2012年2月23日(木)
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志位和夫委員長は21日、党本部で第11回「綱領教室」の講義を行いました。綱領第4章「民主主義革命と民主連合政府」の3回目です。
民主主義革命を進める道すじについて志位さんは「根本にあるのは多数者革命の立場です」と、「古典教室」(第10回)で学んだ革命論を振り返り、「この立場に立って綱領は組み立てられています」と話して本論に入りました。
多数者革命について、「革命のためには、多数者が目標をあらかじめ理解しなければならない。『長い間の根気強い仕事』(エンゲルス)が必要です。多数者革命こそ新しい時代の革命の形態です」とのべました。
志位さんは、政治を民主的に変革するために共通の目標をもってたたかう組織である「統一戦線」について、五つの角度から解明しました。
第一は、「どういう勢力・階級が、統一戦線の基礎か」です。
綱領は、統一戦線を構成する諸階級・階層について、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生などの階層をあげています。国勢調査と法人企業統計をもとに、階級ごとの人口構成を明らかにしました。
労働者82・1%、農林漁業従事者3・2%、都市型自営業者9・6%。合わせると95%になります。資本金10億円以上の大企業の役員は6万人、0・1%だと指摘。これは、党が先に発表した「消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」の「富裕税」の対象者とも重なります。「文字通り、『私たちは99・9%』になります。この階級構成に、私たちが多数派を結集できる客観的な根拠があります」とのべました。
第二は、「政党の組み合わせ」ではなく、日本社会が求める民主的改革の目標から出発するということです。
綱領は、「独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人びとを結集した統一戦線」とのべています。政党の共同は統一戦線の大事な側面ですが、統一戦線全体にとっては部分だという位置づけです。「綱領では、政党の名前をあげて規定はいっさいしていません」。この説明にハッと顔をあげた受講生も。「政党には絶えず離合集散があります。一つの政党でも固定的ではありません。『政党の組み合わせ』でなく民主的改革の目標で統一戦線を発展させていくというのが61年綱領以来の立場です」と強調しました。
志位さんはここで、年表で統一戦線の探求の歴史に言及しました。
統一戦線は、レーニンの最後の時期の創造的探求の一つで、その後の一時期に、コミンテルンでの反ファシズム人民戦線の提起(1935年)と各国での実践がありましたが、ソ連の外交戦略に合わなくなると、スターリンによって、投げ捨てられるという歴史をたどりました。
日本では、戦後、1100万人を結集した民主主義擁護同盟の結成(1949年)という歴史があります。
61年綱領では、社会発展のあらゆる段階を統一戦線によってすすめるという立場を明記したと語りました。
その後の歴史は大きくいって二つの時期があります。第一の60年代から70年代の時期には、「安保共闘」、「革新自治体」、社会党との間で国政レベルでの革新統一戦線の合意などを記録しました。第二の時期は、1980年の「社公合意」以降です。社会党が右転落するもとで、「政党の組み合わせ」論でなく、民主的改革の目標でという、綱領の統一戦線政策が大きな生命力を発揮しました。
党は無党派との共同を提唱し、81年に「全国革新懇」が結成されます。政党として参加したのは日本共産党だけという勇気ある道でしたが、いまでは、構成員450万人、799の草の根の組織に発展し、保守も含めた広い共同の大きな流れをつくっています。
第三は、統一戦線の発展に向けた新たな動き、「一点共闘」の大きな広がりです。
志位さんは、2009年夏の「政権交代」以降の新しい特筆すべき動きとして、環太平洋連携協定(TPP)反対、原発ゼロ、米軍基地問題、独裁政治ストップなど、さまざまな分野で、政治的立場の違い、党派の垣根をこえ、「一点共闘」が大きな広がりをみせていることを、体験を交えて生きいきと紹介しました。消費税大増税反対でも、「提言」を発表後、共感が大きく広がりつつあります。
志位さんは、「一点共闘」の発展について、「これは部分的な一致点にもとづく共同ですが、従来の保守の人びとを含めて、文字通りの超党派的な共同が、さまざまな分野で広がるというのは、これまでにない新しい質をもった動きです」と強調しました。
「課題ごとの『一点共闘』は、統一戦線に向けた『萌芽』ともいえるものです。重層的に発展させるなかで、統一戦線をつくりあげていく新しい可能性に挑戦したい」と力を込めました。
第四は、一致点を大事にしながら、綱領が示す民主的改革の必要性を太く明らかにするという「二つの仕事」を統一的に追求するという問題です。
「どんな課題でも、根本的打開をはかろうとすれば、綱領が示した国政の民主的改革が必要となってきます」とのべました。
沖縄の基地問題では、嘉手納町の宮城篤実町長(当時)との会談のなかで、「地位協定をちょこちょこといじっても基地問題の解決にはならない。安保条約の是非に関する新たな議論を国会の中で巻き起こしてほしい」と要望されたことを紹介。
この点で、当面の要求実現と国政を変える「三つの目標」(くらし、平和、民主主義)での多数派結集を統一して活動している革新懇運動の果たす役割の大事さについて言及しました。
第五は、「強大な日本共産党の建設こそ、統一戦線の発展のための決定的条件」だということです。
綱領は「日本共産党が…強大な組織力をもって発展することは、統一戦線の発展のための決定的な条件となる」とのべています。「綱領で党建設について言及したのはこの1カ所だけです」と、多数者革命と統一戦線の決定的条件と位置づけられていることに深い意味があるとのべ、「『党勢拡大大運動』の成功のためにがんばりましょう」と呼びかけました。
つづいて、綱領の国会活動の位置づけ――国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めて政府をつくるなどの人民的議会主義について語りました。
志位さんは「国会外の運動と結びついて」とあることに注意を促しました。主権者としての国民の役割は、選挙でおしまいとはなりません。要求実現のために、国会内外のたたかいを結合することが大切です。「人民的議会主義」をかかげるわが党ならではの態度だとのべました。
その実例として、志位さんは、過去11年間の請願署名の受付数を紹介しました。日本共産党が受け付けた署名数は2億5千万人分。全政党の53・3%にあたると紹介すると、「ほーっ」という声があがりました。「請願数で議席が配分されるなら、国会で過半数の議席になりますね」と笑いを誘いました。
「日本共産党は『国民が主人公』を一貫した信条として活動してきた政党として、国会の多数を得て民主連合政府をつくるために奮闘する」という確固たる路線について、「戦略・戦術の次元ではなく、『国民が主人公』の日本にいたる道も『国民が主人公』で進むという『一貫した信条』が強調されていることは深い意味があります」とのべました。
綱領は、政府について、(1)「統一戦線の政府・民主連合政府」をつくることを目標とすること、(2)それにいたる過程では、「さしあたって一致できる目標の範囲」での統一戦線の形成とその上にたつ「統一戦線の政府」がありうることを規定しています。
志位さんは、「選挙管理内閣」「暫定政権」など、「さしあたっての一致できる目標での政府」を提唱してきた歴史をたどり、「こういう原則的で弾力的な構えを持っていれば、過渡的情勢が起こったときにも的確に対応ができます」と話しました。
講義は、民主連合政府の樹立への過程、政府が国の権力を握る問題に入りました。ここでは「支配勢力の妨害や抵抗をうちやぶる粘り強いたたかいが必要となります」。「古典教室」(第5回)で学んだ内容を復習しながら、経済的土台の変化は革命の条件となるが、革命の「決着をつける場」となるのは上部構造であり、古い社会にしがみつこうという勢力による政治や思想の舞台での激しい妨害や抵抗とのたたかいが必要になると強調。「この上部構造でのたたかいが、現代の日本では、とりわけ複雑かつ困難で、粘り強いたたかいが必要となります」とのべた志位さん。その一つとして、日本の巨大メディアの問題について、立ち入って解明しました。
まず、巨大メディアが国民に与える影響の大きさを、マルクス、エンゲルスが活動した19世紀の欧州と比べました。当時のイギリスでは、最大の新聞タイムズが5万5千部(人口の0・3%)。現代日本の日刊紙の発行部数は、人口の半分に迫る5100万部。「19世紀の欧州と比べて、革命の『決着をつける場』である『上部構造』がはるかに巨大になっている」と語りました。
さらに、志位さんは、日本の巨大メディアの異常さを、世界の他の国との比較で語りました。欧米では「クロスオーナーシップ」(異業種メディアの所有)が、相互チェック、報道の多様性がなくなるとして原則禁止されているのに、日本では、5大全国紙がテレビを系列下におき、新聞メディアと放送メディアの相互チェックが働かず、国民の意識に圧倒的な影響力をもっているとのべました。
「権力のチェック役」としてのメディアの役割という点ではどうか。アメリカのメディアには、多くの問題もあるが、ニューヨーク・タイムズがベトナム・トンキン湾事件が米軍部のねつ造であったことを示す国防総省の文書(ペンタゴン・ペーパー)を暴露したこと、ワシントン・ポストがニクソン陣営が民主党本部を盗聴したウオーターゲート事件を暴露したこと――ジャーナリズム史にのこる二つの金字塔があることを紹介。イギリスではイラク戦争報道で公共放送のBBCが批判的立場を貫いたこと、最近ではフランスのルモンドが人権宣言(1789年)を引用して富裕層への課税を求める社説を掲げたことをあげました。
これと比べて日本ではどうか。「個々のジャーナリストの奮闘はありますし、地方紙からは真実の声も聞こえてきますが、巨大メディアには『権力のチェック役』というジャーナリズム本来の仕事を投げ捨てたさまざまな問題があります」と指摘しました。
「決定的な転機となったのは、90年代の小選挙区制導入でした」と志位さん。当時、民放テレビの報道局長は、「共産党に公正な時間をあたえると、かえって公正でなくなる」とのべ、「非自民政権」に露骨な肩入れをおこないました。志位さんの初質問となった小選挙区制導入をめぐる国会論戦では、当時の細川首相が「民意をゆがめる」と認めた答弁を、新聞が一切無視したことを、実感を込めて語りました。
背景には、選挙制度審議会の27人の委員中11人がメディア関係者だったという実態があることを指摘。財界と一体に「二大政党づくり」「政権選択選挙」の大キャンペーンをすすめた「民間政治臨調」(1999年から「21世紀臨調」)でも、155人の運営委員中73人がメディア関係者となっていることをあげ、「権力のチェック」どころか「権力の暴走のしりたたき役」をしていると告発。「巨大メディアの権力との癒着、一体化は行き着くところまで行った」と批判しました。
こういう状況のもとで、いかにして「上部構造」で、国民の多数派を民主主義革命の側に結集するか。
志位さんは、「新しい探求と開拓が必要な分野です」として、各分野で国民運動を発展させ、メディアも無視しえない流れをつくることを強調するとともに、次のようにのべました。
「日本には他の国にはないすばらしい人民的メディアがあります。『しんぶん赤旗』です。一人ひとり読者を増やし、結びついていくことがどんなに大切か。この人民的メディアを大きくすることが多数者革命への道です」
革命は、政府の樹立では終わりません。政府は、国家の頭部にすぎないからです。実際の行政は膨大な官僚集団からなる行政機構が執行しています。「改造」や「つくりかえ」が必要になるというマルクス、エンゲルスの言葉を紹介し、日本での特権的高級官僚と財界、自衛隊とアメリカの深い結びつきを、具体的に指摘。「政府を樹立した後、革命を前進させる基礎となるのは、民主勢力の統一と国民的たたかいです」とのべました。
志位さんは最後に、民主主義革命の日本とアジア、世界にとっての歴史的意義に言及しました。
とくに綱領が、民主主義革命によって「日本国民がはじめて国の主人公となる」としていることの深い意味について、「たんに政治と社会の仕組みが変わるというだけでなく、国民自身が、さまざまな困難を乗り越えて、民主主義革命を自ら遂行することによって、主権者としての認識を前進させ、成長し、力量をつけていく。そういう意味でも主人公となる」と力説しました。
「21世紀におけるアジアと世界の情勢の発展にとっての重要な転換点となり、日本が世界とアジアの平和の発信地となります。壮大な展望を持ち、この課題に挑戦しよう」とよびかけ、講義をしめくくりました。