細川内閣の「政治改革」−浮き彫りになった3つの基本問題

(第128国会 93年10月4日)


志位委員  私は、日本共産党を代表して、細川総理並びに関係閣僚に質問いたします。大変に制約された時間ですので、政治改革の幾つかの基本問題に絞って質問をいたします。
 第一は、金権腐敗政治と企業献金の問題についてであります。
 ゼネコン汚職を初めあらゆる政治腐敗事件の大もとに企業献金があるということは、今や国民共通の認識だと思います。そして、国民多数の要望もこの禁止を求めております。朝日新聞の九月二十日に出された世論調査を見ましても、廃止すべきが七六%、今後も続けてよいは一五%にすぎません。ところが、政府の姿勢を見ますと、この最大の問題で国民の要望に背を向けていると言わざるを得ません。政府案を見ましても、政党などへの企業献金は存続と。五年後見直しということが言われておりますが、一体どういう方向で見直しするのか、全く何の保証もない。結局、細川内閣もこの企業献金存続がという国民の批判が起こっているのは私は当然だと思います。
 そこで、まず首相の企業献金に対する根本的な考えをお聞きしたい。首相はそもそも企業献金を禁止すべきものあるいは有害なもの、こうみなしているのかどうか、この点どうでしょうか。

細川内閣総理大臣 よく言われておりますように、企業も政治活動をする自由がある、社会的な存在であるとよく言われてきたところでございますし、私もそう思っております。
 ただ、それを行う場合に節度のある態度をとらなければならない、これもまた当然のことであろうと思っておりますし、確かに企業献金の問題につきましては、今度の政府案におきまして、個人に対する企業・団体献金につきましては直ちに廃止をするということにしたわけでございますが、政党に対する献金は五年後に見直しをするということにいたしております。しかし、それはその程度のところに踏み込む、そこまで踏み込むだけでも、これは相当今までとは違った大幅な改革であるという認識があるわけでございまして、やはり現実的に、段階的にそのようなステップを踏んでいって、そして五年後に政党活動、政治活動というものがどのような状況になっているか、そういうことをよく見きわめた上で判断をすべきものであろうというふうに考えているところでございます。

志位委員  政治家個人への献金を禁止されたということ、禁止するということをおっしゃるのですが、企業献金が存続する限り、私は、腐敗はなくならない。政治家個人のものを禁止すれば、今度は政党単位の、あなたの言葉で言えば、政党本位の政治腐敗になるだけだと思うのですね。ヨーロッパを見ましても、例えばイタリアなどでも社会党やあるいはキリスト教民主党など政党の口座にわいろが振り込まれる。ですから、結局企業献金がなくならないと、そういう形で腐敗の単位が政治家から政党に移るだけだと、私はこう思うのですね。五年後の見直しということも、廃止ということは一切法案に述べられていないし、廃止の方向という言葉も消えてしまった。ですから、これは存続ではないかということは明瞭だと思うのですね。
 私は首相の企業献金に対する本質的な考えをお聞きしたわけで、この点についてははっきりお答えにならない。段階的にとか現実的にとかいう言葉はあるのですが、この点についてお答えにならないので、さらに設問を変えてもう少し具体的にお聞きしたい。
 財界の側からもこの企業献金に対する批判はさまざま起こっております。例えば日経連の常任理事の諸共慶氏は、大変本質的な批判をやっています。企業献金は効果が上がらなければ株主に対して背任行為になる、効果が上がればこれは贈賄になるという、こういうものですね。これはなかなか企業献金の本質をずばりついた批判だと思うのですが、首相はこういう批判論についてどう思われますか、お考えを聞かしてください。

細川内閣総理大臣 私は、この問題について一番肝心なことは、やはりその限度をどういうふうに定めるのか、それが節度のある献金であるのかどうか。先ほども申し上げましたように、企業も社会的な存在でございますし、小さな八百屋さんから小さな魚屋さんからいろいろございますし、個人と企業との選別というものは難しいという実態もあるのではないかと思っております。
 そういう中で、自分の懐から出すものと会社から出すものと、その辺の選別というのはなかなかやりにくいという実態もございましょうし、一概に企業献金が悪だと言って決めつけるのはいかがなものであろうかと。そういう小さな企業もあるわけでございますから、問題はその限度額、どのぐらいのところまでが社会的に国民の支持を得られるのかといったことと、それがどのような形で使われたのか、政治と金にまつわる問題の透明性というものがどのように確保されるのかということが一番のポイントであろう、そのように思っているところでございます。

志位委員 結局、一概に悪とは決めつけられない、透明性あるいは限度、節度、これがあれば容認されるのではないか、そういうお考えに聞こえたんです。
 先ほど私、諸共慶さんのお言葉を紹介したのですが、これは実は首相自身もそういう認識を示されているんですよ。お忘れかもわからないけれども、ある週刊誌で細川さんと江田さん、科学技術庁長官が対談されている。去年の五月三十日の週刊現代ですね。これは記事じゃなくて対談ですから、お二人責任持たれた対談だと思うのですが、その中で企業献金の問題が話題になり、こういうふうにお二人述べられている。「細川 はっきりいえば、背任行為でしょ。」 「江田 そうでなければ贈賄。結局、どっちかの性格をもっちゃうんですよね。」と、こう言ってお二人意気投合しているじゃありませんか。
 つまり、企業がお金を出す、お金を出すこと自体が本質的な意味で贈賄か背任になる、そういう本質的な、あなたは先ほど一概に悪とは言えないと言うけれども、法律上は今禁止されていないものの、事実上の社会悪だ、背任行為という社会的な犯罪だ、こうまでおっしゃっている。そうなると、これはきっぱり禁止すべきだという結論になりませんか。いかがですか。

細川内閣総理大臣 それは今も申しましたように、やはり節度の問題だというふうに私は思っております。その対談で話しておりますことも、江田さんのおっしゃったことも恐らくそうだろうと思いますが、今まで政治を眺めてきた中で、今までの政治の中で実際に行われてきた政治献金というもののあり方について、これは大変度を超したものが多過ぎたのではないか、そういうところからさまざまな事件が起こってきた、今日起こっているような問題というものが国民の政治不信というものを引き起こしてきた、そういうことについて、これは節度のある姿に改めていくべきではないか、そういう趣旨で申し上げたところでございます。

志位委員 これは明らかに節度の問題ではなくて、企業献金の本質的な性格をあなたはそう言っているわけですから、首相になる前におっしゃっていたことにぜひ責任を持っていただきたいと思うんですよね。
 私、もう一つ質問したいのは、あなたは、企業から政治家個人への献金禁止だ、このことを盛んに言いますけれども、私は、たとえ政党に対するものであっても、企業献金は政治をゆがめる、この本質には変わりない、こういうふうに考えております。
 それはさまざまな無数の例が証明しておりますが、私きょうここに持ってまいりましたのは、大手ゼネコン二十社の自民党への政治献金と公共事業の受注の伸び率との対比の表です。日本の公共事業というのは、諸外国に比べても、総理も御指摘のように、住宅とか下水道とか公園とか、生活基盤のものが大変おくれている、大型プロジェクト、大手ゼネコンに偏重している、こういう批判があるわけですが、やはりその根底には大手ゼネコンからの献金攻勢がある。
 この青い棒グラフは大手ゼネコンからの献金額ですが、大体八八年から九〇年に急増しております。それに符牒を合わせるように、この青い折れ線は大手建設会社の公共事業の受注額ですが、大体二倍ぐらいに膨らんでいる。これはもちろん裏の献金は出ておりませんから、これですべて尽くすということはできませんが、これを見ても、やはり大手建設会社の献金攻勢がそういうふうにゼネコン中心に政治をゆがめる有害な役割を果たしている。この赤い折れ線は中小企業への発注ですが、これが伸び悩んでいるのと対照的です。
 私は、これは一つの一例としてお話ししたのですが、首相にお聞きしたいのは、たとえ政党へのものであっても、企業が政治にお金を出す、そうすれば必ずこういう形で、これがどうかというこの具体的な認識は結構ですから、企業がお金を出せば必ず大企業本位に政治がゆがむ、こういう御認識をお持ちになりませんか。

細川内閣総理大臣 企業献金と一言で申しましても、おっしゃったような大企業ばかりではございませんでしょうし、小さな企業で私などもいただいているところはございますし、そうした意味で、先ほども申し上げましたように、一概に企業献金が悪だといって決めつけてしまうのはいかがなものであろうか。それは背任とか横領とかといったように受け取られかねないようなそうした多額のものを政治家に渡す、そういうことは問題であろうというふうに私は思っております。
 それは、そういうものがなくなっていくような政治状況ができてくればそれは大変結構なことだと思いますが、冒頭にも申し上げましたように、一気にそこまで持っていくということは、これは難しい話でございましょうし、段階的に政治の環境というものがどういうふうに整っていくかということとあわせて検討していくということが現実的な方向ではないかということを申し上げているわけでございます。

志位委員 一概に悪と言えないということを繰り返されるわけですけれども、もう一つ、じゃ、首相の過去の言明について私問いただしたいのですが、あなたが編さんした「日本新党 責任ある変革」という本の中で、企業献金の問題についていろいろ述べておられます。その中で、生活者対生産者、生活者の視点と生産者の視点の対立ということを言った上で、こういう一節がある。経団連を中心として、産業界から年間百六十億円程度が自動的に集金できる自民党は、当然ながら生産者側に身を置いて政策立案を行う傾向になることは自明の理だと。あなたは、こういうことを言うと、多額だからと言うかもわかりませんけれども、やはりこの文脈の論点というのは、産業界、つまり財界からのお金をもらう政党は、当然ながら生産者側、財界側、これに身を置くことはもう自明の理なんだと。これも企業献金の一つの、あなた、本質論ですよ。そういう本質を持つんだと。たとえ
政党に対するものであっても、企業献金を出す限り政治がそういう方向にゆがめられる。あなたの言う生活者中心の政治をやる保証がない。そういうことを事実上おっしゃっているわけですから、やはりこれは、そういう存在として認めている以上、これは廃止することも自明の理になるのじゃありませんか。いかがですか。これも節度ですか。

細川内閣総理大臣 そういうことでございますから、今度の政治改革法案におきましても、限度額について、また透明性の問題について、あるいはまた罰則の問題について、政治資金規正法等々でそのようなことを書いているところでございまして、その法案が通ることによって大幅に私は改善をされるものであるというふうに思っております。

志位委員 限度額は結局一億円で変わりませんよ、一社当たり。それから、透明性という点では、政党に対するものはこれまでの一万円から五万円に逆に不透明になるわけですから、やはりこれは本当に通用しない。私、かつて首相が、いろいろな場でありますけれども、事実上企業献金を有害なものと認められる、背任行為とまで認められる発言をしていた。ところが、やはり首相になるとそのことに責任をお持ちにならない。それではあなたの言う「責任ある変革」というのは一体何なのかということにもなるわけですから、ぜひ、一番の国民の要望ですから、企業献金の完全禁止、これに前向きに取り組むことを強く要望して、次の質問に入ります。
 第二の問題は、小選挙区比例代表並立制の問題についてであります。
我が国の憲法が述べているように、国会は国権の最高機関でありますし、唯一の立法府です。したがって、この選挙制度のよしあしをはかる最大の基準は、国民の民意が議席に正しく反映する、これが最大の基準だと私どもは考えています。その点で、中選挙区制のもとでの国会決議に基づく定数の抜本是正をまず行うこと、将来的には比例代表制を私たちは提唱しております。ところが、この小選挙区並立制というのは、民意の正しい反映という大原則に照らして、それに逆行する大問題をはらんでいると言わざるを得ません。
 もう一枚パネルを持ってまいりましたが、これはマスコミ各社が行っている並立制が導入された場合の試算であります。試算ですから一つの傾向でありまして、もちろんいろいろな政治的組み合わせによっては変化もあるでしょう。しかし、一つの並立制の本質がよくあらわれております。
 この左側は、各党、連立与党が個別に戦って泊民党が第一党になった場合。その場合には自民党が、この前の総選挙で得票率三六%でありまして、現行制度では議席占有率が四三%ですが、どの試算でも大体六割程度の議席を得ることができます。
 右側は、これは連立与党が一本化して第一党になった場合の試算ですが、これも得票率が四八%、この前の総選挙ですね、そのときに議席占有率四七%、それが並立制が導入されますと大体やっぱり六割近い議席を得ることができる。
 私が言いたいのは、どちらの場合になっても共通しているのは、三割台、四割台の得票率しかなくても議席を過半数以上、大体六割程度占めることができるという試算が出ていることであります。そこで、私、まず総理に質問したいのですが、首相は、この並立制という制度が、第一党が得票率以上の議席を得ることができる、逆に中小の政党は得票率以下の議席しか得ることができない、こういう特徴を持った制度だということを、まず事実の問題として、これはいいか悪いかは別として、事実の問題としてお認めになりますか、どうですか、端的にお答えください。

細川内閣総理大臣 私はそのようには認識をいたしておりません。
 このたび政府が出しました並立制は、今までも国会あるいはまた審議会等々でさまざまな御議論があって、その御議論の中でも、並立制というものが、数の違いなどはございますが、一番結局落ちつきどころとして妥当なものではないかということで出てきているような経過も踏まえて、今回も最善のものとして政府案として出させていただいたということでございます。
 小選挙区によって民意の集約を図っていく、そしてまた比例制によって多様な民意の反映を図っていく、集約と反映ということが相まって、相補う形で実現をされていく。そういう意味で、私は極めて現実的な、まずまず妥当な案ではないかというふうに思っているところでございます。

志位委員 そういうふうに認識してないというふうに言われたのですが、小選挙区制のイロハなんですね。得票率以上に第一党が議席を獲得するというのは、これは小選挙区制の、何というのですか、本当にイロハに属する問題ですよ。これは、例えば、私ここに持ってきたのは自民党の政治改革本部選挙制度調査会が出した「政治改革一問一答」、このときの会長は羽田副総理ですね、今の。それを見ましても、そんなのは常識的なこととして書いてあります。「得票率に比べて議席占有率が高くなることは小選挙区制の特性。」だと。これは小選挙区制の特性なんですよ。それに比例代表が加わっても、比例代表は得票と議席が同じく出てくるわけですから、この得票率以上に議席が出るという、これは若干緩和されるかもしれないけれども、変わらないのです。これも本当にイロハの問題ですよ。
 あなた、それを認識してないでお出しになったとしたら、小選挙区制を知らないでこれを出したということになる。これはもう本当にそういうふうに言わざるを得ないんですが、得票率以上に第一党が議席をとるという、これをお認めになりませんか、それでも。

細川内閣総理大臣 それは、半分が比例代表制ということでございますから、それは大幅に緩和をされる、多少どころではなくて大幅に緩和をされるというふうに私は認識をしております。

志位委員 大幅かどうかというのはまた別としても、緩和されるというからにはやはりそういう、もともとゆがめる、この制度が。第一党が得票率以上に議席を得るということを、その程度の違いはあってもお認めになりますね。いいですね、これは。小選挙区の基本ですよ、これは。

細川内閣総理大臣 いや、それは小選挙区だけであればそのようなこともあるだろう、それはそうでございます。したがって、今度の選挙制度改革では両方、並立制という形で出させていただいているゆえんはそこにあるわけでございまして、小選挙区だけならばおっしゃるようにいろいろ問題はあろう、それはそう思っております。
志位委員 じゃ、問題をここで整理したいのですが、小選挙区制では第一党が得票率以上に議席を得る、これは今お認めになった。比例代表がそれに加わっても、比例代表というのは議席と得票が同じく出る制度ですから、緩和されることがあっても、並立制全体としてはやはり第一党が得票率以上に議席を得るじゃないですか。そうでしょう。緩和されること、程度の問題はあったとしても、並立制全体としてそういうふうに民意をゆがめてしまう、これは明瞭じゃないですか。どうしてそんな簡単なことをお答えになれないのか、これは不思議なんですが、それを認めなかったら小選挙区制をやる意味がないでしょう、あなた方。

細川内閣総理大臣 それはもう先ほども申し上げましたように、多様な民意の反映をする比例制度というものを導入をしているわけでございますから、そこで今おっしゃった多様な民意というものは吸い上げることが十分できるというふうに考えているということでございます。

志位委員 これはどうしてもお認めにならないので、これは非常に重大な問題なんですね。しかし、これはもう明瞭になったと思うのですよ。小選挙区制は少なくとも第一党に有利な制度だ、第一党が得票以上に議席をとる制度だというところまでお認めになったわけですから、これは並立制が、それが若干緩和されるにせよ、同じ性格を持つのは明瞭です。

 ではなぜ、私は首相にお聞きしたいのですが、そういう小選挙区制、あなたは少なくとも小選挙区制部分は第一党に有利な制度だということをお認めになったわけだが、なぜその小選挙区制を持ち込む必要があるのか。その理由として、民意の集約であるとか国民が政権を選択するためであるとか、そういうことをるる首相は述べられているわけですが、私ここで疑問なのは、どうして選挙制度を論ずるのに国民の民意の反映と政権の選択というこの二つの基準が要るのですか。私は一つで十分だと思う。
 国民の民意を正しく反映する選挙制度をつくる、これは唯一最大の基準であって、政権をつくる上でもその民意を反映した国会が土台であって、その土台の上に議院内閣制をつくる、それが国民主権の立場に立った政権のつくり方じゃないでしょうか。これはいかがでしょうか。

細川内閣総理大臣 それはもとより、民意の集約ということが一番基本的なことであろうと思いますが、しかし、小党が分立をして政局が不安定になるということも、これは国家の経営にとっていかがなものであろうか。それはやはり、そこのところは兼ね合いの問題であろうというふうに私は思っております。

志位委員 何か小党が分立すると非常にぐあいが悪いことになるというようなおっしゃり方ですが、そうすると連立内閣はどういうことになるのか。やはり国民の民意がそういう小党を必要とするんだったらそれを国会に映し出して、その上で政権をつくる、場合によっては連立政権をつくることもある、それでいいじゃないですか。小党が分立したら何で悪いんですか。なぜ小党が分立すると政権不安定になるのですか。これはおかしな議論ですよ、あなた方はそういう政権をおつくりになっている。どうですか。総理、答えてください、総理。

山花国務大臣 今御指摘の選挙制度のあり方につきましては、お話のようなテーマをかねてから国会で議論を続けてまいりました。その中で、御記憶のとおり、民意の集約、小選挙区制だけに重点を置いた自民党の実と、民意の反映を強調したさまざまな修正を加えた野党の案が、長い議論の中で前回国会あったことについては御記憶のとおりです。
 結局、いずれかの制度を重視するかということについて歩み寄りを図らなければならないということから、双方の制度の中をとって、二百五十、二百五十ということにしたのが今度の制度でございまして、御指摘のとおり、比例代表の部分につきましては、民意を反映する、こうした考え方が強く出ておりますし、一方、小選挙区の方につきましては、政権の選択、民意の集約ということが強く出ているわけでありますけれども、従来からいずれかの形の選挙制度がいいかということについては、世界すべての国においてそれぞれの国の選択によってきておりますけれども、今回は従来の議論の経過等を振り返りまして、政府提案といたしましては、そこでの妥協案として、二百五十、二百五十という案を提出した次第でございまして、お話のように、民意の反映だけですと全部比例代表ということ以外の結論は出てこないのではないかと思います。それだけではまとまらなかったというのがこれまでの経過ではなかったでしょうか。
 今回、政治改革を、選挙制度の問題だけではない、御主張のとおり、政治腐敗の問題も含めて全体一括して年内に成立させるという重大な責任を負った内閣として、それぞれが歩み寄れる案というものを提案したのが二百五十、二百五十の並立制であることについてどうぞ御理解いただきますようお願い申し上げる次第でございます。

志位委員 結局、今の担当大臣の答えは、まとまらなかったから折衷案をとったんだと、歩み寄っただけのことなんだと。あなた方、何の説明もしてないですよ。
 大体、山花さんそういうことをおっしゃるんだったら、私、聞くつもりなかったんだけれども、もう一回聞かなきゃならない。ことし四月の社会新報であなたは、「民主政治を根底から覆す小選挙区制を認めることはできません。並立制もその実質は小選挙区制ですから、これも認めることはできません。」こう言っているんですよ。
 これは数の問題じゃないって隣に座っている佐藤自治大臣も言っていますよ。言っている。五百の議席のうち五十ぐらいにまで小選挙区制が減ったら少しは考える必要があるかもしれないけれども、基本は数の問題じゃないのだと。あなたは政治改革特別委員会の議論の中で、小選挙区で第一党が圧倒的に有利、その上に比例代表でもさらに議席を上積みする、徹頭徹尾第一党が有利な制度だ、哲学のない制度だ、木に竹を接いたような制度だ、こう言ったじゃありませんか。ですから、これは本当に説明にならない。
 あなた方は、山花さん、この前の代表質問で我が党の松本議員がそれを質問したのに対して、政権交代のためには仕方がなかった、こういうような趣旨のことをおっしゃられたけれども、私、あなたは小選挙区並立制の制度の本質として民主主義を覆すということを述べていたわけですから、その認識は変わらないとしたら、あなた方の政権自体が民主主義を覆す政権になるのですよ。ですから、そういう本当にあいまいな、何の筋もないことであなた方はごまかしてこれを導入するということは本当に許されないというふうに思うのですね。
 私、もう一問聞きたいのですけれども、民意の集約が必要だ、政権の選択が必要だ、だから小選挙区制だというのがあなた方の議論だと思うのですが、私は、国会というのは国民の民意を正しく反映してこそその上に立つところの議院内閣制も立派なものになる。その国会が、小選挙区制が導入されて第一党有利にゆがめられ、民意を反映しなくなってしまったら、民意をゆがめられてしまったら、民意からかけ離れたら、その上によって立つところの議院内閣制もゆがんでしまう、私、こう思うのですよ。
 だから、本当に国民主権の立場の政権をつくる上でもこの小選挙区制は有害だ、このように思うのですが、今度は、じゃ、お隣に座っている佐藤自治大臣、どうですか。

佐藤国務大臣 ほぼもう山花政治改革担当相の答弁に尽きているわけでございますけれども、三年間、我々は、日本の政治の腐敗を取り除くために当時の自民党と、昨年は公明党と一緒に法案を出して、その議論をずっとしてきたわけであります。ずっとしてきたわけであります。そして、結局政治を動かすためには、腐敗を防止をするためには、政治資金の規制をしていくためには、選挙制度までさわらなきゃいかぬというのが政権をつくるときの、政権をつくる、そして政治を具体的にきれいにしていく、そのためには民意の反映 というだけの御意見もあるでしょう。しかし、一方では、小選挙区で、その地域で一人だけ代表を持った方がいいという民意の集約という御意見もございました。
 ここで何らかの具体的なものを出していかなければ、あなたの言っていることは百年河清を待つ、政治改革はちっとも進まないということになるわけで、それは国民の期待に反するものじゃないでしょうか。我々は百七時間議論をして、結局何も合意を見なかったわけでありますから、国民の期待にこたえるためには、新しいことでひとつ国民の皆さんの御期待にこたえるようにしていこうというのが今度の我々の提案でございます。

志位委員 結局、議論をして歩み寄ったということの一言だと思うのですけれども、中身の問題をおっしゃらない。私、百七時間という議事録を全部読んでみましたよ。それで、あなたはその中で随分立派なことをおっしゃっていらっしゃる。今の政権のあり方についてもこういうことを言っています。
 これは、二年前の方ですけれども、九一年九月十三日の政治改革特別委員会、並立制を批判して、「議院内閣制でありますから、議会の構成というものが国民の民意というものを正しく反映をしているという前提に立たなければ、議院内閣制の土台が崩れる」「議会制民主主義の土台であるところの議会が国民の民意に素直な格好にならないで、どうしてその上によって立つところの議院内閣制が立派なものになるでしょうか。その根本が私は違っていると思うのであります。」これはあなたの言葉ですよ。
 それから、五カ月前の九三年四月十五日の政治改革特別委員会のあなたの発言の中では、小選挙区制を批判してこうも言っている。「土台であるところの議院の議席というものが国民の民意と全くかけ離れたところからできた内閣であるならば、それは全く虚構の内閣になるわけであります。」本当、私は同感ですよ。
 あなた、認識が変わったと言うけれども、百七時間のところであなたの認識は一貫している。民意の反映こそすべてだ、第一義だ、一貫していますよ。認識が変わったのは選挙が終わって連立政権つくるときですよ。やはりそういうふうに言わざるを得ない。
 私は、結局、民意の反映ということが選挙制度で求められている基本だと考えます。のことと別個に小選挙区制を持ち込み、民意をゆがめるということは、結局、国民の少数の支持しかなくても、先ほどのパネルじゃありませんが、国民の三割台、四割台の支持しかなくても、国会で多数を握り、国会での首班指名の権利を得て政権をつくれる。まさに国民の少数の支持しかなくても政権を握り続けよう、私は、これがあなた方の言う民意の集約論、あるいは政権の選択論、その中身だと言わざるを得ません。
 今多くの国民の中で、結局、小選挙区制が導入されると、消費税の税率引き上げとか、あるいは憲法の改悪に道が開かれるのではないかという不安か強まっておりますが、私は、またこれは当然で、国民の多くの苦難を招くようなこの小選挙区並立制は断固として日本共産党は反対です。この撤回を求めて、最後の政党助成の問題に入りたいと思います。政党助成の問題での基本的な考え方は――いいですよ、あなたの答弁、もう時間がないですから。

佐藤国務大臣 せっかく私の議事録を読み上げていただきましたので、よく国民の皆さんにわかるように。最初の発言は、海部内閣のときに出ました小選挙区三百、比例代表百七十一のときの私の理解であります。二番目に出ましたのは、自民党さんの五百の完全小選挙区制の評価の話でございますから、ひとつそのことはお間違いのないようにお願いいたします。

志位委員 まあ何という、ちょっとみっともない言いわけですけれども、最初の部分は海部内閣の並立制の批判をやった部分ですよ。二つ目は、確かに単純小選挙区制の問題ですけれども、小選挙区制が結局民意とかけ離れたそういう虚構の内閣をつくる機能を持つということをあなたは言ったわけですから、これは弁明になりませんよ。
 政党助成の問題に進みたいと思うんですが、この今度の政党助成法の基本的な考え方というのは、国民一人当たりが全員三百三十五円という負担によって政党への助成金を賄うということにあります。そうしますと、一人一人の国民の側に立って考えますと、自分が支持していない政党に自分の税金が自動的に配分されることになる。例えば、自民党を支持していない方が出した税金も、その一部は自民党への配分になる。そういう中で、これでは、国民の立場に立ちますと、みずからの政治信条、これは踏みにじられる結果になるのではないか。
 憲法十九条には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」ということを明記しておりますが、政党助成はまさにこの憲法の大原則を踏みにじるものではありませんか。これは大事な問題ですから、首相にお伺いしたいと思います。

細川内閣総理大臣 また担当大臣から補足をしてお話をいただいたらと思いますが、私はそのようには考えておりません。民主主義の最低のコストというものを維持していくために、国民各位にまあコーヒー一杯分ぐらいと申しますか、三百三十五円のコストを負担をしていただく。それは、そのことによって政治と金にまつわるさまざまな問題が解決をしていくということであれば、これは私は日本の政治にとって大変意味のあることだというふうに受けとめているわけでございまして、そうした観点から、今回そのような政党助成に対する政府案というものを取りまとめさせていただいたということでございます。

山花国務大臣 今総理のお答えの中に問題点は尽きていると思いますけれども、今回私たちは四法を出したわけです。四法を出したということは、全体一体として政治改革を実現しなければならない、全体の改革の中でこの政党交付金、政党助成の関係についても御検討いただきたいと思いますし、その意味におきましては、まさにそうした全体の改革の中での民主主義のコストとして国民の皆さんに御負担をお願いする、こういう立場から国会の意思として決めていただくということを前提として考えていただければ、そのことが有権者の思想、信条を侵害するということにはならない、こういうように考える次第でございます。

志位委員 国民が政党に対して献金するということは、その党を支持するというその方の重要な意思表示に私はなると思うのですね。これは先ほど言いましたように、税金という形であっても、国民から見れば、国民の立場に立ってこれは考えなきゃいかぬ。国民の立場に立って考えれば、自分の出した税金が強制的に献金させられるというこの仕組みは、これはもう否定できないことだと思います。
 先ほど総理は、政治と金の問題、これできれいになると言いましたが、ヨーロッパの例を見ましても、この政党助成を導入したものの、イタリアなどでは政治腐敗の防止にもつながらない。結局ああいう事件も起こって、国民投票で政党一般への政党助成を廃止するという方向も出ておりますね。いろんなもう弊害が出ていますよ。単純にそうはならない。ましてや、企業献金を受け取ったまま、企業献金を存続したまま政党助成までもらおう、国民の大事な税金までもらおうというのは、これは本当に理がないと思うのです。
 私は、憲法上の大問題をお答えにならないので、もう一つ伺いたいのですが、民主主義のコストということを先ほど首相言われたが、総額四百十四億円、国民一人当たり三百三十五円、これはどこから出てきた数字ですか。最初、連立与党は六百億円、これが出て、国民の物すごい批判を浴びた、そうしたら四百十四億円になった。これは一体どこから出てきた数字ですか。

山花国務大臣 政党助成の金額につきましては、今御指摘のとおりの金額でありますけれども、計算の手法といたしましては、前回政府案の計算の手法というものに準拠をいたしました。今回は、平成元年から三年の間、新しい選挙制度、そして政治資金規正法の適用ということを前提にして、政党が負うべき支出、今回は政治活動についても選挙活動についても政党が中心に活動を行うということになりますので、個人のしたものについても政党が負担する場面というものが増大してまいります。
 そうした全体の計算をいたしますと、一年間の支出というものが一千二百四十四億円、これのほぼ三分の一助成ということにいたしまして、その三分の一助成の金額を国民頭割りした金額というものが三百三十五円という金額でございます。以上が算出をした提案の根拠でございます。

志位委員 大変奇妙なことになるのですね。結局、一九八九年から九一年の三年間にかかった政治資金の純支出額、この平均を三で割ったというのでしょう、一言で言えば。そういうことですよね。中選挙区制のもとでかかったお金、これを算定基準に置いている。しかも、この三年間というのは政治資金が膨大に膨れ上がった、この三年間を基礎に置いている。これは本当に奇妙な話になります。
 この前、国会では、首相は、この算定根拠はどこにあるかと聞かれて、選挙制度、政治資金制度の改革後における政党の所要額を推定し、その三分の一だとおっしゃたけれども、改革後じゃない、改革前の話ですよ。これは自治省からの資料ですけれども。
 結局、一番金のかかった時期の政治資金をこのまま続けるということを前提に置いて、その三分の一を国民に出せというのですから、こんな厚かましい話はない。こうなりますと、あなた方は、小選挙区並立制を導入すれば金のかからない政治になると言ったけれども、金のかからない政治にならないじゃないですか。これはどうですか、総理。これは改革後の推定じゃなくて、改革前の算定じゃないですか。どうですか。これはあなたの答弁にかかわる問題ですから、お答えください。

山花国務大臣 今、中選挙区制を前提として計算しているではないか、こういう御指摘がありましたけれども、これは実は前回の政府案のときにもそうだったわけでありまして、というのは、現実の政治の支出というものは、中選挙区制のもとでこれまで行われてきたということであるとするならば、当然直近の三年間を計算するということは、試算をする場合には当然の結論ではないでしょうか。したがって、中選挙区制といっても、直近の三年間の支出を平均したものでございます。
 それから、全体としては一体どうなんだということにつきましては、これは選挙制度が変わることによって、政党中心の活動、本部が地方の活動などについても責任を負うということであるとするならば、そうした全体の支出というものを純支出として計算することもこれまた当然必要な試算ではないかと思っているところでございまして、したがって、今回こうした試算をするにつきましての根拠としては一番適切な根拠を選んでいるのではないか、こういうように考えているところでございます。

志位委員 もう時間がなくなりましたから、最後に一言言いますが、結局過去の中選挙区制のもとでのお金のかかったのを前提にしているということをまた繰り返しただけですよ。この中には、例えば料亭代も入っている、ゴルフ代も入っている。この閣僚席にお座りの、名前は言いませんが、ある方の、例えば一晩、ここへ持ってきましたが、一九九一年一月四日、楠亭で二百三十二万二千百七十円、こんなお金も入っているんですよ、この試算の根拠の中に。ですから、そういうものを、こんな料亭代の三分の一を国民に出せという 試算をやっているんです、あなた方。
 私たちはこういう憲法に違反する政党助成には断固反対であります。日本共産党は、たとえこれが強行されても、そういう筋の通らないお金は受け取らない、受け取りを拒否するということを最後に申し述べまして、私の質問を終わるものであります




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