2011年4月1日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が31日、震災・原発事故問題で菅直人首相と行った会談の詳報は以下の通りです。
志位 大震災への対応で、この間、節々で総理への要請をおこなってきましたが、今日は、まとまった形での「提言」の第1次分ということで、お持ちしました。時間も限られていますので、いくつかの中心点にしぼってお話しいたします。
志位 第1点は、被災者の救援、原発事故の危機収束という二つの緊急の大問題にとりくむことです。これは政府とも協力しながら、何としても打開したいと思っています。それにかかわる要請項目を「提言」では提起しています。
原発事故については、私も、(福島県)南相馬市などに伺うと、現地の方々の一番の声として、「先の展望が見えない」ということがあるわけです。ですから、政府が、原発事故の収束にむけて、どういう戦略でのぞみ、どういう見通しを持っているかを、現段階で言える範囲で大まかでも国民に説明することは非常に大事ではないかと思います。ぜひそこを総理の肉声で話してほしい。
首相 被災者救援と原発(事故)収束(の提起)はまったくそのとおりであり、全力をあげて取り組んでいるので、いろいろとご指摘をいただきたいと思うところです。
原発事故については、たしかに(要請の)趣旨はわかりますが、現時点では残念ながら、いつごろまでに、こういうふうになるという見通しについて言える状況にないということです。なんとか(原子炉の)温度が上がらないように、あるいは放射性物質がこれ以上外にでないように、ギリギリ抑える努力を精いっぱいしている段階です。本格的な冷却機能を回復するという見通しが必ずしも立っていない状況です。アメリカ、フランス、IAEAなど、国際的な協力もあり、さらに廃炉にせざるをえない状況ですから、将来にわたっての対応というのも、できるだけ国際的にもオープンな透明性の高い形で対応していきたいと思います。
志位 第2点は、復興の問題です。私たちは、阪神・淡路大震災の経験をへて、「生活再建と地域社会の再建こそが復興の土台」という見地が大切だと考えています。とくに個人補償の抜本的拡充が必要です。現行の被災者生活支援法は、協力してつくったものですが、全壊でも300万円の支援にとどまっている。この大幅な引き上げが必要ではないか。ぜひ検討していただきたい。
それから復興の財源問題ですが、(来年度予算の)大規模補正が必要になってきますが、法人税減税と証券優遇税制の延長で2兆円になります。これには経済界からも「これはもういい」という声も起こっているわけで、中止という方向で検討してもらいたい。
それから、総理と(国会で)議論してきた大企業の内部留保の問題です。従来の国債とは別枠で、「震災復興国債」を発行して、これを大企業に引き受けることを要請することを提案したい。(内部留保を)こういう形で活用したらどうかという提案です。
首相 個人補償については、前の阪神・淡路大震災では協力しあってきたのですが、基本的には私どもももっと引き上げが必要だと思っています。同時に、今回の場合、住まいは高台を切り開いて土をいれて使うとか、そういう新しい道筋という観点も必要かと思う。
それから補正の財源ですが、法人税(減税)については見直しも含めて検討したい。証券税制(延長)も、検討の土俵にのせていきたいと思っています。法人税(減税)は、経団連のほうもやめてもらっていいといわれています。「震災復興国債」を大企業に(引き受けさせる)という提案については、研究させてもらいます。企業に義務づけるのができるのか、義務づけない場合に償還条件とかどうなるのか。初めての提案ですので、検討させていただきたい。
志位 第3点は、原子力行政、エネルギー政策の転換という問題です。「安全神話」と決別するということを提起していますが、とくに2点ほど申しあげたい。
一つは、昨年6月に政府が決めた「エネルギー基本計画」で、14基以上の原発を2030年までに新増設するという計画があるんですけれども、これは到底、国民の理解が得られないと思う。(提言では)中止を求めていますが、ぜひ検討を求めたい。
もう一つは、原子力の規制部門と推進部門の双方が、(推進部門である)経済産業省のなかにあるという問題です。原子力安全・保安院も、経済産業省のもとにある。そのことが今回の事故でも、いろいろな弊害をもたらしている。これはぜひ、(推進部門から)独立した規制部門を国際条約どおりにつくって、アメリカの原子力規制委員会(NRC)のような強力な権限とスタッフをもった規制部門を設立するということを検討していただきたい。
首相 原子力発電所の今後ですが、すでにはじまっていますが、落ち着いた段階で、いまある原発の総点検ももちろんです。同時に、今後の原子力の利用については、志位委員長がおっしゃったように、根本的に安全性について議論することが、国内的にも国際的にも必要ではないか。今回のことは、津波の高さが超えてきたときに、電源がおちて、回復しないという、理由からです。同時に、(原発が)1カ所にたくさんあるとか、使用済みの核燃料も10万本くらい敷地のなかにあって、最終処分地にもっていく状況がないという構造的な原子力制度の問題が、背景にあります。そういう構造的な問題も含めて、本格的な検討、検証をする必要がある。日本の原子力政策全般を考えないといけないと思っています。
そういうなかですから、いままでの計画(「エネルギー基本計画」)も含めて、再検討、再検証のなかで、ある意味、白紙というか、あらためてしっかり議論しなければならないだろうと思います。ご指摘の問題は、見直しを含め検討したい。
志位 (原子力の)規制部門と推進部門の分離の問題はどうですか。
首相 原子力安全委員会は、一応独立性のある機関となっているが、きちんとした独立した機能を果たしているのか。さらにいうと、よくいわれるように、「原子力村」というか、ある種、専門家のギルド的な雰囲気があって、はっきりとした第三者的な意見がはたしてとおっていたのかどうか。そういう意味では、制度問題としての独立性も、当然ながら、規制のチェックの社会的な在り方の議論が必要です。一応たてまえとしては、原子力安全委員会がその役を担っているはずなんですが。
志位 原子力安全委員会は、一応たてまえは独立した機関となっているのですが、権限がない。総理に対する勧告権はあっても、助言したり勧告したりはできても、実際的な権限がないんですね。結局、原子力安全・保安院が、規制機関ということになっているのですが、その保安院が経産省のもとにある。ここが大きな問題です。独立した機関が必要です。
首相 それも含めて、今回は、かなり重大な反省が必要です。いまのご指摘も十分に含めてのあり方の検討が必要だと思っています。
志位 今後、復興の問題もふくめて、これから第2次、第3次の形で、私たちは提言をさせていただきたいと思っています。
首相 こういう問題は、党を超えて、受け止められるものは、しっかり受け止めていきたい。
志位 今後も、こういう機会をつくっていただけたらと思います。
首相 時間をつくります。いろいろな話を聞かせてもらいたいと思います。