2010年6月15日(火)「しんぶん赤旗」

全国いっせい決起集会への

志位委員長の報告


 志位和夫委員長が14日、「全国いっせい決起集会」でおこなった報告は次の通りです。


写真

(写真)報告する志位和夫委員長=14日、党本部

 親愛な全国の同志のみなさん、おはようございます。みなさんの日夜をわかたぬ奮闘に心からの敬意をのべるとともに連帯のあいさつを送ります。私は、全国いっせい決起集会への報告をおこないます。

 参議院選挙の公示日まで10日間、投票日までちょうど4週間、28日間となりました。いよいよこれからの一日一日は勝敗を分ける歴史的な日々となります。

 この間、6月2日、鳩山政権が退陣に追い込まれ、6月8日、菅新政権が誕生するという事態が起こりました。

 私は、鳩山政権の退陣と菅新政権をどうとらえるか、参議院選挙の政治論戦をどうすすめるか、勝利のために何が必要かについて報告します。

鳩山政権の退陣と、菅新政権をどうとらえるか

鳩山政権――国民の力が退陣に追い込んだ 

 まず鳩山政権の退陣と、菅新政権をどうとらえるかについて報告します。

 鳩山首相の退陣は、まず何よりも、沖縄・普天間基地問題、「政治とカネ」の問題、後期高齢者医療制度や労働者派遣法など切実な暮らしの問題などで、「政治を変えたい」という国民の期待に背き、自ら掲げた公約を裏切った政治を、国民の怒りが包囲した結果であります。国民の力が退陣に追い込んだ。ここが大切なところです。

 なぜ公約を守れなかったか。その根本には、わが党が、民主党政権が発足した当初から言い続けてきた「二つの異常」――「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」から抜け出す立場がないという大問題があります。普天間問題での裏切りは、「海兵隊=抑止力」という米国の論理を「学んだ」――屈服した結果でありました。後期高齢者医療制度、労働者派遣法など暮らしの問題での裏切りや後退の根本には、労働コスト削減、社会保障コスト削減を求める財界・大企業の圧力への屈服がありました。

 この間、支配勢力は、「二つの異常」という同じ土俵の上で「二大政党」をつくり、古い政治を延命させる「設計図」を描いてきました。しかし、鳩山首相の退陣は、「二大政党」が共通の土俵としている「二つの異常」を抱えたままの政治では、いまの世界と日本の現実にあわない、対応ができない、破たんせざるをえないことを証明するものとなりました。ここに深い確信を持つ必要があります。

 鳩山首相は、辞任表明のあいさつで、「国民が聞く耳を持たなくなった」とのべました。「聞く耳」を持たないのは首相自身ではないかと批判されましたが、同時にこれは、自らの政治が、国民から見放されたことを自認した言葉であります。

 国民が新しい政治を探求するプロセスという角度からみると、国民が自らの力で鳩山首相を退陣に追い込んだことは、新しい政治を探求するプロセスを一歩進めるものにほかなりません。

菅新政権の特徴と本質をどうみるか

 それでは、代わってつくられた菅政権の特徴と本質をどうみるか。私は、三つの点を指摘しておきたいと思います。

失政の共同責任への自覚も反省もない

 第一に、鳩山前政権の失政は、いうまでもなく民主党政権全体の共同責任です。とりわけ菅氏は副総理として重大な責任を負っています。ところが菅首相は、その自覚も反省もまったく語りません。反対に、菅氏は、6月3日、民主党代表選の出馬会見で、普天間基地と「政治とカネ」について、「二つの重荷を総理自らが辞めることで取り除いていただいた」とのべました。菅首相は、6月11日の所信表明演説でも、この二つの問題は前任者が辞めたことで「けじめ」がついたとのべました。これは、鳩山退陣で、重大な共同責任を過去の問題として水に流し、一件落着にしてしまおうという、国民を欺まんする姿勢といわなければなりません。

 しかし、こうした欺まんは通用するものではありません。普天間基地を名護市辺野古に「移設」するとした「日米合意」は引き継がれ、文字通り耐えがたい「重荷」が県民に押し付けられようとしています。

 私は、6月7日、沖縄を訪問し、名護市稲嶺市長、嘉手納町宮城町長、宜野湾市伊波市長、県議会高嶺議長、仲井真県知事と会談し、島ぐるみの闘争への連帯の気持ちを伝えましたが、沖縄は頭ごしにかわされた「日米合意」にたいする深い怒りに包まれていました。この道は、早晩必ず行き詰まり、破たんせざるをえない。このことを私は、きびしく指摘しておきたいと思います。

「高支持率」――「脱小沢」の演出だけが原因、政治の中身への支持ではない

 第二に、にもかかわらず菅政権にたいしてどうして「高い支持率」が寄せられたか。その理由は単純明快です。菅氏が、人事その他で、いわゆる「脱小沢」を演出したからであります。それを多くのメディアが持ち上げたからです。「高い支持率」が出たのは、もっぱらこれだけが原因です。菅新首相の政治の中身が支持されているわけでは決してありません。各紙の世論調査を見ても、いわゆる「脱小沢」にたいして、8割前後の人々が「評価する」と答えています。よくも国民にこれだけ嫌われたものだと思いますが、支持率の中身はここにしかないのです。実際、世論調査で菅政権の「政策に期待できる」と答えている人は1割程度にすぎません。

 そもそも「小沢問題」とは、本質的には、民主党の党内の体制問題であり、いまの日本の政治の根本問題ではありません。かりに「脱小沢」になったからといって、民主党政権がすすめる政治の中身が新しい境地にいくというものではありません。しかも、菅首相は、小沢氏の金権疑惑にたいしても、辞任で「けじめ」がついたとして、本格的にメスを入れる気もなければ、構えもありません。菅内閣の一時的な「高い支持率」を軽視はしませんが、恐れる必要はまったくないということを言っておきたいと思います。

政治的本質――米国と財界への忠誠と追随の政治に踏み込む

 第三に、それでは菅政権の政治的本質はどこにあるか。一言でいって、よりいっそう米国と財界に忠誠を誓い、追随する政治に踏み込もう、そのことによって「長期・安定政権」をめざそう――ここに菅政権の政治的本質があることを見定める必要があります。前任者の鳩山首相は、この点に「甘さ」や「ブレ」や「動揺」があった。それを二度とくりかえさないようにしよう。これが菅氏が鳩山退陣からくみ取った「教訓」でありました。この政治的本質は、政権発足から間もない現時点でも、いくつかの動きから確認できます。

〈米国への忠誠〉

 まず米国への忠誠についてです。菅首相は、正式に首相に就任する以前の6月6日、オバマ大統領と電話会談をおこない、普天間基地の「県内移設」の「日米合意」について、「しっかり取り組んでいきたい」と誓約しました。岡田外務大臣は、6月9日の記者会見で、「県内移設」の「日米合意」について、こう言いました。「私は、(沖縄県民の)同意を得るという表現を使っておりません。沖縄の理解を得る努力というものは必要だと思っております。……沖縄のみなさんが、これでやむを得ないと思っていただける状況をつくりだすことが重要だということであります」。沖縄県民の「同意」を得るのではなく、県民には「やむを得ない」とあきらめてもらう。これはひどい発言ではありませんか。ここには、米国への忠誠を至上のものとして、沖縄県民の「合意」があろうとなかろうと、「県内移設」に「ブレ」ることなく突き進もうという立場が、あからさまに示されているではありませんか。

 このような横暴きわまる政治を、沖縄県民はけっして許さないでしょう。

 同志のみなさん。辺野古への「県内移設」を推進する「日米合意」の白紙撤回、普天間基地の無条件撤去を求め、沖縄と本土が連帯した一大闘争でこたえようではありませんか。

〈財界への追随〉

 財界との関係はどうか。菅政権が正式に発足した6月8日、民主党の枝野幹事長と、細野幹事長代理が表敬訪問にむかったのは、米倉弘昌日本経団連会長でした。そこで民主党側は、「一つの大きな材料として成長戦略という経団連のみなさんとも方向性の合うものを携えていきます」と約束しています。民主党の「成長戦略」は、日本経団連とも「方向性の合うもの」だ、それを「携えていく」というのです。それでは、日本経団連の「成長戦略」とはどのようなものか。

 日本経団連は、4月13日に、「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連 成長戦略 2010」なる提言を明らかにしています。そこには、「消費税の税率の早期引き上げ」が明記され、「2011年度から速やかかつ段階的に(たとえば、毎年2%ずつ引き上げ)、消費税率を少なくとも10%まで引き上げ」ること、「2020年代半ばまでに……10%台後半ないしはそれ以上へ引き上げ」ると書かれています。同時に、「法人実効税率の早期引き下げ」が明記され、「成長戦略の必須の柱」として法人実効税率を現行の約40%から30%に、早期に10%引き下げると書かれています。大企業減税の穴埋めに消費税増税という身勝手な要求が、あからさまに述べられているのが、日本経団連の「成長戦略」なのです。

 こうした動きのもとで、菅政権発足当初から、「消費税増税の議論を」「法人税の引き下げを」という声が、閣僚たちからいっせいに出されています。一昨日の報道によれば、民主党の参議院選挙公約には、「法人税率引き下げ」とともに、「消費税を含む税制の抜本改革をおこなう」ことが明記されるといいます。これは財界の身勝手な要求につき従うものにほかなりません。

 さらに、菅首相は、所信表明演説のなかで、「財政健全化」のためとして、自民党から提出されている「財政健全化責任法案」に言及しながら、「与党・野党の壁を越えた国民的な議論」なるものを呼びかけました。自民党の「財政健全化責任法案」には、消費税増税が明記されています。この動きは、民主・自民による、消費税増税での「大連立」の動きとして、きびしく警戒する必要があります。

 大企業減税の穴埋めに消費税増税という道は、財政再建にも、社会保障財源にも役立たず、庶民の暮らしを破壊し、景気を破壊し、日本経済の危機をいっそう深刻にするものとして、日本共産党は国民とともに断固として反対をつらぬくことを、ここに表明するものであります。

 民主党は、野党時代に、日本経団連を批判し、御手洗前会長の国会招致を要求したこともありました。それが、手のひらを返したような「友好」ぶりです。もともと、2003年の旧民主党と自由党の合同は、財界のシナリオにもとづくものでした。その後も、民主党は、日本経団連に「通信簿」をつけてもらい、企業献金あっせんを受けてきました。菅政権のもとで、この地金がむきだしになりつつあるのであります。

 菅氏のこの間の発言のなかからは、民主党がこれまでメーンスローガンとしていた「国民の生活が第一」という言葉が一切消えています。そのことは、財界への追随路線を象徴的に示すものと言わなければなりません。

日本共産党の頑張りどころの情勢、出番の情勢

 米国と財界に忠誠を誓い、追随する道に踏み込んだ菅政権と、国民の利益との矛盾は新たな形で深まらざるを得ないでしょう。

 もともと米国・財界言いなり政治は、昨年の総選挙で国民から退場の審判を受けた自公政治の特質でした。この選挙で国民が下した審判の圧力のもとで、民主党政権の発足当初の姿勢には、国民の要求を反映した前向きの要素も部分的には散在していました。ところが、鳩山政権は、国民が「ここを変えてほしい」と願っている肝心要の問題で、期待と公約を裏切り、その後を引き継いだ菅内閣は、裏切りへの反省ぬきに、米国・財界言いなり政治をあらわにしつつあります。しかし、この政治こそ、国民がすでに昨年の総選挙で退場の審判を下した古い政治にほかならないではありませんか。その真実が広く明らかになれば、「政治を変えたい」と願う国民の認識は、劇的に発展せざるをえないでしょう。

 もちろん、そのプロセスは自動的にはすすみません。日本共産党の奮闘と躍進が必要です。

 この点で強調したいのは、鳩山退陣――菅新政権という新たな情勢は、日本共産党の頑張りどころの情勢、出番の情勢であるということです。

 菅政権発足のもとでの政党状況はどうなっているでしょうか。普天間基地を辺野古に「県内移設」するという方針は、もともと、自民党、公明党、みんなの党などの共通した立場です。自民党の参議院選挙公約「マニフェスト」(原案)では、普天間問題について、「抑止力の維持を図るとともに、沖縄の負担軽減を実現する」とのべていますが、これは民主党政権が米国とかわした「日米合意」と一言一句変わらないものです。違いが消失してしまったのです。

 法人税減税と消費税増税も、これらの諸党の共通した立場です。この問題でも、菅政権が、自分たちと違わない政策をかかげだすもとで、これらの諸党は菅政権への政治的対応の足場を失っています。たとえば、自民党は、これまでは民主党政権を「財源の裏付けのないばらまき」と批判していればよかったわけですが、消費税増税論が出てくる中で「お株を奪われかねない」、増税の「お株」というのも妙な「お株」ですが、そういう声が広がっています。時事通信は、「菅政権の『路線転換』に焦り=財政再建で自民」と報じました。

 こうした政党状況のもとで、米国と財界への忠誠と追随の道に踏み込んだ菅政権に、国民の立場にたって正面から立ち向かう政治的立場――「二つの異常」をただし「国民が主人公」の日本をめざすという政治的立場をもっているのは、日本共産党をおいてほかにないではありませんか。

 同志のみなさん。ここに確信と誇りをもって、大いに意気高くこの選挙戦をたたかいぬこうではありませんか。

参議院選挙の政治論戦をどうすすめるか――三つの基本姿勢

 つぎに参議院選挙の政治論戦をどうすすめるかについて報告します。

 すでにのべた菅政権の政治的本質をしっかり見定めつつ、国民にどう語るかは工夫がいります。菅政権に期待を抱いている人々も含めて、国民の新しい政治への探求を「後押し」し「促進する」という大会決定の見地を堅持し、情勢の進展に即して発展させるという姿勢で、広い国民に働きかけることが大切です。

 とくにつぎの三つの基本姿勢が大切です。

切実な要求から出発しながら改革の展望を大いに語ろう

 第一に、国民の切実な要求から出発しながら、政治の行き詰まり、閉塞(へいそく)状況を打開する展望――「二つの異常」をただす日本改革の展望を大いに語りましょう。私たちの展望を大いに押し出すことと一体に、菅政権への事実にもとづく批判もすすめましょう。

 菅首相は所信表明演説で、「20年近く続く閉塞状況を打ち破り、元気な日本を復活させる」とのべました。しかしどうやって「閉塞状況」を打破するのか。その具体的展望は、どの分野でも示すことはできませんでした。

 こうした状況のもとで、わが党が、どの問題でも、国民の切実な要求を実現する展望を太くさし示しつつ、政権への的確な批判をすすめることが大切です。

沖縄・普天間基地の解決の展望――「抑止力」の呪縛にとらわれたら示せない

 たとえば、沖縄・普天間問題をどう解決するか。「移設条件なしの返還」――無条件撤去という解決の展望を示している党は、日本共産党だけであります。そして、わが党がこうした展望を示せるのは、日米安保条約を廃棄し、独立・平和の日本を築くことを当面する日本改革の根本目標にすえているからにほかなりません。この立場に立つからこそ、「海兵隊=抑止力」という基地押し付けの呪縛(じゅばく)を、正面から打ち破る論陣をはることができます。

 重要なことは、沖縄県民のなかで、わが党のこの主張が多数になりつつあることです。「日米合意」の直後に、琉球新報と毎日新聞が合同でおこなった県民世論調査では、辺野古移設に反対が84%と圧倒的多数となりました。「反対の理由」の第1位となったのが、「無条件で基地を撤去すべきだから」で38%に達しました。さらに、日米安保条約について、「維持すべきだ」と答えたのはわずか7%にまで落ち込み、「平和友好条約に改めるべきだ」「破棄すべきだ」は合計で68%になりました。道理の力が基地に苦しむ人々の心をとらえているのです。

 民主党も、自民党も、この問題を解決する展望を語れません。共通しているのは、日米安保体制を絶対化し、「海兵隊=抑止力」という呪縛にとらわれていることです。

 鳩山前首相の裏切りと転落は、「抑止力を学べば学ぶほどに」すすみました。

 それでは菅首相はどうか。菅氏は、民主党幹事長だった2001年7月、沖縄での記者会見や演説で、「海兵隊は即座に米国内に戻ってもらいたい。民主党が政権を取れば、しっかりと米国に提示することを約束する」などと明言しています。さらに、菅氏は、民主党代表代行だった2006年6月1日の講演で、つぎのようにのべています。

 「よく、あそこ(沖縄)から海兵隊がいなくなると抑止力が落ちるという人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません。地球の裏側まで飛んでいって、攻める部隊なのです。……沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力とあまり関係のないことなのです。……(米軍再編では)沖縄の海兵隊は思い切って全部移ってくださいと言うべきでした」

 この発言は、真実をのべています。しかし菅首相が実行を誓った「日米合意」には、沖縄の海兵隊について「日本を防衛し、地域の安定を維持するために必要な抑止力」と明記しているではありませんか。なぜ首相は、4年前には自ら否定していた「海兵隊=抑止力」という立場に立つことになったのか。「民主党が政権を取ったら沖縄の海兵隊は米国内に戻ってもらう」という県民への「約束」はどうなったのか。沖縄県民が納得できる説明が必要です。

 どう説明するのか、きょうの午後の代表質問で聞いてみようと思います。答弁に注目してほしいと思います。

 これにきちんとした答弁ができなければ、首相はただ米国言いなりに、自らの主張を投げ捨てたという批判をまぬがれないことになるということをのべておきたいと思います。

日本経済の危機打開の展望――「強い経済、財政、社会保障」の中身をただす

 国民生活と日本経済の危機をどう打開するか。

 ここでも日本共産党は、展望をさししめしています。わが党は、「経済危機から国民の暮らしを守るための五つの提言」を訴え続けてきました。それをさらに具体化した一連の個々の政策提起もおこなってきました。その一つひとつ――「人間らしい雇用のルールをつくる」、「大企業と中小企業との公正な取引のルールをつくる」、「農林水産業の再生にむけた政策転換をはかる」、「社会保障の削減から本格的充実への転換をはかる」、「財源問題で『二つの聖域』にメスを入れる」などは、どの分野でも国民の共感を広げ、共同の輪を広げています。

 そして、私たちの政策体系が、これらの全体をつうじて、「ルールある経済社会」への改革をすすめることによって、日本経済の危機を打開し、家計・内需主導の健全な成長の軌道にのせるうえでの経済戦略を示すものとなっていることも重要です。

 こうした政策体系が打ち出せるのも、わが党が、綱領で、「国民の生活と権利を守る『ルールある経済社会』をつくる」、「大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる」などの経済的民主主義の改革の展望をもっているからであります。

 菅首相は、所信表明演説で、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の一体的実現をはかると強調しました。これがはたして日本経済の行き詰まりの打開策となるものなのか。問題は誰にとって「強い」のか。これが問われます。これもつぎのような角度からきょうの代表質問で聞いてみようと思っています。

 ――首相は、「強い経済」というが、「大企業をもっと強くする、そうすればその利益がいずれは国民の暮らしにまわり、経済も成長する」――こうした自民党が長年続けてきた経済政策の破たんはいまや誰の目にも明らかです。大企業を応援する経済政策から、国民生活を応援する経済政策への大本からの転換が必要ですが、その意思があるか。とくに労働者派遣法の「抜け穴」なしの抜本改正をはかり、大企業と中小企業の公正な取引を保障する施策と法改正をすすめる意思があるのか。

 ――首相は、「強い社会保障」といいますが、それが自公政権がすすめた社会保障費削減路線によって弱体化された社会保障を立て直すという意味であるならば、自公政権が社会保障制度に残した「傷跡」を治すことが第一の仕事になるはずです。後期高齢者医療制度の撤廃、医療費の窓口負担の軽減という自らの公約にどういう姿勢をとるのか。

 ――首相は、「強い財政」といいますが、民主党の参議院選挙公約には、「法人税の引き下げ」とともに、「消費税を含む税制の抜本的改革をおこなう」ことが明記されるとの報道がなされました。「強い財政」とは、財界の身勝手につき従って、こうした道をすすめるということなのか。

 これらの質問にどう答弁するか。これも注目していただきたいと思います。きちんとした答弁ができなければ、菅政権が財界への追随の道に踏み込んだとの批判はさけられません。

 暮らしと経済の問題でも、わが党の打開の展望、日本改革の展望を大いに語り、それと一体に、菅政権の具体的な政策と行動を一つひとつただしながら、その本質の批判をすすめるという姿勢が大切であります。

「米国と財界に、国民の立場でモノが言える党」という押し出し

 第二に、日本共産党の押し出しの一つとして、「米国と財界に、国民の立場でモノが言える党」という訴えを大いにすすめましょう。この押し出しは、各地の演説会や対話で、大きな力を発揮し、訴えが届いたところでは多くの国民の共感と感動を広げていますが、このスローガンにかかわっていくつか大切な点があります。

財界との直接交渉、 初の訪米―全党の実践を踏まえた押し出し

 一つは、この党押し出しは、全党の実践を踏まえたものであるということです。

 一昨年秋のリーマン・ショックを契機とした「派遣切り」という事態にさいして、わが党は、日本経団連、トヨタ、いすゞなどと、直接交渉をおこない、雇用に対する社会的責任を果たすことを求める活動に取り組みました。この取り組みは、中央段階だけでなく、都道府県段階、さらに無数の職場・地域でも取り組まれました。

 さらにわが党は、ことし4月末から5月上旬に、米国訪問をおこない、NPT(核不拡散条約)再検討会議の成功のための活動をおこなうとともに、「基地のない沖縄」、「対等・平等・友好の日米関係」を願う、沖縄県民の声、日本国民の声を、直接、米国政府と議会に伝える活動に取り組みました。

 私たちは、これらの活動をとおして、米国と財界という日本の二つの支配勢力にたいして、実際の行動をつうじて働きかけるという党活動の新たな発展段階を切り開いてきました。それが、日本共産党は言葉だけでなく行動する党だという信頼を広げています。この党押し出しは、全党の実践を踏まえて、初めて可能となり、説得力を持つ押し出しになったことに、大いに確信をもって訴えようではありませんか。

立場が違う相手でも、事実と道理で働きかける

 二つ目に、「モノが言える党」という場合、わが党は、相手が米国でも、財界でも、威勢だけが良いといった“ケンカ腰”で言う党ではありません。立場の違う相手であっても、耳を傾けざるをえない、事実と道理を、冷静に、諄々(じゅんじゅん)と説いて語りかけ、国民の立場で現実政治を一歩でも二歩でも動かすために知恵と力をつくす。これが私たちの根本姿勢であり、そういう姿勢で、実際に行動している政党が日本共産党であります。

 たとえば、米国国務省との会談では、わが党は、先方と、当然、日米安保条約や海兵隊の役割などについては、立場が真っ向から異なります。しかし、沖縄の県民の総意がどこにあるのか、その怒りの根源にはどういう歴史があるのか、「県内移設」という方針にはもはや絶対に県民の合意は得られないことなどは、立場が違っても否定できない事実です。それを冷静に、同時にきっぱりと伝えるという立場で、わが党は会談にのぞみました。

 最近、後日談が伝わってきました。米国政府関係者が在米日本メディア関係者に、米国国務省と日本共産党との会談について、つぎのようにのべていたといいます。「日本共産党の話には一貫性がある。鳩山首相の言行の一貫性のなさと対照的だ」。一貫性というのは、みなさん、やはり外交の基本だということを、私は言いたいと思います。

 私が、6月7日、沖縄を訪問したさいに、嘉手納町の宮城町長から会談の席上でつぎのような言葉が語られました。「あまりにも政治家が表と裏の話が違いすぎます。われわれ沖縄県民に対して非常に立派なことをいう国会議員がズラッといるわけです。しかしアメリカに行って何もいいませんでした。私は、今回の共産党の訪米が一番意味があったと思います。日本の国会議員が、公党のトップが行かれて、きちっとこういうことを、われわれの気持ちを、向こうには非常に苦(にが)い話を語られたのは、ものすごく意味があったと思います」。嘉手納町の面積の83%は米軍基地で占められています。日本の自治体でも最も基地の重圧に苦しんでいる自治体の首長の言葉として、深い感謝と感動をもって聞いたことを報告しておきたいと思います。

わが党の綱領的展望と深く結びついたもの

 三つ目に、「米国と財界に、国民の立場でモノが言える党」ということは、わが党の綱領的展望と深く結びついたものであることも、強調しておきたいと思います。

 わが党がこうした行動ができるのは、わが党綱領で、「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」を打破し、「国民が主人公」の新しい日本をつくるという展望をもっているからにほかなりません。

 同時に、わが党がこの間開始した米国や財界への働きかけ、意見交換や交渉は、将来、わが党が、国民多数の支持を得て、「国民が主人公」の民主的政権――民主連合政府を樹立することを展望しても、重要な意義をもってきます。そのさいには、当然、米国や財界との交渉と対話が必要となるでしょう。いま私たちが踏み出した道は、第一歩ではありますが、ゆくゆくは将来、そこまで発展する関係の礎石を築いたと言っていいと思います。

 これらの点に、深い確信をおいて、参議院選挙で、「米国と財界に、国民の立場でモノが言える党」という、わが党の値打ちを、広い国民に生き生きと大いに語ろうではありませんか。

日本共産党そのものへの疑問や意見をよく聞き、党への思いを語ろう

 第三は、日本共産党そのものへの疑問や意見をよく聞き、党への思いを語ろうということです。このことは、4月13日の全国会議でも強調しましたが、過半数の有権者との対話など、広い人々への働きかけをすすめるさいの基本姿勢として、重ねてのべておきたいと思います。とくに、

 ――この活動を難しく考えず、相手の思いをよく聞き、日本共産党員だったら誰でも持っている自らの党への思い、誇り、入党の原点を語ること。

 ――わが党への誤解を解決するうえで、党の理念、歴史、路線などへの疑問に丁寧に答える努力をはかること。

 ――わが党の活動の実際を生の形で体験してもらうために、「集い」や演説会、街頭演説に参加してもらうこと。

などが重要です。

 国民との対話のなかで、政策的な共感を得るだけにとどめずに、これらの活動をつうじて、党の丸ごとの姿を語り、共感、理解をしてもらってこそ、支持を確実なものとすることができることを、強調したいと思います。

 この間、小池政策委員長をはじめ、予定候補者の多くが、室内での「集い」とともに、「街かどトーク」などに取り組み、その場で聴衆から出される質問に、生きいきと答える活動が評判となっています。これらの活動にも、予定候補者のみなさん、地方議員のみなさんなどを先頭に、大いに取り組みたいと思います。

 参議院選挙の政治論戦の三つの基本姿勢ということをのべました。全党が、この三つの基本姿勢を堅持して、参議院選挙の政治論戦に取り組み、広大な有権者のなかに党の姿を浸透させきるならば、必ず勝利をつかみとることができます。同志のみなさん。このことに確信をもって、意気高くともに奮闘しようではありませんか。

全有権者規模での宣伝・組織活動を飛躍させつつ、選挙戦の担い手を広げに広げよう

常任幹部会の「呼びかけ」と活動の到達点――いま飛躍がどうしても必要

 報告の最後に、選挙勝利のために何をなすべきかについて提起します。

 6月4日、常任幹部会は、「呼びかけ」を出し、全党が、公示日までにつぎの「三つの課題」をやりとげることを訴えました。

 第一は、一日も早く、政党ポスター、政策ポスターを張りきり、また宣伝カー・ハンドマイクを総出動させて、日本列島のあらゆる地域で目に見え、元気な声が届く宣伝を思い切って強めることです。

 第二は、比例代表選挙で650万の得票目標を必ず達成するため、公示予定日の前日、23日までに、「有権者の過半数対話」の「第一関門」として前回総選挙の対話と支持拡大の最終到達を突破することです。そのなかで党勢拡大の大きな上げ潮をつくることです。

 第三は、選挙勝利のための担い手を広げに広げる。公示までに全支部、全党員の立ち上がりをつくりだし、全国370万人の後援会員に「後援会ニュース」を届け、協力依頼をやりとげることです。

 この「呼びかけ」にもとづく活動の到達点は、政党ポスター・政策ポスターの張り出しは44万、49%です。対話数は513万、「第一関門」比で24%、支持拡大は260万です。

 全党の大奮闘によって、前向きの変化・飛躍が各地に起こっていることは重要です。

 同時に、全党的到達点そのものは、この延長線上の取り組みで推移するならば、私たちが参院選で掲げた目標の達成はおろか、現有議席からの後退もありうるという状況を突破するにいたっていないことも直視しなければなりません。

 勝利のためには、いま、そして一日一日、飛躍をつくることがどうしても必要です。常任幹部会の「呼びかけ」で提起した「三つの課題」を文字通りやりぬいて公示日を迎え、公示後にさらに爆発的な活動の飛躍をつくりだすことを、心から訴えるものであります。

勝敗を分けるカギ――選挙戦で力をだしてくれる人をどれだけ広げるか

 選挙戦の勝敗を分けるカギは何か。それは日々、宣伝・組織活動の飛躍をつくりだしつつ、それと同時並行で選挙戦の担い手を広げるための手だてをとりきることであります。選挙戦で力を出してくれる人を広げに広げることであります。ここに選挙戦の勝敗がかかっていることを、心から訴えます。

 これは、過去数回の国政選挙の最大の教訓の一つです。過去数回の国政選挙では、選挙本番、投票日が近づくにつれて、爆発的に活動のテンポがひきあがるという状況を、残念ながらつくりだせませんでした。

 2009年の総選挙を総括した9中総は、つぎのようにのべています。「公示後の対話と支持拡大の伸びは、この間の4回の衆議院選挙で最も少ないものでした。多くの地方機関から、『遅くとも公示日までに(得票目標の)「2倍の支持拡大」をやりぬき、さらに本番の飛躍を作り出せていれば、もっと前向きの結果になったことを実感する』という報告が寄せられていますが、ここに選挙活動の一つの弱点があったことを、直視しなければなりません」。このように私たちは教訓と総括を導き出したわけであります。

 過去数回の国政選挙で、公示後の対話と支持拡大が飛躍しきれなかった大きな要因は、担い手の広がりをつくりだせないまま公示日、そして投票日をむかえ、党と後援会の力をくみつくせなかったことにあります。この教訓を、今度の参議院選挙で生かそうではありませんか。党と後援会の底力を出し切る選挙にしていくために知恵と力をつくそうではありませんか。私は、そのためにつぎの三つの具体的な手だてをとることを呼びかけるものです。

 第一に、2万2千の党支部、40万余の党員が総決起する状況をつくりだしましょう。そのために、きょうの決起集会の報告をうけて、ただちに各級機関とすべての党支部が会議を開いて意思統一すること、一刻を惜しんでこの報告をすべての党員に届け、読んでもらうための手だてをとりきることを、訴えます。そのために報告の抜き刷りを、必要な党員数分、都道府県、地区におろす特別措置をただちにとるようにします。DVDも活用し、全党員への徹底を今度こそやりとげて、心一つに選挙をたたかおうではありませんか。

 第二に、公示日までに、370万人の後援会員に一人残らず、後援会ニュースと応援・紹介カードを届け切り、支持広げをお願いしましょう。全国的に、すべての後援会員が2人、3人と支持を広げていただければ、それだけで得票目標の650万は実現できます。

 5月23日投票でたたかわれた宮城県石巻市議選は、前回票を1・24倍にのばし、得票目標を突破し、過去最高得票で3人全員が当選しました。この選挙では、党員の十数倍もの後援会員、支持者が支持広げに協力してくれ、対話と支持拡大の6割以上を党外の人々が担ってくれました。こうした活動を、全国規模で展開しようではありませんか。

 第三に、「集い」「小集会」「街かど演説会」を、草の根から無数に開き、党の姿を語るとともに、選挙戦の担い手を広げる場としても位置づけましょう。全国の経験でも、「集い」の参加者は、気軽に頼めば、支持広げなどいろいろな面での協力をしてくれます。

 現在の「集い」の取り組みの到達は、開催支部33%、参加人数23万7千人です。これを100万規模に広げましょう。そのために、全国で3000人を超える地方議員のみなさんが予定候補者のみなさんと一体になって奮闘することを心から呼びかけたいと思います。

 わが党がもつ、支部、党員、後援会員、読者のネットワーク、地方議員のネットワークは、他党の追随を許さない力を持っています。この力をくみつくすならば、勝利をかちとることが必ずできます。都道府県役員、地区役員、補助指導機関のメンバーのみなさんは、臨戦態勢を確立し、支部に入り、支部とともに、この力をひきだすために、あらゆる知恵と力をつくしましょう。

 全党の同志のみなさん。残る4週間の一日一日、全党が心一つに歴史に残る大奮闘で、比例代表選挙での5議席絶対確保を必ずやりとげようではありませんか。47都道府県すべての選挙区で勝利をめざしつつ、大激戦となっている東京選挙区で小池政策委員長が競り勝つための全国からの支援を心から呼びかけるものであります。

 私たちの持つ草の根の力に自信と誇りをもって、担い手を広げに広げ、選挙戦のたたかいを末広がりに発展させ、勝利を必ずこの手につかみとろうではありませんか。以上をもって報告とします。ともにがんばりぬきましょう。