2009年8月20日(木)「しんぶん赤旗」

現局面の政治論戦の特徴と、浮き彫りになる日本共産党の値打ち

仙台市での 志位委員長の会見


 日本共産党の志位和夫委員長が19日、仙台市でおこなった記者会見は以下の通りです。


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(写真)記者会見する志位和夫委員長=19日、仙台市

 17日の日本記者クラブ主催の6党党首討論会、昨日の各党首の公示第一声などをふまえて、現局面の政治論戦の特徴と日本共産党の立場についてお話をさせていただきたいと思います。

自公政権退場後に、どういう新しい政治をつくるか――論戦の焦点はここに

 その第一の特徴は、私たちは、今度の総選挙で、自民・公明の政権を退場させよう、そのために自公政権と真正面から対決してきた日本共産党を伸ばしてくださいと訴えてきましたが、その点では、国民のなかで、自公政権退場という流れがすでに圧倒的になっていると思います。

 そういうもとで、政治論戦は、自公政権を退場させた後に、それに代わる新しい政治をどうするか、ここに焦点がすでに移ったと思います。この特徴は、一昨日の日本記者クラブ主催での党首討論会でもはっきり表れたと思います。国民のみなさんの関心も、自公政権後に向かいつつあると思います。

自公政治に代わる日本の将来像をしっかりさし示す党

 第二の特徴は、それでは、自公政権後の新しい政治をどうするかという問いに、どの党がきちんと答えているかという問題です。私は、この問いに対して一番、はっきりとした回答を示しているのは日本共産党だということが、論戦の中で浮き彫りになってきていると考えております。

 この点では、私は、論戦をつうじて、日本共産党の二つの値打ちが論戦の中できわだってきたと思っております。

 一つは、自公政治に代わる日本の将来像をしっかりと示しているということです。

 私たちは、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」をつくろうということを訴えております。世界で日本だけの四つの異常――労働の問題、社会保障の問題、教育費の問題、食料・農業の問題、この四つの異常を大本から正していこう、そのためにも「財界中心」の政治からの脱却が必要だという訴えをすすめています。

 私たちは、それらを実行するための財源についても、責任のある提案をしております。とりわけ、軍事費と大企業・大資産家を「聖域」とせずに、改革のメスを入れる、そうすれば消費税に頼らなくても暮らしを良くする財源はつくれるという道を堂々と示し、消費税増税反対を旗幟(きし)鮮明に掲げています。

 さらに私たちは、憲法9条を生かした「自主・自立の平和外交」ということを訴えてきております。とくに、今回の総選挙は、戦後初めて、8月という日本国民にとって特別の月におこなわれる選挙でありますので、平和の担い手がどの党かは、とりわけ大事な争点だと思います。

 私たちは、憲法9条にもとづく平和外交ということを主張するだけでなく、野党の立場ではありますが、実行もしてきたということも、たとえば米国のオバマ大統領への核兵器問題での書簡と返書をはじめ訴えておりますが、平和の守り手としてのわが党の役割も共感を広げつつあると感じています。

 そうした、私たちがめざす日本の将来像として、「『国民が主人公』の新しい日本を」ということを訴えています。このスローガンは、一見して当たり前のスローガンのように見えますが、これを堂々と言える党は、実は日本共産党だけなのであります。

総選挙後の新しい政治局面で「建設的野党」として奮闘する党

 もう一つの値打ちは、そうした日本の将来像を示すとともに、総選挙後の新しい政治局面での日本共産党の立場をはっきり示しているということです。一言で言えば「建設的野党」という立場であります。

 総選挙後には、民主党中心の政権がおそらくできるでしょう。その時に日本共産党は国民の利益にたって、積極的に政策をどんどん提案し、「良いものには協力する、悪いものにはきっぱり反対する」という立場で現実政治を前に動かす、この訴えが現状にそくしたものとして、共感を広げているように思います。

 私たちが「建設的野党」といっているのは、日本の政治の大本のゆがみ――「財界中心」「日米軍事同盟中心」というゆがみを正すということもあわせて、「建設的野党」の仕事として位置づけておりますが、ここも大切なところだと思います。

 こうした二つの値打ち――日本の将来像をしっかりと示す、総選挙後の新しい政治局面で「建設的野党」として現実政治を前に動かす、この両面でわが党の値打ちがきわだってきつつあることが、論戦の特徴として言えるのではないかと思っております。

自民党――政権担当能力を失ってしまった姿がまざまざと示されている

 第三の特徴は、それでは自民、民主はどうかという問題です。

 自民党の麻生総裁は、一連の発言、第一声などで、たとえば「子どもに夢を、若者に希望を、高齢者に安心を」とおっしゃるわけですけれども、それをすべて奪ってきたのが、ほかでもない自公政権であるわけです。それにたいする反省がない。反省がないから、一切の展望が示せていないと思います。自公政権なりの、「日本の将来をこうする」という将来像が何一つ示せない。

 もう一つの特徴は、麻生さんは訴えのなかで、財源の問題で民主党の攻撃をさかんにやっておられます。しかし、相手の攻撃はしても、それでは自分たちの財源政策をどうするのか。これについては何一つ語っておりません。「経済が成長すればそのうち」ということだけしか語っていません。語ろうとすれば消費税を増税するという話になりますから、街頭では語れない。財源政策について、他人の攻撃はするけれども自分は語れないという特徴があると思います。

 さらにもう一点、外交についての発言がまったくないことに驚かされます。すなわち、もっぱら、「北朝鮮の脅威」をあおりたてて、ソマリア沖、インド洋への自衛隊の海外派兵に固執する。憲法違反の海外派兵があたかも「責任力」の証しだとでもいうかのように誇示する。最も危険な「タカ派」の軍事路線を売り物にするということがすべてでありまして、“軍事あって外交なし”――これが特徴になっていると思います。

 自民党は、本当に政権担当能力を失ってしまった、政権党として退場させるしかないということを、強く実感させるものです。

民主党――論戦で現れてきた一連の問題点を率直に指摘したい

 もう一方の民主党はどうか。私は、民主党についても率直な問題点をのべさせていただきます。

 民主党は「官僚主導」の政治の脱却ということをおっしゃいます。そこで私は、先日の党首討論会で、あしき「官僚主導」から脱却するのは当然だが、それでは「財界主導」の政治と決別する意思はあるのかと聞きました。労働法制の規制緩和でも、社会保障費の削減でも、消費税増税でも、すべて国民の暮らしを痛めつけてきた震源地は財界ではないか、「財界主導」の政治と決別してこそ国民の暮らしを守れるのではないか、その意思はあるのかと聞きましたが、定かな答えは返ってきませんでした。

 「官僚主導」からの脱却はいっても、そこから先の日本をどうするか。そのビジョンを民主党は示し得ていないのではないかと率直に言わざるを得ません。これまでの自公政権の政治的枠組みであった、内政は「財界中心」、外交は「日米軍事同盟中心」という枠組みから抜け出すことができないという立場が、論戦をつうじて明らかになりつつあるというのが現状だと思います。

 日米FTA(自由貿易協定)の問題について、私たちは、日本の農業とコメをつぶすものとして厳しい批判をしておりますが、こういう弱点が現れてくるのも、いま言った政治の根本姿勢の問題点と深いかかわりがあると思います。

 もう一点言いますと、民主党は「子ども手当」の創設を訴えておられます。ただ、ここではその財源論が問題になるわけです。財源論については、民主党の鳩山代表の第一声などを拝見しましたが、一言もおっしゃっておられない。私たちは、子育て支援への経済的給付の拡充は必要だという立場ですが、民主党のように、配偶者控除や扶養控除廃止などの庶民増税との抱き合わせはとりません。財源論について民主党から責任ある説明がないというのも、一つの問題点だと思います。

 さらにもう一つ、民主党の鳩山代表の第一声を拝見しますと、平和外交への言及が一切ありません。これは、いわゆる「連立政権」ということを志向しておられ、その中で足並みがそろわないという問題もあるでしょうけれども、もっと根本には、「日米同盟を緊密にする」という、この党の立場があると私は考えております。

 こうした、いわゆる「二大政党」――自民党、民主党との対比でも、日本共産党の値打ちが際立つ状況が、いま政治論戦のうえで生まれてきているといえると思います。ぜひ、あと11日間、この立場を全有権者に伝えきって、必ず前進、躍進という結果を出したいと決意しているところでございます。