侵略戦争問題、消費税増税、北朝鮮「制裁」、悪政推進の論拠つき崩す
衆議院予算委員会/志位書記局長が追及

1994年5月24日


志位委員 私は、日本共産党を代表して、羽田総理並びに関係閣僚に質問するものであります。
 まず、永野前法務大臣の問題と過去の戦争に対する首相の基本認識についてお伺いしたい。問題になった永野発言というのは、戦前の天皇制政府、軍部さながらの言葉で、あの戦争について全面的に肯定、美化したもので、大変驚くべき内容でした。全世界でこの発言の内容が報道されまして、戦後半世紀たってもなお日本はあの戦争を反省していないのか、こういう憤激を呼び起こしました。
 私、辞任は当然ですが、辞任すれば一件落着にはならない、このことを言いたいと思うのですね。ああいう人物を法務大臣に任命した首相の任命責任が、私は今厳しく問われているというふうに思います。ところが首相から出た言葉を聞きますと、所信表明演説でも、それから本会議の答弁を見ましても、結果として残念だった、この一言なんですね。私は、反省の言葉が全く聞かれないというのは、これは大変異常に受け取りました。
 そこで、私、総理に伺いたいのですが、総理はああいう人物を任命したことを間違いだった、任命したこと自体間違いだったということをお認めになりますか。

羽田内閣総理大臣 結果としてそういうことになるのかもしれません。
 ただ、私は永野さんとは一緒にEUの、かつてのECですね、この会議なんかで、例えばこういった戦争の問題ですとかそういったことを一緒に実は議論をしてきました。そういう中で、非常に人格がしっかりしているということと、あるいは戦争というものはやはり起こしてはならないんだということを非常に明確に実は認めている方でございまして、私はそれを信頼しておったものですから、結果として残念であったということを申し上げておるということであります。

志位委員 今の答弁を聞いておりますと、結果として残念だった、つまり、任命そのものは間違いじゃなかったけれども、いろいろと経過があってああいう発言があったから結果がまずかったということになるわけですね。任命の反省がない。私はここが非常に重大な問題だと思うのですよ。
 それで、今平和を愛する人だとかいう話をされましたけれども、私、あなたの任命責任という問題を憲法に照らしてきちっと吟味してみる必要があると思います。
 御承知のように、憲法六十六条二項では、総理大臣その他閣僚は文民でなければならないという規定があります。そしてこの文民とはという問題については、旧陸海軍の職業軍人であって現在なお軍国主義思想に深く染まっている者は文民とはみなさないという政府の統一見解がございますね。あなたはこれをよく考慮の上で任命したという答弁をされました。しかし、永野さんという方はもう戦前からの職業軍人、ああいう発言を見れば、私は、この文民規定の違反だった、これは明白だと思うのですね。その点で、こういう問題について我が党の議員が参議院の本会議で質問しましたら、あなたはこう答えた、永野氏は軍国主義思想の持ち主でないと。
 しかし、私はこれはとんでもない話だと思うのですよ。あの永野氏の発言というのは、単に南京事件はでっち上げたったというだけじゃないのですよ。あの戦争目的について、あれは植民地解放の戦争だった、大東亜共栄圏確立のための戦争だった、戦争目的としては、当時としては許される基本的に正しいものだったということまで言っていますね。
 それから、それに加えてこういうことも言ったわけです。戦争は、日本がつぶされそうだったから生きるために立ち上がったものであって、日本の状況をそこまで持ってきた諸外国が問題だった。これは結局、あの戦争の原因は連合国側にあったという話になるわけですよ。まさに当時の軍部が、自存自衛、大東亜共栄圏、こういうことをスローガンに戦争に突っ走ったそのままじゃないですか。あなたはこういう思想が軍国主義思想ではないとおっしゃるのですか。

羽田内閣総理大臣 戦争が起こるにはいろんな理由があること、そしてまたいろんな議論があるということ、これは私も承知しております。
 しかし私は、永野さんと今まで実はずっとおつき合いをしてきまして、いろんな議論をともにしてきたのですけれども、軍国主義の思想に染まった人であるというふうには受けとめておらないわけであります。
 しかし、いずれにしましても相手の、要するに近隣の諸国ですね、日本の国がどう思おうと、その戦場になったところあるいは日本が植民地化したところ、こういったところの人たちが耐えがたい苦しみとか痛みというものを持ったということ、これもまた事実なんですね。そのことを私たちはやはり反省し、そしてそういった方々に対しておわびをするときはおわびをする、そして行動していくということが今私たちに求められているのだろうというふうに私は理解をしながら、数年前からそういったことをそれぞれの場所で申し上げてきておるということであります。

志位委員 永野氏の思想を軍国主義思想でないとあなたが言い切るのは、私は本当に異常な話だと思うのですよ。今までつき合ってきたと言うけれども、じゃ、あなたはこういうことを知っていますか。
 一九八八年に、当時の奥野国土庁長官が問題発言で辞任されたことがありましたね。あの戦争は植民地を解放するためのものだった、あるいは日本には侵略の意図はなかった、こういう発言でした。そういう侵略戦争の肯定発言で引責辞任をした、こういう問題があったのですね。そのとき、ちょうどこれは八八年の五月十八日ですが、「奥野発言を支持する国民の集い」というのがやられています。これが行われて、奥野発言を全面的に支持するという決議文まで上がっているのですよ。
 これは、呼びかけ人は別の人ですけれども、賛同人に国会議員が四人おりまして、このうちの一人が永野さんなんですよ。ですから、奥野発言を、ああいう発言を全面的に支持する、その集会の賛同人になった、これは自分の思想もそうだということですよ。ですから、あの永野さんの発言というのはたまたまあったのじゃない。いいですか、たまたまあったのじゃない。もうずっと一貫した、いわば確信、みずからの思想としてあったものなんですね。
 あなたは、この奥野さんの問題での集会の賛同人に名を連ねていたということを知っていましたか。知った上での任命ですか。知っていたか知っていないか、答えてください。

羽田内閣総理大臣 承知いたしておりません。

志位委員 承知いたしておらないという、それは無責任ですよ、あなた。大体もともと永野さんというのは職業軍人という経歴を持っているわけで、ずっとああやって防衛庁の高官まで上り詰めてきた人でしょう。その人を二人目の、法律の上では二人目に名前が出てくる法務大臣の地位に任命するときにきちんと調べてもいない。これ自体が無責任だということになるわけですけれども、あなた、こういう一貫した軍国主義思想の持ち主を、これを軍国主義思想じゃないと言うのだったら、あなたの言う軍国主義思想というのは一体何ですか。はっきりあなたがあなたの言葉で軍国主義思想とはどういうものですか、答えてください。

羽田内閣総理大臣 まずその問題につきましては、要するにその国の力、武力、こういったものによってみずからの思想を相手にあれする、あるいは権益というものを相手から、権益をそこに及ぼす、これがまさに一つの軍国主義的な思想であろうと思います。
 ただ、私は永野さんを判断をするときに、実は、私は選挙のときにもなぜ今日本がわびなきゃいけないのか、反省しなきゃいけないのかということを訴えて歩きました。そして、我が党はそれで行動したわけですね。
それに対しまして彼は一緒になって行動しておったものですから、彼の相当重要な人がそのために彼の組織を去りました。そのことを話したときに、彼はそれでいいんだ、結構ですということさえ実は言われておりました。
 そして、今度のこの発言というものが起こったときに、直ちに報道されましたね。そのときに多くの国の人たちに痛みを改めてあれしてしまったことに対して申しわけないということを率直に、実はたしかわびられておったというふうに思っております。

志位委員 撤回するということを言われましたけれども、私はあの記者会見も拝見したんですけれども、やりとりについて。まあ本当の意味で思想を撤回してないですよ。あの戦争はやむを得ざるものだったと、そういう一面があったということを相変わらず言っていますからね。まともな撤回とは言えない。
 それからあなた、軍国主義思想というのは力で他国の権益を奪うものだ、それは戦前の日本の軍国主義がやったことでしょう。それと同じ言葉を永野さんは言ったわけですよ。だから、永野さんのような思想は軍国主義思想じゃないかと私が言ったのに対して、あなたの方は何度聞いても、これは軍国主義思想ではないということになると、羽田さん、いいですか、あなた自身の思想が問われるんですよ。あなた自身が永野法務大臣と同じ思想に立っているんではないかという、こういう問題を問われているんですよ。これは総理の資格にかかわる問題が提起されているということになるわけだ。
 じゃ、次に進みたいと思うんです。
 私がこれだけ聞いても、永野さんは平和な人だったというあなたの考え方の根本にはあなた自身の戦争観があると思うんですよ。そこを少し聞いてみたいと思うんです。
 こういう憲法に対する無責任の根っこにあるあなたの侵略戦争に対する認識なんですけれども、あなたは所信表明演説の中で、過去の戦争について我が国の侵略行為があったということは認めました。しかし、侵略戦争という認識は述べられなかったわけですね。それで、この点我が党の不破委員長が代表質問で、なぜ侵略戦争と言えないのかというふうに聞かれて、あなたは、侵略戦争という用語の意味はいろいろある、こうしてあくまで侵略戦争という認識を述べることを拒否されました。
 しかし羽田さん、これは用語の問題でごまかせる問題じゃない。歴史の判定が下った問題なんですよ、あの戦争に対する評価というのは。この歴史の判定が下った問題について、一人の政治家であるあなたが一体どういう判断を下すのかという問題ですから、あれこれの用語の問題、学問上の問題、定義の問題じゃない。あなたの普通の言葉でこれは語っていただきたい。侵略戦争と言えないんですか。

羽田内閣総理大臣 侵略戦争という言葉は、何で侵略行為というのでいけないのでしょう。

志位委員 ここの言葉の違いは非常に大きいんですよ。いいですか。私はなぜ侵略戦争と言えないのかということを聞いているわけでね。侵略行為ということになりますと、これは個々の軍隊が出先でいろいろとまずいことをやった、不法なことを働いた、そういう個々の行為の問題という言い抜けもできるんですね。羽田さん、よく聞いててくださいよ、大事なところだから、あなたの質問に私は答えているんだから。いいですか。
 侵略的行為といったら、個々の軍隊が出先でやったいろいろな行為に間違いがあったということでの言い抜けができるんですよ。しかし、侵略戦争ということになれば、あの戦争の全体の性格、目的が侵略であったという戦争の全体の認識になるんですよ。これは全く次元が違うんです。だから、侵略行為でごまかさないでいただきたい。侵略戦争と言えるかどうか、はっきり答えていただきたい。

羽田内閣総理大臣 ちょっと今調べさせておりますけれども、国連憲章にも侵略的行為という言葉でたしか書かれていたと思いますので、今調べております。
 しかし、私は、行為、結果そのもの、いろいろな人があったと思いますよ、あのときのいろいろな考え方の中に。しかし、結果としてまさに耐えがたい苦しみや悲しみというものあるいは痛みというものをもたらしてしまった。これに対して私は、反省し、そしておわびしながら、日本の国はこういったことを起こさないようにしていきましようということを言っているんですよ。なぜそんなにあなた自身が言葉にこだわらなきゃならないのか。

志位委員 私は、今あなたの答弁をなかなか興味深く聞いたんですよ。結果として問題だった。
 じゃ、私は逆に問いたいんですけれども、戦争目的が侵略だった、あなたはこう認識しているんですか、それとも、結果がいろいろあったけれども目的にはそれなりのものがあった、どっちなんですか。

羽田内閣総理大臣 それは実際に傷つけてしまった、しかも、あのときにどんな理由があろうとも、日本が例えば勝てない戦争というものを主導しちゃったとか、そういったことに対してはいろんなやっぱり問題があります。それから、中にはやっぱり権力を伸ばそうと考えた人もあったろうというふうに思います。いずれにしましても、それにはいろんな複雑なあれがある。
 そこで、国際的にも、たしか国連憲章だったか何かにも侵略行為というような書き方がされていたんじゃなかろうかというふうに考えておりまして、ちょっと今これはまだ資料を持っておりませんので……

志位委員 今、国連憲章の話が出ましたので、じゃ、あなたはこの侵略戦争の問題について、その目的が侵略だとお認めにならないので、ポツダム宣言、私ちょっときょう持ってきたのですが、ポツダム宣言の第六項には、日本の行った戦争の目的を世界征服の戦争だった、こう規定していますよ。それから、国連憲章、あなたが言ったから言いますけれども、侵略的行為じゃないですよ。第五十三条には「侵略政策」。いいですか、「侵略政策しというのは、戦争の目的が侵略だったということですよ。ポツダム宣言にも「世界征服」と言っているんですから、戦争の目的が侵略ということになるじゃないですか。いいですか、あなたはポツダム宣言を認めないんですか。

山口委員長 丹波条約局長。

志位委員 条約局長に聞いているんじゃない。総理大臣の認識を聞いているんだ。
丹波政府委員 委員長から御指名をいただきましたので、御説明させていただきたいと思います。
 総理からも御答弁があろうかと思いますけれども、事実関係の問題がございますので、私から整理させていただきたいと思います。
 先生御承知のとおり侵略戦争あるいは侵略行為といった言葉につきましては、それは、中心的な概念は、一般に他国に対する違法な武力の行使を中心的な概念といたしてはおりますけれども、これは国際法上確立した定義はないわけでございます。ですから、例えば国連憲章の三十九条に「侵略行為」という言葉がございますが、侵略とは何かということをめぐって国連の長い歴史の中で大変議論が闘わされまして、一九七四年に総会が侵略の定義というものを採択しておりますが、これも安保理が三十九条に従って侵略行為があったかどうかを決定するガイドラインにすぎないと、法的な拘束力は持っていないということになっておる次第でございます。
 そういう意味で、侵略戦争とか侵略行為という言葉にはいろんな意味がございますので、先ほどから総理が申しておられる、申しわけなかったという言葉をあらわすために、この場合には文脈から考えて侵略行為が適当であろうという言葉を総理が選ばれてお使いになられた、こういうふうに承知いたしております。

志位委員 定義の問題とか、国際法的なそういう国連憲章でどういう定義があったかということを聞いているんじゃないんです。侵略戦争という言葉は、いいですか、アジアの諸国の方々、これはみんな侵略戦争だと、日本の戦争をそう考えているんですよ。
 あなたは私にこっちが言葉にこだわっていると言いますけれども、こだわっているのはあなたなんだ。侵略的行為としか言わないで、侵略戦争と絶対口が裂けても言わない、それはあなたなんですよ。だから、それを私は今聞いているわけで、なぜ言えないのか。ポツダム宣言には、さっき言ったように、世界征服のための戦争だったと書いてあるんですよ。いいですか、これは国連憲章、今いろいろ言われたけれども「侵略政策」と書いてあるんです。戦争目的が侵略だったとはっきり書いてあるんです。なぜこれを認められないんですか。ポツダム宣言を認めるのか認めないのか、はっきり答えてください。

羽田内閣総理大臣 ポツダム宣言を認めないということは、これはあり得ません。ただ、先ほどからお話しでありますけれども、私はあの戦争によって傷ついた人たち、これはやっぱりいかぬよということで、我々はこれからそういったものをきちんと腹に置きながら、そういった行為というのは再び起こらないようにしていこう、そして、本当に日本の国はこの地域というものを平和にするために一生懸命汗をかいていきましようという、まさにこれからの我々の姿勢というものは大事だと思うんですよ

志位委員 これからの姿勢ということをあなたがおっしゃるんで、戦争の基本認識をこれだけ聞いた。これは非常に大事な問題なんで、単なる言葉にとどまらない問題なんでこれだけ聞いたんですが、これだけ聞いても侵略戦争という言葉をお認めにならないというところに、私は今の羽田政権の性格が非常に世界にとって重大なものだということを言わざるを得ません。
 私、例えばこれは先ほどあなたの答弁の中で、いろいろな理由があったと、戦争を行うには。これは確かにあなたは読売新聞の報道によるとそういう認識を述べています。四月二十三日の会見で、太平洋戦争についてこうあなたはおっしゃっている。あの時点では、日本としては武器を持っても立ち上がらなければいけないということで、ABCD包囲網を打破するという意味で行動したんだろう、残念ながら、国際的な理解は得られない、そのためにいろんなところに迷惑をかげながら敗れてしまった、こういう発言されていますね。
 あなたの考えはこうですか。太平洋戦争の開戦にはそれなりの理由があった、アメリカ、イギリス、中国、オランダ、いわゆるABCD包囲陣で経済封鎖がやられた、それを突破するためにやむなく立ち上がらざるを得なかった、それなりの理由があった、しかし、それが国際的な理解が得られなかったからまずかったんだと、これはあなたの見解ですか。

羽田内閣総理大臣 それだけ話したはずないですよ。私がいつも言っていることは、そういう議論というものも実際にまじめにそう考えていた人たちもあるということ。しかし、実際に、残念ですけれども、そういったことで本当に国民を犠牲にして戦って、その結果というものは勝利を得ることができるのか、そういうことも実際にわからなかった、これも一つ問題がある。
 それから、実際にそれによって戦場にしてしまった国々、こういったところに対しても大変な迷惑をかけてしまっておるということ。戦争というものが起こるときにはいろいろな議論がありますよ。ですから、そのあたりは私はこれからまた少し議論してみなければならぬと思いますけれども、しかし、私は結果として多くの人たちを傷つけたということ、これを深く私たちが、みずからがそれを知りながら再びそんなことのないように努力することが大事だと思います。

志位委員 今の答弁を聞きますと、一般的にそういう議論があったという話なんですけれども、これは一般的にあったというにとどまらないですね。あなたはそういうことをあちこちでおっしゃっているんですよ。
 例えばこれはボイスという雑誌で、去年の九月号ですけれども、この中でこうおっしゃっている。「開戦には開戦の理由があったと私は思っています。日本が列強に抑えられた。しかし、戦争によってアジアの国にまで迷惑をかけた。」(羽田内閣総理大臣「そうです」と呼ぶ)そうですとおっしゃったね。つまり、列強に抑えられた、それなりの理由があった、私は思っていますと一人称で言っているんですよ。これ問題だと思わないかな。
 いいですか。結果として侵略行為が起こった、しかし、開戦にはそれなりの理由があった。こうなりますと、いいですか、この考えに立ちますと、太平洋戦争の責任といいますか、少なくとも原因だな、これは連合国側にあるという話になっちゃうんですよ。ABCD包囲陣をしいたのはあっち側だからあっち側に責任があるということになる。
 しかし、そういうアメリカなどのいわゆるABCD包囲陣なるものの原因になったのは日本の侵略でしょう。一九三一年に始まる柳条湖事件のあの中国東北地方に対する侵略戦争、三七年に始まる、盧溝橋事件に始まるああいう中国全土の侵略戦争、そして東南アジアへの侵略、そういう中であの経済制裁はやられたわけでしょう。ですから、開戦にはそれなりの理由があったとか、いいですか、ABCD包囲陣を突破するためにやむにやまれず立ち上がったんだとか、これは理由にならない。
 こういうことを言ったら、戦前の軍部が自存自衛のための戦争だったと、一体どこが違うのか。永野氏が、まあやむを得ざる戦いだったんだ、日本を圧迫した、そこまで追い込んでいった諸外国が悪いんだと、どこが違うのですか。

羽田内閣総理大臣 私は、あなたのような学問をされる、あるいはそういう追求する型の人間じゃありません。実際にみずからが経験してきたこと、あるいはそれによって及ぼされたこと、そういったことを肌で感じながら行動してきている人間であります。ですから、そうやって一つずつ詰められれば、何というのですか、いろいろな問題があるかもしれません。しかし私は、結果に対して、これは日本としてきちんと考えなきゃならない、一つずつのいろいろな事例というものに私自身が触れながら、そういう判断に至って、そういういろいろなところで発言をし、行動をしてきておるということであります。

志位委員 結局、この討論を通じて、私がこれだけ聞いても永野氏のあの思想を軍国主義思想ではなかったというこの総理の発言、それから、侵略戦争ではなかった、侵略戦争と言えないあなたのこの立場、そしてABCD包囲陣突破だと、この戦前のまさに自存自衛論と違わないこの立場、私、これを聞いていますと、戦後の国際社会というのは、総理、いいですか、日本、ドイツ、イタリア、こういう諸国による侵略戦争の断罪の上に成り立っているのですよ。日本の戦後政治だって、あの侵略戦争を二度と繰り返しちゃいかぬと、この反省の上に憲法の平和原則がつくられたわけですよね。それを、やはり私はその原点を否定することになると思う、あなたの発言は。
 それで結局、この国際社会の原点、日本の戦後政治の原点を否定せざるを得ない立場にあなたは立っているというふうに私は思うのですね。
 私は、ドイツやイタリアでいまだにあの戦争を侵略戦争でないと言う首相がもしいたら、これはえらいことになると思うし、永野氏のような発言を軍国主義思想でないと言い切る人がいたら、これもえらい問題になると思いますが、やはり私は、そういう資格では、幾ら国際貢献、国際政治といっても、それに参加する根本的な前提を欠くことになるということを最後に指摘しておきたいし、私ども日本共産党は、この問題は、戦前から一貫してこの戦争に反対してきた党としてこれからも追及するということを申し述べて、次に進みたいと思います。
 次は、消費税の税率引き上げの問題についてであります。
 首相も署名した連立与党の確認事項の中では間接税率の引き上げ、このことが明記されました。それからあなたの所信表明演説でも、この確認事項を尊重し、年内に税制改革を実現するということがうたわれました。まさに消費税増税の方向だと思います。今不況の中で、国民生活は非常に大変であります。そういうときに、低い所得の方ほど重い負担を強いるこの消費税の増税の方向が出てきたことに国民の多くは不安を強めております。

    〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
 私、きのう毎日新聞で出たある投書に非常に胸が痛みました。八十三歳のお年寄り、女性の方が出している投書でありますが、消費税が上がればもう生きていけない、せめて毎日の食事だけには消費税をかけないでください、お願いします、こういう叫びですよ。
 そこで私が第一に首相に伺いたいのは、あなたが消費税の増税として挙げている直間比率の是正の問題についてであります。
 我が党の不破委員長が代表質問の中で、直間比率の是正というのは間接税の割合をどこまで引き上げたら達成されるというのか、こう聞きました。そう聞いたのに対してあなたは、OECD、経済協力開発機構諸国との比較を挙げられました。国際的な比較をすると、OECDの加盟二十四カ国中、日本は消費課税の割合は最下位になっている、だから引き上げが必要だというのがあなたの答弁の趣旨だったというふうに思います。
 そこで、私は聞きたいのですが、OECD加盟二十四カ国での税収に占める消費課税の割合の平均値、それから日本の消費課税の割合、この二点の数字について、大蔵省が政府税調に出した資料があると思うので、大蔵省答えていただけますか。

小川(是)政府委員 OECD加盟二十四カ国、一九九一年のデータによりますと、税収に占める消費課税のウエートの平均は四〇・三%でございます。日本は、これがこの年一九・二%で二十四位であったということでございます。

志位委員 今数字が出されたのですが、羽田さん、あなたは、直間比率の是正は間接税の割合をどこまで引き上げたら達成できるのだ、この問いに答えて、OECD諸国と比べて消費課税が低いという答弁をされたわけですね。だから引き上げが必要だという答弁でした。
 ところが、OECD諸国の消費課税の平均値は、今のお話でも四〇・三%になる、これは税収に占める割合ですね。OECD並みに仮にするとするならば、消費課税の割合、今は一九・二%という数字でしたから、それを四〇・三%に引き上げることになるわけです。
 私は、そのためには消費税率がどのくらい必要かと計算してみましたら、増減税同額の場合では大体税率一二%という数字が出てきます。それから、増税だけの場合、これは一八%です。これは両極端でしょうから、真ん中あたりに真理があるとすると、大体一五%という水準になるのですよ。
 ですから、あなたが直間比率の是正と言うけれども、あなたの言う直間比率の是正というのは、当面の税率がどうなるにせよ、この消費課税の割合をOECD並みにするということですか。

羽田内閣総理大臣 OECD並みにするというのじゃなくて、二十四カ国あるうちの最低であるということを申し上げたのです。ただ私たちは、やはり間接税というものを考えなければならない、高いということでございますから、それは今最低なんですよということを申し上げたわけですね。
 ですから、何も別にOECD並みに上げようということを言っているわけじゃない。ただ、それより何より、やはり所得課税というものに偏ったものであるということであるとすれば、これは中堅サラリーマンの人たち、みんなやはりこれは大変厳しいものですよね。ですから、やはり社会というものを構成している人たちがみんなで広く薄くこれを負担していこうということ、それから先ほど毎日新聞のあれを御説明がありましたけれども、そういった皆様方に対しては、これは確かに逆進性というのはどうしても間接税には伴うものですよね。ですから、そういった場合には、今度は福祉政策とか、そういったものでやはり考えていくべきものだろうというふうに私は今考えております。

志位委員 OECD並みを目指すのではないのだ、事実を述べたまでだという御答弁だったと思うのですが、これは、私はなぜこういう質問をしたかというと、政府自身が御任命になった加藤税調会長、ヨーロッパ並みの一五%にするという発言が出るのですね。そういう発言がそういう公式の場でも出ますから、私はそういう質問をしたわけで、そうじゃないというのだったら、じゃもう一問聞きたいのですけれども、あなたが言う直間比率の是正、いいですか、直間比率の是正の基準というのは何ですか。今はゆがんでいるというわけでしょう、直間比率が。何かの基準に照らして間接税が低いというわけでしょう。この基準というのは、一体何なのですか。基準がなきゃ是正の話にならないでしょう。

藤井国務大臣 先ほどからの御議論で、私は、直間比率先にありきじゃないということをまず申し上げたいと思います。
 これからの福祉社会を着実に健全なものにするためには、今の日本に比べれば消費課税のウエートをふやしていかなければならない、これを終始申し上げていることでございます。じゃ、幾らが正しいんだ。ある税だけが正しければ、これは単一税になってしまうわけですね。ですから、おのおの税の持っている特性というものがあると思います。いい面と限界があると思います。所得課税というものは、きのうの言葉で言えば垂直的公平を確保するといういい面がありますが、度を超してくると勤労意欲を阻害いたします。消費税は、そういう意味で薄く広く負担をしていただくといういい面がありますが、余りに多くなると、これは逆進性という問題、今御指摘の点が出てきます。おのおのそのよさと限界というものをバランスとっていく。
 それから、もう一つ申し上げたいのは、おのおのの国は歴史と国民性というものを持っているということだと思います。そういうことから今のものができている。しかしながら、日本はそういうことをやってきたために、振り返ってみたら非常に所得課税が重くなり過ぎているために、今後の福祉社会をやっていくにはマイナス面が多く出るであろう、こういうことから今のような考えをとっております。

志位委員 結局、直間比率の是正ということで私は基準を聞いたんですが、その基準はないんですね、はっきり言えば。今首を振っていますけれども。バランス、バランスと言っているだけで基準がないんですよ。そうすると、直間比率の是正ということで基準もなしにその言葉が次から次へと繰り返して出ますと、私、無限の増税のレールに乗せられちゃうという、この不安があると思うんですよ。今、首振っているけれども、やっぱりそうでしょう。
 それで、先ほど直接税と間接税の話をされましたけれども、日本が直接税中心の税制になっているというのは決して悪いことじゃない。やはり間接税というのは、あなたも認められたように逆進性を伴う、非常に甚だしい逆進性を消費税の場合なんか与えているわけですよ。低所得者層に本当に重い。ですから、税制の公平の上で直接税中心の税制というのは決して悪いことじゃない、こう私は確信を持って申し上げたい。
 それから、よくあなた方は、何というんですか、所得課税の軽減と消費課税の充実で勤労所得者層の負担を軽くすると言うけれども、私たちが税調の中期答申で試算して、一番控え目の消費税率の増額で試算してみても、大体年収七百三十万ぐらいの、八三%ぐらいの勤労者は差し引き増税になっちゃうんですね。ですから、この中堅サラリーマンが負担が軽くなるというのも、これも道理がない
 あなたが直間比率の是正と言うけれども、基準がない。ですから、私先ほど一番最初にOECDを聞いたのはそういう意味なんですよ。基準は何かと聞かれて、唯一答えとして出てくるのはOECDに比べて低いということになっちゃったら、それ以外の基準は示さないということになれば、結局いろいろ言ってもOECD並みが本音じゃないかということを私たちは非常に危惧するわけです。
 当面の税率について、例えば国民福祉税の七%でも九兆五千億円ですかの増税ですよ。勤労者一世帯当たり大体十七万円の増税ですよ。この七%でも大変なのに、この七%も一つの通過点でその先もまたあるんじゃないかということになつできますと、これはやはり国民をなしまし的に大変な増税のレールに乗せるもので、私たちは絶対そういうやり方は反対だ、直間比率の是正、この名でどんどんどんどん税率を上げられたらかなわぬということを私言っておきたいと思うのですね。第二の問題……(藤井国務大臣「反論させてください」と呼ぶ)いいですよ。じゃ、一言言いなさい。一言ですよ。

藤井国務大臣 一言といいますか、さっきから言っているように直間比率先にありきじゃないんですよ。それから、日本は戦前は間接税国なんですね。これもよく御承知と思います。戦後のシャウプ税制によって直接税国になった、そういう歴史とか沿革とか、さらに国民性というものを踏まえながら今の税の仕組みができていることは各国間違いないんですね。
 そして私は、志位委員が言われるように、所得税中心主義が正しいと思っています。しかし、度を超すとその限界を超してしまうということをさっきから申し上げているわけで、今後の長寿社会の中では所得税は度を超して負担になってくる可能性があるから、だから今この時点においてバランスを少し直していこう、こういうことだということを御理解ください。

志位委員 直間比率是正先にありきじゃないと言うけれども、あなた方の確認事項の中で間接税率の引き上げということを明記しているから私はそのことを聞いているわけで、まさに先にありきじゃないですか。だって政権の始まる前に確認事項でやっているんだから、まさに先にありきですよ。
 それから、シャウプ税制の問題を今言われたけれども、これはやはりそういう民主的な税制のつの方向をつくったんです、戦後、直接税中心という方向で。これはやはり積極的な方向だったわけで、これを骨抜きにしちゃいかぬということを私は言いたいし、それから度を超すと直接税がいけないと言いましたけれども、これは先ほど言ったように、差し引きでも、結局勤労所得者層の圧倒的多数が増税になるという現実を私申し上げておきたいと思います。
 さて、第二の問題は、私聞きたいのは、この消費税の問題で、国民生活にこれだけの深刻な影響を及ぼす重大な問題を国民の意を問うことなく強行されることが許されるのかという、この問題であります。
 昨年の総選挙で、私の党は消費税率を上げますと公約に掲げた党は、与野党を通して一つもございません。公明党、民社党、消費税率引き上げ絶対反対ということを述べて選挙を戦われた。私は、選挙の公約を無視してこういう重大問題をごり押しすればどんなに国民の厳しい批判を浴びるかは、これはかつての中曽根内閣の売上税の問題、竹下内閣のときの消費税の問題、これは明らかなんですね。
 そこで、私は総理に伺いたいんですが、総理は、この間接税の税率の引き上げ、消費税の増税という国民生活の根幹にかかわるこういう問題を一度も国民に信を問うことなしに決めてしまうというやり方、このやり方が民主政治において許されるというふうに考えておりますか。どうですか。

> 羽田内閣総理大臣 これにつきましては、私は選挙のときにもそういった税の問題なんか、普通我々選挙をやる者としては一切これはやらない方がいいんだろう、しかし必要なこともありますと。
 ただ、そういったときには、私どもとしてはそういったことも考えさしていただく。実は、ある場所なんかではそういったことを、これはもう絶対に消費税を上げませんということを約束してくれれば我々もやりますよなんという話があって、その人の例をとりながらも私は実はお話ししてきたぐらいでございまして、要するに国民のために税というのは使うわけでございますから、私は国民の中に理解というものはだんだん生まれてくるものであろうというふうに思います。

志位委員 肝心の問題にお答えになっていないですよ。こういう問題を国民の意を問うことなしに決められるかと。あなたはこの前の選挙で訴えてきたということだと思うんですがね。
 私、新生党の政策、全部調べてみたんですよ。七月一日に基本政策、総選挙に対する基本政策が出ておりますが、この中には一言も消費税の増税一の話はないですよ。
 それから、これは「現代」という雑誌で、総選挙の直後、これは九月号ですけれども、この中であなたはインタビューに答えてこう言っています。「新生党の政策として、今、消費税の引き上げをするとは言ってません。」これは総選挙の投票日の五日後ですからね。新生党としては、消費税の引き上げをやると言って選挙を戦ったわけじゃないわけですね。新生党ですらそうなんだ。まあ、随分その疑いがあった新生党ですら党首が、いいですか、私たちは消費税の税率引き上げを言ってない、新生党の政策じゃありません、こう言っているんですよ。どの党も言ってないんですよ。社会党は抜けちゃったけれども、公明党や民社党は反対ですからね。増税反対。こういうことが許されるのかということを聞いているんですね。どうですか。

羽田内閣総理大臣 当時、自民党時代にも、いわゆる所得税、これは減税するということは言っておりませんでした。しかし、減税は、やはり所得税の減税をやって、ただでさえ歳入が少ないところを、これをまた所得税減税やったら、そしてその穴埋めせずにまたこれをどんどん減税をやっていったとなったら、国の財政は一体どうなってしまうのか。私たちがもしそれをやったら、今度は国民から私たち自身が問われるわけですよ。
 ですから、まさに選挙の前に言うのもあるけれども、実際にやって国民の理解が得られないとしたら、私たち自身がやはり問われる。そういう中でもやはり対応していかなければならないのじゃないのかなというときもあるのじゃないかと思います。

志位委員 結局、いろいろ検討してみたら上げることが必要だからということを選挙後決めたという話だと思うのですよ。
 ただ、やはり私は、税制というのは民主主義の一番の根幹だと思うのですね。まああなたにこういうことを説明する必要もないと思うけれども、例えば近代の議会制度、近代の国家制度というのは、みんな税制からつくられているわけですよ。つまり、支配者が勝手に税金を決めることはだめだ、人民が税金を決める権利は持っている、ここから議会はできてきたわけですよ。ですから、やはりそれが民主主義のイロハなんであって、やはりこういう重大な問題を、あなたは結局答弁の中で、まあ選挙中には言わなかったけれども、後でいろいろ事情が……(羽田内閣総理大臣「私は言ったよ」と呼ぶ)あなた、まあ、言わなかったと言っているから……

羽田内閣総理大臣 いや、そうじゃないですよ。それは党としてということであって、私は各会場でみんな話してきていますよ。

志位委員 いや、党として言っているかというのが大事な問題ですよ。党としては言っていないとあなたが言っているのだから。いいですか。

後藤委員長代理 発言を求めてください。

志位委員 委員長の許可を得ないで言ったのはそっちですからね。

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後藤委員長代理 委員長は指名しましたよ。

志位委員 やはり私は、そういう重大な問題を国民の意を問うことなしにやるやり方は許されないということを言っておきたいと思うのですね。
 それで、この点では、公明党の委員長の石田長官にもお聞きしたい。
 あなた方はもっとはっきりしているんですよ。あなた方は、総選挙での公約の中で、消費税の税率は上げるべきでない、はっきりおっしゃっていますね。
 例えばこれ、去年の七月七日付の朝日新聞の政策対照表、これは各党が責任を持って政策を全部書くものです。この中ではっきり、税率の引き上げはやらない、こう言っておりますよ。
 それから、同じ日にNHKの討論会、インタビューがやられて、市川書記長と神崎国対委員長が出席されております。これがそのときの公明新聞。この公明新聞には、税率アップ「絶対やらない」。「絶対やらない」ですよ。あなた方の新聞ですからね。
 いいですか、こう選挙のときにはっきり公約されていた。その党首であるあなたが、連立与党の確認事項の中で、間接税率引き上げ、これに署名するのは、これは明らかに公約違反じゃないですか。

石田国務大臣 選挙前のことにつきましては、そのときの、要するに次の政治体制がどうなるかは全くわからないわけでございます。
 しかし、連立政権になって財政に責任を持たなければならないというような状況の中では、各党との話し合いの中でそういうような決定を下したのは、ある意味においてやむを得ないことであろうと思います。
 ただ、公明党としましては、確かに消費税反対でございますけれども、要するに消費税の税制がしかれて、その後だんだんと定着をしてきて、そのことについてはもう定着をしているということは認めざるを得ないということも選挙前には申し上げておるわけでございます。

    〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕

志位委員 そこまでは言っているのだけれども、税率引き上げですよ。これは、選挙後のことはわからない、連立の合意だったからしようがないんだ。そうすると、あなた方の国民に対する公約というのは一体何なんですか。
 私は公明新聞、結構よく読んでいるのですけれども、これは公明新聞の総選挙中に出した、「政党・政治家を選ぶ 4つの基準」というものですよ。
 この中に「公約を守る党か」、これが四つの基準のうちの、あなた、一つに挙げているのですね。ちょっと読み上げてみましょうか。「思い出して下さい。自民党は、昭和六十一年の衆参同日選挙の時も「大型間接税導入はしません」と国民にウソをついて三百議席を獲得しました。ウソとごまかしは、自民党の専売特許といえます。」これは私が言っているのではないですからね。そして「公明党は国民の声を政治に反映するまじめな党です。約束したことは必ず実行する党です。」うそとごまかしは専売特許だと。(「どこの新聞だよ、それは」と呼ぶ者あり)公明新聞です、公明新聞。赤旗が言っているんじゃないんです。赤旗もそういう面がありますけれども。
 いいですか、あなた方、自民党政治の継承ということを言われたけれども、この専売特許も継承するんですか。どうですか。

石田国務大臣 志位さんの御指摘もわからぬではございませんけれども、現実に財政に対して責任を持たなきゃならないという状況の中で、しかも、もう減税も実施してしまったわけでしょう。そういった問題に対する国民の恩恵、そのことについて共産党は全然お認めにならないんでしょうか。また、そういう現実についてお認めにならないんでしょうか。
 そういうようなことを今日の景気の低迷の中で実施せざるを得なかった、そういうことによって財政にも大きな穴があいてきた、それに対しても何の措置もしなくていいというようなおっしゃり方をするんでしょうか、そこら辺は私は納得しません。

志位委員 苦し紛れに、ともかく全然問題をすりかえてそんなことを言ってもだめですよ。公約を守ってないじゃないかというこの点を聞いているわけですからね。
 減税の財源の問題については、もう消費税の増税だということにすぐ持ってくる、その考えが間違っていると。私たちは、もう財源の問題は、大企業優遇税制の是正とか、あるいはいろいろなむだや浪費の是正とか、こういう問題を具体的に明らかにしているということを一言述べておきます。
 あなた、そうやって問題をすりかえたって全然だめだよ。もう公明党がやはりこういうことでは、今度の総選挙で何を公約しようと、これは国民には一切空手形だということだけ私は指摘しておきたいと思います。
 それから、私、この問題で一つ、連立与党のこの政策決定の過程に非常に大きな問題点を感ぜざるを得ないんです。あなた、連立の合意だから仕方がないと、こう言ったでしょう。みんな連立の合意ということで国民への公約が捨てられているんじゃないか。小選挙区並立制の問題だって、まあ、つい最近までここに座っていた社会党の方は、民主主義を覆す制度だと言いながらこれに賛成する、もう合意だからしようがない、米の自由化もそうだと。消費税もそうだ。自分たちの固有の政策、みんなありながら、連立政権の合意だというこの一点でみんなそれがほごにされるという政治が民主政治でしょうか。私はこういうやり方では国民に責任を負った政治はできないと思うんですね。
 これは羽田首相に伺いたいのですけれども、こういう考え方、いいですか、連立政権の合意があれば国民への公約はやむを得ないんだと、こういう考え方。あなた方は連立政権の合意と国民への公約と一体どっちを上に置きますか。

羽田内閣総理大臣 どちらを上に置きますかという、それは当然公約というものは基本にあります。ただ、要するにそれぞれがみんな違った政党が集まるときに、これはあるときにはそれを乗り越えなきゃならぬ場合だってあるわけでございまして、それと同時に、やっぱり所得税、当時は所得税を例えば減税するということはなかったわけですね。それを所得税減税というあれだけ大きなものをやったわけなんですから、それが要するにまた一つの大きな世論にまでなってきたわけでしょう。そういう中で所得税減税がなされたということ。ということになりますと、その後のことについても考えなきゃいかぬし、高齢化社会がそこに来るということがあれば、それに対しても対応しなければいけないということ、これはぜひ御理解いただきたい。ですから、確認事項というものはそういう中でつくられていくものであろうというふうに思っております。

志位委員 公約が基礎だと言いながら、あなたの党は、党として選挙で訴えてないことを実際上はやられようとする。で、公明党などについては全く正反対なことをやられようとする。結局、私は、連立与党の合意だ、合意だということで、国民への公約はどうでもいいんだというのがあなた方の政権の実態だということを指摘しておきたい。第三に、私、消費税の問題で伺いたいのは、あなた方がこの消費税の増税を押しつける理屈としていつも高齢化社会のためということを言われます。しかし、ここにはいろいろごまかしがあると私は言わざるを得ないのですね。
 一つ目は、高齢化社会になることによって大変な危機になるということが大変オーバーに言われているということであります。
 例えば細川前首相は、ことしの年頭の会見でこう言われている。現在は一人の高齢者を約五人の働き手が支えていますが、二十一世紀のピーク時には約二人で支えることになります、ごく単純に考えますと、このための負担は倍以上になります。この倍以上、この数字はどこでも出てくるんですよ。これは「今週の日本」という政府の広報紙ですけれども、これでも、五月十六日付、最新号で同じ数字が繰り返し繰り返し出てくるわけであります。
 そこで私は、働き手の負担ということを云々しているので、数字を具体的に聞きたいのですが、働き手の数、すなわち就業人口、これはこれからどうなっていきますか。
 労働省に伺いたいんですが、一九九〇年の労働力人口と二〇二〇年、この見通し、これを示してください。労働省の労働力需給の長期展望研究会が試算していると思います。

七瀬政府委員 労働省といたしましては、全人口の将来推計をもとに労働力人口を推計いたしております。直近は、一九九二年に将来の人口の推計が出ておりますので、それをもとに労働力人口を試算いたしております。それで、一九九三年には六千六百十五万人でございますが、そのときの最新の人口の将来推計をもとにした労働力人口の試算は二〇一〇年までしかいたしておりません。(志位委員「二〇一〇年は」と呼ぶ)二〇一〇年は六千六百三万でございます。

志位委員 今二〇一〇年までしか試算していないと言ったんですけれども、二〇二〇年の試算もあるんですよ。それは六千七百八十五万人です。ですから、現在が大体六千六百五十三万人と言われて、二〇二〇年六千七百八十五万人、こういう数字があるわけで、私、パネルにしてみたんです。これ、委員の方もごらんください。
 それで、これをパネルにしてみたんですけれども、これが大体現在ですよ。それから二〇二〇年。就業人口は大体六千万人台で推移するんです。微増ですけれどもふえるんですね。それから、人口は一億二千万人台で大体推移しております。これは若干ふえて、少し減りぎみになりますが、だからこれが就業人口と非就業人口の現在と将来の姿なんですよ。これは確かにお年寄りがふえるんですけれども、お年寄りの中でも働く方もふえる。それから女性の方の職場の進出もふえる。そういうことを考えると、就業人口は減らないんですね。微増ですけれどもふえます。
 ですから、一人の働き手の負担が倍以上になるというのは、これはどう見たって誇張なんですよ。今も未来も大体一人の就業者が一人の非就業者を支えるというのは変わらない。もちろんお年寄りがふえれば年金の問題、医療の問題、この負担がふえるということは当たり前ですし、ふやすことも当たり前です。しかし、それを考慮に入れたとしても、一人の働き手の負担が倍以上になる、これは根拠のない過大な数字だと、これは私は明らかだということを指摘しておきたい。これはありとあらゆるところでこの問題が出てくるんで、こういう過大な数字は、負担が全然ふえないと言っているんじゃないですよ。しかし、その負担を二倍以上だ、こうやって過大に描くやり方はやめていただきたい。

藤井国務大臣 ただいまの図表は全く正しいと思っております。
 ただ、お年寄りの方も働く、あるいは女性の方も働くというのは、その図で言いますと下に入っているわけですね。問題は上なんですね。問題は上ですが、今と全然様相が変わるのは、お年寄りのウエートが物すごくふえて子供の方が減っている、こういう数字になるわけでございます。もちろん非就労者という意味においては同じでございますが、お子様に対する養育というものは大変大事な問題だと思います。思いますが、お年寄りにかかる負担の方がはるかに多いということから、今私どもが申し上げているような物の考え方が出るということを御理解いただきたいと思います。

志位委員 私も、お年寄りがふえればその負担がふえるということを否定しているんじゃないんです。しかし、倍以上になるというのは過大じゃないか。例えば年率二、三%経済成長すれば、二〇二〇年には大体倍のGNPになるんですよ。ですから、給付が二倍になり、お年寄りの数が二倍になったとして、四倍の給付が必要になったとしても、それを差し引いても、自由に使える分のお金というのはふえるんですよ。
 ですから、そういう二倍以上の危機あおりを、はっきり根拠を示せないわけですから、それはやめていただきたいということなんですね。もうこれはいいです。これはこれ以上やってもしようがないから。あなた方の答弁はわかっているんですよ。生産年齢人口と老齢人口という問題だと思うんですが、もう要らないです、繰り返しになるから。

藤井国務大臣 お話でございますけれども、お子様には年金はないわけなんです。お年寄りに年金が出てくる。これはもう全然違う要因でございますね。それから、医療費でございます。医療費もお年を召せば五倍になる、これは大体常識でございますね。
 そういうことからいいますと、今の非就労者というのは、その表の中のお年寄りが非常にふえるということは、年金、医療を通じまして全く増大要因になるということ、これも御理解をいただきたいと思います。

志位委員 私は、お年寄りがふえて、年金、医療がふえるということを否定しているんじゃない。もっとふやさなければならぬということを言っているわけですね。ただ、あなた方の言う計算ですよ。今は五人で一人だが、将来は二人で一人になって倍以上になる。この基礎にあるのは、あなた方は言わなかったけれども、分母は生産年齢人口、分子は老齢人口ですか、これをやるからそうなっちゃうんですね。それは、しかし、さっき言ったように、お年寄りでも働いている方もいるし、生産年齢人口でも働いてない方もいるんだから、そういう過大な危機あおりはやめなさいということを言ったんですね。
 さて、二つ目の問題について進みたいと思うんですけれども、私、高齢化社会のためということをよく言われるんですが、消費税の増税による最大の被害者が低所得者層とお年寄りになっている、このことをもう一つ言いたい。
 もう一枚、私はきょうパネルをつくってまいりました。これはお年寄りの消費税の負担率のパネルであります。横軸は収入別の分位ですね。第一分位から第十分位まであります。縦軸は現行の消費税の負担率です。収入に占める税負担の割合です。
 これを見ますと、一つは逆進性がはっきりしてまいります。この青い部分は全世帯の平均の消費税の負担率ですが、これは非常に逆進性がはっきりして、低い所得の方ほど重く、高い所得の方は低い。この消費税の逆進性がはっきりあらわれます。
 それともう一つ、私、それに高齢者夫婦の方の消費税の負担率、グラフ、重ねてみました。そうすると、こういう赤いところになってまいります。これは全体として全世帯平均よりも高齢者の夫婦の方の方が消費税の負担は厳しいんですね。それで、特に一番収入の低い年収二百万円以下の方は、税負担率は三%を超えちゃうんですよ。これは、超えるということはどういうことかといいますと、収入だけでは生活できなくて、貯蓄を取りまして生活する状態になっているわけです。これは総務庁の資料でつくったものですからね、政府の資料です。
 私、高齢化社会のためと言いますけれども、冒頭に紹介したように、消費税の増税で一番つらい目に遭うのは年金や貯蓄を頼りにして暮らしているお年寄りだと、これはもう疑いない事実ですよ。ですから、その事実を、まず総理、御認識になって今の間接税論議をやっていらっしゃるのかどうか伺いたい。どういう認識か。

羽田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、まさに私の口から逆進性ということを申し上げたわけでありましてね。ですから、そういったものについては、例えば税率がもしアップするときにはどう対応するのかということを考えなきゃいかぬというふうに思っております。

志位委員 日本の老齢年金の受給者は約一千六百万人です。その半分以上は月額三万円の極端に低い国民年金の受給額の方々です。多くのお年寄りが、年金では足らなくて、わずかな貯蓄を取りまして生活に充てているという実態なわけです。しかも、高齢者世帯の圧倒的多数には所得税の減税の恩恵はほとんどありません。増税だけがかかってくる。ですから、私、高齢化社会のためと言いながら、結局高齢者からもっと負担してもらおうということでは、これはお年寄りに対して申しわけのない政治になると思う。
 高齢化社会のためということがいろいろと言われるんですけれども、年金の問題をとっても、医療の問題をとっても、それから介護の問題をとっても、これは本当に今の現状というのはお年寄りにとってつらい政治ですよ。ですから、この実態を本気になってよくしていくということを真剣に政府は追求していただきたい。
 その点で最後に一点だけ聞いておきたいんですけれども、今老後には三つの不安があるというふうに言われるんですよ。年金と医療と介護。私、特に寝たきりのお年寄りと言われる現状についてどういう御認識をお持ちかということをお聞きしたいんですね。
 厚生省の資料でも、寝たきりを初めとする要介護のお年寄りの数というのは在宅だけで八十三万人に上ります、これは新しい資料ですけれども。日本は寝たきり大国じゃないかという不名誉なことも言われます。そのぐらい事態は深刻です。
 最近、私、朝日新聞で両親の介護をされている家族の方の切実な投書を非常に胸を痛くして読みました。
「介護者の痛みは経験した者にしかわからないでしょう。国の福祉政策は在宅介護を方向づけていますが、介護者がいてはじめて成り立つことにどれほどの配慮があるのでしょうか。とりあえず、一日でも介護から解放され、心の豊かさを取り戻せる時間を与えて下ださい。そのためのヘルパーの人材確保が必要です。」介護されているお年寄りも、介護している側も大変苦しんでいる。欧米諸国では寝たきりという事態はないわけですから、これは政治の責任だと思うんですね。
 総理に、私、一言でいいんですけれども、この事態を政治の責任と考えていらっしゃるか、この御認識を伺いたい。

羽田内閣総理大臣 この御指摘は私も全く同感でございます。介護をされる方あるいは介護をしなければならない方を抱えていらっしゃる勤労者の方々がどんな苦しみを持っているかということは私もよくわかっております。
 ただ、確かに日本の高齢化というのは非常に早く進んだ。これは、医療ですとか薬品ですとかあるいは栄養ですとか、そういったものが急速に進んだということがあるんでしょう。世界一の長寿国なんて言われるようになってきておるということでありまして、そういう中から、なかなか介護に対するヘルパーの準備ですとか、そういったものが要するに我々が計画するようになかなか進んでいかなかったということはあり得ようと思っておりまして、これはまさに大内大臣のところが所管をいたしておりますけれども、新しいゴールドプランというものをつくろうというのは、まさに今のヘルパー、介護人ですね、こういった方々を確保するということがやはり一つの中心的な課題になっておるということは申し上げられると思います。

志位委員 私、政治の責任ということはお認めになったので、どういう政治が寝たきり大国と言われる現実をつくり出したかということは一つ御認識願いたいものである。
 私、先日、訪問介護をされている方々と懇談する機会があったんです。そのときに、なぜ日本でこの寝たきり大国と言われている事態になっているのか、こう聞きましたら、一言で答えが返ってきました。それは、これまでの政府の政策が、介護をするのは主に家族の仕事だと、行政はそれを補助すればいいと、この考え方に立ってきたからだと。
 しかし、介護には四つの条件が必要なんだ。一つは体力、二つ目は技術、三つ目は時間、四つ目は心もこもっていなきゃならぬ。この四つすべてを家族介護で満たすことができるだろうか。今は、高齢者が高齢者を介護しなければならない、そういう事態が進んで、家族介護という考え方ではもう破産しているんだということをおっしゃっていましたよ。
 それで、やはり介護という問題は、家族介護中心のこれまでの政策を根本的に転換して、公的な介護が基本は責任を持つというところに政策の抜本的な転換をやらないと、今の現実は私はなくならないと思います。
 この点で、やはり日本型福祉社会ということでこの二十年間言われてきた考え方、これがやはり大きな間違いのもとだったと私は思うんです。これは大平内閣以来の考えですけれども、介護をやるのは家族の責任、行政はその補助だ、公的福祉はできるだけ身軽にという考え方でやってきたんですが、それがもたらした一つの今の現実だということを申し上げたい。これは朝日新聞ですが、そういう日本型福祉は破綻しているという社説も出たこともあります。
 それから、ゴールドプランということも言われましたけれども、新ゴールドプランを見ましても、それからゴールドプランのもとの案を見ましても、例えばホームヘルパーさんの問題一つとっても、あれを全部達成したとしても、大体私が試算してみたら、介護を要するお年寄りの約一割ぐらいですよ、まともな介護がいくのは。それから、ゴールドプランを見直すと言いますけれども、その見直しの中身を見ても、ホームヘルパーさんの水準を引き上げるという方向は出ていないんです。水準は一緒なんです。
 ですから、二十一世紀のあの福祉ビジョン、私も拝見しましたけれども、結局あの中で、増税だけははっきりしているけれども、そういう本当の福祉のビジョン、それは本当にお寒い限りだ。私は、高齢化社会と言うんだったら、介護の問題でも医療の問題でも年金の問題でも、本当に高齢化社会のための足場をしっかりつくっていく、これを増税の口実にするようなことは絶対だめだということを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。
 北朝鮮に対するいわゆる制裁問題についてであります。
 日本共産党は、この問題について、北朝鮮が核兵器を持つことにはもちろん反対です。そのことを繰り返しこれまでも表明してまいりました。また、北朝鮮の犯してきた国際的テロや無法行為に対して最も厳しい批判をこれまでもやってまいりました。しかし、私は、この朝鮮半島を核のない地域にするという問題は二つの原則が大事だと思う。
 第一は、アメリカなどの特定の核保有大国が核兵器を持つのは当然だという立場ではなくて、全世界の核兵器を速やかに一掃する、この立場に立って問題の解決が図られるべきだというのが一点です。
 それから第二に、戦争につながるような制裁ではなく、あくまでも平和的話し合いによって問題を解決すべきだというのが二つ目であります。また、その際、北朝鮮の代表が繰り返し、我々は核兵器を持っていないし、将来も持つつもりがないというこの国際的言明も重視されなければならないのも当然だと思います。
 この点で、私は政府のとっている態度について幾つか問題点をお聞きしたい。
 第一は、政府は盛んに平和的解決、こういうことをおっしゃる。そこで私聞きたいのですが、あなた方の姿勢というのは、あくまでも平和的解決を貫くという立場ですか。それとも、事と次第によっては北朝鮮に対する制裁も選択肢の一つとしてあり得るという立場ですか。はっきりお答えください、総理。

羽田内閣総理大臣 この問題について、一斉に軍縮をという話でございますけれども、私どもとしましては、やはり核保有国、これがいつまでも核を持っていてよろしい、あるいはふやしてよろしいなんということを申しているのじゃないので、やはりこれは国連の場その他でも軍縮を慫慂していくこと、将来に向かってはやはり廃絶まで行くことが重要であろうというふうに思っております。
 それから、対話について、これはどこまでも本当に平和的な解決なのかというお話でありますけれども、私どもはやはり対話によって粘り強い話し合いをしてほしい、これはアメリカに対してもあるいはそのほかの国に対しても申し上げてきたことであり、また、中国には、まさに一番の友人として彼らに語りかけてもらいたいということも実は申し上げてきているわけなんです。
 ただ、私たちはそのときにもう一つ考えなければならぬことは、そのためにも、例えば日本は原子力のいろいろな施設、発電所なんか持っていますよね。こういったものに対してIAEAの保障措置というものがきちんととられているわけです。
 ですから、やはり北朝鮮の場合にも、核をつくらないんだと、つくってないんだよ、持ってないんだよという言葉だけじゃなくて、実際にそういう疑惑があるとするならば、それを堂々と見せてもらいたい。そうすればもう何の疑惑もなくなって、そのときには韓国でも日本でも、朝鮮民主主義人民共和国のこれからの民生の向上、このためにでも働くことができるわけですから、私どもは徹底して対話で、やはり平和の中に話し合いをつけていきたいというのが本当の気持ちであることを申し上げます。

志位委員 そうすると、制裁というのは選択肢に入らないというふうに理解してよろしいですか。一言で。

羽田内閣総理大臣 これは一言と言われましても難しいのですけれども、いずれにしましても、これは彼らがいつまでも国際社会に対し理解されないということになりますと、国際社会としては対応しないと、その間にもし万が一つくられるということになったら、これは大変なことでありますから。ですから、やはり保障措置をきちんと受けてもらうように、国際社会に胸を開いてもらいたい、心を開いてもらいたいというのが私の偽らない気持ちであります。

志位委員 制裁が選択肢の一つかということについて、これははっきりお答えにならないのですね。
 それから、先ほど核保有国の核はいつまでも持ち続けていいという立場じゃないというふうにおっしゃいましたけれども、いいですか、アメリカの側は一九九四年の国防報告の中で、核兵器というのは永続的な現実だと、将来にわたってなくなる見込みはないんだとはっきり言っていますよ。将来にわたってアメリカは核兵器を保有し続けるんだという、一方でこれは現実としてあるんですからね。この現実に対してきちんと物を言わないで、そして核防条約の無期限延長に賛成するということになれば、これは核保有の永続化を認めることになるということは明らかだということは一言言っておきたいと思うのです。
 私、それじゃちょっとお聞きしたいのですけれども、先ほどの制裁云々の問題について、これは私が仮定で聞いているんじゃないんですね。あなたも同席された二月十一日の日米首脳会談、ここで細川前首相が、国連安保理で経済制裁が決まれば日本としてなし得る限りの対応をする、はっきり言明しているのですよ。二月十一日というのは、国連で全然もう制裁なんという議論のない段階ですよ、もちろん。もう二月に、三カ月前から制裁は選択肢の一つだということをはっきり言明されているわけですね。羽田さんもクリストファーさんと一緒に同席されていたと思うのですね、衛星中継でも映っておりましたから、私も見ましたけれどもね。
 この発言は御存じだと思うのですが、これは結局、平和的解決と口では言うけれども、実際には選択肢として制裁もあるよということをアメリカに対しては約束しているということじゃないですか。

羽田内閣総理大臣 これは私どもは、そのときに細川総理がお話しになっていることは、やはり粘り強く対話を続けてくださいということをしつこくしつこく実は言われているわけですよ。そして、そういう中にあって、もし万が一ということは、要するにいつまでもこのまま保障措置というものが受け入れられないとしたら、もしそのときに開発されてしまったら一体どうするのでしょうか。そういったときには一体どうするんだということに対して、我々としては憲法の許される中において対応いたしましょう、我が国としても責めをひとつ負いますよということを言っていることです。
 それから、一つだからこれはお許しいただきたいんだけれども、きょう日本政府代表として広島の会議に外務政務次官が出ておりますけれども、核拡散防止条約は無期限延長されるべきだが、同時に、核兵器保有国が軍縮に一層努力する重要性を指摘したい、また、全面核実験禁止に向けた多国間の交渉の早期妥結に我々としても貢献するということを主張したことを、ちょっとあれでございますが、述べさせていただきます。

志位委員 もう一つあなた方が制裁という言葉を使われた場所があるのですよ。これは四月二十二日のペリー国防長官と当時の羽田外務大臣の会談ですね。この場でも同じやりとりがされていて、羽田さん、この中で、北朝鮮が態度を変更しなかった場合、国連安保理で段階的に制裁を決定することもやむを得ない、その際、日本は憲法の範囲内で責任ある対応をとる考えだ。やはりこの制裁という言葉を口にされているのですね。
 私、この問題をずっと見てまいりまして、非常に危険に思うことがある。それはアメリカとのこの二回の会談で、制裁という言葉をあなた方は使っているのですよ。日米首脳会談、羽田・ペリー会談、この二つの会談で、アメリカに対しては、場合によっては経済制裁、これが必要だということを言っておるんですが、日本の国会に来ると、まあともかく平和的解決でということをおっしゃる。これは非常に、何というんですか、アメリカには約束したことが日本でちゃんと語れないのかという矛盾を本当に感じますよ。
 ですから、私も、これは平和的な解決、これはもう何よりなんだけれども、平和的解決が大事なときに、国連で議論もされていないときに、もう二月の段階から経済制裁という言葉をそれこそ口に出す。ペリーさんが来ればまた経済制裁だということを言う。こういう政府の姿勢が本当に平和解決を望んでいる姿勢なんだろうか。しかも、日本の国会ではこのことを聞かれてもなかなか答えないんだけれども、アメリカの政府にだけ言うというのは、これはまじめな姿勢なんだろうかと、こう言わざるを得ないわけですね。
 それから、二つ目の問題、その問題に関連しますから、いいですか。私、国連の決定なしにアメリカなどが独自の行動を決めた場合に、日本が連携と協力をすることがあり得るのかどうかという点、この点をお聞きしたいのですね。
 これは、羽田総理の所信表明演説を読みますと、三つの選択肢が書いてありますね。一つは対話による解決、あなたが今強調されていることなんだ。私たちも、すべてこれでやるべきだという立場です。それから二つ目は、国連の方針への対応。そして三つ目の選択肢としてこう言っているんですよ。また、憲法のもとで緊急の事態に備えるとともに、日米及び日韓の各国間で緊密に連携し、協調して対応する。これは総理、北朝鮮問題で仮に国連の方針がなくてもアメリカが協力を求めてきたときにはそれに協力するという意味合いの文章ですか。あなたが言われたことですから、お答えください。

羽田内閣総理大臣 第一段目の問題につきましては、仮にもしそこまでに対話が閉ざされてしまってできない場合に、仮にそういうことが国連等で決定された場合には、日本は憲法に許される範囲内において対応いたしますということは、私は国会でも申し上げております。これは別に何もアメリカの人に申し上げているということではありません。
 それから、第二段目の問題につきましては、これが本当に一体どうなっていくのかということについて、これはまだ今仮定のあれでございますけれども、我々としては今お話があったそういったところと十分な連絡をとりながら適切な対応をするということであります。
 ただ、今問題は、朝鮮民主主義人民共和国の中にありましても査察等が進められておるということでありまして、私たちはそういう中で本当に国際社会に理解される対応をとってくれることを望んでおるということであります。

志位委員 質問に答えていないんですね。私は、この部分、あなたの所信表明のこの部分が、国連の方針なしにアメリカが協力を求めてきたときに日本が協力するという意味合いなのか、国連の枠内のことなのか、枠外も含むのか、この二つに一つ、はっきりお答えいただきたいということなんです。

羽田内閣総理大臣 今まさにそのことについての具体的なことを申し上げるときではないということを、これは申し上げざるを得ません。

志位委員 自分で言われたことを具体的には言えないということに、こうなっているわけですけれども、あなたの私が紹介した所信表明のこのくだりは、与党の確認文書の中に同じくだりが出てくるのですよ。そっくり同じです、ほとんど文章まで。この確認文書をつくった人たちは、このくだりの意味をはっきり語っているんですよ。
 例えば、小沢新生党代表幹事、市川公明党書記長、このお二人が四月二十一日の与党代表者会議で発言されたということは報道されておりますが、この二人はこう言っている。このくだりは、中国が拒否権などを行使するなどして決議ができないまま有事になったらどうするかということに対応する議論だ、アメリカが経済制裁をやろうと言ってきたときに、中国と相談するのでは信用を失う。これが二人の説明ですよ。
 それからもう一つ、これは公明党市川書記長の五月十五日の民放テレビでの発言でありますが、この部分は、中国が拒否権を発動するとか、あるいは中国の国連における違う態度によって国連の決議ができなかった、あるいは決議が非常に不明確なものになった、そういう場合にアメリカと韓国が一定の何らかの対応をしようとした場合、日本はどうするのか、この場合、私たちは日韓、日米、緊密な連絡の上、協調して対応するという原則を確認事項の中でうたっている、当然これは、いいですか、国連の枠外の事態、こう言っているんですよ。
 だから、あなたが何と言おうと、与党の確認文書をつくったシナリオライター、このシナリオライターの皆さんは、はっきりこれは疑問の余地なく、この部分は国連の枠外の活動だ、国連の方針がないもとでアメリカが協力を求めてきたときにどうするか、中国が拒否権を発動して決議が上がらない、このときでも対応できなきゃならぬということで盛り込んだ文章なんだということを、つくった本人が言っているんですよ。そうすると、そういうことになるじゃないですか。違うんですか。

羽田内閣総理大臣 これは、基本的には、今まだそういった問題について、例えば北がどういう行動をしているということではない。まさに今、対話の中で、しかもIAEAの査察団が行って今まさにその調査というものをやっている段階であります。非常にデリケートなときです。ですから、そういったことについて今私は議論したくない。
 ただ、私どもは、国連が決定したときには、あくまでも日本という国は憲法というものに基づきながら対応をするということであります。

志位委員 議論したくないと言うけれども、あなたが所信表明で言った言葉の意味を聞いているわけですよ。あなたが言った言葉なんですよ、「また、」というのは。だから、それは国連の枠外なのか枠内なのか、はっきり答えてください。羽田内閣総理大臣 それにつきましては、日本というのは、いずれにしてもアメリカと日本というのは当然これは日米安全保障条約、あるいは韓国と米国とも関係を持っておるという事態、こういったのが北東アジアの中にあるんだということを、これを私は訴えておるものであって、今の、何ですか、半島の問題についての問題ではなかろうというふうに思っております

志位委員 半島の問題ではなかろうなんていう、そういうごまかしを言ってもらっちゃ困る。はっきり北朝鮮に対する対応の問題で、三つ目の選択肢で「また、」と言っているんですよ。あなたの所信表明の演説じゃないですか。一般論として日米間の協力が必要だとかなんとかという話じゃないですよ、これは。あなたの中で、北朝鮮への対応のことを言っているでしょう。そうでしょう。はっきり答えてください、もう一回。だめですよ、そんな。

羽田内閣総理大臣 これはまさに今申し上げました、いずれにせよ、我が国は、国連の方針が決定された場合には、これに従うものとする。また、日本国憲法のもとで緊急事態に備えるとともに、日米及び日韓の各国間で緊密に連携し、協調して対応するということでありまして、私どもとしましては、もし万が一、残念ですけれども、そういう難しい事態になったときには、この地域の安全のために我が国としてでき得る憲法の範囲内において対応するということであります。

志位委員 いいですか、万が一つて、こっちが仮定形で言っているんじゃないですよ。あなたが言った言葉の意味を聞いているんだから。
 それを、いいですか、はっきり答えてください。国連の枠内なのか枠外なのかと私の問いです。答えられないですか、これ。答えられないとすると、これまた重大なんだけれども。はっきり答えてください。もう一回だけ聞きます。

羽田内閣総理大臣 ここでわざわざ説明しておりますけれども、日本国憲法のもとで緊急の事態に備えるということでありまして、ですから、国連そのものの決定とは、これは別の次元の問題であろうというふうに私は理解いたします。
 それから、我々としては、当然政府としてこれは進めていきます。それは、政党の中にはいろんな議論があります。そして一つの方向というものを示すことがあります。しかし、我々はその事態というものを政府として、内閣としてやはり直視しながら進んでいくということであって、これは政党の合意そのまんまが全部実行されるというものではないということもあわせて申し上げておきます。

志位委員 国連の外もあるのだという答弁をされたので、これはなかなか非常に重要な答弁だと思うのですよ。
 結局、あなた方は三つシナリオがあるのですよ。平和解決ということを言いながら、ちゃんと制裁ということをアメリカに約束してくる。そして、三つ目に、国連で決定がなくてもアメリカとの共同の対応もあるのだということを言われたというのは、非常にこれは重大だと思うのですね。私、アメリカが今制裁の名でやろうとしていることは生易しいものではないということを一つ申し上げたい。
 これは、きょう持ってきたのは、ペリー国防長官が三月十五日にUSAツデーという中で言っていることですけれども、この中で、経済制裁を超える選択は軍事選択である、我々の軍事指導者は戦争になれば恐らく勝てるだろう、しかしその場合は非常に重大な損害と数十万人に上る死傷者が出るだろう、ここまで言っているのですね。これはペリー国防長官の発言ですよ。
 ですから、アメリカはそこまでシナリオを持っている。あなたはこういうことを知った上でこういう確認事項を結ばれ、そして所信表明をやられたかどうか私は知りませんが、いいですか、アメリカが、自分の方の持っている核はこれは未来永劫持ち続ける、これを当然視しながら、ほかの国にちょっとでも核開発の疑惑があると一方的にこれを認定したら、一方的に戦争をやってもいいのだ、最後は軍事的選択もあり得るのだということになったら、私は、これは国際社会に無法を持ち込むことになると思う。それに、あなた方が確認事項あるいは所信表明の中で、緊密な連携、協力ということをうたわれたのは非常に危険な方向だというふうに思います。
 それで、第三に私聞きたいのは、有事立法の問題です。
 その中で、今、有事立法、あるいは緊急立法と言いかえてもいるようでありますが、この話が出てまいります。かつて、七八年当時あるいは八〇年代の二回の中間報告、こういうものを読みますと、なかなかこの内容は重大であります。
 例えば、自衛隊が陣地をつくるために土地を収用して、その上にある工作物を撤去する、あるいは、食料品とか医薬品などを、強制的にそういう物資を徴発する、あるいは、医師や看護婦などの徴用、国内での通信、電波規制、空域や海上での交通規制。要するに、日本国民の生活と権利をあらゆる面で軍の行動に従属させるという内容ですよ。
 加えて、きょう聞きませんけれども、いろいろ閣僚の中からは、日本海で米軍が行動したときには駆けつけていって給油をやる、物資の補給をやる、そのための新しい立法措置も必要だということを言った方もおられる。
 私、これは首相に伺いたいのですが、首相は、有事立法について答弁の中で、政府部内で検討を加えている、もし必要があるときは国民にも訴えていく、こういうふうに言われていますが、どんな検討を具体的にやっているのですか、具体的にお聞かせ願いたい。

羽田内閣総理大臣 この問題については、五十二年に有事立法というのは研究を始めておりますね。そして、五十六年、五十九年とたしか公表されております。そして、実際に戦場になったときの対応ということでいろいろな、自衛隊なんかがふだんですとなかなか、例えば橋なんかでも、橋梁の確かに重量の制限ですとかいろいろなものがありますわね。そういったものに対してどういう対応をするのかというようなことが研究されておるということであろうと思います。

志位委員 今研究中だ、こういう答弁だと思うのですが、私、熊谷官房長官が五月一日放映されたテレビ朝日の番組で、朝鮮半島で衝突が起こった場合の対応についてこうおっしゃっている。一月といわずコンセンサスさえあれば一気に危機管理体制をつくることができる、事が起これば何をすべきか十分にわかっている、そのための素材はきっちりとできている。こうなりますと、検討中なんてものじゃないのですよ。過去完了形なのですよ。もう基本的に有事立法の準備は完了しているということだ。
 しかもあなた、このテレビ番組の中でこう言っているのですよ。平時に、何も問題が起こっていないときにこれを出せば、今の日本の政治の土壌ですから大変な混乱が起こります。あなた方が検討しているものは平時に出せば日本の政治が大混乱する、そういうことですか。あなたが言っているのですから、はっきりお答えください。

熊谷国務大臣 これはテレビ放映で、まさに私は全体を見て文脈で受け取っていただきたいのですが、いわゆる有事立法について私はお話を申し上げていたのではございません。
 これは、いわゆる北朝鮮問題で、国連等でいろいろ議論になってくるということになったときに一体どうなるんだと。いや、それは今せっかく平和裏にやっているときに一々具体的に話を想定をしてお話をするのはいかがかと思うということを何度も繰り返しておるわけでございます。
 その上で、それでも重大事が起こったときにはどうなるのかということでございましたので、それは私はたしか三野委員にもお答えをしたわけでありますけれども、これは新聞等では誤って見出しをつくってありますが、実務レベルで検討をいたしておりますということを申し上げました。実務的準備完了、こういうふうに報道されているわけですが、そういう意味ではございませんで、実務レベルで準備はしておりますと。その意味は、各省庁レベルで情報交換をし、またそれぞれの省庁におきましてその事務所掌範囲内において検討を進めております、もし何事かあればそれに必要なことについて準備を開始する用意がある、こういうことを申し上げたくてお話を申し上げたわけでございます。

志位委員 これはあなた、私、起こしたやつがあるのですよ。私もテレビを見ていたのですけれども、余りひどいので、ちょっと。これは放映されたものですから、報道なんていうのじゃない。みんな見ているのですから、日本じゅうの人が。その中であなた、有事立法の問題じゃない、緊急立法の問題じゃないと言うけれども、危機管理体制を一気につくることができる、まさにそのことをずばり言っているのですよ。一月といわずコンセンサスがあれば一気にできると。しかも、それを今出したら、ここは私、あなたの話を聞いていてぞっとしたんだけれども、今出したら日本の政治に大混乱が起こる、平時に出したら。
 平時に出したら大混乱が起こるようなものを、あなた方は、じゃ有事になったら一気に通そうというわけですか。本当にそれは恐ろしい発想ですよ。いや、それはあなたそう言っているのですよ。言っている、これ。はっきり言っています。平時に何も問題が起こっていないときにこれを出せば、日本の政治の土壌ですから大混乱になる、これはとんでもない発言だよ。これは平時に大混乱が起こることなんですか。
 ですから、もうこれは時間がなくなりましたからこれ以上あなたと詰めていてもしようがないけれども、私、この議論を通じて痛感しましたのは、平和的解決、これは結構ですよ、口で言うのは。本当にそのとおりやっていただきたい。しかし、あなた方は平和的解決ということを言いながら、先ほど言ったように、アメリカとの会談では制裁ということを国連でも議論されていないときからもう約束してくる。それから、あなたの所信表明演説の中で、国連の方針がなくても対応するという部分を入れ込んでくる。そして、平時に出したら大混乱するようなシナリオをもう着々と進めている。つまり平和的解決、平和的解決と言いながら、実際やっていることはそういうことだということになれば、国民に隠れてこれをやるということで二重に危険なやり方だ。
 私たち日本共産党は、この北朝鮮問題を通じて、これを口実にして日本の憲法を踏み破るような、そういう危険な道に日本を引き込むやり方には絶対に反対して、平和を守るために闘っていきたいというふうに思います。
 最後に、当面の政局に関する首相の姿勢をお聞きしたい。
 今、さまざまな世論調査を見ましても、国民の六割、七割という方が速やかな解散・総選挙によって国民に信を問えということを求めております。なぜそういうふうに今国民が解散を求めているか、それはやはり理由があるのですよ。
 あなた方の政権が、国会の議席で衆議院の三分の一、参議院の四分の一しか占めていない、そういう少数与党政権である。これは、こういう原因があるからです。国民の支持でいえば、連立与党の方々みんな合わせて大体得票率三〇%ですから、三〇%しか得票がないのに政権を持っているという、この国民の支持と政権のいわばギャップですね、これをやはり国民は解散・総選挙によって埋めてほしい、もっと民意の反映した政権、民意の反映した国会をつくるべきだというのが国民の皆さんの声だと私は思います。
 ところが、あなた方の発言を聞いていますと、ともかく次の総選挙は小選挙区制でやらなければ絶対だめだ、小選挙区制以外の選挙は邪道だ、政治改革つぶしたということで、もう一切それ以外の選挙は受け付けないという態度をとっていらっしゃる。しかし、国民の皆さんは速やかな解散・総選挙を望んでいるのですよ。あなた方自身が引き起こしたこういう少数与党政権、こういう事態によってそういう事態が起こったのですね。
 ですから、私は総理に聞きたいのですけれども、小選挙区制でなければ絶対だめという、そういう態度をとるべきではない。区割りができるまでは国民の審判は絶対だめだ、区割りができるまでは、この制度が完成するまでは国民の審判は抑えつける、これはもう絶対拒否する、この態度ではだめだと思うのですが、いかがですか。

羽田内閣総理大臣 私は絶対だめだなんということを一度も言ったことはありませんよ。総理大臣の解散権というものは、いかなる状況があろうともこれを外すことはない。要するに、内閣の拒否権というのは解散以外にないわけですよ。ですから、それは一切私は外すことはありませんということを言っているぐらいでありまして、絶対ないなんということは言っておりません。
 しかし、今お話がありましたが、世論調査でお答えをするとなると、例えば旧選挙法のままで、中選挙区のままでやりなさいというのは二七%、そして新しい選挙制度でやりなさいというのが五九%、そういう世論というものがあるということも御理解をいただきたいと思っております。

志位委員 絶対にやらないという、あなたの方は、解散権は縛られないという話は、そういう状況になったらやむを得ずやることもあるという意味であって、方針としては絶対やるべきじゃないという方針をあなた方がおとりになっているから私は聞いたわけですね。
 それから、今世論調査の数字が出ましたけれども、最近の、これはフジテレビですか、フジテレビの世論調査が報道されていましたが、七割の方が、中選挙区制であっても、選挙制度を問わず速やかに国民の民意を問いなさいという世論調査の結果のあることも述べておきたいし、あなたの引かれた中でも三割の方は中選挙区制でも早く選挙をやってくれという声もあるということも私は指摘しておきたい。
 私、やはり今国民の支持と政権の間にギャップがある、三割の支持しかないのに政権があるというこのギャップは、本当に議会制民主主義にとって重大だと思うのですよ。ところが、これは小選挙区並立制の問題の原点に立ち戻って考えるならば、基本に立ち戻って考えるならば、そういう民意と政権のギャップを制度的につくり出すのが並立制ですよ。
 これは、私が十月にこの委員会で細川前総理と、大政党本位に民意をゆがめる、こういう特徴を持っているかという論戦をやったことがあるのですが、これをお認めになりましたよ。羽田さん御自身も、これは自民党の選挙制度調査会長だったときに出した「政治改革 一問一答」、私もよく読ませていただきましたけれども、この中で、小選挙区制というのは大政党にとって得票率以上の議席占有率を持つという特性がある。並立制になっても、それは緩和されたとしても、基本的に変わらない。
 そういう点で、並立制になれば三、四割の国民の支持しかなくても政権を握れる。六割ぐらいの議席を握れる。政権も握れる。つまり、今ある政権と国民の支持のギャップをまさに制度的に保障するのが小選挙区制ですよ。
 ですから私は、今国民は、国民の支持に基づいた政権を望んでいる。国民の多数の支持に基づいた政権を望んでいる。国民の多数の世論をきちんと反映した国会をつくることを望んでいる。そのときに、民意をゆがめる、大政党有利に民意をゆがめて少数政党を切り捨てるような、そういう制度のもとで選挙を行うべきでない。私どもは、中選挙区制のもとで、民意を反映し、少数意見もこれを尊重されるというこの制度のもとで選挙を行う、これが憲政の常道だということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)




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