1997年4月15日「しんぶん赤旗」

衆院予算委

経済失政の責任は重大
橋本首相の退陣、解散・総選挙をもとめる


四月十三日の衆院予算委員会で、日本共産党の志位和夫書記局長がおこなった質問(大要)は次のとおりです。


政治責任

戦後最悪の不況をつくりだした政治責任を認めないのか(志位氏)

(消費税増税が)心理的に消費の冷えをもたらす原因になった(首相)

 志位和夫書記局長 私は、日本共産党を代表して、橋本総理に、今日の深刻な経済危機をまねいた政治責任と、今後の対応について質問いたします。

 いまの不況の実態というのは、戦後最悪ともいうべき深刻なものとなっております。個人消費は、七〇年代の石油ショック以来の落ち込みがつづいております。中小企業の不況型倒産は、戦後最悪となり、経営がゆきづまり、追い詰められての自殺という悲劇があとをたちません。失業率も過去最悪を記録し、雇用不安が社会全体をいま覆っております。

 総理も九日の記者会見で、「わが国経済はきわめて深刻な状況にある」とお認めになりました。ところが、不況をここまで深刻化させたみずからの政治責任については、いっさい口をぬぐったままでした。景気をここまで深刻にさせた政治責任はないとおっしゃるのですか。端的にお答えください。

 橋本竜太郎首相 いままでに私はまったく責任がないなどというご答弁は申しあげておらんと存じます。ただし、負うべからざるものまで負うとも申しあげておりません。そして往々にしてご論議をいただきました消費税率の引き上げ等、私は昨年一〜三月の、またその影響を受けての四〜六月期の数字とともに、七〜九(月期)の数字も個人消費の関係では見ていただきたいと申しあげてまいりました。

OECDも景気悪化の第一の原因に九兆円負担増をあげている

 志位 総理が、景気を深刻化させた「内外の悪条件」として記者会見でおのべになったのは、具体的には二つでした。「アジアの経済危機」、「金融機関の破たん」であります。しかし、昨年総理が強行した消費税増税などの九兆円の負担増の政策が、不況を悪化させる引き金となったことは、私はまぎれもない事実だと思います。

 さきほど、去年の四月〜六月期が落ち込んだけれども、七月〜九月期がプラスになったというような趣旨のことをおっしゃいました。しかし、それは見せかけの数字なんです。なぜかといいますと、去年の七〜九(月期)の数字というのは、おととしに比べての若干のプラスです。ところがおととしというのは、O―157の事件があって、九五年、先おととしに比べれば家計消費がマイナス三・〇%落ち込んだ。その落ち込んだときに比べて若干のプラスだっただけのことであって、九五年に比べれば、昨年の七〜九(月期)もマイナス一・四%。マイナスがずっと続いていたのです。四〜六(月期)も落ち込んでいたし、七〜九(月期)も落ち込んでいた。いまでも影響は続いているのです。

 私は、ここに八日付で出されたOECD―経済協力開発機構のエコノミック・アウトルック―経済見通しの写しを持ってまいりました。ここでは「日本経済は景気後退の瀬戸際」と評価し、「日本経済の弱さの原因」として三つあげております。第一は、「一九九七年の急激な財政緊縮」。第二は、「国内の金融不安と経済の信任の低下」。第三は、「アジア諸国の経済危機」であります。このOECDのリポートでも第一番目の原因としてあげているのは、「急激な財政緊縮」。それはなにかといえば、(OECDのリポートに)くわしく書いてありますが、消費税率の引き上げをはじめとする九兆円の負担増政策であった。これはOECDも認めています。 総理はこの前の記者会見のなかで、「内外の悪条件」が重なっていまの深刻な不景気をまねいたとおっしゃいました。この「内外の悪条件」のなかに、九兆円の負担増政策は入っているんですか、入っていないんですか。OECDもこうはっきり認定しているわけですから、お答えください。

 首相 どう議員からご議論いただきましょうとも、昨年の七〜九(月期)の前期比がプラスになっていたという事実は、事実であります。そしてその上で、私は消費税の影響がまったくないなどとは申しあげておりません。現に一〜三月のかけ込み需要は、その結果発生を、私たちの予想をこえる需要が発生をいたしました。その反動減は、四〜六月で私どもの予測よりもこの落ち込みを拡大をいたしました。ただし、七〜九(月期)プラスになったということはそのとおり、また事実の問題であります。ただ、その後、アジアの金融情勢、あるいはわが国における金融機関倒産等々のなかで、心理的に冷えをもたらす原因の一つに、この消費税というものが存在したであろうことを、私は否定はいたしておりません。

 志位 消費税(増税)の影響というのは、二重にあったと私は考えております。家計の所得を実質ベースで奪ったこと、つまり財布の中身を奪ったことです。もう一つは消費マインドを冷え込ませた。この点はいまお認めになりましたけれども、その点だけではなくて、可処分所得を実質ベースで奪ったという、二重に消費を冷え込ませたというのが消費税の増税でありました。 あなたはまた七〜九(月期)のことをいうので、もう一点だけいいましょう。去年の統計をみますと、ボーナスが六月から七月にずれこんでいるのです。不景気のためです。ですから、これも特殊要因なのです。だからそういう特殊要因で七月に若干のプラスが起こったということなのであって、それをもって、消費税の影響がもう経済成長によって吸収されたかのようにみるのは、全然なりたたない議論だということは、はっきりいっておきたいと思います。

「財政構造改革」路線で、不況の深刻化に拍車をかけた責任をどう考えるのか

 志位 総理は、もっぱらまた「アジアの金融危機」と「金融機関の破たん」、これに不況の深刻化の原因を求めておりますが、それではつぎに聞きましょう。そういう事態が起きたときに、あなたはいったい何をやったかという問題であります。

 こういうパネルをつくってまいりました(パネル(1)をしめす)。簡単な時系列のパネルでありますが、アジアの通貨危機が始まったのは、タイのバーツの暴落が五月ぐらいからですから、このくらいの時期です。そして秋口まで続きました。そのさなかの九月一日に、二兆円の医療費の値上げを強行したわけです。

 金融破たんはどうかといいますと、拓銀の破たんが十一月十七日、山一の破たんが十一月二十二日です。そのなかで、雇用の不安が社会を覆っているなかで、われわれの反対にもかかわらず十一月二十八日に「財政構造改革法」を強行した。そして、それにもとづく予算を十二月二十五日に決定し強行した。無修正で強行した。これがあなたがたがやってきた事実の経過であります。

 これが景気にどういう作用を働かせたかはいまでは明瞭(めいりょう)だと思います。

 医療費の負担増が、お金の心配で病院にかかれないという受診抑制を深刻化させたということは、広く指摘されていることでありますが、消費の冷え込みにもつながりました。昨日(十二日)付の朝日新聞で、こういう読者の声が出されていることを、あなたに紹介したい。「高額医療費で不安増す老後」という題であります。「こんな不安な老後をかかえてどうして消費することができましょう。病気になった時の不安がなければものも買えるでしょう。でも、入院してこんなにお金がかかるのでは、通院していてもクスリ代が高額なのでは、倹約しなければなりません。それが庶民の生活です。高齢化社会を迎えて医療費を改悪しておいて、どうして消費が上がりますか。政治家は考えてほしい」。まさに二兆円の医療費の負担増は、消費に冷や水を浴びせる結果をもたらしました。

 そのつぎの「財政構造改革法」、これは将来にわたって社会保障をカットしていこうという法律ですから、これも負担増に働きます。もう一つ紹介したいのは、土志田前経済企画庁調整局長の発言ですが、「財政構造改革法」について、「将来、負担が増えるというメッセージばかり。この結果、消費者は不安から財布のひもを引き締めた。上がるはずの消費性向が下がっているのも、その表れでしょう」(「朝日」昨年十月十八日付)。まさに「財政構造改革法」は消費を引き下げる、消費大不況を悪化させる方向に作用したのは明瞭です。

 これをやったのは、「アジアの通貨危機」や「金融破たん」が起こったあと、あるいはそのさなかに、それをやってきたわけです。この「財革法」の成立も予算案もそうでしょう。それにたいして責任はないんですか。はっきりお答えください。政治責任はありませんか。

破たんした「財革法」は撤廃せよ──福祉充実の方向で財政のたてなおしを

 首相 たとえば、インドネシアとIMF(国際通貨基金)の最初の合意は本年一月十五日に結ばれたと記憶をいたしております。その後それが履行が難しくなり、先般、再交渉がおこなわれ、いま、民間債務の交渉がおこなわれております。日本はこれにたいして、とりまとめへの協力こそいたしましたものの、インドネシアにわざわざルピア下落の原因をつくりにいったとは考えておりません。

 志位 IMFの話を聞いているのじゃなくて、国内の景気がこんなに冷え込んだときに、その景気にまさに逆噴射をかける、不況を悪化させる、加速させる、そういう政策をとった責任について聞いているのです。もう一回、お答えください。

 首相 これは、大変失礼しました。アジアの通貨危機というおたずねでありましたから、いまのようなお答えを申しました。いまのは、私が取り違えたのであり、先ほどの答弁は取り消させていただきます。

 志位 どうぞ。

 首相 その上で、その時、政府として全力をつくしながら努力をしております。そのなかには、将来にわたって国民生活のセーフティーネットとして、わが国の社会保障が存在しつづけるために、いまから改革をすすめていかなければならないというテーマもございます。それぞれのテーマ、これを一つずつ全力をあげて解決のために努力をいたしております。

 志位 責任をまったくお認めにならないお話です。しかしいま、「財政構造改革法」の「改正」が問題になり、補正予算を組まなければならないということ自体が、政策破たんの証明なのです。

 しかも、その「財革法」は破たんしている。その「財革法」はまさに骨格部分が破たんしてしまった。公共事業を何兆円も積み増すという方向でしょう。「一切の聖域なし(の歳出縮減)」というのがうたい文句だったはずなのに、まさに大きな聖域をつくってしまったわけですから、それ自体が根底から破たんした。それなのに社会保障の方は依然として歳出のキャップ(上限)をつけたままで、この抑圧政策をつづけていく。だから、先ほどもお話がありましたけれども、これにたいして小泉厚生大臣が、「公共事業費は上積みして、社会保障の方は抑えているのは納得いかない」といっている。まさにこれが、破たんの証明なのです。

 私は、そういう「財革法」自体の破たんの責任は重大だと思いますし、破たんしたものは撤廃し、公共事業の上積みでなく、福祉に金をつかうという方向での財政のたてなおしということが必要になってくると思います。

保守政治としての一貫性も見通しもない──「臨機応変」でなく「右往左往」

 志位 これまでいろいろな議論をしてまいりましたけれども、総理に一ついいたいのは、保守政治にも、やはり一定の見通しと一貫性がいるのです。立場が違いますけど、政権を担う以上、見通しと一貫性がいるのです。その点で、あなたはそういう保守政治なりの一貫性もないではないか。

 だいたい「財政構造改革法」というのは、今後六年にわたって国の財政の方向を決定づける法律であります。ところが、四カ月でそれを改定するという。予算案というのは、むこう一年にわたっての国の財政の方針であります。それを、成立したつぎの日に、それでは足らないといって、補正予算を組むという。

 総理はこの間、「臨機応変」という言葉をずいぶんお使いになってこられました。しかし、臨機応変とは何か。私は『広辞苑』をひいてみました(委員会室に笑い声)。こういうふうになります。「機に臨み変に応じて手段を講じること」。いいですか、状況の変化に応じて、これにふさわしい対応をとることが臨機応変なのです。

 それではいったい、どういう状況の変化があったのか。本予算を成立させた四月八日から、補正予算を宣言した四月九日までに、いったいどういう状況の変化があったのか。「内外の悪条件」が一夜に生まれたのですか。はっきりお答えください。あなたが「臨機応変」、「臨機応変」というから、その点をはっきり聞いてみたいのです。いかがですか。

 首相 四月に入ってからというご質問でありますけれども、しいてお答えを申しあげるならば、予算編成を終わって、提出をした あとという方が正確ではないかと思います。そして、そういう意味でこれを考えますとき、予算作成後、十月から十二月のQE(国民所得計算の速報)、あるいは二月の失業率等が新たな経済指標として出てまいりました。あるいは日銀短観等も、その一つであります。あるいは、まさにインドネシアなど、アジアの経済・金融情勢の影響というものは、輸出の減少等によってはっきりとした数字の上で影響が出てまいりました。こうした影響というものは、間違いなく問題として出てきております。

 志位 まったく答弁になっておりません。予算の提出の時期が問題だといったけれども、提出された予算を国会で審議して、われわれは修正を求めた。組み替えを求めた。それを(首相は)「最善の予算」といいつづけて最後までがんばったではないですか。最後のぎりぎりまで「最善」といってきたじゃないですか。いまの答弁ではまったく納得できません。

 総理のやっていることは、「臨機応変」じゃないと思うんです。「右往左往」です(委員会室に笑い声、「そうだ」の声)。右往左往というのは、私、ちなみに『広辞苑』でひいてみました(笑い声)。「秩序なくあちらへ行ったり、こちらへ行ったりすること」(笑い声)。まさにいまの総理の姿そのものではないか、私はそう思います。

 保守政治にも先ほどいったように見通しと一貫性が必要だ。それであってこそはじめて政権を担う資格がでてくる。ところが、総理にはそれがない。これでは、いろんな対策をうつ以前に、何をやっても信頼は生まれないのではないかといわざるをえません。

今後の対応

消費税減税が景気対策として一番効果がある(志位氏)

消費税減税が消費に直結するのはたしかだ(首相)

ゼネコン型公共投資の積み増しは、政府もいったんは否定した”禁じ手”ではないか

 志位 そこで、もう一つ問題をすすめますが、失政への責任をお取りにならないから、こんど出した「対策」もまともなものが出てこない、こう思います。

 こんどの十六兆円の「総合経済対策」には、今年と来年の二兆円の特別減税が含まれておりますが、その中心は公共投資の積み増しであります。しかし景気対策として公共投資を積み増すやり方は、当初は一定の効果があっても、中長期的には膨大な財政赤字をつくり、経済にマイナスに働くとして、政府も一度は否定したはずの、いわば”禁じ手”のはずであります。

 ここにもってまいりましたが、これは九五年十二月に出された財政制度審議会の報告でありますが、ここでは、欧米諸国においては「拡張的財政政策――公共投資積み増しのやり方ですが――は当初は一定の効果はあるとしても、中長期的な経済成長をもたらすものではなく、むしろ……経済成長のためにマイナスでしかないと認識されるに至った」、こういう判定をくだしました。つぎの年、九六年十二月の財政制度審議会の「最終報告」ですが、ここでは「これまで景気対策のための公共投資の大幅な追加が行われてきたが、欧米諸国の経験にも照らし、こうした過度に財政に依存した経済運営について見直すべき時期にきている」、こうはっきり書いてあります。この考えが土台になって「財政構造改革法」をつくったわけでしょう。総理はこの考え方はお捨てになったんですか。お聞きしたい。

 首相 新しい社会資本の整備、つぎの世代の人たちがあの時やっておいてもらってよかったなといってくださるような社会資本を整備したいということを、私は確かに申しました。例示としてそこに引きましたもの、それはダイオキシン対策であり、あるいは地球環境問題に対応するものであり、さらに特別養護老人ホームとか、あるいは保育所等に代表されます少子・高齢社会にたいする対応であり、科学技術、研究開発への投資であり、高度情報通信システム、高度情報あるいは人の教育にかかるものといった、そうしたものをやっていきたいと申しております。

巨大開発オンパレードの五全総──公共投資は中小業者がうるおう福祉・生活型に

 志位 そんなに大事なものだったら、本予算に盛り込めばいいのです。だいたい本予算では福祉予算をカットしているではないですか、いま福祉だなんだといったけれども。

 九五年に「景気対策」がとられたときにも、「情報だ、通信だ、科学だ、環境だ」と華々しくいわれました。しかし、十四兆円の対策のうち、そういうものに使われたのはわずか九千億円。十五分の一です。あとは従来型の公共事業がずらっとならんだ。ゼネコン型の巨大開発がずらっとならんだ。

 あなたはそういうことをおっしゃいますけれど、あなた方の内閣は先日、「新全国総合開発計画」――「五全総」というのをお決めになりました。これを読ませていただき私は驚きました。この期におよんで、日本列島に六つもの巨大な橋をかける(という)。いま、本四架橋の公団だって大赤字でしょう。東京湾横断道路だって採算の見通しないのです。その時に東京湾にもう一つ、湾口に橋をかける。伊勢湾にもかける。豊予にもかける。ほんとうに巨大な公共事業のオンパレードです。そしてたとえば、もうすでに破たんした北海道の苫小牧東部開発とか、(青森の)むつ小川原開発とか、こんなものまで推進すると書いてある。まさに従来型の公共事業です。

 私は、(追加の)財政支出をやるというのだったら、公共事業ではなく、まず社会福祉にまわすべきだと思います(「そうだ」の声)。そして公共事業はこういうゼネコン型じゃなくて、生活・福祉型に重点を移し、そしてたとえば中小企業のみなさんにたいする官公需の比率が落ちているわけですから、これを引き上げるということがいま求められていると思います。

消費税減税は、消費してこそ減税が生まれる──消費に直結した減税だと思わないか

 志位 いま一つ、対策としてお聞きしたいのは、減税の問題です。

 景気対策として、減税の効果をはかる場合、それがどれだけ消費に結びつくかが、大事なものさしになると思います。このことは総理も否定されないと思います。だからこそ、総理自身、先日の記者会見で減税の効果を問われて、「どれだけ国民が消費に回してくださるか、あるいは貯蓄に回していかれるか」が問題だ、という趣旨のことをおのべになりました。

 私たちは、消費税の三%への引き下げとともに、低所得者がうるおう所得減税の恒久化を求めておりますが、所得税の減税がすべてが消費に結びつくわけではない、そういう制約があることもよく承知しております。まして総理のいう二年限りのものでは、なおさら消費に回る分は少なくなります。

 ところが、消費税の減税というのは、物を買うこと、すなわち、消費があってはじめて減税が生まれる。貯蓄に回る心配はないわけです。まさに消費と結びついた減税が消費税の減税だと考えます。

 総理にうかがいたいのですが、これは事実の認識の問題としてうかがいたいのですが、消費税の減税がそういう意味で消費に直結した減税だと、そういう性格をもつということはお認めになりますね。いかがでしょうか。

 首相 まず第一に、私どもは、公共事業はすべて悪だという考え方はとっておりません。先ほどのべられたことにたいし、意見は申し上げさせていただきたい。そして、その公共事業のなかで議員はいろいろな形容詞をお使いになりましたけれども、たとえば私たち、阪神淡路大震災のときに、結果として国土軸が一本しかない国の弱さというものをあのとき痛感いたしました。私どもは複数の国土軸が長い日本列島には必要だと考えておりますし、その複数の国土軸を、いわばそれぞれの地域で連結する、そうした役割も総合交通体系には必要だと考えていることを、まず申しあげておきます。

 その上で、消費税が消費に直結した税であること、消費税の減税がこれも消費に直結している、これは消費にたいして課税しているわけでありますから、消費に直結していることは確かでありますし、そしてそれを減税するのが消費にやはり直結していることは、そのとおりでございます。

 志位 まず公共事業について、総理の方からお話があったのでいっておきますが、私は公共事業がすべて悪だなどと申しておりません。先ほどいったように、ゼネコンだけがうるおって、あとに残ったのは借金だといわれるような、そういう浪費型の公共工事が全国にあるではないか、これを問題にしているのであります。阪神大震災を引いて、国土軸を結ぶものが必要だということをおっしゃいました。その国土軸を結ぶことで橋もつくるんでしょう。いろんな言い訳ができるものだと思いましたが、私はそれをいうのであれば、まず被災者にたいする公的支援に踏み切るべきだと思います。(「そうだ」の声)

 ただその中で総理が一点、お認めになった点は非常に重要です。消費税の減税はたしかに消費に直結すると(首相「いや、消費税は、消費に直結した税制だ」)。はい、だから、消費税の減税は消費の拡大に直結するという趣旨のことをおっしゃいました。そうだとするならば、いいですか、景気対策として一番効果がある。このことは明瞭です。

 政府税調の専門委員の神野(直彦)東大教授も、「景気刺激効果を期待するのであれば、消費税をダウンするしかない」、こういっておられます。第一勧銀総研専務理事の山家悠紀夫さんも、「一番効果的なのは消費税の減税です」といっています。アメリカの高官からさえ、これは要求する筋じゃないと思いますけども、消費税減税の声が聞こえてまいります。やはり、ここが一番効果的だということは明瞭なんですから、これは踏み切るべきじゃありませんか。いかがでしょう。

 首相 議員はたいへん巧妙に、ひと言だけをつけ加えられてぜんぜんイメージを変えられたのですが、私は、消費税が消費に直結した税制であり、当然ながら消費税の減税もその消費に連結したものであるということは申しあげましたが、消費の拡大という言葉までは私は使っておりませんが、そこを議員はたいへん巧妙にお使いになりました。

 そして消費税の税率の引き上げというものが既往の所得税、住民税等の減税に先行の裏を打つものであり、同時に税体系全体のバランスのなかで、いままで消費にたいする課税というものが、一定のウエートをもつべきだという直間比率の議論等々がありましたなかから、今日をむかえておることも、よく議員はご承知でありますので、そうした点もふれていただきたいと存じます。

日本経済より政権延命を上におく態度──首相退陣をつよくもとめる

 志位 私は、巧妙にあなたの答弁をねじまげたりしておりません。消費税の減税が消費に連結するとおっしゃったでしょう。消費に連結というのは、消費に直結すると、消費に結びつくと同じ意味じゃありませんか。そう認めた以上、それをやったらどうかと私はいったんです。

 それから、先行減税、先行の所得税の減税に対応するものだと。もう耳にタコができるくらい聞いた。私はそのたびに反論してまいりましたけども、あんまりこんな議論はやりたくないので、きょうはそういうだろうと思って、パネルをつくってまいりました。(パネル(2)をしめす)

 これが一九九三年と一九九七年の税負担率の階層別の変化であります。青い方が九三年、赤いのが九七年、そのうち濃い部分が消費税分です。ご覧になっていただけたらわかるように第一分位から第四分位までは、差し引き増税でしょう。差し引き減税になっているのは第五分位だけですよ。ですから先行減税のためといったって、差し引き庶民には増税をかぶせているのですから、これが不況をまねいているわけです。

 きょういろいろ議論してまいりましたけれども、私は、あなたの答弁は全体として、日本経済よりも自己の政権の延命を上に置いていると思う(「そうだ」の声)。国益よりもあなたの保身を上に置いていると思う。そういう総理には、退陣を願うしかありません(「そうだ」の声、拍手)。そして私は、解散・総選挙をおこない、日本の経済のたてなおしの方途について国民に審判をあおぐべきだということを最後に主張いたしまして、質問を終わります。(拍手)



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