号の「後方地域」というのは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」ということになっております。

 したがいまして、こういう後方地域において行われる後方地域支援というものは、ガイドラインに基づいて実施することを想定している活動、その活動は、それ自体、武力の行使には該当しない。または、国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対して行う我が国の協力は、国際法の基本原則にも合致し、国際法上許容されるものであり、他国の我が国への武力の行使を国際法上正当化させることはない、こういうふうに考えております。

志位委員 そこに立っていて結構ですけれども、今、戦闘行為が行われることがないと認められると言ったでしょう。一体だれが認めるんですか。認める主体はだれですか。認める主体、それだけでいいですから答えてください。認める主体は。

野呂田国務大臣 それは、法律の定義でそうなっていて、日米で認めるわけです。

志位委員 日米が認めるといったって、相手方がどういうふうに判断するか、国際社会でどういうふうに扱われているかが問題なんですよ。日本が勝手に、これは幾ら戦闘地域じゃありませんと言ったって、これは戦争行為じゃありませんと言ったって、相手方がこれは戦争行為だとみなして攻撃してくる、そういう性格のものなんです。

 もう一つ、空軍にも同じ法規をアメリカは持っていますよ。これはもっと明瞭なことが書かれています。

 ここでは、これは米軍の一九八〇年に作成された「指揮官のための武力紛争法便覧」という空軍の法規でありますけれども、何を攻撃の目標にするかについて、直接軍事作戦に携わっているものだけでなく、「軍事作戦に対する行政上及び兵站上の支援を提供する建物及び対象物も攻撃を受ける。」「軍事関係者を兵站に連結する輸送体系、交通線の集中している輸送中心地、戦闘部隊のための備品及び資材を生産している産業設備、交通線を修復し、補充する産業設備(発電所、自動車工場など)には攻撃することができる。」

 これを見ますと、補給、輸送などの兵たん活動はもちろん、兵たんを支える交通施設、民間の港湾であろうと空港であろうと、みんな攻撃対象になるんですよ。これは国際的にはそう扱われるのですから。あなた方が幾ら武力行使と一体でないと言っても、これは本当に憲法の息の根をとめるような無法になることは明瞭であります。

 私たちは、このガイドラインの関連法案、これを厳しく撤回を求めて、質問を終わるものであります。



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