1998年1月21日「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫書記局長が1月19日の衆院予算委員会でおこなった質疑の大要を紹介します。
志位和夫書記局長 日本共産党を代表して橋本総理に質問いたします。
たいへんかぎられた時間ですので、いま政府がすすめようとしている30兆円の銀行支援策について質問いたします。
この計画にたいして、いま多くの国民からやりきれない怒りの声が伝わってまいります。たとえば毎日新聞の投書では、こういう声を紹介していました。
「政府はあれほど国民がこぞって反対した消費税率を5%にあげ、医療費の大幅な負担増を強いた。特に老人の負担増は深刻である。このような負担増を国民に強いて、一方では破綻した金融機関の処理などに膨大な公的資金を投入する。これでは政治はいったいだれのためにあるのか、と憤りたくなる」。
私は13日の(衆院)本会議質問で、この計画の道理のなさをただしましたが、総理からはまともな答弁がありませんでした。そこであらためてこの場で、三つの角度から問題点を究明したいと思います。
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「金融機関の体力を総体としてみれば、不良債権の十分な償却能力をもっている」(銀行局長)
志位 まず第一は、この計画が、「銀行の破たん処理には国民の税金を使わない」という、「住専国会」(96年の通常国会)のさいの総理と政府の公約をじゅうりんするものではないかという点であります。
ここに議事録をもってまいりましたが、総理は1年半前の96年5月21日の衆議院本会議の答弁で、「金融機関の破たん処理は金融システム内の負担によりまかなわれるのが原則」、すなわち銀行が破たんしても、預金者保護をはじめとする破たん処理は、銀行業界内部の負担でおこなう、国民の税金は使わないと言明しておりました。まず事実の確認をしたいのですが、そういう言明をされたことは間違いありませんね。
橋本首相 金融三法を制定いたしました当時、信用組合の破たんがあいついで発生していたことなどをふまえまして、信用組合にかぎった政府保証を措置したことはそのとおりです。その後、一般の金融機関においても大規模な破たんがあいついで発生をしている、わが国の金融システムにたいする内外の信頼が大きく揺らぐといった事情の変化が出てまいりまして、今回、一般の金融機関もふくめ包括的に預金の全額保護の体制を整えようとしております。そして預金の全額保護の体制を整備して内外の信頼を確保することにしたい、そのように考え、包括的な危機管理体制をしめすことによって、国民にご安心をいただこうとしております。
志位 私は、どういう状況のもとで、総理がそういう言明をしたのかということを、思い起こしていただきたいと思うんです。
総理の答弁というのは、わが党の議員が、住専処理への税金投入が他の金融機関の税金投入への道を開くのではないかと追及したことにたいする答弁なんです。住専処理にたいする国民のごうごうたる非難のなかで、「税金を使うのはこれが最後だ」と言明したことの意味は重いんですよ。これは国会と国民にたいする重大な公約です。それをふみ破るというのは背信行為だと考えませんか。
首相 たしかに私は「基本的に」という言葉をつけ、いま議員がご指摘になりましたようなやりとりをしたことを覚えております。そしてまさに金融機関の預金保険機構にたいする保険料(率)を平成8年度から、それまでの7倍への引き上げをいたしました。この水準というものは当時、金融機関の利益にたいする保険料の負担の割合としては、米国における同種の措置のピーク時とほぼ同じ程度のものになっています。いま何よりもシステムの安定というものを確保し、預金者に安心をしていただき、金融機関のシステムの安定を確保しようとして、安定化システムを、国会に提案を申しあげています。
志位 結局、総理は、事情は変化した、緊急の事態への対応だということで、公約を反古(ほご)にする姿勢をとっているわけですが、緊急の事態といいますが、預金者保護のためにいったい税金を使わなければならない状況なのか。この問題について事実に即して吟味をしてみる必要があると、私は思います。
これは大蔵省が96年5月に衆議院金融特別委員会に提出した資料ですが、ここでも銀行が破たんしたさいの、預金者保護をはじめとする破たん処理は、「特別な制度は必要ない」、すなわち税金を使わなくてもできるとしています。そしてその最大の理由として、こういっています。「金融機関が全体として不良債権額にたいし十分な償却財源があること」。
私が本会議質問で総理に、「この理由は今日では通用しなくなったんですか」、こううかがったのにたいして、総理から答弁がありませんでした。
私、総理にあらためてお聞きしたい。金融機関が「全体として不良債権額にたいし十分な償却財源がある」という1年半前にのべた状況が、今日では変わったという認識ですか。それとも不良債権が全体として銀行の自力では処理できない状況になってしまったという認識なんですか。この点うかがいたい。いかがでしょう。総理にうかがいたい。総理にご認識をうかがいたいと思います。総理の答弁を求めています(場内ざわめく。松永予算委員長が大蔵省銀行局長を指名)。簡単にしてください。
山口・大蔵省銀行局長 金融機関が全体としてみた場合、結局自分の体力を総体としてみた場合におきましては、十分な償却財源はもっていると思います(志位「はい、結構です」)。しかし、破たんというのは個別銀行の話です。個別銀行が資金繰り等、難しい状況に立ちいたって破たんするのは、全体の話ではございません。これは個々の銀行の話です。したがって、そこでの財源問題というのはでてくるわけです。
志位 銀行業界が総体として体力をもっているということは認めました。個々の問題について問題が起こったとしても、それは銀行業界の共同の責任で対処できるということになるのではありませんか。そうしますと、全体として(不良債権の)償却財源があるということは、預金者保護は銀行業界の体力でできるということなんですから、これは「税金を使わない」という公約を変える理由は何もなくなることになる。これは明りょうじゃありませんか。私は、まともな理由もなしに公約を反古にすることは許されないということをまず第一に指摘したいと思います。
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預金保険機構の財源が不足するなら銀行に負担を求めるのが筋
志位 そのうえで、第二の問題です。銀行業界が、全体として体力をもっているのだとしたら、預金者保護をどうして銀行の共同責任でやらせないのか。
政府の30兆円の銀行支援策のうち、17兆円は「預金者保護」を名目に「預金保険機構の財源強化」にあてるとされています。しかし、いま起こっているのは、金融機関の破たんは、みずから引き起こしたバブルの不始末の結果です。自業自得の結果です。それなら、その穴は税金でなく銀行業界の責任で埋めるのは当然じゃありませんか。
預金保険機構の財源がかりに不足するのであれば、その強化が必要というのであれば、まず銀行が払っている保険料率を引き上げればいいと私は思います。アメリカでは、80年代後半から90年代初めにかけて商業銀行の倒産があいつぎ、連邦預金保険公社の基金が底をついたときに、保険料率をそれまでの3倍の平均0・254%まで引き上げました。銀行の破たん処理と預金者保護は、税金を使わずに銀行業界の共同負担でおこなうという大原則で対処いたしました。日本の保険料率は引き上げたといっても0・084%です。アメリカの3分の1の水準です。財源が不足するというのであれば、銀行に負担を求めるのが私は筋だと思います。
総理にうかがいたいのですが、さきほど総理は(保険料率とは)別の尺度をもちだしてきて、銀行の利益にたいする(保険料)負担の割合でみれば、米国のピーク時と同規模の負担をおこなっていると、7倍にしたことでそうなったとおっしゃいましたが、そういう認識ですか。米国のピーク時と同規模のそういう水準に引き上げたと、保険料率では3分の1、これは明りょうですが、利益にたいする負担の割合では米国と同規模に引き上げたと、こういう認識ですか。さきほどの答弁なのでうかがいたい。
首相 さきほど答弁申しあげたように、平成8年度から、それまでの預金保険の保険料率につきまして7倍、すなわち0・084%に引き上げたというご指摘はそのとおりでありますし、この水準が当時金融機関の利益にたいする保険料負担の割合として米国のピークとほぼ同程度となることを目測しているとお答えをしたこともそのとおりであります。
志位 私、こういう試算をしてまいりましたが(パネルを見せる)、当時の、たしかに93、4年の水準でいえば、(アメリカのピーク時の)8%という水準にいったのかもしれませんが、96年度の数字はそうならないんですよ。
このパネルの左側半分は、保険料率の日米比較です。これはアメリカの3分の1しか日本は負担しておりません。右側は、利益にたいする保険料負担率です。これは96年の数字ですが、アメリカのピークの8%に比べて、(日本は)全国銀行ベースで5・2%、大手銀行では3・8%ですよ。(首相、政府委員席を見て「これは本当にそうか」)
これは、(銀行の)業務純益が94年から96年に引き上がっているのですから、当然、これは下がってくるのです。負担率は下がってくるのです。8%まで引き上がっていないのです。政府は、利益にたいする保険料負担率で、米国のピーク時の8%ぐらいまではぎりぎり払えると、こういって引き上げたつもりだったけれど、5・2%までしか、全国銀行ベースでは上がっていない。都市銀行は3・8%しか払っていない。もっと払わせてあたりまえじゃないですか。総理、いかがですか。(首相、政府委員席を指さす)総理の認識をうかがっているのです。
銀行局長 7倍に引き上げるときの算定でございますが、当時、その1倍の水準を利益で見ますと、1・1から2ぐらいです。1・2%、それを7倍するということでやっております。(志位「当時のことでしょう。いまのことを聞いているのです。いま、96年のことを聞いているのです」)いま、比率を業務純益と比べた場合には、業務純益は年によっていろいろ変わります。金利が下がってくると…(志位「96年はどうですか」)96年の金利が下がっている場合、そこでは業務純益は広がりますから、そのときは下がることはあります。しかし、そのときでも、一つだけお聞きいただく必要があるのは、中小金融機関の業務純益にたいする比率は、もう9%近くになっております。当時もそういう議論がありました。たとえば、小さいところは、これ以上負担をすると、それだけで赤字になってしまうという事情がありました。法律によりますと、差別的であってはならないとなっておりますから、そういうことです。
志位 96年度はこういう数字であることは、間違いないわけです。いま、否定されなかった。中小の(金融機関の)問題について、いわれました。たしかに、信金とか、信組とか、労金とか、そういうところの負担が、大手銀行に比べて重くなっていることは事実です。しかし、全国銀行が5・2(%)、大手銀行が3・8(%)というのは、間違いのない数字なのです。私は中小の金融機関が重いというのであれば、それは考えてもよいと思いますよ。しかし、全国銀行、大手銀行はもっと払わせてあたりまえじゃないですか。総理、はっきりお答えください。いかがですか。(銀行局長出てくる)総理、総理。総理にうかがっているのです。もうあなた(銀行局長)に聞いたってしようがない。総理。総理、答えてください。政策の判断の問題を聞いているのだから、総理。
首相 さきほど銀行局長から8%という数字、すなわちこの料率を計算いたしました当時の1・2を7倍にして約8という、(志位「当時のでしょう」)いや、数字を、当時の話をきちんとご説明を申しあげました。そのうえで、預金保険の保険料負担につきましては、遅くとも(平成)10年度末までに検討をおこなうとされております。わが国の金融機関がおかれている現状、あるいは国際的な信任との関係などにも留意しながら、中長期的な負担水準等の観点から検討することになろうと思います。
志位 いまの総理の答弁でも、当時の数字ではそうだったけれども、96年の数字については否定できませんでした。96年、引き上げたつもりだったけれども、8%まで上がっていないのですから、負担の増を求めるのはあたりまえのことであります。総理、中長期的な展望で、平成10年度末までに検討するとおっしゃったのですが、これは引き上げる方向で検討するのですか。いかがですか。(首相「そんなもの事務的に答えろよ」と銀行局長を指し、腕を組む)総理ですよ。銀行局長だったら答弁いらない。
首相 事務的なことですので、銀行局長から答弁させます。
銀行局長 保険料については、政令によりますと10年度末までに見直すことになっておりますが、その際、考えるべきことは、どれだけのこれから負担が起きるかということもありますが、現在のおかれている銀行の立場――さきほど中小金融機関の立場を申しあげました。また、大手銀行について申しあげますと、これは国際競争力の競争が待っております。ここにあまりの大きい負担をかけた場合、わが国の金融機関、マネーセンターバンクスがみんな、だめになってしまう恐れがあるわけです。そのときには日本経済全体に大きな影響が及びます。しかし、保険料の見直しは10年度末までにおこなうということにしています。
志位 国民には、30兆の計画をわずか1週間、2週間の国会審議で認めろといっておきながら、銀行の負担増の方は、1999年の3月までにゆっくり見直そうと、こんな話はない。国民に負担増を求めておきながら、銀行の負担増は求めない。国際競争力といいましたけれど、自分の力で預金も守れないような銀行は、国際競争をやっていく資格がありますか。ここは、そういう問題があるのです。
志位 もう一つの問題を指摘したいと思うのです。政府は万が一のために万全の措置が必要ということをくり返しています。しかし、私は銀行の保険料負担をもっと引き上げるのは当然だと考えますが、それでもなお預金保険機構に穴があくような事態、すなわち当座の資金がなくなる事態になったとしたら、預金保険機構として必要な借り入れをおこない、銀行業界の共同の責任で借金を計画的に返済すればいい、それだけの話だと思うのです。
政府の30兆円の計画というのは、2001年までに預金保険機構に穴があいたら、国民の税金で穴埋めするというものです。ところが、その一方で銀行の払っている保険料は、特別保険料が2001年3月までの時限措置ですから、2001年4月以降は、7分の4に大幅に引き下げられるというレールだけは敷かれている。国民には巨額の税金を払わせておきながら、銀行の保険料は上げるどころか、下げてやるレールが敷かれている。これも納得できないことです。
アメリカでは、1991年に連邦預金保険公社の(基金に)穴があいたときに、連邦資金調達銀行から91年、92年と合計209億ドルの借り入れをおこなっていますが、その借りた金は、銀行が預金保険料を引き上げるとともに、不良債権の回収を必死になっておこなって、93年8月にはすべて返済しているんです。あたりまえのことなんですよ。
穴があいたら税金ではなくて、銀行業界が借金をしてでも負担をし、何年かかけて、無理のない形で返済したらいいじゃないですか。総理、なんでそれができないんでしょうか。総理どうですか。総理。
三塚蔵相 ただいまの志位委員の論点は、まさに銀行は悪であるという前提のなかで(場内失笑)基本が展開をされておる。破たん処理というのは、これからのこの安定化策を、万全なものにすることによりまして、国民各位にご安心をいただくことから、破たんの問題が、経営上の基本的な問題をもった銀行のみが、そういう状況になるわけでして、大方が預貯金にたいする万全の安心を得るということで、金融は動いてまいります。そういう点で、10兆の国債の交付は、まさに万全の備えを(志位「答弁になっていない。ちゃんと聞かれたことに答えてくださいよ。なんで借り入れして返せないのかと」)やるということであり不安感の払しょくにあるわけです。そういう点で、7兆円というのは、積み上げた方式ではございませんで、万が一に備えて7兆円ということにさせていただいておるところです。
志位 銀行が悪であるという前提で話しているとおっしゃいました。私はすべての銀行が悪いといっているわけではありません。しかし、大手銀行、都市銀行などについては、あのバブルの時代に、すべて、あのバブルの乱脈に参加した。バブルの饗宴(きょうえん)に参加した。これはやはり、そういう点では、不良債権をつくりだした共犯ですよ。みんなで責任を負っているんです。ですからそのバブルのつけをみずから返すのがあたりまえであります。
あなたは不安感を払しょくするために必要だということをおっしゃられたけれども、私は、だからかりに穴があいても、そのときのセーフティーネット、不安感を払しょくするための仕掛けは、やっぱり銀行業界のコストでやったらいいではないかというあたりまえのことをいったのにたいして、あなたは、お答えにならない。
預金者保護というのは、銀行のもっとも重要な公共的責任です。ですから、この問題について、私たちも、こうすれば解決できるということをいま申しました。必要があれば保険料の負担を引き上げればいい。それでも足らなければ、借り入れをして責任をもって返したらいい。ところが、その問題についてまともな答弁をしない。
銀行業界の自己責任の原則、これを貫かせてこそ、金融システムへの信頼が回復すると私は思いますよ。アメリカでもそういうことをやって、銀行はずいぶん重い負担、保険料を払ったけれども、システムの安定と信頼を回復させたんですから、日本でできない道理は、私はないと思う。総理もつい最近までは、「金融システム内の負担が原則」とおっしゃっておられたんですから。私はそれをやらずに、預金者保護という銀行の本来の仕事、バブルの乱脈のつけ、これを税金で肩代わりするということは、ひとかけらの道理もない、このことをはっきり申しあげておきたいと思います。
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「融資をするそぶりを見せ、担保だけとって倒産においこむこれでは詐欺だ」
志位 第三の角度の問題なんですが、「貸し渋り」の問題であります。
中小企業への「貸し渋り」対策として、30兆円のうち、13兆円をつかって、銀行から優先株等を引き受け、銀行の体力増強をはかってやる。こういう計画が、もうあと半分の問題だと思います。そうすれば「貸し渋り」対策にも役立つということがいわれております。
「貸し渋り」の実態はたいへん深刻なものです。帝国データバンクの調査でも、「貸し渋り倒産」は昨年だけで169件発生しております。
先日私は、倒産に追いこまれた中小企業、建設設計と内装業を営んでいた会社の社長さんに会って話をうかがいましたが、銀行のやり方のあくどさには驚きました。
12月の決済資金の融資を、メーンバンクであった三和銀行に申し込んだところ、「追加融資をしてやるから9億6000万円の担保をいそいでさしだせ」、こういわれた。担保の手続きを終えると、手のひらを返すように「融資はできない」と通告された。担保だけひったくられて、倒産に追いこまれたという話です。この会社は三和銀行からの借り入れにたいして、きちんと利払いもし、その返済の計画も示し、まじめに働いている会社であります。社長さんは、「融資をしないことをとっくの前に決めておきながら、融資をするようなそぶりを見せて、担保を取るだけ取って倒産に追い込む――これでは詐欺ではないか」という強い怒りをのべておられました。
これはけっして、総理、特別の話ではありません。私、この社長さんがこういうことをおっしゃったことをたいへん印象深く聞きました。「普通だったら、企業が倒産すれば経営者の責任が厳しく非難される。しかしいまは違う」というのです。「『おたくも銀行にやられましたか』、こういう同情が寄せられる」という。それほど大手銀行の横暴勝手が荒れ狂っている。これがいまの日本の現状であります。銀行が自分の利益だけ考えて、まじめに働いている中小企業をつぶすようなことがあっていいものかと、私は思いました。
私は本会議でこの問題について、現行法でもこうした横暴をただす行政指導はできるはずだ、いったいどのような実効ある行政指導をおこなっているのか、と質問いたしましたが、総理はこの問題についてお答えになりませんでした。ここできちんとお答え願いたい。いかがでしょう。総理。(首相、中腰になるが、答弁に立たず)総理。
銀行局長 貸し渋りについていろいろなご議論をちょうだいいたしましたけれども、貸し渋りのいちばん大きな原因は何かということを、昨年の暮れの例で申しあげますと、特定の(志位「行政指導をやっているかと聞いているんです。この問題に答えてください」)特定の銀行の株価の下落等によってその危機の報道があり、そこでコール市場のひっ迫、海外での資金調達難というような悪循環が起きました。不安が増殖しました。不安が増殖しますと、各銀行は貸し渋り、あるいは回収という非常に警戒的な動きをとるわけでございます。それが企業の倒産等、あるいは雇用不安というような悪循環を招くわけでございます。これは自然の経済原則としてそういう悪循環を招くプロセスでございます。それをわれわれ行政としてどうすべきか、それをどこで断ち切るかの問題であります。一つひとつの行為をここには貸すべきだ、ここには貸すべきでないという行政指導をやるのではなくて、そういった悪循環をどういう形で断ち切るか、ということでございます。そのためにこれの危機対応としての、こういう方策をお願いしているということでございます。
志位 結局、行政指導をやらないということをいっているわけですよ。銀行局長が立ったので、私、どんな指導をやっているのかなと思って調べてみました。これは通達であります。去年の12月3日、「各金融関係団体代表者殿」(あてに)、銀行局長の名前で出ておりますが、こう書いてあります。「貴協会におかれては、従来より中小企業金融の円滑化について適切に対応していただいているところであるが、……引き続き適切に対応されたく、貴傘下金融機関に周知徹底方よろしくお取り計らい願いたい」。
従来も「適切」にやっている、今後もこのとおりやってくれ。「貸し渋り」のさなかでこれをやっているわけですよ。これだったら、従来もやっている「貸し渋り」をこのままやっていいということをいっているに等しい通達じゃないですか。こういうことしかやらない。
あなたは、「自然なプロセス」といいましたよ。貸し渋りは「自然なプロセス」だ。しようがない。そのためにいろんな措置をとっている。しかし、政府のとっている措置、どれを見たって、たとえば、「早期是正措置の弾力化」ということをいっていますが、いま一番猛烈に貸し渋りをやっているのは、(「弾力化」の対象にならない)海外業務をやっている大手都銀です。そこのところをきちんとやらないで、この問題は解決しない。優先株を引き受けてやるといいますけれど、問題になっているのは銀行の無法な体質なんです。
中小企業法にはこう書いてあります。「民間金融機関からの中小企業に対する適正な融資の指導等の施策を講ずるものとする」。中小企業の「憲法」にはこう書いてあるんです。銀行法を活用すれば、業務の改善命令とか、必要な資料の報告の徴収とか、立ち入り検査とかができるはずであります。いっさいやらないで、やることといったら、優先株を引き受けてやる。体力をつけてやる。体質の悪いものに体力をつけてどうなるのか。ますます横暴がひどくなるだけです。(「そうだ」の声、笑い)
志位 私、こういう面からいっても、本当に道理がない。銀行が貸し渋れば渋るほど、体力をつけてやるというのだから、こんな逆さまな話は私はないと思います。
「預金者保護のため」、「貸し渋り対策のため」、(政府は)いろいろいっておりますが、ことごとく税金投入の理由にはならない。いつわりのそういう口実を取り払ってみれば、この計画が国民のためでも、中小業者のためでもなく、大銀行の体力増強のために税金を使って30兆円もの支援をやる。先ほど、「国際競争力のためだ」といいました。国際競争力をつけてやるために、なんで税金を払わなければならないのか。私は、この目的はほんとうに間違っていると思います。
連立与党が96年6月に可決・成立させた「金融機関等経営健全性確保法」により、大蔵省が省令などで定めた措置。ことし4月から導入される予定です。「自己資本比率」が低い銀行にたいして、監督官庁が3段階の行政命令を出すしくみになっています。この行政命令の最悪のものは、銀行をつぶすことを意味する業務停止命令です。
「自己資本比率」は、貸出金を圧縮しても比率を高めることができるため、各銀行は、この比率を高めようと、なりふりかまわない“貸し渋り”などを起こしています。
大蔵省が昨年12月に発表した「早期是正措置の弾力化」を内容とする「貸し渋り」対策では、海外拠点のない国内銀行への行政命令の発動を1年間猶予することにしました。
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家計から体力奪い、銀行に体力つける逆さま政治の根本に政官財癒着
志位 そういう政府が国民にたいしてやっていることは何か。負担増の政策であります。体力を奪う政策であります。
私はもう1枚、図式をつくってまいりましたが(パネルBを示す)、この間、政府が超低金利政策をつづけてきた6年間で、この青い棒が家計の利子所得ですが、13兆6000億円から6兆1000億円、約半分に減りました。赤い棒は、銀行の業務純益ですが、全国銀行ベースで3・7兆円から6・4兆円に、倍になりました。こういう、家計から体力を奪って、銀行の体力をつけてやる。これは、ほんとうに逆さまの政治です。
この逆さまの政治の根本にあるのは、やはり癒着の構造だと思います。金融行政をめぐる政・官・財の癒着の構造だと思います。この問題を指摘した私の本会議質問にたいして、総理は、こうおっしゃった。「金融業界と金融行政の癒着、もたれあいという批判は真摯(しんし)に受けとめ、改善すべき点は改善していかなければならない」。
癒着の問題について、わが党がすでに証人喚問を要求している新井(将敬)議員の利益供与疑惑、昨日(18日)逮捕された大蔵省OBの贈収賄問題の解明は当然ですが、さまざまな癒着の大もとにあるのは、やはり金融業界からの自民党への巨額の政治献金だと思います。総理は、この点も「改善すべき点」の中に入れているんですか。
首相 いまいくつかの問題点をふれておられましたが、政治献金というものにたいしてのご質問であるのなら、これは自発的なものですし、それによって政治とか行政が、そのもつ公正さがゆがめられてはならないというのは当然のことであります。
志位 それによって、行政の公正さがゆがめられる、そういう問題点が指摘されたからこそ、「住専国会」のさいに、あなた方もいったんは「自粛」をいったのです。 この問題は2年前の「住専国会」で、総理と何度もこの場で議論した問題でした。あのときも大銀行から政治献金をもらい、その見返りに大銀行を救済するというあなた方、自民党の姿勢が問われました。私が大銀行からの献金は返上せよとただしたのにたいして、総理はいったんは、住専母体行からの自民党への献金について、96年については「自粛する」と約束されました。「主要母体行から金をもらっていたら、問題に手加減をしているように、国民にみられてしまう」ということを、あなたは「自粛」の理由として、京都での市長選のさなかでしたが、おのべになりました。
ところが、昨年9月に公表された政治資金収支報告書をみますと、自民党が96年中に金融関連業界からうけている献金は約7億円です。
ところが、昨年九月に公表された政治資金収支報告書をみますと、自民党が九六年中に金融関連業界からうけている献金は約七億円です。いぜんとして、巨額献金を集めているじゃありませんか。調べてみたら、破たんした北海道拓殖銀行からも(どよめき)一千八百二十四万円献金を受け取っているのであります。これも公約違反ではありませんか。「住専国会」での総理の約束、これはどうなったんでしょうか。
首相 自由民主党が過去の借入金返済に充当するものをのぞいて党の経費にあてるための通常の献金につきましては、九六年以降、住専問題等によりまして、地銀、都銀などからのものは自粛しておることを申しあげます。
志位 借入金の返済にあてるものは、もらっているということですね。
首相 いま、きちんと申しあげたとおりであります。
志位 そんな理屈がありますか。「自粛」といいながら借入金の返済として献金をもらっているという事実は、否定できないのです。銀行からあなた方は借金をして、その金を返せないので、その穴埋めに銀行から献金をもらって返す。これは結局、借金返済を銀行に肩代わりしてもらっているわけじゃありませんか。自民党の借金の穴埋めを銀行にやらせ、銀行の不良債権の穴埋めは国民の税金でやらせる。これは、あなたのいうまさに癒着、もたれあいそのものじゃありませんか。
首相 いま党についてのご質問については、お答えを申しあげました。そして、いま日本の金融システムの安定を確保、信任を回復するために必要なシステムとして、私どもは10兆円の国債、20兆円の政府保証枠、あわせて30兆円のスキームでこれを守ろうといたしております。
志位 「金融システム」とひとこといえば、税金を打ち出の小槌(こづち)のように使っていいということにはならないんです。この問題についていかに道理がないかは、「預金者保護」という口実も、「貸し渋り対策」という口実も、いっさい通用しないということは、もうすでに質疑で明らかにしたとおりであります。
私は、もう1回、総理にここで考えていただきたい。金融不安をなくすために求められているのは、銀行の公共的責務をきちんと果たさせる政治の強いリーダーシップです。預金者保護だって、中小企業への融資だって、これはもともと銀行の公共的責務なんですから、これをきちんと果たさせる政治の側のリーダーシップがきちんとあれば、金融システムの問題を本当に道理のある形でこれを安定させ、信頼を回復していく道は開かれる、私はこう思います。大銀行から巨額の献金をもらいながら、どうして銀行にそういう公共的責任を果たさせていく政治のリーダーシップが発揮できるでしょうか。私は、銀行業界からの献金、これは借入金を賄うための献金だなんていう、そんなこといわないできっぱりやめる。そのことをはっきりさせるべきだと思いますが、あらためて問います。どうでしょう。
首相 先刻来、繰り返し申しあげておりますように、われわれは金融システムを安定させる、預金者の保護を完全におこなえる、徹底する、これは大事なことだと思っております。そして、そのためにこのシステムを考え、このスキームを国会でご審議をいただこうといたしております。そのなかには、国債によって、拠出される10兆円、政府保証枠での20兆円、あわせて30兆円のスキームがあります。預金者保護にあてる、その土台は保険料率の引き上げによって、さきほど7倍にひきあげた、(平成)10年度内に次の計算をするということも申しあげております。そうした努力を積み重ねたうえで、われわれは本当に安心できるスキームをつくりたい。そして国民に安心をしていただきたい。同時に、過去の返済分をのぞいた政治献金は受けていませんということをもう一度申しあげます。
志位 「金融システムの安定」というものを、それを図るときに、だれのコストでやるかが問題なんです。私たちは銀行(業界)のコストでやるべきだし、それはできる。最初にあなたがいったように体力もある。これでやらせるべきだ。あなたたちはそれはすぐ税金でやらせる、しかし、それが道理がないことはこれだけ明りょうになったのですから、この暴挙はきっぱり撤回するというのがすじ道だと思います。
私は、公的支援というのだったら庶民のふところにこそ、いま思い切った公的支援が必要だと思います。消費税を3%にもどすなど思い切った庶民減税、社会保障の充実、そしていまなお苦しみつづけている大震災の被災者にこそ公的支援が必要だということを私は主張し、質問を終わります。(拍手)