2012年10月5日(金)
「日本と中国、本当に尖閣諸島を領有しているのはどちらか」「日米安保条約との関係は」「政治的にどんなリスクがあるのか」―。日本共産党の志位和夫委員長は4日、日本外国特派員協会で「尖閣問題をいかに解決すべきか」をテーマに講演し、特派員らの熱心な質問にも時間ぎりぎりまで明快に答えました。
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冒頭、司会者から「この問題がナショナリスティックな政治勢力や国内政治の思惑によって左右されるなか、新鮮な見方を披露してくれると期待します」と紹介された志位氏。講演で尖閣諸島の日本の領有は、歴史的にも国際法上も正当であることを、先に発表した尖閣問題の「提言」にもとづいて詳述しました。
そのなかで、日本政府の対応の問題点を指摘。一つは、領有問題を事実上「棚上げ」にしたことと、もう一つは、一方で「領土問題は存在しない」という態度をとり続け、中国側に主張も反論もできない「自縄自縛(じじょうじばく)」に陥っていることです。
志位氏は領土に関わる紛争問題の存在を認め、冷静で理性的な外交交渉で解決を図ることこそが問題解決の唯一の道だと主張しました。
続けて、「提言」に関わって二つの問題を指摘しました。
第一は、中国側に反論できないという日本のだらしない外交態度の根本に、過去の侵略戦争に反省を欠いているという問題が横たわっていることです。
志位氏は、中国側が国連総会で、日清戦争で「釣魚島を盗み取った」などと日本を非難したにもかかわらず、日本側がこの歴史認識の根幹に関わる非難に対して反論をせずに終わったことに言及。「侵略戦争への反省がないため、反論ができないという弱点が深刻な形で現れています」と強調しました。
第二は、日中双方が、物理的対応や軍事的対応論を厳しく自制するということです。
志位氏は、梁光烈中国国防相がパネッタ米国防長官との会談で「一段の行動をとる権利を留保する」と述べたことにふれ、「軍事の責任者がこのような発言をするのは穏やかではない」と指摘。程永華中国大使との会談でも、緊張激化を呼び起こし、冷静な外交解決に逆行するとして、自制を求めたことを明らかにしました。
最後に志位氏は、物理的・軍事的対応の強化という道と、冷静な外交交渉による解決の道という「二つの道の選択が問われています」と指摘。後者の道こそ「日本が選択し、主導的に切り開くべき道です。日中が冷静な外交交渉を開始し、解決を図ることを願ってやみません」と強調しました。
講演を受けて、活発で熱心な質疑応答が交わされ、志位氏は一つひとつに丁寧に回答しました。
中国側が明の時代などの地図に尖閣諸島が記載されていると主張していることについての質問には、「中国側にはたくさんの記録はありますが、実効支配を証明する記録は一つもありません。日本の領有が正当なものであることは疑いないことです」と明快に答えました。
また日清戦争と領有を分けて考えられないのではないかとの質問には、講和条約=下関条約とそれにかかわる交渉記録などを詳しく調査したことを示し、「当時、中国が尖閣諸島を自国の領土だと認識していなかったことは明らかです」と指摘しました。
「尖閣諸島をめぐる問題が政治的にどのような影響とリスクを持っているのか」と問われた志位氏は、日米同盟強化論がでていることをあげ、「この問題を利用した軍事強化や憲法改定を許してはなりません。最悪の政治利用で、解決に何も寄与しません」と主張しました。
「民主党が外交で弱いからではないか」という質問に対して、志位氏は「この問題の根本の責任は自民党の歴代政権にあります。『領土問題は存在しない』といって日本の主張を海外に発信しない政策をとってきました。民主党が政権についたときに無批判に引き継いだことが、矛盾として噴き出しています」と答えました。