2010年9月27日(月)「しんぶん赤旗」

日本共産党第2回中央委員会総会

政治情勢と党建設・選挙方針について

志位委員長の幹部会報告


 幹部会を代表して、第2回中央委員会総会へのもう一つの報告――政治情勢と党建設・選挙方針についての報告をおこないます。


1、政治情勢の特徴と日本共産党の任務

 報告の第一の主題は、政治情勢の特徴と日本共産党の任務についてです。

いま日本の政治はどういう地点にあるのか

「二大政党づくり」が本格化した2003年以降の政治の流れのなかでとらえる

 いま日本の政治はどういう地点にあるのか。このことを、「二大政党づくり」の動きが本格化した2003年以降の政治の流れのなかでとらえてみます。

 1990年代後半の国政選挙での日本共産党の連続的な躍進に、体制的な危機感をつのらせた支配勢力は、本格的な反共攻勢を開始しました。2000年の総選挙での謀略的な反共大キャンペーンにつづいて、2003年に、財界主導で本格的に開始された「二大政党づくり」の動きは、支配勢力にとって“最強の反共体制”をつくりあげようというくわだてでした。それは、(1)同じ古い政治の土台のうえで、「二大政党」による政権交代をおこなう体制をつくりあげ、この体制のもとで悪政を競い合わせ、危機に陥った旧来の体制の延命をはかるとともに、(2)「二大政党」以外の政党は選択肢の外におくというキャンペーンによって日本共産党の存在と活動を日本の政治から締め出すことを目的に開始されました。2003年以降の7年間の政治過程を分析すると、いくつかの局面があります。

 第一の局面は、2003年に、財界主導で「二大政党づくり」が本格的に開始された時期です。自民党と民主党は、消費税増税、構造改革、憲法改定など同じ目標を掲げて、その実行力の競い合いを演じました。この年の11月の総選挙は「自民か、民主か」の「政権選択」の押し付けの空前のキャンペーンがおこなわれた最初の国政選挙となり、わが党は後退を余儀なくされました。

 この時期には、自民、民主による悪政の競い合いのもとで、暮らしと平和が大被害を受けました。とくに「構造改革」の名ですすめられた新自由主義の経済路線は、貧困と格差を劇的に拡大し、日本経済の歪(ゆが)みと矛盾を激しくするとともに、日本社会に深刻な荒廃をもたらしました。日本共産党は、自民、民主が競い合ってすすめた悪政に正面から対決し、暮らしと平和をまもり、政治の根本からの変革をもとめてたたかいました。

 第二の局面は、2007年の参院選から2009年の総選挙で民主党政権が成立するまでの時期です。自民党政治の衰退過程がすすみ、国民の激しい批判と怨嗟(えんさ)の声が抑えようもなく高まるもとで、この時期に民主党はいわゆる「対決型」選挙に転換しました。国民は、2009年総選挙で自公政権退場の審判をくだし、民主党政権が生まれました。

 2009年総選挙での国民の審判は、「過渡的な情勢」と特徴づけられる日本政治の「新しい時期」を開くものとなりました。すなわち、国民は、自民党政治には退場の審判をくだしましたが、それに代わる新しい政治とは何かという答えはまだ出してはいない、国民的探求の時期が本格的に始まりました。この時期に、日本共産党は、「建設的野党」の旗をかかげて奮闘しました。

 第三の局面は、2010年参議院選挙とその前後の時期です。民主党政権は、発足して数カ月のうちに、米国と財界という支配勢力の圧力に屈服し、米軍普天間基地問題、消費税増税問題など、肝心要の問題で、国民の期待と公約を裏切りました。民主党政権のこうした姿勢は、参議院選挙での国民のきびしい審判を受ける結果となりました。

 菅民主党政権は、米国と財界に忠誠を誓い、古い自民党政治の新しい執行者となり、自民党政権と何ら変わらない姿を明瞭(めいりょう)にしています。日本共産党は、民主党政権と正面から対決し、国民の切実な要求の実現のために力をつくすとともに、日本の政治と社会が陥った深い閉塞状況を打破する「国民が主人公」の新しい日本への改革の展望を明らかにしてたたかっています。

困難もあるが、相手の矛盾もあり、前進の展望も見える――変革者の党として奮闘を

 2003年以降の7年間の政治過程のなかで、いま日本の政治はどういう地点にあるのか。つぎの点がいえます。

 第一に、「二大政党づくり」の目的は、1994年に導入された小選挙区制と一体に、「二大政党」以外は選択肢の外におき国政から排除するというところにあります。このくわだてのもとで、国政選挙を「政権選択」選挙――「誰が政権の担い手になるか」の選挙一色にぬりつぶし、すぐに政権にかかわらない政党は初めから選択肢から除外するという支配勢力の一貫したキャンペーンが、衆院選のみならず参院選も含めて国政選挙で続いてきました。そして、そうした国政選挙が繰り返されてきたことが、国民の意識に大きな影響をあたえ、わが党が前進するうえでの圧力、障害となって働いています。今回の参議院選挙でも、こうした客観的情勢の困難さが、わが党の前進を阻む力となって作用しました。この困難をまだわが党は打ち破るにいたっていません。

 第二に、同時に強調したいのは、「二大政党づくり」が支配勢力の思惑通りには進まず、ほころびをみせていることです。2003年以降の6回の国政選挙の結果を見ると、自民党と民主党は、両者の議席数での変動はありましたが、比例得票率では合計して7割前後を占めるという状況が5回連続しました。しかし、今回の参議院選挙では、民主党、自民党ともに得票を大幅に減らし、合計の得票率は55%にまで落ち込みました。国民は「二大政党」全体に不信と批判の目を強めているのです。参院選では、みんなの党が支持をのばしましたが、極端な新自由主義、整合性のない無責任な政策、「政界再編の触媒」として自らの党の解体を大前提にしている政党では、国民の支持をいつまでもつなぎとめることはできないでしょう。参議院選挙で示された「自民党はだめ、民主党にも失望」という状態は、支配勢力にとって安定した体制の立て直しに成功した状態とは到底いえません。

 第三に、同じ政治の土俵のうえでの政権交代なるものが、いかに空疎なものであるかが、現実の政権交代をつうじて明らかになりつつあります。民主党菅政権は、普天間基地問題では「辺野古移設」、消費税増税でも「税率10%への増税」という、自民党とまったく「同じ道」にゆきつきました。これは、「二つの異常」――「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」に縛られているかぎり、「同じ道」にゆきつかざるをえないことを、事実をもって証明するものとなりました。米国・財界いいなりの「二つの異常」の土俵のうえでの政権交代では何も変わらない、行き詰まった政治から抜け出すにはこの土俵そのものを変えなければならない、それは日本共産党が示す日本改革の方針しかないことが、一連の政治過程をつうじて客観的に明らかとなっています。

 第四に、さらに強調したいのは、民主党政権の動向がどうなろうと、2009年総選挙で奔流のように示された「政治を変えたい」という国民の新しい政治への探求がなくなることはない、それは必ず発展せざるをえないということです。試行錯誤や曲折はあっても、国民は、その実体験をつうじて、「二つの異常」から抜け出し、「国民こそ主人公」の新しい政治に進む必要があるという方向に認識を発展させる必然性があります。わが党はこの大局的確信にたって、国民の認識の発展を後押しし、促進するために力をつくすものです。

 いま日本の政治がどこまで来ているかを大きな視野でとらえるならば、そこには困難もありますが、相手の矛盾もあり、前進の展望も見えてきます。困難に正面からたちむかうとともに、支配勢力の側が陥っている矛盾、情勢がはらんでいる前進への展望をつかみ、政治の変革者の党の本領を発揮して奮闘しようではありませんか。

衆院比例定数削減問題――議会制民主主義を守る共同のたたかいを

 民主党政権は、衆院比例定数削減をすすめるという方針を公然と掲げています。もともとこの動きの震源地は財界にあります。比例代表選挙をなくし、日本共産党を国会から一掃することで、「二大政党」を無理やりつくりあげようという、財界のファッショ的な計画として始まった動きにほかなりません。いま「二大政党づくり」の動きが、財界の思惑通りに進まなくなるもとで、情勢の反動的打開をはかるために、財界主導でこの議会制民主主義破壊の方針が強行される危険があることを直視しなければなりません。

 1994年に小選挙区・比例代表並立制が導入されたさい、その推進論者は、「小選挙区によって民意の集約を図っていく、比例制によって多様な民意の反映を図っていく、(民意の)集約と反映が相まって、健全な議会制民主主義が実現される」(細川元首相)などと主張しました。わが党は、「国民の民意が議席に正しく反映する、これが選挙制度の最大の基準だ」と主張し、「民意の集約」の名による小選挙区制導入にきびしく反対しましたが、いま問題となっている衆院比例定数削減は、かつての推進論者の側の弁明にてらしてもなりたたない民主主義破壊の暴挙そのものです。

 小選挙区制導入は、1994年1月28日におこなわれた細川護煕首相と、河野洋平自民党総裁との密室でのトップ会談で決められたものでしたが、いま、細川氏、河野氏という双方の当事者から、小選挙区制導入への反省や批判の声が起こっていることは重要です。わが党は、衆院比例定数削減反対で一致する、すべての政党、団体、個人に、日本の議会制民主主義を守るための共同のたたかいをおこなうことを、心からよびかけるものです。

 そしていま、国民の声を反映する民主的選挙制度とは何かを正面から議論すべきです。わが党は、小選挙区制を廃止し、比例代表など民意を反映する制度への改革を求めてたたかいます。さらに、もともと憲法違反の制度であり、政党政治を堕落させる元凶ともなっている政党助成金の撤廃を強く求めて奮闘します。

日本が直面する問題と綱領の生命力(1)――経済危機をどう打開するか

 つぎに「日本が直面する問題と綱領の生命力」というテーマで報告をすすめます。いま、日本が直面しているどんな問題をとっても、「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」という「二つの異常」をただし、「国民が主人公」の新しい日本をつくるという綱領の立場にたってこそ、国民の願いにかなう解決策を示すことができるし、閉塞状況を打ち破る展望を示すことができます。綱領の力が、こんなに鮮やかな情勢はありません。

 綱領といえば、民主党は、政権政党でありながら綱領がありません。よく、「民主党政権は日本をどういう国にしたいのか、古い政治をどう変えるのか、ビジョンが見えない」といわれますが、ビジョンを示す綱領そのものがないのです。この党が、たえず動揺を繰り返しながら、結局は、米国と財界という支配勢力に屈従し、忠誠を誓う道に行き着いた根本には、政治の現状を変える綱領をもっていないという大問題があります。

 いま日本が直面する問題とのかかわりで、わが党の綱領はどういう生命力をもっているか。四つの角度から報告します。

「景気回復」――実態は日本経済の歪みの拡大と再生産

 第一は、経済危機をどう打開するかという問題です。2008年秋のリーマン・ショックにはじまった世界経済危機は、「派遣切り」「下請け切り」など、日本の経済と社会、国民生活に重大な打撃をあたえています。それから2年、日本経済の現状をどうとらえるか。

 リーマン・ショック後、日本経済は急速に悪化し、その落ち込みは先進7カ国のなかで最も激しいものでしたが、2009年2月ごろを底にして、その後1年3カ月あまりは、鉱工業生産指数の動向等で見ると、生産が増えつづけました。しかし、それは日本経済の異常な歪みをいっそう深刻にする、つぎのような問題点をもっています。

 ――大企業は、自動車や電機など輸出関連企業を中心に、純利益を4兆円から7兆円に急増させ、内部留保を1年間で233兆円から244兆円にまで膨張させました。そのなかでも手元資金は52兆円となり、「空前のカネあまり」状態となっています。

 ――この大企業の「V字回復」は、非正規労働者の大量解雇、正規労働者の賃金・ボーナスカットや退職強要、下請け中小企業の一方的単価切り下げや発注打ち切りなど、経済危機の矛盾を労働者と中小企業に押し付けた結果にほかなりません。

 ――雇用情勢と賃金は低迷を続けています。完全失業率は5・2%と悪化したままであり、新卒者の就職難はきわめて深刻です。雇用者報酬は、鉱工業生産が最も落ち込んでいた2009年1〜3月期の水準にも到達せず、低く押し下げられたままです。

 このようにリーマン・ショック以降の2年間の「景気回復」なるものの実態は、従来型の大企業中心、“外需頼み”のものであり、雇用と家計、中小企業の回復は進まず、内需は引き続き低迷したままとなっています。大企業は利益を増やしても、内需が低迷し、新たな投資先がないため、内部留保、余剰資金だけが増大しています。

 こうして、この2年間の日本経済は、それ以前に顕著となっていた日本経済の異常な大企業中心主義の歪み――労働者と中小企業の犠牲のうえに一部の大企業だけが富をため込み、「国民が貧しくなる国」「経済成長が止まった国」となってしまった歪みを、拡大して再生産するものとなっています。

円高問題――緊急対策とともに、「円高体質」の歪みを根本からただす改革を

 急激な円高の進行が、日本経済と国民生活の危機に、追い打ちをかけています。日本で繰り返されている円高の問題点は、為替レートが購買力平価(その国で、その通貨で、どれだけの商品を買うことができるかという円の実力)から大きく乖離(かいり)して、高騰することにあります。購買力平価はOECD(経済協力開発機構)の2009年のデータによると1ドル=114円です。これが生活からみた日本の円の実力です。ところが為替レートは、この間、1ドル=82円〜85円台となっています。すなわち現在の為替レートは、円の実力に比べて3割の割高となっている。ここが問題です。

 円高は、すでに中小企業、下請け企業の経営を圧迫し、深刻な影響を及ぼしはじめています。大企業による「円高対応」を口実にした、労働者のリストラや賃下げ、下請け中小企業の単価切り下げ、発注打ち切りなど、深刻な事態が生まれています。円高は、輸出型産業だけでなく、「安い輸入品」の拡大という経路をつうじて、農業をはじめとした1次産業を含む内需型産業も圧迫しています。

 今回の急激な円高の直接的な国際的原因は、アメリカ経済の減速と先行き不安の高まりにくわえ、ユーロもギリシャなどの財政危機によって不安定になっているもとで、巨額の投機マネーが欧米から流出し、「相対的に安定」しているとされる円に流入していることからおこっているものです。

 同時に、円高危機を繰り返す大本には、日本経済の歪みがあります。すなわち、ごく少数の輸出大企業が、労働者と中小企業の犠牲のうえに、果てしないコスト削減を進め、突出した「国際競争力」を強め、外国市場への輸出をふやしてきたことが、「円高体質」をつくってきたという問題があります。

 いま輸出大企業は、「1円の円高で数百億円の損失」など、「円高危機」を声高に叫んでいます。しかし、円高がおしよせるたびに、資金力と競争力を背景にしたさまざまな防衛策を講ずるとともに、その矛盾を労働者と中小企業に転嫁することで、さらなる「国際競争力」を獲得してきたのが輸出大企業でした。財界・大企業が、円高にいっそうのコスト削減で対応し、円高のもとでも輸出をふやすという方針をとりつづけてきたために、円高が新たな円高を呼び、「円高体質」が慢性化するという悪循環をつくりだしてきました。

 また財界・大企業が、部品の海外からの購入をふやすとともに、生産拠点を海外に移転させることを、円高対応のもう一つの基本戦略としてきたことは、産業の空洞化を急速にすすめるものとなりました。

 以上を踏まえ、わが党は、円高から労働者の雇用、中小企業の経営を守る緊急対策をとるとともに、日本経済を“外需頼み”から家計・内需主導に改革し、「円高体質」を根本からあらためていくことを強く求めます。とくに輸出大企業がつくった日本経済の「円高体質」を是正するために、非正規雇用労働者の正社員化、最低賃金の抜本的引き上げ、長時間・過密労働の是正、下請けいじめの速やかな是正、大企業と中小企業との対等な取引ルールの確立など、労働者と中小企業の生活と経営を守る抜本的手だてを政治の責任でとることを、強く要求します。また、今回の円高を引き起こした直接的要因が、巨額の投機マネーにあることをふまえ、日本政府は、国際的な通貨取引課税の創設も含めて、国際的な為替投機規制の取り組みを開始するよう、世界各国に働きかけるべきです。

綱領の立場で経済危機打開の展望を語り、たたかいをひろげよう

 このように日本経済の危機も、いま問題となっている円高も、その根源には、「ルールなき資本主義」といわれる日本経済の異常な歪みがあります。この異常な歪みをただし、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる改革をすすめるという綱領の立場にたってこそ、行き詰まりを抜本的に打開する展望が開けます。

 この立場からわが党は、今年3月の経済懇談会で、日本経済の危機打開のための「五つの提言」を提案しました。私たちはこの「提言」で、多数の国民の犠牲のうえに、ごく一握りの大企業が富を独り占めにするシステムを改革しないと、日本経済の明日はないとして、大企業の過剰な内部留保と利益を、国民の暮らしに還元せよ、そのために各分野で暮らしを守る「ルールある経済社会」をつくろう、それこそが国民生活の危機を打開し、日本経済の健全な発展の道を開くという方策を打ち出しました。

 この方策は、今日いよいよ重要になっています。「提言」は、日本経済の長期にわたる低迷と危機を打開する「暮らし最優先の経済成長戦略」としての意義をもつとともに、円高危機をもたらす日本経済の歪みを是正する根本的な方策ともなっています。

 とりわけいま訴えたいのは、国民のたたかいによって、暮らしを守り、日本経済を立て直そうということです。参議院選挙で公約した各分野での切実な要求を掲げ、国民各層の運動とかたく連帯してたたかいを発展させることを、全党によびかけます。

 ――人間らしい雇用のルールを築くたたかいでは、非正規から正規への雇用転換を大きな柱にすえ、労働者派遣法を抜本改正すること、有期雇用契約の規制を強化すること、最低賃金の時給千円への引き上げをはかること、公契約法・公契約条例によって人間らしく働ける賃金を保障することは急務です。異常な長時間・過密労働を是正し、「過労死」を根絶し、不法、不当なリストラ――退職・転籍・遠隔地への転勤などの強要をやめさせましょう。

 ――中小企業を日本経済の「根幹」にふさわしく本格的に支援する政治への転換を求めます。下請け2法を厳正に執行するとともに改正・強化し、独占禁止法を強化するなど、大企業と中小企業との公正な取引を保障するルールをつくりましょう。中小企業憲章にもとづく本格的な振興をはかり、地方での中小企業振興条例づくりをすすめましょう。町工場の固定費補助の実現はひきつづき急務です。

 ――農林漁業を再生し、食料自給率の向上をはかることは、日本国民の前途がかかった大問題です。価格保障を中心に、所得補償を組み合わせ、生産コストをカバーする施策を強く求めてたたかいましょう。米価暴落を防ぐため、備蓄米の緊急買い上げなど、国の責任で価格と需給の安定をはかることは緊急の課題です。国境措置の維持・強化をはかり、日本農業を根底から破壊する日豪EPA(経済連携協定)、日米FTA(自由貿易協定)を阻止するためにたたかいましょう。

 ――社会保障の削減から本格的充実への政策転換を強く求めます。後期高齢者医療制度を速やかに撤廃し、年齢で差別する新たな制度への置き換えを許さないたたかいを、さらに発展させましょう。高すぎる医療費の窓口負担を引き下げ、国保料の値下げ、公的な介護制度の抜本的改善をはかりましょう。障害者自立支援法を廃止し、憲法と国連障害者権利条約にもとづく新たな法制度の確立をはかりましょう。子どもの医療費無料化を国の制度として創設するとともに、国の責任で認可保育所を増設して待機児童をなくし、公的保育の拡充をはかりましょう。

 国民のたたかいこそ、「ルールある経済社会」を築く最大の力です。日本共産党は、国民各層が自らの切実な要求を掲げ、それを合流させ、経済と暮らしの危機打開のための一大国民運動をおこすことを心からよびかけるものです。

「財界の儲けが第一」の菅民主党政権と対決し、政策転換をもとめる

 民主党政権は、この1年、日本経済の危機打開のために何をやってきたでしょうか。また何をやろうとしているでしょうか。

 リーマン・ショック後の2年間の日本経済が、大企業中心主義の歪みを拡大再生産する結果になっているのは、財界・大企業の身勝手な行動だけに責任があるわけではありません。この1年間の民主党政権の無為無策にもその重大な責任があります。

 民主党政権は、国民世論の圧力に押されて、ごくわずかの部分的改善をおこないましたが、肝心要の問題では公約への裏切りの連続でした。労働者派遣法の政府改正案は、「抜け道」だらけのザル法案になっています。最低賃金が全国平均で17円引き上げられたのは労働者のたたかいの反映ですが、平均時給730円は大幅引き上げとは程遠い水準です。大企業による下請けいじめにも有効な手だてをとらず、自公政権時代につくられた社会保障切り捨ての傷跡を治す仕事も、後期高齢者医療制度問題、医療費窓口負担の引き下げ問題に見られるように、多くを先送りにしています。日本経済の歪みをただす本格的な仕事に、まともにとりくんでこなかったというのが、民主党政権の1年間だったといわねばなりません。

 そして、いま菅民主党政権が掲げている政策の中心は、「新成長戦略」です。その中身は、法人税減税と大企業の「国際競争力」強化による「経済成長」、規制緩和と民営化による「雇用創出」、日本農業を破壊する日豪EPA、日米FTAの推進など、徹底して供給サイド(企業側)にたった大企業応援策が中心となっています。それは、「大企業を応援すれば、経済が良くなり、いずれは暮らしは良くなる」という自民党流の古い破たんした道とまったく「同じ道」であり、日本経団連の要求を丸ごと受け入れたものにほかなりません。

 「新成長戦略」の最大の目玉は法人税減税です。しかし、「空前のカネあまり」状態にある大企業に減税をしても、企業貯蓄(内部留保)にまわるだけで、設備投資や雇用など経済成長につながる使われ方はしないということは、広く指摘されていることです。日銀の白川総裁も、わが党議員の質問にたいして、「大企業の手元資金は今は非常に潤沢」、「この資金を使う場所がないことを、金融機関の経営者からも、企業の経営者からもしょっちゅう聞く」と答弁しました。

 破たんした古い道の焼き直ししか示せない。「国民の生活が第一」から「財界の儲(もう)けが第一」へ――これが菅民主党政権の姿です。わが党は、財界の軍門に完全に屈し、その代弁者となった民主党政権と対決し、大企業応援から暮らし最優先への政策転換を強く求めてたたかいぬくものです。

日本が直面する問題と綱領の生命力(2)――財政危機打開の道

党創立記念講演で提起した財政危機打開の道筋の中心点

 第二は、財政危機打開という問題です。党創立88周年記念講演では、国と地方で長期債務残高が862兆円、対GDP比で181%に達しているもとで、財政危機の打開は、国民の暮らしのあらゆる問題にかかわる大問題となっているとして、その打開の道筋を示しました。その中心点は以下の諸点にあります。

 ――財政危機をつくりだした根源は、1990年代につづけられた大型公共事業のバラマキと軍事費の膨張にあります。巨大開発の負の遺産の解決はひきつづく大問題であり、軍事費についても「日本の防衛」では説明のつかない数々の浪費をはじめ、ここに正面からの縮減のメスを入れることは、今日の重要な課題となっています。

 ――財政危機が拡大した原因は、政府が「財政危機宣言」をおこなった1995年以降の15年間の歴代政権の失政にあります。この時期に歴代政権は、「財政再建」を叫びながらことごとく失敗しました。その原因は、それまでにつくられた浪費の構造が温存されたことにくわえて、歴代政権の「三つの失政」――1997年の橋本内閣の消費税増税をはじめとする9兆円負担増、小泉内閣が「構造改革」の掛け声で社会保障をはじめ国民生活を徹底して痛めつける政治を強行したこと、行き過ぎた大企業・大金持ち減税が一貫して続けられたことにありました。

 ――財政危機打開の展望は、わが党が提唱している「暮らし最優先の経済成長戦略」を実行しながら、歳出の浪費と歳入の歪みに大胆なメスを入れる、この二つの柱を同時にすすめることにあります。それによって、借金の総額はすぐには減らなくても、借金残高を対GDP比、経済の規模との関係で抑え、減少させていくことが可能になり、財政危機打開の展望が開けてきます。

「二つの異常」を大本からただす立場をもつ党ならではの提起

 この提起の意義として、つぎの点を強調したいと思います。

 第一に、消費税増税や社会保障削減など国民の暮らしを犠牲にする「財政再建」では、結果として財政危機をいっそう深刻にしてしまうことを、事実をもって明らかにしたことです。このことは、財界や、民主党、自民党などがそろって唱えている「財政再建」=消費税増税という誤った議論への決定的な批判ともなります。

 第二に、財政危機拡大の原因として国民の目から覆い隠されているのは、この15年間に税収が大きく落ち込み、それが大企業・大金持ち減税によるものであるという事実です。それを財政危機拡大の原因として正面から位置づけたことで、大企業減税の有害さをこの面からも明らかにしました。15年間という単位で見ると、消費税以外の税収――法人税、所得税、相続税などの税収は、GDP比で4%程度、約21兆円も落ち込んでいます。逆にいえばこれは、日本経済の規模からみて、この程度の税収を確保することは可能だということになります。

 第三に、経済危機打開と財政危機打開は、一体的に取り組まれてこそ、はじめて解決の道が開けること、その最大のカギは大企業応援から「暮らし最優先」の立場への転換にあることを明らかにしたことです。これまでも、歴代政権は、「財政再建のために痛みにたえよ」(小泉政権)、「いまは財政より景気対策」(麻生政権)など、国民犠牲・大企業中心主義の枠内で、「景気対策か、財政再建か」の「不毛の選択」を繰り返しながら、結局、経済も財政も共倒れにしてきました。こうした議論にたいして、本格的な対案の土台となる考え方を提起したのです。

 この提起は、「二つの異常」を大本からただす改革をめざす綱領をもつ日本共産党ならではのものです。この提起は、財政危機の根源、財政危機拡大の原因を究明することで、解決の方向性を示したものです。これを政策的にさらに分かりやすい形で仕上げていくことは、中央としての今後の課題です。

この提起をおおいに生かし、消費税増税反対のたたかいの発展を

 この提起を、当面する消費税増税反対のたたかいに大いに生かすことを訴えます。参院選での国民の審判によって菅内閣の当初の増税スケジュールには大きな狂いが生じています。しかし、法人税減税を来年度にも実施するという動きが強まり、それを先行させながら、「与野党」での消費税増税議論を開始するという動きがおこっていることを強く警戒しなくてはなりません。

 このたたかいを発展させる大きなカギをにぎっているのが、「財政危機」との関係です。国民への訴えとして、たとえば、「消費税増税は、家計と消費に大打撃をあたえ、結局、財政危機をもっとひどくすることは歴史が証明ずみ」、「消費税増税でなく、大企業や大金持ちに負担能力に応じた負担を求め、落ち込んだ税収の回復をはかることこそ、最優先の課題」、「軍事費には『日本の防衛』とはまったく無関係の無駄遣いがたくさんある。消費税増税でなく、軍事費の無駄遣いを一掃して福祉にあてよう」など、この提起を縦横に生かして、消費税増税反対のたたかいを発展させようではありませんか。

日本が直面する問題と綱領の生命力(3)――米軍基地と安全保障の問題

沖縄の米軍基地問題――沖縄と本土の連帯したたたかいを大きく発展させよう

 第三は、米軍基地と安全保障の問題です。沖縄の米軍基地問題をどう解決するかは、日本政治が直面する大問題です。

 5月28日、民主党政権は、普天間基地の「辺野古移設」を決めた「日米合意」を結び、8月31日、新基地建設に関する日米専門家会合の報告書が発表され、辺野古の新基地の構想として「V字案」と「I字案」が併記されました。しかし、「V字だろうが、I字だろうが辺野古に新しい基地はいらない」というのが沖縄県民の圧倒的多数の声です。

 沖縄県民がどれだけその意思をくりかえし表明してきたか。今年に入って以降の動きをみても、1月24日の名護市長選挙の勝利、2月24日の県議会での「県内移設反対」の全会一致の決議の採択、4月25日の9万人が集った県民大会、7月9日の県議会での「辺野古移設」の「日米合意」見直しを求める決議の全会一致の採択、9月12日の名護市議選での新基地建設反対派の圧勝など、普天間基地の閉鎖・撤去、「県内移設」反対という沖縄県民の総意は、いよいよ強固でゆるぎないものとなっています。

 沖縄県民の総意をふみつけにした「日米合意」の実行は、もはや不可能です。「日米合意」を白紙撤回し、普天間基地の無条件撤去を求めて米側と本腰の交渉をすることこそ、解決の唯一の道だということを、わが党はかさねて強調するものです。

 問題は、「基地のない沖縄」を願う沖縄県民の総意を、いかにして日本国民全体がわがこととして支持し、総意にしていくかにあります。そのカギとなるのは、「海兵隊は日本の平和を守る抑止力」という、事実を歪曲(わいきょく)した合理化論を国民的規模で克服していくことにあります。いまこそ沖縄と本土が心をあわせて、連帯したたたかいを大きく発展させるときです。日本共産党はその先頭にたって奮闘する決意を表明するものです。

 11月に予定されている沖縄県知事選で、「県内移設」反対を貫き、「基地のない沖縄」をめざすイハ洋一候補の勝利をかちとることは、沖縄問題の解決のうえできわめて重要な意義をもつたたかいとなります。日本共産党は、イハ候補の勝利のための共同のたたかいの一翼を担って全力をつくすとともに、全国の支援を心からよびかけるものです。

「新防衛懇」報告書――軍拡と海外派兵の危険な道は許さない

 民主党政権のもとで、「自衛隊のあり方」も重大な転機をむかえようとしています。菅首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、8月末、報告書を提出しました。報告書の内容は、自民党政権時代にも打ち出し得なかった危険な内容が満載されたものとなっています。それは、日米軍事同盟とアメリカの核抑止力へのさらなる依存を強調するとともに、自衛隊にかかわる法制度と、自衛隊の装備・運用の両面で、きわめて危険な道に踏み込もうというものです。

 法制度の面では、集団的自衛権行使のための憲法解釈の見直し、「PKO参加五原則」の見直し、武器輸出三原則の全面見直し、海外派兵恒久法など、自衛隊が、米軍と共同して、海外での戦争に公然と参加できる法制的枠組みをつくろうとしています。

 自衛隊の装備・運用という面でも、日本防衛に限定するという建前だった「基盤的防衛力」構想さえ投げ捨て、「動的抑止」を目指すとして自衛隊が海外に素早く展開できる能力を持つようにするとしています。これは海外派兵を持続的に可能にする方向での自衛隊の装備と部隊運用の変質をはかろうというきわめて危険な方針です。

 菅首相は、この危険きわまる報告書を「しっかり検討していく」と言明しています。民主党政権が初めて発表した2010年版「防衛白書」でも、報告書を「参考」として「防衛計画の大綱」の策定作業を進めるとのべています。

 民主党政権が、この報告書の内容をどのように具体的政策に反映させるか、どのような「新防衛計画の大綱」を策定するかは、まだ明確ではありませんが、首相の諮問機関が、このような時代錯誤の危険きわまる「軍事力至上主義」にたった報告書を出したことはきわめて重大です。日本共産党は、憲法9条を擁護するとともに、憲法を蹂躙(じゅうりん)した軍拡と海外派兵の道を許さない、新たなたたかいの発展をよびかけるものです。

日米安保条約の是非そのものを大きく問う論陣とたたかいを

 米軍基地の問題でも、自衛隊のあり方の侵略的変質の問題でも、民主党政権が進めている自民党政権時代とまったく同じ「日米軍事同盟絶対」の道にたいして、日米安保条約の是非そのものを大きく問う論陣とたたかいが重要となっています。

 第一に、日米安保条約をなくしたら、どういう新しい日本が開かれるか、そのビジョンを大きく明らかにしていくことが大切です。

 安保廃棄は、米軍基地問題を抜本的に解決し、「基地のない沖縄と日本」を実現する道を開きます。安保廃棄によって、日本がアメリカの戦争に巻き込まれたり、動員されたりする危険が一掃され、日本の平和と安全の土台ははるかに強固なものとなります。安保廃棄は、日本を、世界とアジアにおける軍事的緊張の震源地から、憲法9条を生かして世界とアジアの平和に貢献する国に大きく変えることになるでしょう。

 安保廃棄によって、経済面でもアメリカによる不当な介入を許さず、金融・為替・貿易などあらゆる分野で自主性を確立する道が開かれます。

 米国との関係では、支配・従属に終止符を打ち、対等・平等の立場にもとづく日米友好条約を結び、これによって日米両国間、両国民間の真の友情の関係がつくられます。

 これらの独立日本への大改革は、日本国民の意思がまとまれば可能になります。条約第10条の手続き(アメリカ政府への通告)によって安保条約を廃棄するというのが、綱領の方針です。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の指導者を長く務めたマレーシアのマハティール元首相は、「しんぶん赤旗」のインタビューに応じ、「戦争という選択肢」自体が「時代遅れ・期限切れ」になっているとのべ、日本に米軍基地がなくても、日本が安全保障を図ることは「完全に可能」だと指摘し、逆に基地の軍事的な脅しは相互の軍事力増強を招きかねず、「平和を脅かす」ものだとのべました。

 大会決定が明らかにしたように、世界の大きな流れを見れば、多くの国ぐにが軍事同盟から抜け出し、ASEANに見られるように、外部に敵をもたない開かれた地域の平和共同体が各地に広がっています。21世紀に軍事同盟にしがみつくことがいかに時代の流れに逆行し、平和に有害であるかは、広く世界に目を向ければ明らかではありませんか。

 第二は、平和と安全のための緊急策にただちにとりくみながら、安保廃棄の国民的合意を形成する努力をはかることです。

 わが党は、日米軍事同盟の「他に類のない異常な特質」を、一つひとつただすたたかいを発展させる先頭にたって奮闘します。海兵隊の撤退、空母打撃群の母港返上を求めるたたかいを発展させます。普天間基地の「クリアゾーン」(利用禁止区域)問題、市街地上空でのNLP(夜間離着陸訓練)実施、自由勝手な低空飛行訓練問題など、アメリカ本国では禁止されていることが、日本では天下御免で横行しているという異常な実態をただし、米軍基地使用を少なくともアメリカ本国の基準以内に制限することは急務です。日米地位協定にみられる治外法権的特権の撤廃をはかることも焦眉(しょうび)の課題です。

 同時に、憲法9条を生かして、東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交のために力をつくします。そのためには、党創立88周年記念講演でのべた三つの視点が大切になります。第一は、「軍事には軍事」という軍事的緊張の拡大と悪循環は、いかなる形であれきびしくしりぞけ、紛争の平和的解決に徹することです。第二は、対話と信頼醸成、紛争の平和解決のための枠組みを発展させることです。「6カ国協議」の再開と成功、ASEAN地域フォーラム、東南アジア友好協力条約(TAC)を発展させることが重要です。第三は、日中両国、米中両国が経済関係、人的交流を深化させ、相互依存を深めているもとで、「軍事的脅威」をあおり立て、軍事力で対抗する思考から脱却することです。いま日本に求められているのは、「抑止力」などというきな臭い戦争手段ではなくて、東アジアに平和的環境をどうやってつくるかという外交戦略であり、それを実行する外交力であることを、重ねて強調したいと思います。

 将来の展望と、直面するたたかいの二つの角度からのべましたが、将来に日米安保廃棄をめざす政党でこそ、直面する問題でも確固とした打開策を示すことができます。普天間問題一つとっても、「県内移設」とは21世紀の先々にわたって米軍基地があることを当然視する立場にほかなりません。それがまともな独立国の姿といえるでしょうか。綱領が示す「基地のない日本」「安保廃棄の独立日本」をめざすという立場にたってこそ、この問題についても本当の打開の道筋が見えてくる。ここに大いに誇りと確信をもって奮闘しようではありませんか。

領土にかかわる紛争問題について――千島、竹島、尖閣問題

 日本には、いくつかの領土にかかわる紛争問題が存在します。領土にかかわる紛争問題については、歴史的事実と国際的道理にたった対応とともに、平和的話し合いによる解決が何よりも大切です。

 千島問題については、わが党は、綱領で「日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還をめざす」と明記しています。わが党は、ソ連が領土不拡大という戦後処理の大原則を破ったことを批判するとともに、サンフランシスコ平和条約での千島放棄条項をそのままにし、“南千島は千島ではないから返せ”という日本政府の立場は、国際的に通用しないことを明らかにしてきました。歴史的事実をふまえ、千島放棄条項を不動の前提とせず、国際的道理に立った本腰の交渉が求められています。

 韓国、北朝鮮との間で問題になっている竹島(韓国名では独島)について、わが党は、1977年に見解を発表し、そのなかで竹島の日本の領有権の主張には歴史的根拠があるとのべました。同時に、わが党はこの島が日本領土に編入された1905年は、日本が韓国を植民地にしていく過程であり、それらも考慮して韓国側と共同して歴史的検証をすべきであると主張しています。

 沖縄の尖閣諸島についていえば、わが党は、尖閣諸島が日本に帰属しているという見解を1972年に発表し、日本の領有には、歴史的にも国際法上も明確な根拠があることを明らかにしています。

 この間、尖閣諸島周辺で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、漁船船長が逮捕され、中国側が抗議する事件が発生しました。尖閣諸島付近の日本の領海で、外国漁船の不法な操業を海上保安庁が取り締まるのは当然のことです。

 検察は、逮捕した船長を「処分保留」として釈放しましたが、逮捕の被疑事実、釈放にいたる一連の経過について、国民に納得のいく説明を強く求めます。

 このような事件を繰り返さないためには、日本政府が、尖閣諸島の領有権について、歴史的にも国際法的にも明確な根拠があることを中国政府や国際社会に明らかにする積極的な活動をおこなうことが必要です。同時に、わが党は、中国側に対しても、こうした事件にさいして、緊張を高めない冷静な言動や対応をとることを求めます。

日本が直面する問題と綱領の生命力(4)――「核兵器のない世界」

核兵器禁止条約が現実的課題に――日本の平和運動と日本共産党のたたかいの意義

 第四は、「核兵器のない世界」をめざす取り組みです。

 この間、「核兵器のない世界」にむけて、国際社会で大きな前向きのうねりが起こっています。今年5月に開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、10年ぶりに採択した最終文書で、「核兵器のない世界」を目標とし、その達成に「必要な枠組みを確立する」ための「特別の取り組み」をおこなうことを確認しました。つづいて8月6日の広島平和記念式典にはじめて参加した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、核兵器禁止条約を含む自らの提案にふれて、「核兵器のない世界」への決意をのべ、広島、長崎の両市長も核兵器禁止条約への支持を訴えました。核兵器禁止条約締結のための国際交渉の開始は、いまや世界政治で現実的課題となりつつあります。戦後65年の国際政治と反核運動の歴史を振り返ると、この到達点の持つ意義はきわめて大きいものがあります。

 被爆者を先頭にした日本の反核平和運動、原水爆禁止世界大会と日本原水協は、こうした国際政治の前向きの変化を促進するうえで、大きな貢献をしてきました。それは、国連事務総長、NPT再検討会議議長から、今年の原水爆禁止世界大会に寄せられた、日本の運動を高く評価したメッセージにも示されています。

 日本共産党は、唯一の被爆国の政党として、また綱領に「平和の国際秩序を築き、核兵器も軍事同盟もない世界を実現するための国際的連帯を、世界に広げるために力をつくす」と明記している党として、米国大統領への書簡、国連総会議長との会談、アジア政党国際会議への参加、NPT再検討会議への参加など、あらゆる機会をとらえて、「核兵器廃絶を主題とした国際交渉の開始」のための働きかけをおこなってきました。わが党の努力も、今日の変化をつくりだすうえで一つの貢献となっていることに確信をもって、引き続き奮闘するものです。

日本政府は「核の傘」から抜け出し、「核兵器のない世界」へ積極的役割を

 この問題での日本政府の立場は、民主党政権に代わっても、自民党政権時代と少しも変わらない、被爆国の政府として恥ずべきものです。

 民主党政権は、わが党が10年前の国会で明らかにしていた「日米核密約」について、核密約そのものである「討論記録」の存在を認めながら、なお「密約ではなかった」とする態度をとりつづけています。民主党政権が、米国の「核の傘」への依存をつづけ、菅首相が、8月6日に、広島で、米国の「核抑止力」論を肯定する発言をおこなったことも、深い怒りをよびおこしました。

 日本政府は、「日米核密約」を密約と認め、それを廃棄し、「非核の日本」にすすむべきです。米国の「核の傘」から抜け出すべきです。そうしてこそ、日本政府は、被爆国の政府として、「核兵器のない世界」にむけて積極的役割を果たすことができることを、わが党は重ねて強調するものです。

2、全党の知恵と力を結集し、党勢の新たな上げ潮を――五つの挑戦をよびかける

 報告の第二の主題は、強く大きな党づくりの方針です。

 わが党は、参議院選挙の結果を自己分析し、政治論戦上の弱点、選挙活動上の問題点とともに、党の自力の問題にこそ参議院選挙の結果からくみ出すべき最大の教訓があることを明確にしました。長期にわたる党勢の後退・停滞を打破し、新たな上げ潮をつくることは、今後の国政選挙・地方選挙での前進にとって不可欠の条件であるとともに、それなくしては党綱領の実現はありえない、わが党の死活にかかわる大問題となっています。

 幹部会は、第2回中央委員会総会として、党勢の新たな上げ潮をつくるために、次の五つの課題に挑戦することを全党によびかけることを提案するものです。

第一。結びつきを基礎に「支部が主役」の党活動を

党員の結びつきに光をあて、生かし、広げる活動を党建設の大方針にすえる

 第一の挑戦は、国民との結びつきを基礎に「支部が主役」の党活動を発展させることです。一人ひとりの党員と国民との結びつきに光をあて、それを生かし、広げる活動を進める。これは私たちが参院選のたたかいから引き出した大きな教訓ですが、この教訓を選挙活動だけでなく党建設に生かし、党建設の大方針にすえる必要があります。

 どの党員も、社会的なつながりをさまざまな形で無数にもっています。そのつながりを「党員としてのつながり」にかえ、国民と話し合って党の考えをひろめるというのは、すべての党員に共通する基本の任務です。そこに光をあて、生かす党活動をつくりあげるために、新たな決意に立ち、創意を発揮して、知恵と力をそそぎたいと思います。

 私たちは、かつて、1998年9月の第21回党大会3中総で、全党員が参加する党活動を発展させるために、「支部の住民要求にこたえた活動のアンケート」をよびかけ、この活動に取り組んだ経験があります。当時は、約1万6千の支部から中央に報告が寄せられ、一人ひとりの党員の結びつきを生かした活動に光があてられ、支部の活動の活性化の大きな契機となりました。この時期の「アンケート」の活動は、国政選挙で党が躍進するもとで、その流れを党としての組織的な結びつきにどう発展させるかという角度から取り組んだものでした。

全国の支部に「結びつき・要求アンケート」の実施をよびかける

 この教訓を生かし、今日的に発展させるために、第2回中央委員会総会として、全国の支部に「結びつき・要求アンケート」の実施をよびかけることを提案するものです。この「アンケート」では、(1)一人ひとりの党員の結びつき(サークル、市民運動、要求運動、自治会、老人会、同窓会など)、(2)支部として取り組んでいる要求活動(職場・地域・学園の身近な要求から、全国的・全県的な課題まで)、(3)読者や後援会員との結びつき、(4)若い世代との結びつきなどを寄せてもらい、党活動の新たな発展の力としていきたいと思います。

 この活動をつうじて、党機関は、党員の結びつきを支部の宝として光をあて、支部の「政策と計画」のなかにしっかり位置づけ、推進する援助を強めます。

 支部の「政策と計画」を尊重するとともに、党員の活動形態を一律にせずに、一人ひとりの条件や得手、個性を生かし、何よりも国民との結びつきを大事にして、党員の自覚と成長をはかるように力をつくします。

第二。綱領的・世界観的確信を全党のものに

一人ひとりの党員の成長の最も重要な土台となるもの

 第二の挑戦は、綱領的・世界観的確信を全党のものにすることです。どんな情勢のもとでも、党員が未来への科学的確信と展望をもって不屈にたたかううえで、綱領的・世界観的な確信をつちかうことは不可欠の課題です。

 また、一人ひとりの党員が、さまざまな結びつき・つながりを、「党員としてのつながり」にかえ、党への支持を訴えたり、「しんぶん赤旗」の購読をすすめるためには、党員一人ひとりにとっては、自らの活動を発展させる過程――いわば活動の「ふみきり」を何度も経験することになります。その力を身につけ、成長していくことを援助する配慮と努力が、今日の党に強く求められます。そうした一人ひとりの党員の成長の最も重要な土台となるのが、綱領的・世界観的確信であり、それを身につけるための学習への援助が必要です。

党の新しい学習制度「綱領講座」を大きく発展させよう

 綱領学習と綱領読了を抜本的につよめます。党の新たな教育制度となった「綱領講座」は、支部会議などで綱領そのものをテキストとして読みあわせをおこない、質疑と討論で理解を深めるというものです。国民との対話のなかでだされた質問や党員の疑問なども率直に出し合い、みんなが確信をもって日本改革の方針、今日の世界の動き、未来社会の展望を語っていけるよう、全支部、全党員が取り組む学習運動に発展させましょう。

「綱領・古典の連続教室」に取り組む

 中央として、全国をインターネット中継で結ぶ党内通信を活用して、1年がかりの「綱領・古典の連続教室」を開始します。この企画は、党綱領と科学的社会主義の古典の基本点を、初心者にも分かりやすく、面白く理解してもらうもので、受講を希望する全国の党員と民青同盟員を対象に実施し、学習の機運を大いに広げるようにしたいと考えています。「連続教室」の開始は、12月からとし、講師は、綱領は志位が、古典は不破社会科学研究所所長が務めることとします。

第三。党員拡大と「しんぶん赤旗」読者の拡大

党員拡大――全国すべての地区が毎月1人以上の新入党員を迎える活動に挑戦する

 第三の挑戦は、党員拡大と「しんぶん赤旗」読者の拡大を、何としても持続的前進の軌道にのせることです。

 まず党員拡大の問題です。「参議院選挙の総括と教訓について」で明らかにしたように、党員の実態には、党活動への参加の問題、党を語る力の問題とともに、党の世代的構成の問題があります。党の世代的継承をはかることは、いま何としても打開しなければならない大問題となっています。そのためには、全党が、党員拡大を、党勢拡大の「根幹」にふさわしく推進する系統的な努力をはかることが、どうしても必要です。もちろん若い世代と職場に党を建設するための意識的な努力が重要ですが、そのためにも党員拡大の大きな波を党全体としておこすことが重要となっています。

 党員拡大の目標は、それぞれの党組織が、第25回党大会決定にもとづいて自ら決めた「成長・発展目標」や「総合計画」「政策と計画」ですでに決めた目標をやりきることです。幹部会は、この目標を尊重し、その着実な遂行に全力をあげながら、全国315のすべての地区委員会が、毎月毎月必ず新入党員を迎える――毎月毎月1人以上の新入党員を迎える活動に挑戦することを、2中総としてよびかけることを提案するものです。

 これは党の実情にそくした目標であるとともに、党全体の目標としては大志ある目標だと考えます。この数年間、党員拡大の努力が強められてきましたが、拡大数が多い月で新入党員を迎えた地区委員会は8〜9割程度、少ない月では5〜6割程度です。地区委員会の規模はさまざまであり、置かれている条件は違いますが、全国すべての地区委員会が毎月毎月必ず新入党員を迎えるというのは、決して無理な目標ではないはずです。同時に、全国すべての地区委員会が毎月毎月新入党員を迎え、すすんだ地区ではさらに大きな目標を持続的に達成していくならば、党員拡大に飛躍がおこることはまちがいありません。そこに全党が知恵と力を結集して挑戦しようではないか。これが幹部会の提案です。

 そのさい、党員拡大も「支部が主役」で、現在の支部と党員の結びつきを生かしてとりくむことが基本中の基本です。こうした活動のなかで、すべての支部が新入党員を迎えることを追求しましょう。

 入党の働きかけは党規約にのっとって、入党の資格要件を厳格にふまえることが大切です。具体的には、綱領と規約を認めること、「四つの大切」――(1)「しんぶん赤旗」を読む、(2)支部会議に参加する、(3)学習につとめ活動に参加する、(4)党費をきちんとおさめる――を納得してもらうこと、また、党規約第6条をふまえ、支部できちんと審議することなどを重視します。新しい新入党員学習用ビデオ「あなたと学ぶ日本共産党」を教材として新入党員学習の促進をはかります。

 「現勢調査」で、離党を表明し、長期に党活動・党生活に参加していない党員、連絡先がわからず所在不明の党員が一定数報告されています。こうした「実態のない党員」については、「一年以上党活動にくわわらず、かつ一年以上党費を納めない党員で、その後も党組織が努力をつくしたにもかかわらず、党員として活動する意思がない場合は、本人と協議したうえで、離党の手続きをとることができる。本人との協議は、党組織の努力にもかかわらず不可能な場合にかぎり、おこなわなくてもよい」とさだめた党規約第10条どおりの対応をおこないます。党機関の判断で離党を認めないなどといった状況はあらためます。

「しんぶん赤旗」読者拡大――読者との結びつき、紙面改革への取り組み

 つぎに「しんぶん赤旗」読者拡大です。ここでも目標は、「成長・発展目標」や「総合計画」「政策と計画」にもとづく拡大目標の達成を一貫して追求することにあります。いっせい地方選挙にむけて、政治目標を実現する積極的な目標に挑戦し、毎月、確実に前進して、少なくとも前回時を回復・突破して選挙をたたかうことをめざしましょう。選挙がおこなわれない地域の党組織も、同じ目標でとりくみます。

 「しんぶん赤旗」中心の党活動の原点にたって、読者拡大を安定した前進の軌道にのせるうえで、とくにつぎの点に力をそそぎます。

 一つは、読者との結びつきを強化し、その基礎である配達・集金活動の改善をはかることです。読者と結びつき、その要求にこたえる活動を、機関紙活動の中で最も重要な課題として位置づけます。今回提案した支部の「結びつき・要求アンケート」のなかに、「読者や後援会員との結びつき」の項目を入れましたが、この活動をつうじて、読者との豊かな人間的結びつきと信頼の関係をつくり、発展させるために力をつくします。4年ぶりに開かれる「赤旗まつり」を、読者と結びつき、読者と交流し、ともに楽しむまつりとして、大きく成功させましょう。

 読者と党が結びつく出発点となる活動は、配達であり集金です。集金のさいに、読者に一声かけ、紙面や党への要望を聞く活動は、とても大切です。そのためにも、「みんなで支える『しんぶん赤旗』」――配達・集金活動にさらに多くの党員が参加し、配達・集金活動の改善をすすめましょう。「配達・集金が過重で、とても読者と話しあうことなどできない」「これ以上は読者を増やせない」などの悩みを、みんなの力で打開しましょう。

 いま一つ、中央として日刊紙、日曜版の紙面改革に力をつくします。読者との結びつきのカナメは紙面の魅力です。「手にとったら、読んでみたくなる新聞」「一度読み始めたら、やめられない新聞」となるよう、中央あげて紙面改革にとりくみます。

 「しんぶん赤旗」が党綱領の立場に立って、政治変革を願う国民の関心と期待にこたえ、労働運動をはじめ各分野の国民運動と党活動促進の力になるよう、紙面改善に力をつくします。学問・文化の最新の到達に通じ、知的魅力あふれた紙面への努力をはかります。また、参院選の総括からも、支配勢力によるさまざまな思想攻撃を打ち破り、民主的世論の形成と発展のうえで積極的な役割を果たす論陣を大いに張るようにします。

 100万人を大きく超す読者をもつ日曜版は、わが党にとって、日常的に国民と結びついている最大のメディアです。国民の関心に応えた多彩な魅力ある紙面を提供するとともに、わが党の路線、理念、歴史が広範な人々に生き生きと伝わる紙面をめざします。紙面改革のために、全党のみなさんの協力もお願いするものです。

第四。職場支部の活動を本格的前進の軌道に

分野別に「第3回職場講座」を順次開催し、本格的な前進をはかる

 第四の挑戦は、職場支部の活動を本格的前進の軌道にのせることです。職場での党建設は、労働者の暮らしと権利を守るうえでも、党の世代継承にとっても、きわめて重要な課題です。この間、中央として2回の「職場講座」を開催してきましたが、この方針を正面から受け止め、実践を開始したところで、前進の芽が生まれています。

 2回の「職場講座」の方針を土台に、その全党的実践のための努力をはかりつつ、分野別の対策を思い切って強めます。中央として、党グループの協力も得ながら、分野別の職場対策を強化するために、「民間」、「公務・自治体」、「教員」、「医療・福祉」、「建設」の五つの分野ごとに、「第3回職場講座」を順次開催することにします。

 職場支部の活動には、成果主義賃金による職場支配や非正規雇用の拡大といった共通した問題とともに、分野ごとに固有の問題もあります。これまでの2回の「職場講座」でも、それぞれの分野ごとの活動の強化方向を大まかには示していますが、本格的な前進のためには、分野ごとに労働者がおかれている状態、要求とたたかいの特徴、労働運動の特徴、党活動の前進をかちとるカギを、さらにつっこんで明らかにする必要があります。中央として、さらにこの課題に正面から挑戦し、職場に大きな党をつくる仕事を、全国のみなさんと共同の事業として、前進させる決意です。

職場支部で長年がんばってきたベテランの同志のみなさんへ

 ここで長年、職場支部でがんばってきたベテランの同志のみなさんに、職場支部の灯を次の世代に継承する活動と、地域支部への転籍のよびかけをおこないます。

 資本による攻撃に不屈に立ち向かい、労働者の生活と権利を守る党の旗を掲げつづけ、階級的陣地を維持・前進させるために奮闘してきた職場支部と党員の存在は全党の誇りです。いわゆる「団塊の世代」の党員が退職期を迎えたいま、職場支部での世代継承は、文字通り「待ったなし」の課題となっています。いま、職場支部では、働き盛りの40歳代から50歳代の党員が6割を占めています。“いまなら間にあう”“いまこそ頑張りどき”の立場で、「職場講座」を指針に、何としても職場支部の灯を次の世代に継承するために奮闘しようではありませんか。

 同時に、職場を退職されたみなさんが、“職場を変え、日本を変えよう”という入党の初心を、第二の人生で発揮されることを心からよびかけます。みなさんが、職場で培った知識や経験は全党の貴重な財産であり、その力を地域支部のなかで、指導部として、あるいは多彩な草の根の活動の担い手として生かすことは、地域支部でがんばっている同志への大きな激励となります。またそれは、みなさんの経験と能力をさらに豊かに発展させ、新たな生きがいに出会うものともなるでしょう。退職した同志を送り出す職場支部での「送別会」、迎える地域支部の日ごろからのさまざまな行事やとりくみへのお誘いと転入時の「歓迎会」、それをつなぐ党機関の親切できめ細かな援助など、温かい人間的な絆をなによりも大切にし、党全体の努力でこのとりくみを進めるようにすることを訴えます。

第五。党のもつあらゆる力を結集して、青年・学生分野の前進を

 第五の挑戦は、党のもつあらゆる力を結集して、青年・学生分野の前進をかちとることです。参議院選挙の総括では、青年・学生分野の現状打開への痛切な声が多く寄せられました。中央自身が打開の先頭に立つ決意をこめて三つの課題を提起します。

学生分野での広大な空白の克服――世代継承の決定的なカギ

 一つは、学生分野での党と民青同盟建設のために、“全党の潜在力”を結集してとりくむことです。学生のなかで党と民青同盟をつくることは、学生の切実な要求実現、民主的成長にとっても、また新しい日本を担う各分野の働き手を育てていくうえでも、特別に重要な課題です。学生分野は毎年構成員が大きく交代する特別な条件にあり、系統的援助が不可欠です。この分野での広大な空白の克服は、わが党の世代継承をはかるうえで決定的カギとなっています。

 どうやって学生のなかに大きな党をつくっていくか。中央として、つぎの諸点にも留意して、学生分野での党建設の抜本的前進をはかります。そのために適切な形で全国的会議を系統的に開催するようにします。

 ――いま、学生の就職難の不安はきわめて深刻です。世界一の高学費、奨学金の返済負担なども未来を奪うものです。わが党はこの間、一連の大学の学長との懇談を持つ機会がありましたが、どこでも大学予算削減による教育・研究条件の悪化がきわめて切実な課題となっているとの訴えが寄せられました。党が国政でも地方政治でも、学生の切実な要求をとりあげて、その実現のために奮闘し、“日本共産党こそ学生の味方の党”としての値打ちを際立たせることが重要です。

 ――学生党組織が全体として後退するもとでも、現に学園に根をもって頑張っている学生党組織、民青同盟への援助を強めます。一つ、具体的な提案をおこないます。全国のすべての学生党支部を対象に、その条件に応じて、中央と都道府県、地区委員会が協力して、科学的社会主義と綱領を語り、日本の前途、若者の未来を語り合う講座、小集会、「集い」などをおこないましょう。そのさい講師は、中央役員が、その部署のいかんにかかわらず、率先してかってでて、学生のなかで未来を語りましょう。

 ――現在、党と民青同盟の組織が空白の大学が多数となっていますが、あらゆる可能性をとらえて、学生と結びつき、要求にこたえる活動に取り組みましょう。党組織が空白の大学にも、学生自治会、サークル組織、学園祭実行委員会、大学生協、ボランティア団体、市民運動の組織など、多種多様な学生組織が存在します。党として懇談や対話をおこない、要求に応えた活動に取り組みます。

 ――民主的教員との協力・連携を抜本的に強化します。民主的教員が、学生の知的関心に応えた活動、学生の要求にそった企画での協力、進路や生き方の相談に応じるなどの多面的な活動で、学生を激励していることが、大きな力を発揮しているケースが生まれています。こうした経験を学び、広げるため、中央も参加して大学ごとに対策会議をもつなど、文字通り“全党の潜在力”を生かす取り組みをおこないます。

 ――高校生のなかでの民青同盟の活動への親身な援助をおこないます。高校生は、全国どこの地域支部や職場支部でも身近に存在しています。行政区ごとに、「知恵出しチーム」をつくり、退職教員、民青OB、党員の子弟などの協力で、高校生勉強会を開き、民青同盟員を迎え、高校班を再建した地区委員会も生まれています。これらの経験に学び、広げていきます。

民青同盟の発展・強化のための援助を抜本的につよめる

 二つ目は、民青同盟の発展・強化のための援助です。

 2008年7月の6中総は、若い世代に働きかける基本点として、(1)若者がおかれた「二重の苦しみ」に心を寄せ、その悩みをとっくりと聞くことを出発点に、ともに現状の打開をはかることとともに、(2)若い世代のなかに、現状打開の科学的展望を広げる活動を重視すること、を堅持しながら、民青同盟への援助の抜本的強化、民青地区委員会の再建を、党と民青同盟の共同の事業として力をつくすことをよびかけました。その後、新たに20地区が再建され、現在、民青地区委員会の数は73地区となっています。地区委員会が再建されたところでは、その多くで、地区委員会が班の活動の日常的な交流の場となり、成長を支えあうリーダー集団がつくられ、民青同盟の活力を高めています。また対応する党の地区委員会の援助が強まっていることも重要です。

 ひきつづき地区委員会の再建のための援助を強めるとともに、再建後の地区委員会が継続的に発展できるように、援助を中断せず系統的に進めます。くわえて民青同盟の県委員会の多くは1人専従であり、3分の1は新しい県委員長となっており、県委員会の活動強化のための援助も大切です。

 民青同盟が、若者の切実な要求の実現、交流と連帯、党綱領と科学的社会主義の学習にとりくむ組織として、その力が生きいきと発揮されるよう、党はあらゆる援助、協力をおこないます。

「結びつき・要求アンケート」に青年・学生との結びつきを位置づける

 三つ目に、こうした青年・学生の中での党づくりを、党機関と若者、関係者だけの狭いとりくみとせず、すべての党機関、党支部のとりくみ――文字通り全党のとりくみにしていく努力が大切です。その第一歩として、「結びつき・要求アンケート」に青年・学生との結びつきを位置づけます。このとりくみを通じて、支部と若い世代との結びつきを明らかにし、支部が若い世代のなかでの活動に足をふみだすきっかけとしてゆきましょう。すべての地域支部、職場支部が、青年支部や民青同盟と協力し、結びつきを生かした要求実現の活動や青年対象の「集い」の開催に挑戦しようではありませんか。

中央を先頭に、党機関の指導と活動のあり方を抜本的に改革する

 以上、党勢の新たな上げ潮をつくる「五つの挑戦」について提案しましたが、それらの一つひとつが新たな知恵と力を必要とする「挑戦」であり、それを実践するためには、従来の活動のあり方を抜本的に改善・刷新する必要があります。

 さきに報告した「参議院選挙の総括と教訓について」では、選挙戦のあり方を、「結びつきを生かし、広げることを軸とした選挙活動」という本来のあり方に抜本的に改革していくために、長期、多項目にわたる「日報」、過度の電話による指導・点検などの悪弊を、中央からただしていくという決意をのべました。

 これは選挙戦のあり方だけでなく、党活動のあり方全体にも生かすべき教訓です。支部と党員は国民と生きた結びつきを広げ強めることを最優先にする、党機関は支部と党員がそうした活動にとりくむことを援助することを最優先にする――こうした党活動への改善・刷新をはかろうではありませんか。

 そのために、党機関の指導と活動のあり方を、つぎのような方向に改革することをよびかけます。

 ――党機関の指導として、支部の実情をつかまず、数字的な課題を押し付けるという傾向を一掃し、まず何よりも支部に出かけ、支部のおかれている状況を丸ごとつかみ、支部の自主性、自発性、創意を尊重し、支部が自由闊達にのびのびと活動できるようにする指導・援助をおこなうようにしましょう。

 ――政治抜きの実務指導でなく、支部と一人ひとりの党員に勇気と確信をわきたたせる政治指導を重視しましょう。そのためにも、党機関みずからが、綱領と古典、党の決定を深く学び、生き生きと縦横に語れるようにする努力を強めましょう。

 ――党機関は、支部の悩みによく耳を傾け、支部が直面している困難をよくつかみ、それをともに打開する活動に力をつくしましょう。党員一人ひとりの健康、家族、生活のうえでの悩みにも相談にのり、党員一人ひとりを大切にする、温かい人間的信頼でむすばれた党をつくりましょう。

 ――中間党機関は、「その地方で日本共産党を代表する機関」として、地方政治の問題に責任をおうとともに、直接国民に働きかけるさまざまな政治活動を、抜本的に強化し、この面でも支部と党員を励ます活動を発展させましょう。

 ――こうした指導と援助を実践するために、非常勤を含めて1万人を超える地区役員の全体の力を結集し、引き出すために、力をつくしましょう。党機関の内部の関係でも、一人ひとりの同志の思い、実情、悩みにこたえ、みんなの力が生きた一つの力となって発揮され、支部や党員から見て、機関で頑張る同志たちが人間的にも政治的にも魅力ある指導集団として輝くように、努力をはかりましょう。

 中央は、こうした党の指導と活動の抜本的改革を、今度こそなしとげるために、自ら率先してこれまでの惰性を一掃し、不退転の決意で奮闘します。

 全党の同志のみなさん。参議院選挙の最大の教訓である党の自力をつけるという課題に、新たな気概と大きな抱負をもって、心一つに挑戦しようではありませんか。

3、いっせい地方選挙と総選挙勝利めざす方針

 報告の第三の主題は、いっせい地方選挙と総選挙勝利をめざす方針です。

「地域主権改革」の名での地方自治破壊を許さず、憲法にもとづく地方自治の拡充を

 来年のいっせい地方選挙は、新しい政治への国民的探求が続くなかで、国政の熱い焦点が地方での政党選択にも大きな影響をあたえるたたかいとなります。同時に、住民の暮らしと地域経済をどうやって立て直し、地方自治を拡充するかが、大きな焦点となります。

“二重の政治悪”がもたらした地域経済と地方自治の危機

 いま地域経済と地方自治は、深刻な危機のもとにあります。そこには自民党政権から民主党政権に引き継がれている二重の政治悪が働いています。

 第一は、長年の自民党政治の行き詰まりと、「構造改革」の名による新自由主義の経済政策が、住民の福祉と暮らしを破壊し、地域経済の担い手である中小企業、地場産業、農林漁業に深刻な打撃をあたえ、地域間格差を拡大し、地域経済の衰退を加速させていることです。たとえば地域崩壊の進行はきわめて深刻です。「今後10年以内に消滅するおそれのある」集落は423、「いずれ消滅する」をあわせると2643集落におよびます。

 第二は、そうした事態のもとで、自治体が住民の福祉と暮らしを守る仕事を果たさなければならないにもかかわらず、この間に進められた「地方分権改革」が、地方自治体のまともな機能を破壊しつつあることです。

 「三位一体の改革」では、とくに地方交付税の一方的削減が自治体財政に大きな困難をもたらしました。2007年の参院選での自公政権の大敗を機に、地方交付税や各種の補助金による財源保障の部分的手直しがおこなわれていますが、地方の疲弊を回復することができていません。

 市町村合併の半強制的な推進によって、住民サービスの大幅な低下、災害時の緊急対応の困難など、自治体の機能があらゆる面で打撃を受けています。

 「官から民へ」の掛け声で進められた、公立病院の廃止・民営化、保育園の民営化、民間資金等活用事業(PFI)、指定管理者制度、市場化テストの導入などは、住民の命と暮らしを脅かすさまざまな問題を引き起こしています。

民主党政権の「地域主権改革」――自治体の機能と役割を弱め、地方自治を壊す

 財界の要求に応えて民主党政権が、自公政権の「地方分権改革」を継承して進めている「地域主権改革」とは、(1)憲法と地方自治法の精神を踏みにじり、福祉などの最低基準を定めた「義務付け・枠づけ」の見直しなどによって、国の社会保障などへの最低基準の保障責任を解体し、「住民福祉の機関」としての自治体の機能と役割をさらに弱めるとともに、(2)道州制を視野に入れた自治体のさらなる広域化と改編によって、大企業・多国籍企業が活動しやすい条件をつくり、地方自治体を破壊する道にほかなりません。さらにいま、(3)「地方政府基本法の制定」の名で議論されているのは、憲法と地方自治法にもとづく「二元代表制」を事実上否定し、地方議会の形骸(けいがい)化、住民自治の破壊・縮小に導く方向です。

憲法と地方自治法の精神にたって、政策転換をもとめる

 住民の暮らしと福祉、地域経済と地方自治の危機にさいして、日本共産党は、つぎのような方向への政策転換を求めてたたかいます。

 第一に、憲法と地方自治法の精神にたって、社会保障や教育などに関する最低基準は国が責任をもって定め、そのための財源を国が保障することを原則として確立するとともに、地方自治体による上乗せ改善の裁量を保障する政治への転換を求めます。それによって、「住民福祉の機関」としての地方自治体の機能と役割をとりもどします。

 第二に、大企業、大型開発依存の地域経済政策から抜け出し、日本経済と地域経済において圧倒的な比重を占め、地域社会と文化の担い手ともなっている中小企業・地場産業・農林漁業を根幹にすえた経済政策への根本的な転換を要求します。

 第三に、道州制導入と市町村の大規模再編はおこなわず、住民自治が体現できる住民に身近な市町村行政を維持・強化し、政令市など規模が大きい自治体では行政区を自治的な機能をもつ機構にするなど、地域の自治機能の回復と強化をめざします。

 第四に、地方議会が本来の役割を発揮できるよう、少数意見の尊重、議論の活発化、住民への公開と参加の促進など、地方議会の民主的運営を制度化します。議員定数は、住民の意思の多様性を反映できる適正な規模を確保し、根拠のない定数削減に反対します。議員報酬や政務調査費などは、住民の理解を得られる適正な水準とすべきです。

 わが党綱領には、「地方政治では『住民が主人公』を貫き、住民の利益への奉仕を最優先の課題とする地方自治を確立する」と明記しています。日本共産党は、そうした党として、「地域主権改革」の名による住民の暮らしと福祉、地方自治の破壊を許さず、憲法の精神にたった地方自治の拡充の旗を高く掲げてたたかいぬくものです。

事実上の「オール与党」か、住民の立場を貫く日本共産党か

地方政治の政党対決の基本――「オール与党」対日本共産党

 第25回党大会は、地方政治での「オール与党」政治の崩壊過程が始まっていること、多くの県では依然として「オール与党」政治が継続しているが、住民との矛盾は激化しているという新たな特徴を分析しました。この流れは基本的に変わっていません。

 地方政治における政党対決の構図の特徴は、第一に、県段階で見ると、事実上の「オール与党」となっている議会は32府県にのぼります。知事選挙で「対決」した24県のうち11県では、選挙が終わった後は自民系も民主系も事実上の与党となっています。国政では、「二大政党」が今は与野党に分かれ、国民に「対立」構図として映っています。しかし、地方では多くの自治体で事実上の「オール与党」であり、日本共産党は、この悪政と対決して住民の利益を守り抜いている唯一の党です。この地方政治における政党配置と、その中での日本共産党と党議員(団)の役割を浮き彫りにする論戦が重要です。

「改革」ポーズを押し出した地方自治破壊の逆流に正面から立ち向かう

 第二に、新しい特徴として見ておくべきは、国政の流れが持ち込まれ、民主党議員(団)などが事実上の「オール与党」ではあるが、選挙では現状への批判=「改革」勢力のポーズをとろうとすることです。みんなの党も、「地域主権」を叫び、地方自治破壊の先兵となりながら、議員定数削減、地方公務員削減などを掲げ、「改革」ポーズを前面に押し出してくるでしょう。名古屋市や大阪府でみられるように、首長が主導して、地方自治破壊の突撃部隊を編成しようとする動きもおこっています。これらの動きに正面から立ち向かい、反動的逆流に負けない気概での奮闘が重要です。

日本共産党議員(団)の抜きん出た役割と値打ちを広く有権者に

 第三に、このもとで、住民の暮らしと福祉を守る立場を貫く日本共産党とその議員(団)の役割はいよいよ鮮やかになっています。全国の党地方議員(団)は、住民の利益第一をつらぬく立場で、(1)住民の声と願いを行政と議会に届ける、(2)建設的な提案で行政と議会を動かし、住民要求を一歩でも二歩でも実現する、(3)住民目線でのチェック機能を発揮し、ムダづかいをなくし清潔・公正な政治を求める、という点で抜きん出た役割を果たしてきています。この「日本共産党議員(団)の三つの値打ち」をさらに発揮し、有権者の中に広く知らせていくことが重要です。

いっせい地方選挙のたたかいの基本方針について

 つぎに、いっせい地方選挙にのぞむ方針について報告します。

 いっせい地方選挙をたたかう方針の前提として、まず、参議院選挙の総括と教訓を全面的に生かすことを強調したいと思います。参院選の総括と教訓は、国政選挙に限定されるものもありますが、政治論戦の考え方、選挙活動のあり方、党建設の教訓などは、当面するいっせい地方選挙と中間選挙の取り組みに、ぜひ生かしていくことが大切です。

 それを前提にいくつかの点について提起します。

厳しさと激しさを正面から直視しつつ、勝利・前進の条件をつかんで

 第一に、今回のいっせい地方選挙が、特別に厳しく激しい選挙戦になることを正面から直視することです。民主党は、政権党としてのぞむ初めてのいっせい地方選挙で大量立候補を準備しています。自民党は、政権奪還の足場として地方議員の陣地の維持に必死であり、公明党は「党再建の第2弾」と位置づけ、いち早く準備を開始しています。みんなの党は、次期総選挙を視野に、各地で候補の公募を開始しています。大阪や名古屋などの地域政党の大量立候補も選挙戦の様相を一変させています。

 政党間の力関係では、わが党が後退した参院選の結果が、私たちのたたかいの出発点となります。国政選挙と地方選挙の違いもありますが、この点をリアルに認識してのぞまなくてはなりません。

 とくに道府県議選挙と政令市議選挙、東京特別区の区議選挙など、都市部でのたたかいは、有権者の意識動向からも、各党の総選挙の前哨戦という位置づけからも、国政の流れが大きく影響することは必至となります。

 また、「平成の大合併」後の2度目のいっせい地方選挙で「大選挙区」としては初めての選挙となる自治体、全国に広がった議員定数削減のなかで迎える選挙も少なくありません。県議選挙でも、市町村合併で範囲が広がり、有権者が増えながら選挙区定数は増えず、事実上大幅な定数削減になっているところがあります。政令市移行にともなって選挙区が細分化された自治体もあります。まさに多くの選挙区で、「前回得票の大量増なくして勝利なし」のたたかいとなります。

 もちろん、こうした厳しさ激しさとともに、私たちの奮闘いかんでは勝利・前進できる客観的条件も存在しています。「オール与党」勢力による地方自治の破壊は深刻であり、住民の利益との矛盾はかつてなく広がっています。切実な要求が渦巻いているもとで、日本共産党のかけがえのない役割は、いよいよ鮮やかとなっています。特別に厳しく激しい選挙になることを正面から直視しながら、奮闘いかんでは勝利・前進できる条件が存在することもよくつかんで、意気高くこのたたかいにのぞみましょう。

選挙戦の目標と基本的構えについて

 第二に、選挙戦の目標と基本的構えは、つぎの通りとします。

 ――道府県議・政令市・東京特別区においては、現有議席を確実にまもり、条件のあるところの新たな議席獲得をめざし、県議空白県を克服することを目標とします。道府県議選挙、政令指定都市の市議選では、絶対確保すべき選挙区を勝ち抜くために思い切った重点主義をとり、「力の集中」をはかります。

 ――県庁所在地と主要都市で、現有議席を確実にまもり前進をめざします。市町村議で現有議席を確実に確保するとともに、議席増の条件・可能性のある自治体・選挙区では適切な積極的な目標をかかげてたたかいます。空白克服に積極的に挑戦します。

 いっせい地方選挙は、前半戦の告示まで6カ月たらずです。ただちに選挙勝利めざす体制を確立し、「支部を主役」に勝利のための諸課題を本格的に前進させましょう。地方議員・候補者を先頭に、宣伝を重視し、党員の結びつきを生かした対話と支持拡大にただちにとりくみましょう。福祉、医療、教育、雇用、中小企業、農林漁業など、切実な住民要求を実現する論戦と運動に広い視野でとりくみましょう。すべての支部に対応する単位後援会を確立・強化することを土台に、「後援会ニュース」を読んでもらう活動も発展させ、後援会とともにたたかう選挙戦をすすめましょう。

 茨城県議選、県庁所在地での青森市、鳥取市議選をはじめ、いっせい地方選挙までの中間地方選挙を重視し、勝利・前進の波をつくることにも力をそそぎます。

首長選挙について

 いっせい地方選挙では、13知事選挙、4政令市長選挙、12東京特別区長選挙などがたたかわれます。また、いっせい地方選挙までに七つの知事選挙、三つの政令市長選挙をはじめ、重要な首長選挙がたたかわれます。

 これらの首長選挙を積極的に位置づけ、切実な住民要求を出発点にして、「住民の願いにこう応える」「自治体をこう変える」という県政、市政改革の旗印を鮮明にし、勝利をめざして奮闘します。

 全党の同志のみなさん。きたるべきいっせい地方選挙を、参議院選挙の教訓を全面的に生かしてたたかいぬき、日本共産党の勝利で、住民の福祉と暮らしを守るとともに、つぎの国政選挙での巻き返しの土台をつくる選挙にしていこうではありませんか。

きたるべき総選挙での巻き返しへのスタートを

 同時に、きたるべき総選挙での前進をめざす取り組みを開始する必要があります。

 国政選挙における「650万票以上」という得票目標は、それを実現するまで繰り返し挑戦する目標として設定したものです。きたるべき総選挙にむけて、引き続きこの目標の達成をめざして奮闘します。さらに、すべての党組織が、「成長・発展目標」をもち、日常不断にその実現をめざして奮闘します。

 衆議院選挙で、すべての比例ブロックで議席獲得・議席増をかちとることを目標に、活動を開始します。ブロックの比例候補と、すべての都道府県に日常的に活動できる比例候補を早期に決めることとします。小選挙区候補は、順次決定・発表し、国民の要求にもとづく活動に日常的に取り組むようにします。

 きたるべき総選挙での本格的な巻き返しをめざし、比例ブロックごとの要求・政策にもとづく日常活動を、国会議員団とも連携して抜本的に強化しましょう。ブロック事務所、都道府県の国政事務所、地方議員をつなぐネットワークをさらに強め、国政候補者が先頭にたって、「集い」や各種シンポジウム、各種団体との対話と交流、要求にもとづく幅広い共同の前進をはかりましょう。

4、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」の新たな発展をよびかける

 報告の最後に、全党がただちに取り組むべき活動として、一つのよびかけをおこないます。それは「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」を、今日の情勢の新たな進展のもとで、大いに発展させようということです。

 全党が、2007年9月の第24回党大会5中総のよびかけに応えて、この3年間取り組んできた「大運動」「集い」は、党が国民との結びつきを広げるうえでも、党建設や選挙戦のたたかいの発展のうえでも、大きな力を発揮してきました。全国に豊かな経験や素晴らしいドラマがたくさん生まれています。

 同時に、さきに報告した「参議院選挙の総括と教訓について」では、参院選に向けてこの運動が弱まったことを一つの反省点としてのべました。

 「大運動」「集い」の取り組みを、国民が新しい政治を探求する情勢の激動のもとで、新たな決意で、大きく発展させようではありませんか。「大運動」「集い」のなかで、綱領が示す日本改革の方針を大いに語り、日本のすすむべき前途について自由に語り合い、今日の閉塞状況を打破する展望を、広範な国民のなかに広げていこうではありませんか。「大運動」「集い」を軸に、強く大きな党づくりのための活動、いっせい地方選挙と総選挙勝利のための活動を総合的に前進させようではありませんか。

 この運動は、「支部が主役」に進めることが基本ですが、この間の全国の経験でも、少人数で気軽に取り組む方式が、たいへん効果的だと報告されています。条件にそくして大中小さまざまな「集い」をもつことが大切ですが、そのなかで、数人程度の文字通りの「小集会」「懇談会」を、網の目のように取り組むことを、とくに重視してこの運動を発展させることを訴えるものです。

 全党の同志のみなさん。国民と結びつき、国民の切実な要求の実現をはかり、国民のなかで党を語る活動に、ただちにとりかかろうではありませんか。