1996年2月8日(木)「しんぶん赤旗」

衆院予算委

志位委員長の総括質問

阪神淡路大震災 個人補償の実現は生存権保障した憲法上の要請


「自助努力」での生活再建の基盤が破壊されているのが実態

次に、志位和夫君。

志位委員 私は、三十一日の質疑に引き続いて、日本共産党を代表して、橋本総理並びに関係閣僚に質問いたします。

 私がまずお聞きしたいのは、阪神・淡路大震災の問題についてであります。

 昨年末、私は被災地に伺い、被災者の方々の声をつぶさに伺う機会がありました。大震災から一年たちますが、確かに高速道路や鉄道の復興は進んでおりますが、多くの被災者の方々が、人間的な生存の条件が脅かされるような深刻な実態に置かれ、生活再建のめどが立たないまま苦しんでいる、こういう実態を痛感しました。とりわけ、九万数千の方々が暮らす仮設住宅の暮らしは本当に深刻であります。

 私が訪れた神戸市北区の鹿の子台の仮設住宅では、寒い冬を迎えて、プレハブの薄い床ですから、まさに中に入ってみますと氷のようであります。それから、壁と壁のすき間からは容赦なく冷たい風が吹き込んでまいりますし、エアコンも、外気が下がりますと、もう冷気しかエアコンから出てまいりません。

 貧困と衰弱の中で、仮設住宅での孤独死は既に五十三人を記録しております。鹿の子台でも、一月十八日に亡くなったお年寄りは、仕事がなくて食べるものもない、水光熱費も出せない。亡くなる直前には、真っ暗な部屋でじっと座っておられたということを言われております。震災を苦にした自殺は一二十二人を数えたと伺いました。

 被災地に参りまして被災者の方々の声を聞きますと、圧倒的多数の願いは住みなれた町に戻りたい、そのための住宅の保障をということであります。そのために私は、一つは、やはり震災で損なわれた生活基盤再建のための個人補償の実現とい

うこと、いま一つは、安い家賃で入れる公営住宅の大量建設ということが強く望まれていると考えます。私、きょう総理にお伺いしたいのは、この個人補償についてであります。

 この問題を求めた我が党の不破委員長の代表質問に対して、総理の答弁は、自然災害では自助努力による回復を原則にしているというものでありました。しかし、自助努力といいましても、その自助努力での生活再建の基盤が今破壊されているわけですね。これが今の現地の実態であります。

 朝日新聞の仮設住宅の皆さんに対する調査では、「震災前に住んでいた地域に戻りますか」という問いに対して、四五%の方が戻りたくても戻れない、こうおっしゃられている。自助努力の基盤がないんですよ。そうであるならば、国家が生活基盤を再建するための個人補償を初めとする措置を講じる以外に、被災者が生活再建をしていく道はないではないかと私は考えます。この点での総理の見解をまず承りたいと思います。

中尾国務大臣 総理の前に、まことに志位委員の御指摘のとおり、私ども一月の十七日、顧みればもう一年ちょっと過ぎているわけでございますが、その中にあって、ちょうど志位委員の御指摘のとおり、私どもも総理ともどもお供をさせていただいて遺霊を十分にお慰めすると同時に、これまた私自身も志位委員と同様に、ヘリコプターで四十五分くらい回ったでしょうかね。そしてまた、今言われました凍りついたような住宅のところもじっくりと拝見いたしました。

 その中にあって、私自身一番感じておりましたのは、その組合長の言葉でございましたが、全く委員の御指摘のとおりで、九八%の方々が、三々五々散らばっていっても、やはり帰る故郷は自分のこの長田区だ、そこで最後まで住みたいという大変熱望するお気持ちでございました。

 これは私ども大変に感じ入った次第でございまして、それだけに私どもは、この問題については幾つか公的にも考えていかなければならぬ、こういう気持ちで、阪神・淡路大震災の被害者の全国の公営住宅への入居状況というものも調べたのでございます。これまで大体八千五十三戸入居いたしましたが、現在暫定入居中でございます方々が四千百六戸、正式入居は千三百三十戸、既に退去されたのは二千六百十七戸となっております。

 したがいまして、私どもは、各都道府県において目的外の使用期間においては一年程度としているところでございますが、当該期間経過後につきましては、これは入居者の希望によりまして逐一正式入居というものを目指して切りかえて、入居を継続できるということとなっていかなければならないし、その方向に進めていこうということでやっておるわけでございます。(志位委員「個人補償の問題、簡単にね」と呼ぶ)

 個人補償の問題は今からちょっと申し上げますけれども、これはごく簡単に申し上げるならば、大体、これはまた私の言葉足らずのところはひとつ事務当局にも仰せつけいただければ私もそのように申しつけますが、第一種の公営住宅では、月額十一万五千円超、十九万八千円以下、大体年の収入が約四百九十万円単位で考えておるわけでございます。それから、第二種の公営住宅は、月額十一万五千円以下、これは年収が約三百七十万円という形で、これを原則として、同居親族であるということ、それから住宅に困窮している人、これに対しては優先して考えていこう、こういう形で考えております。(志位委員「聞いたことに答えてください、個人補償の問題」と呼ぶ)個人補償の問題。これはまた事務当局にお話しさせていただきます。

志位委員 長々答弁して、聞いたことに答えないんじゃ話にならないんですよ。

 今、公営住宅の問題を言われたけれども、滅失戸数というのは、現地でどんなに少なく見積もっても二十万戸以上ですよ。公営住宅の計画というのは一万八千戸しかない。全然足らないんですよ。被災者の方はどなたに伺っても公営住宅に入る展望を持っていないんですよ。私は、個人補償の問題を伺った。これは総理、きちんと答弁してください。

橋本内閣総理大臣 これは、従来からこうした災害が起きますたび、その規模の大小を問わず非常に問題になることであります。そして私ども、雲仙・普賢岳の噴火のときにも同じ苦しみを味わいました。そして、公式にお答えを申しますなら、一般に、自然災害による個人の被害というものに対して自助努力による回復というものを原則としている、それはそのとおり、今までもルールとして申し上げてきたことであります。

 同時に、災害救助法による救助、あるいは各種の融資措置などによる被災者支援など、現行制度をフルに活用しながらでき得る限りの支援に努めるという姿を今までもとってまいりました。

 そして、阪神・淡路大震災につきましては、特別立法等も行いながら被災者への生活再建などの支援措置も拡充しておりまして、個人補償という形ではありませんけれども、各般の行政施策を補完する阪神・淡路大震災復興基金への地方財政措置、あるいは住宅金融公庫の特別な融資制度の創設など、私どもとしては、大幅な支援措置を講じることにより、でき得る限りの努力をしてまいっているところであります。これからもそうした努力を続けたいと思います。

志位委員 救援措置を拡充されてきたというふうにおっしゃいましたけれども、現地に伺いますと、どんどん打ち切られているというのが実感なんですよ。例えば、国保の医療負担ですね、この免除、これは昨年の十二月末で打ち切りなんですね。ですから、医療関係者の皆さんに聞きますと、医療が必要なお年寄りが病院に来なくなるんじゃないかと心配されておられますよ。それから、例えば失業保険給付の延長措置、これは一月十六日で打ち切りでしょう。大事な措置をどんどん打ち切っているのですよ。

 私は、また自助努力ということを個人補償の問題についておっしゃられたので、憲法上の問題を少しここで提起したいと思うのですが、国民の生存権を保障した憲法二十五条というのがございます。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

 ところが、震災によって住居を初め生活基盤を喪失した被災者の方々というのは、この生存権を現に脅かされている実態にあります。特に、住宅というのは、私は、単なる財産じゃなくて、生活の土台、生存の土台としてとらえるべきだと考えます。その回復のめどを自力で立てられない、自力では現状から脱出するすべを持たない、そのときには、私は、憲法二十五条の見地に立って生活基盤の再建を図る支援をする。災害における社会保障という見地ですね。新しい問題ですが、そういう意味から、個人補償を行うということはむしろ憲法上の要請ではないか、このように考えますが、総理、いかがでしょうか。総理に伺いたい。

橋本内閣総理大臣 憲法解釈については、私は専門家でありませんので、法制局長官から答えていただきたいと思います。

 しかし同時に、阪神・淡路大震災が起こりました直後以来、まず、ライフラインの復旧とともに、仮設住宅というものの確保というのがどれだけ本院でも論議をされ、急がれたかは委員も御記憶のとおりであります。そして、用地の確保ができ次第、次々に仮設住宅を当時建設をしていったこと、そして同時に、次のステップとして、自分たちが働ける場所をという声で、仮設工場あるいは仮設の商店の建設といったことを次々と進めていったことは委員も御記憶のとおりであります。

 私は、今正確な戸数を存じておるわけではありませんが、兵庫県あるいは神戸市初め関係の市町から御相談を受けながら、当時の担当閣僚として大変御苦労をいただいていた小里大臣初め、次々に御苦労いただいた方々の御努力というものを改めて申し上げておきたいと思います。

志位委員 肝心な点にお答えにならなかったのは残念なんですが、私は、この問題、政府に要求

しますと、我が国は私有財産制の国だから、個人の財産保全は個人の責任でということをこれまでおっしゃっておられました。

 私は、生存権と財産権の関係は憲法でどういうふうに規定されているかということは大事だと思うんですよ。「註解日本国憲法」というかなり権威のある憲法解釈によりますと、憲法は、「すべての国民に最も基本的な権利の一として生存権が保障され、そのもとに、実質的には財産権と勤労の権利を、生存権を適正に実現せしめる手段として、これを国民の社会的・経済的生活を支える二つの重要な支柱としたことになる。」こう書いてあります。

 つまり、生存権というのは、財産権とのかかわりでもより根本的な権利である、学界の通説であります。だからこそ、財産権というのは公共の福祉のためには一定の制約があり得ると、これは憲法にも書いてあるわけです。この最も生存権という根本的な権利が保障されていないというのが今の実態なわけで、私は、これを保障することは、いつも政府に伺いますと、現行制度ではできない、現憲法ではできないとおっしゃるけれども、個人補償というのはむしろ憲法上の責任じゃないかという問題を提起しているわけですから、この点どうでしょうか、総理。

大森(政)政府委員 お尋ねは憲法二十五条の法意いかんということに尽きようと思います。

 その件につきましては、政府としましては、従前から、憲法第二十五条の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるように国政を運営すべきことを国の責務として宣明したものであり、直接個々の国民に対して生活保障に関する具体的権利を認めたものではないというふうに解してきております。

 具体的権利といたしましては、憲法の規定の趣旨を実現するための法的措置によって初めて与えられたものというべきであります。しかしまして、右の法的措置が、憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足るものでなければならないことは、もとより言うまでもございません。

 したがいまして、政府としましては、先ほど総理がいろいろと答弁いたしましたような努力をしているわけでございまして、なお努力を続けるべきことは申すまでもないところでございます。

 以上でございます。

志位委員 私は生存権と財産権の関係について伺ったんですが、その問題についてお答えがありませんでした。やはり二十五条に基づく具体的措置は法律でお決めになるとおっしゃった。その法律をつくれと言っているんですよ。被災者が立ち上がるために個人補償の措置が必要なんだから、特別立法をつくる必要があると、この問題を提起しているわけであります。

 先ほど出した朝日新聞の調査では、個人補償について、国が特別立法をつくり補償すべきだという方が八六%を占めております。住専の処理に出す金があれば被災者に回すべきだというのは、これは被災地の声であり、国の声であります。本当に生活再建を最重要課題として、内閣の最優先課題としておやりになるのでしたら、この被災者の声にこたえるべきだということをこの問題の最後に要望して、次の問題に私は進みたいと思います。

 次の問題に、私……

上原委員長 鈴木国土庁長官。

 答弁があるようです。

志位委員 結構です。もういいです。総理に聞いて、総理はお答えにならないのですから、もうあなたに聞いても、いいです、結構です。

 次の問題は、住専の問題について伺いたい。

鈴木国務大臣 御指名がありましたから、ちょっと……

志位委員 もう簡単にしてくださいよ。時間つぶしをされたら困る。

鈴木国務大臣 憲法上の問題は後ほどにいたしまして、今現地の状況でございますね、書記局長も今お話があったように、復旧の方は何とか大体順調にいっていると思うのです。

 さて、その次の復興というところをどうするか。その復興の中での一番が生活の再建なんです。その生活の再建の中に一番柱になっているのが住宅なんです。それで、我々といたしては、これは十一万一千戸つくることになっている。それを五年前倒しして七万七千戸やることにしています。

 それから、今一番問題になっているのは、区画整理の問題なんですね。区画整理の問題ですから、これはその問題も十分承知していただきたいと思います。

志位委員 もう数字も間違いだらけで、十一万云々と言ったけれども、県の計画は十二万五千で、それは足らないから倍増する必要があると私たちは要望しているということを、この住宅の問題で言っておきます。数字ぐらい、ちゃんと覚えておきなさい。

 次の問題ですが、住専問題について伺いたい。

 私は一月三十一日の質疑で、政府、大蔵省の責任、母体行の責任について、突っ込んで総理にお聞きいたしました。昨日、新たな資料が公開されましたが、これを見ますと、私が先日指摘した問題点を裏づけるものに全体としてなっていると思います。

 九一年から九二年の第一次立入調査の結果報告を読みますと、いかにこの時期に母体行の経営支配のもとで住専各社がすさまじい乱脈と暴走をしていたか。そして、既に破産の危機がこの時点で迫っていたことがはっきりわかります。住専が不動産投機にのめり込んでいたこと。融資の審査体制がずさんきわまるものであったこと。融資は担保の七、八割という基準が全く守られていないこと。不良債権の割合は大きく、かつふえていること。

 政府、大蔵省はこういう実態をつかんでいながら、一体この時期にどういう手を打ったのか。こういう重大な事態を知りながら、乱脈と暴走を正す何らのまともな措置がとられず、いいかげんな再建計画をつくって、そして住専をずるずる生き長らえさせた。傷口を広げた。不良債権を三年余りの間に一・七五倍に膨れ上がらせた。この責任は極めて重大だと考えます。

 総理に伺いますが、住専のこういう実態を知りながら、放置してきた行政の責任についてどう認識されておりますか。総理に伺いたい。

橋本内閣総理大臣 私自身は、大蔵大臣をやめて、証券・金融不祥事の責任をとって蟄居謹慎をいたしておりましたときでありますので、当時の状況についてつまびらかにいたすわけではありません。

 ただ、その調査が行われ、その結果を把握し、当然のことながらその事態を心配し、恐らくそれは関係者も共通した心配でありましたでしょうから、そうした中から第一次、そして、なかなかうまくいかないということで第二次の再建計画というものが議論をされてきた、私はそのように思います。

志位委員 それが全く狂ったわけですよね。再建計画をつくったけれども、結局、融資している額を農林系に引き揚げさせないというだけのもので、ずるずると問題を先送りにしてああいう結果を招いたわけですから、責任は本当に重大です。確かに、この時期の大蔵大臣は総理でなくて羽田さんですから、羽田さんにもこの責任はきちんと明らかにする義務があります。

 もう一つ、昨日公表された資料で私が注目したのは、母体行責任の重大さであります。

 住専によっては母体行が四割もの紹介融資をやっている実態も明らかにされました。しかし、事業向け貸し出しのうちの母体行の紹介融資の総額、及びそのうち不良債権になったものはどれだけかは、昨日の資料では数字として出ておりません。

 これは銀行局長に伺いたい。

西村政府委員 先般、一月三十一日の本委員会におきまして、志位委員からの御質問に対しまして、私から、「母体とおっしゃいますのは、住専、

現在の場合七社の問題について申し上げたいと存じますけれども、平成七年三月末時点で三兆五千八百五十九億円でございます。」というよちなお答えを申し上げましたが、御質問の御趣旨に沿った適切なお答えとなっていなかったため、おわび申し上げますとともに、ここで訂正をさせていただきたいと存じます。

 大蔵省が行いました住専各社に対する先般の立入調査によりますと、住専七社の事業向け貸付金のうち母体金融機関紹介分は、これを債権者ごとに集計いたしますと、すなわち当該債務者との最初の貸付契約の端緒が金融機関の紹介によるものであった場合、その後の貸付案件についてはすべて紹介分として計算するという方式をとった場合によりますと、約一兆七千二百八十七億円となっております。

 ただし、これらの計数につきましては、調査に際しまして住専各社がそれぞれ紹介と認識しているものを集計したものでございまして、金融機関側への確認をしたものではございません。したがって、金融機関側にはまた別の認識もあるかとも存じますけれども、その点に御留意願いたく存じます。

 なお、母体金融機関の紹介分のうち、債権者ごとの集計によれば、不良債権となっておりますのは一兆五千七百三十四億円、九一%でございます。

志位委員 銀行局長が数字を間違えては困りますよ。あの質疑は全国にテレビで放映されていたわけですから、今後気をつけていただきたい。

 しかし、今報告された数字はなかなか重大だと思うのですよ。母体行からの紹介融資の九一%は不良債権になっていた。これは、事業向け貸し出し全体でいいますと不良債権率というのは八九%ですから、それより母体行紹介の方が不良債権率が高いのですね。親が子に紹介した方が危険が高い、ひどい案件を紹介したというのは、これは本当にひどい話だ。私は先般の委員会で、母体行が住専をごみ箱として利用した、不良債権のごみ箱として使った、こういうことを指摘いたしましたが、まさにこのとおりの実態だったんじゃないですか。

 これは総理に伺いたいのですが、こういう母体行責任、きのうの資料を見て、総理はどういう認識をお持ちになりましたか。

久保国務大臣 今、志位さん御指摘のように、母体行によって紹介をされたものが不良債権化しているということは、母体行にとっても責任の重いことだと考えております。

志位委員 この問題は先回の議論で随分やったのでこれ以上やりませんけれども、やはり私たちは、こういう紹介融資の問題一つとっても、この問題の処理というのは母体行の責任を基本にしてやるべきだ、仮に処理策で足らない分があれば母体行にきちんと出させる、これが当然の筋だということを改めて申し上げておきたいと思います。

 次に、私は、政府が決めた処理スキームと言われる処理策そのものの問題点について、幾つかの角度からお聞きしたいと思うのです。

 第一に、一次損失の処理の問題でありますが、この六千八百五十億円の税金投入は絶対に反対だというのは私どもの繰り返し述べている立場でありますが、この六兆四千百億円のいわゆる一次損失分の処理には、私はこれにとどまらない重大な問題点があると考えております。

 政府の処理案では、母体行の債権放棄額が三・五兆円、一般行の債権放棄額が一・七兆円で合計五・二兆円になりますね。これを損金扱いにして無税償却を認めるということがきょうの委員会でも答弁で言われました。五・二兆円といいますと、仮にこのお金が損金扱いされた場合には、どれだけの税金の免除、事実上の減税になりますか、大蔵大臣。

若林政府委員 お答え申し上げます。

 ある金額につきまして、それが損金に立つということになりましたときに、それが税の幾らの免除になるかということでございますけれども、企業会計の場合いろいろな項目がございまして、益と損と両方が相まってそういう数字が出てまいるわけでございまして、一定の金額の損失が出たからといって、それが即税金にどうなるかという問題にお答えするのはなかなか難しいと思うわけでございます。

 例えば、今回の銀行のような場合には、例えば株式等を売却するというようなことで益出しをやっておりますし、そのトータルの中でそのことを考えていくべきであろうと思いますので……(志位委員「一般論としてどうですか」と呼ぶ)ちょっと一般論として申し上げることはなかなか難しいということでございます。

志位委員 なかなか言わないんですけれども、一般論としては、国税と地方税で法人税率大体五〇%でしょう。ですから、五・二兆円分を無税償却すれば、大体半額が企業は減税になって返ってくるわけですよ。二・六兆円ですよ。一般論としてはそうなる。二・六兆円の減税といいますと、国税と地方税で合わせて法人税の税収入は大体二十兆円ぐらいですか、そのぐらいになると思います。その一割以上という額ですよ。これがごっそり、それこそ税収の穴になるわけであります。余りにも大きい。これが、結局は税収が減ることで国民負担にかぶってくるわけですね。ですから、国民負担というのは、六千八百五十億円という歳出増に加えて、二・六兆円という歳入減によって、一次損失だけで合計三兆数千億円になる、こう言わなければなりません。

 これは、もとはといえば、住専の破綻というのは、母体行の責任は非常に重い。これは先日言ったとおりであります。バブルの時期には別働隊として住専を利用し、バブルがはじければ不良債権のごみ箱として使い、そして最後はこのごみ箱を農協系におっつけて自分は引き揚げていく。その社会的背信は本当に重罪だと思います。

 そういう経緯に照らして、私、この無税償却というやり方を一片の通達でやっていいものかどうか。これは恐らく、この根拠はと聞けば、法人税の基本通達に基づいてと言うと思いますよ。その通達に基づいてやる、そういうルールになっていますと言うと思うけれども、一片の通達を根拠にして二・六兆円もの減税、これを認めていいものか。そういうことをやれば、形を変えた公的資金の導入じゃないか、銀行優遇策じゃないか、こういう批判は免れないと私は思います。

 私は、ここは官僚の方々に聞きたいと思いません。大局的な政策判断の問題なんですよ。この問題、この減税を見直しただけでも税金投入必要なくなるわけですから、これは見直すべきじゃないか。総理、これは大局的な政策判断の問題ですから、お聞きしたい。総理にお聞きしたい。

久保国務大臣 国税庁といたしましては、今度の住専問題の処理に当たりましての税務上の扱いは、現行法に基づいて公正に行われるものと考えております。

志位委員 現行法に基づいてというのは、官僚が言う答弁だったらいいんですよ。政治家が言う答弁じゃ困る。政策判断を聞いているんですね。法律に基づいているかどうかじゃない。政治家として、こういう事態に不合理性を感じないかという問題を聞いているんですよ。

 この問題、自民党の幹事長の加藤さんだって、こんな無税扱い認めていいものかと言っているじゃないですか。そこに座っている官房長官の梶山さんだって、こういう無税扱いは国家国民に対する背信だと言っているじゃないですか。言っていますよね。それだけの声が、私だけじゃないんですよ、与党内からも上がるような問題なんだから、これは政策判断が必要じゃないかと総理に伺っている。どうですか。――総理に伺っている。同じ答弁だったら要りません。

久保国務大臣 法に基づいて行政が執行せず、政治的な政策判断をするということは、行政の長の立場にある者としてはできないことだと思います。

志位委員 不合理性があれば必要な法改正をやるというのも内閣の責務なんですよ。

 私、それではちょっと伺いますけれども、大銀行が実際にどれだけ税金を払っているか、大手都市銀行等二十一行の九五年三月期の法人税の申告税額を国税ベースで報告してください。これは国税庁ですね。

若林政府委員 お答えいたします。

 都市銀行十一行、それから長期信用銀行三行及び信託銀行七行、合計二十一行の平成六年度の申告法人税額は五百八億円でございます。

志位委員 五百八億ですよ。これは驚くべき少ない金額なんですよ。私、調べてみましたら、都市銀行等二十一行の九四年度の業務純益は二兆七千六百七十九億円ですよ。これに比べて五百八億円といいましたら一・八%か。本当に払ってないに等しいんですよ、税金。無税に等しい。不良債権を無税償却することでほとんど税金を払っていないというのが今の銀行の実態であります。

 都市銀行等二十一行だけで、過去三年半で不良債権償却での税免除額は三兆六千億円と言われています。この上二兆六千億円もの巨額減税をやっていいものか、こういう問題なんですね。私、税法上の無税償却一般を否定しているんじゃありません。そういう一般論として否定しているんじゃありません。しかし、これにはある節度があってしかるべきではないのかという問題提起なんですよ。

 ともかく銀行の今の利益のため込みぶりというのはすごいもので、銀行二十一行で今年度には四・八兆円という史上最高の業務純益を上げると言われております。二十一行で二十兆の内部留保を抱えている。国会図書館に調べてもらいましたら、二十一行で十八・六兆円もの株の含み益を持っているんです。そういう銀行が、不良債権の償却をやっている間はこれは全部無税償却で、ほとんど税金は払ってないに等しい。恐らく来年度はもう税金を全く払わない大手銀行が出てくるでしょう。法人税ゼロというところも出てくるでしょう。私は、こういう状況がいいものかどうなのかという、大局的な政策判断が必要なんじゃないか、このことを伺っているんで、これは総理にお答え願いたい。

橋本内閣総理大臣 私は、今志位さんが述べられたような御議論も承っておりますし、あるいは金融機関の給与水準等に対する声もさまざまな形で伺っております。

 同時に、先ほど国税庁の方から、また先ほど大蔵大臣からも御答弁がありましたように、法律を運用し、行政の責任をとっていく立場として、特定のケースにのみ法を変更する、ルールを変更するということが懇意的に行われることがよいことだとは私は思いません。やはり行政のルールというものは、一つのルールをきちんと、どのケースであれ守っていくべきことであり、むしろ行政の長が感情的な判断基準を行政に入れることは避けるべきことだと私は思います。

志位委員 私は、この問題 一つの問題提起として受け取っていただきたいんですが、銀行というのは高度の公共性を持っております。ですからこれはもちろん免許でやられているわけですね。やはりそういう銀行の一つの社会的責任に照らして、もちろん今度の住専問題だけではなくて、不良債権の償却全般がこれでいいのかという問題を提起したと受け取って、ぜひ検討していただきたい。こういう問題にふたをしたままでは、このやり方は異常な銀行優遇じゃないかという声はもっと広がりますよ。

 しかも私は、政府の方々、今財政危機宣言やっていらっしゃるわけでしょう。そういう中でこれだけの歳入の落ち込みということをずっと続けていいものかという問題もあると思いますよ。やはりこの問題はそういう角度から、本当に大局的な問題としてぜひ検討をお願いしたい。大きな問題だと思います。

 第二に、私、二次損失の問題について伺いたいんですが、住専処理機構に移される債権六兆七千八百億円のうち、不良債権が三兆二千九百億円、正常債権が三兆四千九百億円と言われております。まず、これは大蔵大臣ですが、お伺いしたいのは、政府はいわゆる二次損失、まああなた方の言葉で言うと将来発生が懸念される損失ということになるんでしょうか、それをどう見積もっているのか。一兆二千四百億円という数字も出ましたが、この数字を上回らないという保証が現時点でできるのかどうか、大蔵大臣にお答え願います。簡単に。

久保国務大臣 債権として十三兆の債権を引き受けるわけでありますが、六兆二千七百億については損失として処理されます。それから千四百億の欠損がございますね。それで、六兆六千億という、六兆七千億ぐらいになりますか、それ以外の債権というのは、公示価格の八割程度になります路線価によって計算をされてその金額が出てくるわけです。それで、これが処分されます際に仮に三〇%減価したとした場合にはどういう状況になるかという計算が一兆二千億という数字になったのであります。これは、債権の回収にどういう力が発揮できるかということと相関関係にあるものだと思っております。

 そういう立場でございますから、回収機構の体制、権限、陣容というものを整えることによって、この今三割の減価の場合どうなるかと言われているものは縮小できる可能性を持つものと考えております。

志位委員 私聞いたのは、努力目標じゃないんですよ。それは回収に努力するというのは当たり前のことで、全力でやるのは当然ですが、努力目標じゃなくて、一・二四以上にならないか、保証できるのかということを聞いたわけですね。それはもう今の答えの中でも今後の努力次第だということですから、これはやっぱり保証できないということですよ、あなたの答弁では。

 それから、もう一つお聞きしたいんですけれども、今正常債権と言われているものがあるでしょう。では、この正常債権と査定されている中から今後不良化するもの、不良債権化するものがないと言えますか。どうですか、大臣。

西村政府委員 住専の正常債権と考えられておりますものの多くは、個人に対する住宅ローンでございます。そういうものは事業者向けの債権に比べますと比較的正常なものが多いということでございます。

 こういうものが全く不良化しない、一件も不良化しない、こういうことは必ずしも保証できない点もあろうかと思いますけれども、私どもは、そういう個人住宅ローンの内容をも検討いたしまして、その中から正常なものを計上しておるわけでございます。

志位委員 不良化するものがないとは言えないという答弁でした。個人住宅ローンが中心だと言われたけれども、正常債権に分類されている中にも事業向け貸し付け九千億円ありますよ。これは事実でしょう。

 それで、事業向けの九千億円というのは、私は、今後不良化する可能性はやはり高く含んでいると思いますよ。だって、実際この間の経緯を見たって、昨日提出された住専関係の資料を見ますと、住専七社の不良債権の総額は、九一−二年の調査当時の四・六兆円から昨年調査時には八・一兆円へと、三年で一・七五倍に膨れたわけですから。

 それから、例えば昨年七月に経営破綻したコスモ信組の場合、昨年五月に大蔵と東京都の査定で正常債権とされたのが二千二百五十億円。ところが十一月末には、これは報道ですが、その六〇%、千四百億円が不良債権になっているとも伝えられております。私、そういう危険性がないかと聞いているわけですね。これは今銀行局長も今後そういう可能性を否定しませんでしたが、大蔵大臣どうですか。

久保国務大臣 これからの経済の動向、それから、実際には不良債権化することはないと考えておりますものでも、企業の経営の状況、そういうものによって変化はあるものと思っております。そういう意味では、志位さんが言われるように不良債権化するものもあると思いますし、また努力によっては逆に正常債権化するものもあると思い

ますが、そのことに対してどのようにこれから取り組んでいくかというのは、この処理機構をお認めいただいた上で、この処理機構を中心とする努力にかかるとしかお答えのしようがないと思います。

志位委員 経済の動向ということを言われましたが、地価は下がり切ったとは言えないと思うのですね。国際的に比べてもまだ高い。それから、長期的動向からいったって、あさひ銀行のレポートなんかではまだ高いんだという状況ですから、私は、今後不良債権化する危険は大いにある。そのことは今蔵相もお認めになった点であります。

 私言いたいのは、この二次損失について、今不良債権と言われている中からどれだけロスが膨らむかもわからないし、今正常債権と言われている中から不良債権化する分がどれだけ出るかもわからない。つまり、どこまで損失が膨らむかわからないところでこの処理策が決められているというところに大きな問題点がある。これを指摘せざるを得ないわけであります。

 次に私、それでは、そのどこまで膨らむかわからない二次損失をだれが負担するのかという問題であります。

 政府の処理策では、「政府・民間の共同の責任で処理することとし、政府の負担は二分の一とする。」こう書かれております。二次損失の半分は税金だ、こういうわけですね。一次損失の穴埋めで六千八百五十億円、これはこれ自体が結局足らない分を出せという、私は全く筋の通らない金だと思いますが、二次損失になるとますます奇怪だ。半分出せというのですね。何で半分か。なぜ十分の一でもなく五分の一でもなく三分の一でもなく二分の一なんだ。この根拠を大蔵大臣、端的にお答えください。

久保国務大臣 全体の処理スキームをどのように合意をしてつくるかということで、この六兆四千百億以外の債権についての今後いろいろなケースが予想される場合について、やはり全体のスキームとして決めておく必要がある、こういうことで民間と国との間でその責任を折半する、こういう考え方だと思います。(志位委員「折半の根拠を聞いているのです」と呼ぶ)これはその数量的根拠というものは相互の合意と言う以外にないと思います。

志位委員 これは全然答えになっていないですよ。これは本当に、どうして半分なのかを聞いて、相互の合意ですと、それで答えになりますか。勤め帰りに二人で一杯飲んだ、これを割り勘にしようというのだったらわかりますよ。しかし、住専や母体行と国民は一杯飲んだ覚えはないのですよ。何でこれを割り勘にしなければならないのか。これは、今の大蔵大臣の答弁は全く納得できない。

久保国務大臣 志位さんも指摘されておりますように、結局、この住専問題の処理が先送りされるたびに傷口が大きくなり、不良債権がふえていったわけです。だから、そういう意味で今早期の処理が求められている。そういう中で、とり得る処理の方策というものを決めたということなのです。

志位委員 先送りしたら傷口が広がるから、ともかく金出せ、こんな議論通用しませんよ。私たちは先送りしろと言っているのじゃない。足らない分があれば銀行が払う、母体行責任で処理するということをなぜできないのかと言っているわけです。ですから、これは全く、半分という根拠を全く示さないということは、本当に奇怪至極なスキームですよ。

 しかも、この二次損失の穴埋めを、国民は税金から直接負担ですけれども、民間は直接負担じゃない。つまり、政府の処理案を見ますと、民間金融機関の負担については、預金保険機構内に新たに設置される基金約一兆円の運用益を活用する、こうなっております。つまり、母体行など民間金融機関は、預金保険機構の中に設けられる金融安定化拠出基金ですか、この約一兆円を拠出して、そしてその運用益で損失の穴埋めをする、こういう仕組みですね。

 私、ちょっと大蔵大臣にお聞きしたいのですが、この母体行など民間金融機関が拠出する一兆円の拠出金は金融機関に最終的には返還されることになるのですか。大蔵大臣どうですか。

西村政府委員 拠出されました金融機関の基金は返還されることになろうかと存じます。ただし、そのうち一千億円につきましては住専処理機構に出資されることになりますが、その出資分については住専処理機構の運営の結果というものが左右することになろうかと思います。

志位委員 そうしますと、一千億円分は若干のリスクを含んでいる、しかし九千億はきちんと返ってくる、これは基本的なそういう仕組みだということを今答弁でおっしゃいました。

 結局、母体行など民間金融機関というのは、拠出金を出すけれども、基本は返ってくる。それから、低利融資をやるわけですが、低利融資は預金保険機構が保証する。これも焦げつく心配はない。そうしますと、母体行など民間金融機関というのは、拠出にしても融資にしても元本は基本的に丸々保証されている。税金で半分といいますと、何かあたかも銀行の側が半分出すかのような印象を国民に与えているかもしれないけれども、実際には半分も負担しない、ほとんど戻ってくる。元本保証されるという仕組みじゃありませんか。

 私、さらにここで聞きたいのは、仮に二次損失が膨らみ、基金の運用益だけで賄えなくなった場合は預金保険機構からこれを繰り入れるわけですね。しかし、預金保険機構というのは残高せいぜい九千億余りしかありません。この預金保険機構が底をついたらどうするのか。私、そういう危険大いにあると思いますよ。実際、不良債権が膨らんで、基金がパンクし、預金保険機構が底をついた、そういうときに、そこに財政投入は絶対しないと言えますか。これは大蔵大臣どうですか。大蔵大臣、大臣、答えなさいよ。

西村政府委員 まず、初めに御指摘のございました、基金を拠出した場合には負担にならないではないかという御主張でございますけれども、これは、元本というような性格のものをつぎ込むという方法もございましょうし、基金を拠出して、いわば無利子の資金を拠出してその運用益をもって充てるという方法もあろうかと思います。これは、いろいろな手法があるということであって、実質的には同様の負担と考えていいかと存じます。

 二つ目の問題でございますけれども、もともと、大臣からも答えましたように、いわゆる二次損失というようなものが生じないように極力あらゆる努力を尽くすという前提に立ってございますので、私どもとしては、そのようなものが御指摘のようなレベルにまで発生するとは考えられないと思いますけれども、万が一そういうものが発生した場合の備えといたしまして、預金保険機構の保証ということを考えておるわけでございます。

 この預金保険機構の一般勘定の資金というのは、志位委員御指摘のように、金融機関の支払う保険料をもって基金としておる、そこから支払われるわけでございます。それが底をついた場合ということでございますが、それはまたさらにいろいろな仮定を置いた御議論のように感じられます。私どもとしては、そういうようなことは生ずることはないと確信しておりますが、万が一生じた場合には、それは保険料を引き上げるとかいろいろな方法によって、そのような段階で検討をされるべきものだと考えております。

志位委員 保険料率を上げますと、結局、預金者の利子の目減りという形で預金者の負担になっていくわけですね。

 私、仕組みとしてどうなっているか聞いているのですよ。仮にこうなったらどうなるのかと、仕組みとして。預金保険機構の法律によれば、これは底をついた場合、日銀特融からの繰り入れという仕掛けになっているじゃないですか。そういうことは絶対しないのか、これを聞いているのです。ここに公的資金を入れることは絶対ないのか

と聞いているのです。

西村政府委員 現在の預金保険の仕組みといたしましては、委員御指摘のように、もし一般勘定に資金が足りなくなった場合には、つなぎ資金として日本銀行から借り入れをすることができるようにはなっております。しかしながら、それは将来保険料で返すという建前で仕組まれている制度でございます。

志位委員 仕組みとして、私、日銀特融でもこれは立派な公的資金ですから、ここに公的資金が二重に注がれる危険があるということも指摘しておきたい。

 私、二次損失の処理スキーム全体を見ますと、まず第一に、どこまで二次損失が膨らむかわからないこと。第二に、二次損失の半分はゆえなき国民負担となり、そして際限のない税金投入に道を開くこと。それから第三に、母体行など民間の負担は、拠出金は返ってくる、融資は保証されている、銀行はちっとも腹が痛まないものになっているという問題。それから、預金保険機構が底をついたときの財政投入は否定できないという問題。これはやはり、銀行の腹は痛まない、国民の税金は際限ない投入だ、いわば血税吸い上げマシンですよ。この手付金が六千八百五十億だ。これは本当に道理の通らないお金なので、私どもは、これを予算案から削除するということを重ねて強く要求するものであります。

 私、この問題の最後に、政府の処理策全体として見ますと、国民にはゆえなき負担を強いりながら、母体行、銀行には大変な優遇、救済を与えている、こう言わざるを得ません。その根本には、やはり政治献金の問題があると指摘せざるを得ません。

 私は、前回の質問で、自民党、新進党、さきがけが大銀行や住専母体行から巨額の政治献金を受けているということを指摘し、これを返上すべきだという問題提起をいたしました。その後の報道を見ますと、自民党の中でも、献金を返上すべきかどうか議論が起こっているという報道がございます。

 東京新聞を持ってきましたが、「銀行からの献金 返すか否か 自民党ハムレット」、ある国対幹部の発言として「多額の献金を受け取っていては、責任追及の姿勢が問われかねない」、こう言っている。自民党の中でも議論が始まった、こういうことを報道されておりますが、私、総理に重ねて聞きたい。銀行、とりわけ住専母体行からの献金問題について、これを少なくとも議論の俎上にのせるべきじゃないか、こう思いますが、いかがですか。

橋本内閣総理大臣 私は先日、政党としての政治献金のあり方についての基本線をお答えをいたしました。改めてその点をきちんと全部申し上げたいと思います。

 我が国の社会を構成する単位であります団体、企業というものが、我が国の進路や政策に関する意思を認められた範囲において表明するということは当然の行為であり、その一つの形態であります寄附というものを私は今直ちに否定することは適正ではないと思います。党としては、民主主義政治の根幹をなす自由闊達な政党活動を支える資金として、銀行に限らず、従来から幅広く寄附をお願いをしてきており、我が党に賛同する各企業や団体それぞれがそれぞれの意思によって協力をしていただいております。なお、その寄附が適正な政党活動の一環として適法に処理されていることは申すまでもない、そこまで先日申し上げたことと同じ趣旨を今回はきちんと申し上げました。

 なお、昨年から政党に対する助成措置が講ぜられたことに伴い、政治資金の今後のあり方について党としてもさまざまな議論が現在なされていると報告を受けております。しかし、その寄附の問題と今回の問題にそもそも何ら関連性はなく、同一線上の問題として取り扱うことは甚だ不本意だということは、先日も申し上げたとおりであります。

志位委員 関連性はない、同一線上ではないという答弁をまた繰り返されましたが、私、銀行関係者の証言を一つ紹介したいんです。これは一九九四年の発言ですが、当時の経団連政治・企業委員会委員長、三和銀行相談役の川勝堅二さんは、企業献金というのは政治への発言料だ、政治に発言権を行使するためには献金が必要なんだと、これは出す側の銀行が言っているわけです。やはり私は、企業献金を出せば必ず見返りを求める、これはほとんど、銀行が本当に税金をろくすっぽ払いもしないで、そっちの方の献金だけ払っている、これは本当におかしな話ですよ。

 私は、銀行からの献金を続けてどうして住専問題の公正な解決を図れるかというのは、国民の皆さんの声だと思いますよ。私は、そういう姿勢では絶対に国民の納得を得られないし、ぜひこの問題での関係政党、自民党だけではなく、さきがけも新進党も襟を正すべき問題だということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、沖縄と安保の問題について伺います。

 私は最近、三日間にわたって沖縄を訪問する機会がございました。大田知事を初め、地元関連自治体の市長さん、町長さんにお会いし、住民の方々とも懇談いたしました。戦後五十年、我慢に我慢を重ねてきたけれども、もう米軍基地の重圧には耐えられないというのが全県民の痛切な声であります。

 ところが、政府の姿勢はどうか。私、非常に残念に思って聞いたのは、新しい外務大臣の池田さんが会見の中で、四万七千人という在日米軍の規模縮小を日本側から求めることはないのかという質問に答えて、「こちらから「変えろ」とか、「カットしろ」と求める考えはない。」「近い将来にそういうことが話題になるとは思っていない」、こうお答えになったと報道で伺いました。

 二十一世紀に基地のない沖縄をというのは、沖縄県民の切なる願いですよ。大田知事は、四万七千人体制を維持されては二十一世紀まで沖縄の基地が固定化されることになるという強い危惧を述べておられます。私、これは総理に伺いたいんですが、あなたも外務大臣と同じ立場でしょうか。四万七千人体制の削減を求めるつもりはないという、こういうお立場でしょうか。総理、どうでしょうか。いや、外務大臣の話はもういいんです。総理に伺っている。

池田国務大臣 私どもは、沖縄の県民の皆様方が大変大きな負担をしておられる、この負担を軽減しなくちゃいけない、こういうふうに考えております。そうして、誠心誠意その努力をやってまいりたい、こう思っておりますけれども、一方において、我が国の安全を確保するためには、日米安保体制は堅持しなくてはなりません。そういった意味で、安保条約の目的を達成する、このこととの調和を図りながら、どういうことができるか最大限の努力をしてまいりたい、こう考える次第でございます。

志位委員 安保体制の堅持との調和といういつもの言葉が繰り返されるわけですが、四万七千人体制の削減を求めないというお立場だということになりますと、兵力の規模を変えないでおいてどうして基地の整理統合・縮小ができるか。ともかく政府は、基地の縮小という言葉をお使いになっているわけですね。兵力の規模を変えないで、どうやって基地が縮小できるんでしょう。沖縄の基地をどうやって縮小できますか。

池田国務大臣 御承知のとおり、冷戦終えん後、国際情勢が非常に大きく変わっておりますし、アジアでもいろいろな情勢の変化はございますけれども、しかし依然として、我が国周辺には、例えば朝鮮半島の不透明な状況があるとか、あるいは核を含む大規模な兵力が存在するというようなこと、そういうこともあるわけでございます。さらには、これはアジアだけではございませんけれども、冷戦が終えんして、かえって領土とかあるいは民族、宗教というような問題をめぐる争いというものが出てくる可能性がふえてきた、こういうことは事実でございます。そういった情勢の中で、やはりみずからの国の安全を守る、そうしてまた地域全体の安定に資していく、こう

いった努力は、そうした備えはしなくてはならないわけでございます。

 そうして、我が国の安全を守る二本柱、その一つは自衛隊の存在であり、いま一つは日米安保体制でございます。そうしてまた、日米安保体制は同時に我が国周辺の地域の安定にも資する、こういうことがあるわけでございます。そのことが、現在アジアの諸国からも評価されているという面もあることは、先生御存じのとおりだと思います。

 さらに申しますと、日米安保体制というのは、前文とか二条にも書いてございますように、経済その他の広範な日米の友好関係の政治的な基礎になっている、こういう面もあるわけでございます。そういったもろもろの意味を含めて、日米安保体制は堅持しなくちゃならないわけでございます。

 先ほど申しましたようなアジアの諸情勢というもの、現実というものを考えました場合に、やはり安保条約でアメリカが担っていかなくてはいけない義務と申しましょうか、役割、それを果たしていくために必要な備えというものはアメリカにおいてしなくてはならない、こういうことでございまして、それで沖縄も含めて、我が国にある基地の提供ということは必要なわけでございます。

 しかしながら、その目的を達成する上においても、具体的にどういうふうに米軍の運用をしていくか、そういったことを詳細に検討してまいりますと、やはり現在沖縄にございます基地の整理縮小・統合、そうして縮小というものは可能である。そういうことで、我々、誠心誠意やっていこうと思っております。そういったことで、米国との間でも特別の行動委員会というものを昨年の秋設置いたしまして、精力的に作業を進め……

上原委員長 簡潔に願います。

池田国務大臣 この秋には具体的な成果を上げる、こういうことでやっておるわけでございます。

志位委員 聞かれてもいないことを時間つぶしてだらだらしゃべられたら困るんですよ、本当に。時間短いんですから。

 それで、私が聞いたのは、四万七千人体制を維持してどうして縮小できるかということなんですよ。結局、この体制を維持したら基地のたらい回ししかない。結局、今やられているいろいろな案でも、三事案と言われている案だって、那覇軍港は浦添に持っていく、読谷のパラシュート訓練場は宜野座村に持っていく、それから県道百四号線越えの実弾射撃は本土に分散する。全部基地のたらい回ししかない。しかし、苦しみはどこに移したって苦しみなんです。

 沖縄の大田知事は、沖縄のことわざとして「他人に痛めつけられても寝ることはできるが、他人を痛めつけて寝ることはできない」、我々だって基地の苦しみをほかに移したくないんですと。これは沖縄の声ですよ。ですから、やはり本気になって兵力縮小、これを求めなければ沖縄の基地問題は解決しない。

 私、外務大臣が、日本の平和と安全のために自衛隊と安保が必要なんだ、在日米軍基地が必要なんだということをおっしゃるので、一つ具体的に伺いたいことがある。

 沖縄の基地問題を解決していく上で、一つのかぎを握っているのは海兵隊だと私は思います。海兵隊というのは、沖縄の米軍施設の七五%、兵員の六一%を占めております第三海兵遠征軍であります。

 政府は本当に、口を開けば、安保と在日米軍は日本を守るためだと言う。それでは、これは総理に伺いますが、総理の認識を基本的に伺いますが、この海兵隊の役割をどう認識されておりますか。これは、日本を守るために第三海兵遠征軍はいるんですか。総理、どうですか、海兵隊の役割。

池田国務大臣 先ほど申しましたように、安保条約で米国が担っております役割、日本の平和を、そして安全を守り、また我が国周辺地域、極東地域の安定も守っていく、こういった目的を達成するために必要な備えをアメリカとしてはしているわけでございます。

 そして、ただいま海兵隊というお話でございましたけれども、アメリカとしては、今申しましたような目的を達成していく上で必要ないろいろな軍の構成とか、そういったものを組み合わせてやっておるわけでございますので、その中の一部をとらえて、これはどうである、こうであるということはございません。全体として我が国の安全を守る上に役立っている、こういうことでございます。

志位委員 海兵隊の部隊の役割を聞いているのです。海兵隊の役割について聞いたのに、全然お答えにならない。

 しかし、海兵遠征軍という名前のとおり、この部隊の主たる任務は日本防衛とは無縁で、沖縄を拠点にして遠く西太平洋、ペルシャ湾、インド洋にまで、世界に遠征して戦争をやる、そういう部隊であるということは、これは常識ですよ。

 私、ここに「マリーンズ」というアメリカの海兵隊が出している機関誌のコピーですが、持ってまいりました。ここに沖縄の海兵隊の役割について生々しく書いてあります。九四年十月号ですが、「歴史と訓練の至宝――沖縄」という題名です。ここの部分でありますが、ちょっとコピー薄いですが、こういう特殊訓練、そして、当事者から生々しい証言として、沖縄の海兵隊の役割をこう言っていますよ。ちょっと読み上げてみましょう。

 「沖縄島は、アメリカの海兵隊唯一の前進配備部隊である第三海兵遠征軍の根拠地である。沖縄では、海兵隊はジャングル戦争の訓練を積むことができ、そして、ここを本拠に太平洋の他の国々に進行することができるのである」。「ここ沖縄に基地を持っている最大の利点は、将来不測事態が発生するであろう地域と同様の地域で訓練を行うことができる点にある」。

 そして、沖縄の北部の演習場を挙げて、「その地形は第三海兵遠征軍が責任をもつ地域――温度・湿度が高く通りぬけることが困難なジャングルが多い東南アジアを含む地域にそっくりである。ここの地形は、海兵隊をジャングル戦に習熟させる」「海兵隊員がこのような機会に恵まれる場所は、他にはない。厳寒の朝鮮の山々から南西アジアの砂漠まで、海兵隊はあらゆる環境に適応し、いかなる条件のもとでもたたかうことができることで評価されている。沖縄の海兵隊訓練施設は、この評価を高めるのに役立っているのである」。

 沖縄の海兵隊は、アメリカの海兵隊にとって、ほかにかえがたいジャングル戦争の演習地だ、そして太平洋の他の国々に進行する根拠地だ、殴り込みの根拠地にされているのが沖縄だということを当事者が言っているじゃありませんか。私はこれは本当に重大だ。

 しかも、それにとどまりませんよ。さらに続けますと、「前進配備されている第三海兵遠征軍は、海兵隊の十字路」、人が通過するところという意味なんですね。「と考えられている。他の二つの海兵遠征軍とは違って、第三海兵遠征軍は、他の連隊から派出される大隊によって構成されている。それぞれの大隊は、部隊展開計画」、これは部隊の技能・練度を向上させるための計画、「に基づいて、ここで六カ月を過ごす。」つまり、沖縄には、アメリカ本土に置いてある第一海兵遠征軍、第二海兵遠征軍から六カ月単位でローテーションを組んで訓練にやってくる。

 私、これを読んで本当に大きな驚きを覚えました。どうして沖縄が全世界の海兵隊の訓練地にならなきゃならないのか。どうしてジャングル戦争の演習地にならなきゃならないのか。どうして沖縄を本拠にして太平洋の島々に進行するということが許されるのか。どうしてこれがアジアの平和か。どうして日本を守ることになるのか。全く説明つかないじゃないですか。どうですか、総理。

橋本内閣総理大臣 非常に議員は大変なことを

おっしゃっているような気がいたします。

 確認をさせていただいて恐縮でありますけれども、議員は、アメリカが太平洋諸国を侵攻すると断言しておられるのでありますか。(志位委員「そうです」と呼ぶ)私は、アメリカがそのような計画を、みずから他の国に攻め込もうとしているとは思っておりません。

志位委員 これは沖縄の問題について書いた海兵隊の正式の機関誌ですよ。海兵隊の立場が書かれていると言っていい。進行という言葉が使われております。太平洋の他の国々への進行の根拠地とはっきり書いてあるわけですね。

 沖縄の海兵隊というのは、沖縄県民を苦しめている大きな元凶になっている。キャンプ・ハンセンのあの実弾演習もそうですし、普天間基地の騒音もそうですし、読谷のパラシュートの降下もそうだ。最もどうもうな部隊ですよ。犯罪の温床になっている。あの少女暴行事件をやったのも、これも海兵隊です。

 その中で、沖縄のマスコミの中から海兵隊撤退論が出ている。これは沖縄タイムスでありますが、「日本防衛には不要」「海兵隊よさようなら」。海兵隊はもう帰ってほしい、これが沖縄タイムスの声。沖縄の声ですよ。

 本当に米軍基地の全面撤去を私たち求めるけれども、海兵隊を置いている国というのは世界に一つしかない。日本しかないわけですから、やはりこの異常な事態は、沖縄の県民の皆さんの本当に重圧になっているわけですから、一刻も早く解消すべきだ。海兵隊はもう帰ってくれと言えないのかということを最後に伺いたい。総理、どうですか。

池田国務大臣 沖縄を含めまして、日本に存在します米軍は、日米安保条約の目的を達成するために駐留しているわけでございます。

 なお、沖縄の県民の方々の大変な御負担そして御心情というものは、我々も本当に誠心誠意これを酌み取り、対応してまいらなくちゃいけない、こう考えておりまして、基地の整理統合・縮小に全力を挙げて誠心誠意対応してまいりますとともに、また、米軍が存在することに伴ういろいろな問題につきましても、これは改善に努めてまいる、こういう所存でございます。

志位委員 もう時間がなくなったから終わりますが、総理は、施政方針演説で、「二十一世紀にふさわしい新しいシステム」をつくるとおっしゃった。私は、戦後五十年、他国の基地がああやって置かれ、あの重圧に苦しみ続けるというのは本当に異常だと思いますよ。基地のない日本、安保条約を本当になくして、アメリカとの関係も、対等、平等、友好の関係にすることこそ、二十一世紀の未来があるということを私は主張し、そのために闘うことを表明いたしまして、私の質問といたします。



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