2012年4月27日(金)

“アメリカ・財界中心”断ち切ればどんな展望が開けるか

志位委員長の訴え(要旨)


 日本共産党の志位和夫委員長が21、22両日、静岡市と名古屋市でそれぞれおこなった演説「“アメリカ・財界中心”断ち切ればどんな展望が開けるか」の詳報を紹介します。


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(写真)演説する志位和夫委員長=21日、静岡市

 2009年の政権交代から2年半――。冒頭、志位氏は、環太平洋連携協定(TPP)参加や消費税10%への大増税に突き進む民主党政権について「いまや“自民党以上の自民党的政権”に落ちぶれた」と厳しく批判し、次のように語りかけました。

 志位 なぜこうなったのか。それは、民主党政権が、“アメリカいいなり・財界中心”という古い政治の「二つの害悪」に縛られ、そこから抜け出すことができなかったからです。「政治を変えてほしい」という国民の願いにこたえようとすれば、「二つの害悪」を断ち切る改革に踏み出す必要があります。そういうホンモノの改革を進めたら、どんな展望が開けるか。今日は、私たちの日本改革のビジョンをお話しします。

「原発ゼロの日本」への展望――“財界中心の政治”を断ち切ってこそ

 まず志位氏は、「“財界中心の政治”から転換するとどんな展望が開けるのか」について、原発再稼働と消費税大増税の二つの大問題にかかわって明らかにしました。

 原発の問題では、関西電力大飯(おおい)原発の再稼働をめぐって政府が決めた「安全新基準」を厳しく批判し、こう指摘しました。

 志位 だいたい、福島原発の事故原因の究明もできていない、いまなお16万人もの人々が避難生活を強いられ事故収束の見通しもない、原子力に対するまともな規制機関もない、事故が起きたときの住民避難計画もない、「ないない」づくしです。私は、国民を危険にさらす再稼働の押し付けをただちに中止することを要求します。「政治判断」というなら、「原発ゼロの日本」への政治決断こそおこなうべきです。想定震源域の真上にたち、「世界一危険」といわれる浜岡原発はただちに廃炉の決断をせよ――このことを一緒に求めていきましょう。

 政府の再稼働への暴走の背景には何があるのか。志位氏は、5月5日に北海道の泊原発が停止すれば「原発ゼロ」となり、そのまま電力需要のピークになる夏を過ぎれば原発なしでもやっていけることがばれてしまう――これを避けたいという政府の「よこしまな政治的思惑がある」と指摘するとともに、つぎのように続けました。

 志位 圧力をかけたのは誰でしょう。日本経団連です。経団連は、昨年11月に「エネルギー政策に関する第2次提言」を発表し、そのなかで原子力は、電源のなかで「基幹的役割を担ってきた」「再稼働が非常に重要」といっています。

 「基幹電源」という同じ言葉が、政府閣僚の口からも出てきました。枝野幸男経産相は福井県知事との会談で、「これまで基幹電源として電力供給を担ってきた原発を、今後も引き続き重要な電源として活用することが必要だ」と言いました。一時は、「脱原発依存」と言ってきた民主党政権ですが、ここには「原発=基幹電源」という財界の圧力に屈した惨めな姿があるではありませんか。

 これは、財界いいなりでは国民の命と安全は守れないことを示しているのではないでしょうか。“財界中心の政治”を断ち切ってこそ、「原発ゼロの日本」への展望が開けます。その願いを託せるのは日本共産党です。

消費税に頼らない道――「財界権益」に切り込む立場に立ってこそ

 つづいて、消費税大増税問題に話を進めた志位氏。国会論戦を通じて浮き彫りになった消費税大増税の「四つの害悪」――(1)暮らしと経済をどん底に突き落とす、(2)財政危機をさらに深刻にする、(3)「貧困と格差」に追い打ちをかける、(4)社会保障改悪との「一体改悪」――について、自身の国会論戦の体験もまじえて明らかにし、「消費税大増税の道は、国民にたいへんな苦難を強いるだけではない。暮らしも経済も財政も壊す先のない道です。消費税に頼らない別の道を真剣に探求する必要があります。日本共産党は、『社会保障充実、財政危機打開の提言』を明らかにしています」とのべました。

 志位氏は、(1)「社会保障の段階的充実」をムダ遣いの一掃と応能負担の原則にたった税制改革によって進める、(2)「国民の所得を増やす経済改革」――という二つの柱の改革を同時並行で進めるという、党の「提言」の特徴を詳しく説明し、つぎのようにのべました。

 志位 二つの柱の改革によって、10年後には年間で約40兆円の新たな財源が生まれ、このお金で、社会保障と暮らしを充実させ、財政危機打開も進めようというのが日本共産党の「提言」です。いま税収(国と地方)は年間で約70兆円から80兆円にまで落ちています。しかし、「提言」を実行すれば10年後には、税収が約1・5倍になります。それだけの力を日本経済は持っているのです。この力を引き出そうというのが日本共産党の「提言」です。“財界中心の政治”を断ち切れば、そういう展望が大きく開けてきます。

 「提言」は、各地の経済懇談会で、「財源が具体的で現実的。一つとして無理というところがない」(経済学者・山家=やんべ=悠紀夫氏)、「消費税増税に反対する根拠がわかりやすくまとまっている。経営者は必読だ。二大政党の劣化のなかで、第3の政党はどこにあるか。その位置にあるのが共産党だ」(日本商工連盟大阪地区代表世話人・小池俊二氏)など、専門家や保守の立場の人からも高い評価を得ています。

 志位 この「提言」は、山家さんが評価してくださったように、「一つとして無理というところがない」、同時に、こういう提案をできるのは日本共産党しかありません。財界・大企業の横暴とたたかう党ならではの提案だということを強調したいと思います。

 先日、BSテレビに出演する機会がありました。「提言」について話しますと、富裕層と大企業に応分の負担をという方針について、司会者が、「日本経団連がみたら目をむいて怒りそうですね」といいました。「たしかに財界は抵抗するでしょう」と答えました。

 大企業は、消費税を全て販売価格に転嫁できますから、1円も払っていません。それどころか輸出大企業には「輸出戻し税」といって、仕入れにかかった消費税を税務署が輸出業者に「返す」という仕組みがあり、場合によっては、消費税で逆に「もうかる」場合さえあります。財界にこれだけ甘い税金はありません。この「財界権益」に正面から切り込んでこそ展望が開けます。

 この「提言」は、党をつくって90年、企業・団体献金をびた一文受け取ってこなかった日本共産党ならではの提案なのです。消費税に頼らなくとも社会保障を充実し、財政危機を打開する別の道がある――ここに大いに確信をもって、消費税増税法案を廃案に追い込むためにがんばろうではありませんか。

NHKの世論調査――「日米同盟基軸」論を国民は乗り越えつつある

 つぎに志位氏は、「“アメリカいいなり政治”を断ち切ると、どんな展望が開けてくるか」について語りかけました。

 普天間基地問題、TPP問題という二つの熱い焦点について、日本共産党の立場を詳しく解明するとともに、つぎのように続けました。

 志位 沖縄の米軍基地問題でも、TPP問題でも、「こんなアメリカいいなりの政治でいいのか」ということが、問われています。それぞれで一致点にもとづく共同を大切にしながら、その根源にある日米安保条約の是非を国民的に問うべき時期に来ているということを、私は、訴えたいのです。

 興味深い世論調査があります。NHKがおこなった「日米安保のいま」(2011年)という世論調査です。「日米安保は役立っているか」という問いには、「役立っている」「どちらかといえば役立っている」の合計で72%という数字が出ています。

 ところが、「これからの安全保障体制(をどうするか)」という問いには、「日米同盟を基軸に、日本の安全を守る」と答えたのはわずか19%、「アジアの多くの国々との関係を軸に、国際的な安全保障体制を築いていく」とした人が55%、「外交によって安全を築いていく」とした人が12%で、合計67%にのぼっています。他の党は「日米同盟を基軸」と頭から思い込んでいますが、そんな考え方を国民は乗り越えつつある。そのことが、この世論調査にあらわれています。

安保条約をなくしたら、どういう展望が開けてくるか

 こう指摘した志位氏は、「安保条約をなくしたらどういう展望が開けるか。少なくとも三つのことがいえます」とのべました。

米軍基地の重圧から日本国民が一挙に解放される

 第一は、「米軍基地の重圧から日本国民が一挙に解放される」ということです。

 志位 安保条約のもとでは、普天間基地一つでも日米合意がないと動かせません。ところが、安保条約をなくすのは、条約の第10条にそくして、どちらか一方の国が通告すれば、1年後にはなくすことができるのです。日本国民の意思がまとまれば安保条約はなくせます。そうすれば日本国民は基地の重圧から一挙に解放されます。

 09年に嘉手納町にうかがったさい、当時の宮城町長から、「普天間基地が『世界一危険』というが、嘉手納基地も『世界一危険』です。安保条約の是非に関する新たな議論を巻き起こしてほしい」ということを言われました。たしかにアジア最大の巨大空軍基地を動かそうと思ったら、安保をなくすことが早道ではないかと実感しました。

 曲がりなりにも独立国に、半世紀以上にわたって、外国軍の基地が置かれ、しかも海兵隊と空母という海外への「殴りこみ」専門の部隊が置かれ、この状態を異常と感じない政治が異常です。

日本が戦争の震源地から、9条を生かした平和の発信地に変わる

 第二は、「日本が米国の戦争の震源地から憲法9条を生かした平和の発信地に変わる」ということです。

 志位 安保をなくせば、日本から「大軍縮の波」が起こります。4万から5万の兵力を持つ在日米軍がいなくなる。自衛隊の抜本的な軍縮にも踏み出すことができるでしょう。日本から率先して「大軍縮の波」を起こしたらどうなるか。中国や東南アジアの国々にたいしても、「ともに軍縮に進もう」と平和のイニシアチブをとることができるではありませんか。

 志位氏は、「それでは日本の安全保障をどうするのか」と問いかけ、「国民世論はその方向を示しています。さきに紹介したNHK世論調査に示されたように、『アジアの多くの国々との関係を軸に、国際的な安全保障体制を築いていく』――この方向で知恵と力をつくすことが大切です」と強調し、つぎのように続けました。

  志位 これは決して理想論ではなく、東南アジアに見習うべき実例があります。この地域には、かつて米国中心の軍事同盟――SEATO(東南アジア条約機構)がありました。東南アジアの一部の国は、アメリカの側に立ってベトナム侵略戦争に参戦しました。ベトナム戦争でのアメリカの敗北と撤退の後、軍事同盟によっては平和や安定は守れないとの反省からSEATOは解消されました。

 軍事同盟が解消されるもとで、東南アジアの国々はASEAN(東南アジア諸国連合)を発展させることに努力をそそぎました。これは、軍事同盟と違って、仮想敵を設けず、外部に開かれた平和の地域共同体です。紛争が起こっても戦争にしない――平和的・外交的解決に徹することが、ASEANの根本精神とされています。米国との関係は、対等・平等の友好関係がつくられています。中国とも友好関係が築かれ、南シナ海での領有をめぐる紛争があっても平和的・外交的に解決する「南シナ海行動宣言」がつくられ、さらに法的拘束力のある「行動規範」の合意にむけて交渉を続けるなど、紛争を拡大しない仕組みづくりにとりくんでいます。

 東南アジアでつくられている平和の地域共同体を、北東アジアにも広げようというのが私たちの提案です。北東アジアには、北朝鮮問題など難しい問題もあります。北朝鮮はいろいろな問題を抱えた国であり、国際社会の合意を無視した行動には厳しい批判が必要ですが、「この地域で絶対に戦争をやってはならない」というのは、どの国も共通の思いだと思います。それならば、どんな問題も平和的・外交的に解決するしかありません。困難はあっても、「6カ国協議の共同声明に立ち戻れ」という声をあげて、この枠組みのもとで、「非核の朝鮮半島」をつくり、さらにこの枠組みを、北東アジアの平和と安定の仕組みへと発展させるという努力が大事ではないでしょうか。憲法9条を生かした平和外交、道理にたった自主・自立の外交で、日本の安全保障をはかるというのが日本共産党の立場です。

 志位氏は、さらに、「安保条約をなくせば、世界的問題でも、平和のイニシアチブがとれるようになる」として、米国の「核の傘」から抜け出し、被爆国の政府として「核兵器のない世界」へのイニシアチブを発揮できるようになるとの展望を語りました。

日本の経済主権を確立するたしかな保障がつくられる

 第三は、「日米安保をなくせば、日本の経済主権を確立するたしかな保障がつくられる」ということです。

 志位氏は、「経済面でも、“アメリカいいなり政治”で、どれだけ日本経済がゆがめられてきたか」について、農産物の輸入自由化、「原発列島」にされた経緯、金融政策での従属、労働の規制緩和などについて言及。つぎのように続けました。

 志位 日米安保をなくせば、日本経済をあらゆる面でゆがめ、国民を苦しめてきた経済の面での“アメリカいいなり”を根本から断ち切ることができます。日本経済が生き生きとした自主的発展の道を進むことができるようになります。

 地球環境の問題、投機マネー規制の問題など、世界で問題になっている経済問題でも、日本がイニシアチブを発揮し、民主的な国際経済秩序をつくるうえでの貢献もできるでしょう。

 日米安保条約をなくせば、これだけの素晴らしい展望が開けてきます。アメリカとの関係も、日米安保条約に代えて日米友好条約を結ぼうというのが、私たちの方針です。自主独立と平和の新しい日本への道を、ご一緒に切り開いていこうではありませんか。

橋下「大阪維新の会」の正体――人権と民主主義守る共同を

 志位氏が最後に取り上げたのは、「二大政党」に国民がうんざりし、巨大メディアが「既成政党はみんなだめ」などとキャンペーンするもとで出現してきた、橋下・「大阪維新の会」の動きです。

 国政進出を狙う同会が出した「維新八策(レジュメ)」について、小泉「構造改革」をより極端にした競争至上主義、憲法9条改憲論、「日米同盟基軸」論など「手あかのついた古い政治が八つ並んでいるだけです」と指摘しました。

 同時に、「この潮流は、民主主義を窒息させる恐怖と独裁の政治、ファシズムにつながる異質の危険を持った流れだということを正面から捉える必要があります」とのべました。

 橋下市長が市の職員におこなった違憲・違法の「思想調査」について、「住民福祉の機関である市役所を、住民を監視する秘密警察的な機関にするもの」ときびしく批判。橋下氏が、大阪市でも成立を狙う「教育基本条例」や「職員基本条例」の問題点を明らかにし、「公務員は『すべての国民の奉仕者』です。『公僕』であるべき公務員を、橋下市長の『下僕』にかえてしまうことは許せません」と告発しました。

 さらに岸和田市の府立高校で、卒業式の「君が代斉唱」の際、教職員が歌っているかどうかを、校長が口元をチェックするという事件にも言及した志位氏。「無理やり歌わせるのは、その人の人格を丸ごと支配下におこうという独裁・恐怖政治以外の何物でもありません」と指弾したうえで、こう訴えました。

 志位 「維新の会」はこの恐ろしいやり方を、法律にして全国に広げると公言しています。日本共産党は、党をつくって90年、戦前の暗黒の時代でも、命がけで反戦平和と民主主義の旗を掲げ続けた政党として、民主主義破壊の反動的潮流の野望を打ち砕くために知恵と力を尽くす決意です。人権と民主主義を守るために、力を合わせましょう。

民主連合政府の樹立にむけた第一歩を踏み出す躍進を

 演説の最後に、志位氏はつぎのように訴えました。

 志位 お話ししてきたように、“アメリカいいなり”と“財界中心”という「二つの害悪」を断ち切る大改革を進めれば、日本のいまの行き詰まりを打開して、素晴らしい希望と展望が開けてきます。

 私たちは、来るべき総選挙で、そうした大改革を実行して、「国民が主人公」の新しい日本をつくる政府――民主連合政府の樹立に向けた第一歩を踏み出す躍進をかちとるために全力をつくします。どうか「政治を変えたい」というみなさんの願いを、ホンモノの改革の党――日本共産党に託してください。