2008年7月13日(日)「しんぶん赤旗」

第6回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 志位和夫委員長が十一日、第六回中央委員会総会でおこなった幹部会報告は次の通りです。


写真

(写真)報告する志位和夫委員長=11日、党本部

 みなさん、おはようございます。CS通信をご覧の全国のみなさん、おはようございます。私は、幹部会を代表して、第六回中央委員会総会への報告をおこないます。

 この中央委員会総会の目的は、五中総から十カ月の情勢の進展とわが党の役割を大局的にとらえ、総選挙勝利をめざす諸活動を加速させることにあります。あわせて、若い世代のなかでの活動強化のための問題提起をおこないたいと思います。

一、綱領と情勢が響きあう―新しい劇的な進展

10カ月の情勢の進展は、5中総決定の正しさを鮮やかに実証した 

 報告の第一の主題は、昨年九月に開いた五中総以降の情勢の進展を、大局においてどうとらえ、どう活動するかについてであります。

 五中総決定は、参議院選挙での自民・公明の歴史的大敗のもとで、「国民が、自公政治に代わる新しい政治の中身を探求する新しい時代、新しい政治のプロセスが始まった」とのべ、「この政治プロセスの行方がどうなるかは、今後の奮闘にかかっていますが、大局的には国民の認識と日本共産党の立場――綱領の立場が接近してくる必然性があります」との展望をしめしました。

 それから十カ月の情勢の進展は、五中総決定の正しさを鮮やかに実証するものになりました。綱領と情勢が共鳴しあう、新しい劇的な進展が目の前で生じています。そのもとで日本共産党への新たな注目と期待が広がっています。これらの前向きの変化は、自然におこったものではなく、全党の攻勢的な奮闘によってつくられたものであります。「新しい政治のプロセス」を前にすすめるうえで日本共産党が果たしてきた役割に確信をもって、総選挙勝利のための活動に意気高くのぞみたいと思います。

「新自由主義」の矛盾が噴出―経済的民主主義に立った改革は避けて通れない 

 第一は、貧困打開と国民生活擁護、日本経済の民主的改革の方途についてであります。

綱領の立場に立った「攻めの論戦」と運動が、国民の共感を広げている

 この間、小泉・安倍内閣が推し進めてきた「構造改革」――弱肉強食の「新自由主義」の暴走がもたらした矛盾が、国民生活のあらゆる分野で噴き出しました。貧困と格差の拡大は、いよいよ深刻な社会問題となりました。

 福田内閣は、国民のきびしい批判を前に、「生活者重視」などと「構造改革」路線を「手直し」するかのようなポーズをとっています。しかし、後期高齢者医療制度を予定通り四月に強行実施したことに象徴されるように、この路線そのものをただす意思も能力もこの内閣にはありません。かといって居直ってさらに「構造改革」路線を加速することは、もはや困難になっています。破たんした路線を取り繕いながら、しがみつく――これが自民党政治の末期的な姿であります。

 わが党は、「新自由主義」の暴走と正面から対決してきた党として、「ルールある経済社会」をめざす「攻めの論戦」と運動をあらゆる分野で展開してきました。それがどれも国民のなかでの共感を大きく広げています。さらに国民のたたかいと一体となって、現実政治を前に動かす力を発揮しつつあります。

 どの分野でも、「ルールなき資本主義」――極端な大企業中心主義の異常をただす民主的改革を掲げる党綱領の立場が、国民生活を破局から救い、日本経済のゆきづまりを打開するうえで、避けて通れない道であることが、浮き彫りになりつつあります。

雇用問題――「ルールある経済社会」めざす綱領の立場で、財界戦略を追い詰める

 まず雇用問題について報告します。わが党は、貧困の根源に、雇用のルール破壊があることを告発し、人間らしく働ける労働のルールをつくるために力をそそいできました。派遣労働をめぐって、全国の労働者のたたかい、わが党の一連の国会質問などをつうじて、「潮目の変化」ともいうべき前向きの変化が起きていることは重要であります。

 一つは、派遣労働の規制緩和から規制強化へという流れの変化です。わが党は、現行の労働者派遣法を“派遣労働者保護法”へと抜本改正する規制強化の法案を提起しましたが、他の野党もそれぞれ派遣法改正案を提起し、政府・与党も「日雇い派遣の原則禁止」の法案を次期国会に提出することを決めました。

 いま一つは、大手製造企業のなかで、派遣社員を直接雇用の期間社員に転換するなど「派遣解消」の動きが、現実に生まれていることです。大規模に派遣労働を導入し、巨額の利益をあげてきたキヤノンが、わが党の調査団にたいして「年内に製造業での派遣労働を解消する」と表明したことを、報告しておきたいと思います。

 もちろん、今後のたたかいが重要であります。派遣労働の非人間的実態の抜本的改善につながる法改正が実現するかどうかは、今後のたたかいにかかっています。「派遣解消」を余儀なくされた大手製造企業では、雇い止めの不安につねにさらされる期間社員、請負など「使い捨て」雇用の矛盾が新たな形で問題になっており、正社員化への道を切り開くたたかいが、今後の重要な課題となっています。

 同時に、大きな流れでみますと、「ルールある経済社会を」という綱領の立場にたって、政府・財界の雇用戦略をここまで追い詰めてきた意義は大きいものがあります。この二十数年をふりかえると、労働法制の規制緩和が連続的にすすめられ、派遣労働の規制緩和はその象徴でした。財界は、さらに規制緩和をすすめよとの強い圧力をかけていました。その野望を挫折させ、転換を余儀なくさせた。さらにトヨタの過労死裁判での勝利、「名ばかり管理職」是正への動きなど、正社員のなかで深刻化する長時間・過密労働をただすたたかいでも、新たな前進がつくられました。これらは労働者・国民のたたかいの重要な成果であります。ここに確信をもって、人間らしい労働のルールをうちたてるたたかいの大きな発展をはかることを、心からよびかけるものです。

社会保障――後期高齢者医療制度を大争点におしあげた日本共産党の役割

 つぎに社会保障についてのべます。政府・与党は、小泉内閣以来の「骨太の方針」のなかに、社会保障費の自然増を毎年二千二百億円削減する政策をすえ、年金、医療、介護、障害者、生活保護など、社会保障のあらゆる分野で負担増・給付減を強行してきましたが、この政策の矛盾が国民的規模で爆発したのが、後期高齢者医療制度の強行でした。

 わが党は、この問題を国民的大争点におしあげていくうえで、大きな役割を果たしました。二〇〇〇年十一月の健康保険法改悪のさいの付帯決議で、高齢者医療を別建てにするという今回の制度の原型となる差別医療の方向が打ち出されたさい、その狙いを見抜いて反対をつらぬいた唯一の党が日本共産党でした。〇六年にこの制度が健康保険法改悪の形で提起されたときに、その本質を突く論戦をおこなったのも日本共産党でした。さらに、わが党は、制度実施を前にして、五中総決定で、実施凍結を求めるたたかいをよびかけ、高齢者差別という問題の核心を正面からただす論戦と運動にとりくんできました。

 こうしたわが党の一貫したたたかいが、国民運動との共同の力で、後期高齢者医療制度の問題を、国民的大争点におしあげ、野党四党共同での撤廃法案の提出と参議院での可決につながりました。撤廃法案は、継続審議とされています。秋の臨時国会で可決・成立させ、この希代の高齢者差別法を葬りさるために、あらゆる力をつくそうではありませんか。

 「骨太の方針」にもられた社会保障費抑制路線の根本には、「国際競争力」を名目に社会保険料の負担軽減を求めるという財界・大企業の身勝手な要求があります。わが党が、この問題で先駆的役割を発揮してきた根本には、財界・大企業の横暴勝手と正面からたたかう綱領の立場があることを強調しておきたいと思います。

食料と農業――共感が広がる「農業再生プラン」と、綱領の立場

 つぎは食料と農業の問題です。わが党が三月に発表した「農業再生プラン」は、世界的な食料危機のもとで、食料自給率向上にむけた国民的共同をよびかけた提言として、農業関係者はもとより、消費者団体、自治体関係者など、政治的立場の違いをこえて熱い共感を広げています。

 秋田県、島根県、北海道でおこなわれた中央委員会主催のシンポジウムをはじめ、県・地区・支部が開いた農業シンポジウム・懇談会は、三十七道府県八十六カ所、約一万人が参加し、どこでも日本農業再生をめざして真剣で熱気あふれる討論がかわされ、大盛況であります。

 「再生プラン」で提起した、農産物の価格保障の抜本的充実、多様な農業経営をすべて担い手として支援する、関税など国境措置の維持・強化、農業者と消費者の共同などは、どれも従来の自民党農政の根本的転換をせまるものですが、同時にどれもが一党一派のものではない、国民的要求を代弁したものとして、保守層もふくめて強い共感を広げています。

 世界的規模で食料危機が深刻化し、食料サミットで「食料増産」の宣言が採択されるなど、世界の動きとのかかわりでも、「再生プラン」の意義はいよいよ切実なものとなっています。

 わが党が「再生プラン」を提起した根本にも、綱領の立場があります。自民党政権は、戦後一貫して、「アメリカ農産物と競合するものはつくらせない」というアメリカの圧力、「アメリカに工業製品を買ってもらう見返りに農産物市場を明け渡せ」という財界・大企業の圧力にしたがって、国内の農業生産を縮小・破壊し、国民の食料を際限なく海外に依存する政策をとりつづけてきました。

 「再生プラン」は、アメリカと財界の合作による農業破壊とたたかいつづけ、綱領に「食料自給率の向上」、「農業を基幹的な生産部門として位置づける」ことを明記したわが党ならではの先駆的な政策体系であります。ここに確信をもって、日本農業再生にむけての国民的共同を広げるために、引き続き力をつくそうではありませんか。

地球環境――異常な大企業中心主義をただす日本共産党ならではの提案

 つぎに地球環境の問題についてのべます。わが党が六月に発表した見解――「地球温暖化の抑止に、日本はどのようにして国際的責任をはたすべきか」は、地球温暖化抑止は一刻の猶予も許されない人類的課題であり、この課題の解決のうえでは温暖化の危機を生み出してきた「先進国」がその主要な責任を果たすべきであるという、国際社会の共通の認識と合意をふまえて、日本政府に抜本的な政策転換を求めたものであります。わが党の見解には、多くの歓迎の声が寄せられています。

 わが党が見解で政府に抜本的転換を求めた三つの問題点――(1)温室効果ガスの中期削減目標の設定を先送りしつづけていること、(2)総排出量の八割を占める産業界に削減を義務づけず「自主努力まかせ」にしていること、(3)化石燃料偏重・原発だのみのエネルギー政策に固執していることは、どれも「ルールなき資本主義」――異常な大企業中心主義と深くむすびついた問題にほかなりません。

 見解では、地球環境を守ろうという国民一人ひとりの努力を真に実らせるためにも、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という風潮は、大企業の利潤第一主義のもとで意図的に持ち込まれてきたものであり、この風潮を大もとからただす仕事に本格的にとりくむことを訴えています。これも、この問題の主要な責任を、国民一人ひとりのライフスタイルに求める誤った議論への批判を念頭においてのわが党ならではの問題提起です。

 この見解も、大企業の民主的規制、「ルールある経済社会」をめざすという綱領の立場に立ち、欧州などでの先駆的経験の研究もふまえて、練り上げたものであり、そこに見解の生命力の源があります。ぜひ広く活用することを訴えるものです。

消費税問題――圧倒的世論で増税勢力を包囲する国民的たたかいをよびかける

 消費税問題について報告します。福田首相が、消費税問題について、「決断のとき」と発言しました。ふだん「決断」などという言葉をあまり使わない首相のこの発言は、増税に一歩踏み込んだものとして、きわめて重大であります。

 消費税増税勢力がねらっているのは、社会保障改悪に反対する世論を逆手にとって、「消費税を増税すれば社会保障の財源が確保できる」という議論への支持を広げることであります。「年間二千二百億円の社会保障費抑制はもはや困難であり、拡充のために財源が必要」、「基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げの財源が必要」など、「社会保障財源」が消費税増税の口実として、最大限に動員されています。国民を福祉切り捨てで“兵糧攻め”に追い込み、音をあげさせて増税をおしつけようというのが相手の魂胆であります。

 これにたいする太い筋での批判が決定的に重要になっています。消費税が強い逆進性をもった福祉破壊税制であること、大企業は一円も負担しない最悪の不公平税制であること、財源というなら大企業や大資産家へのゆきすぎた減税、米軍への「思いやり予算」や軍事費にこそメスを入れる必要があることなどを、広く明らかにしていくことが大切です。

 増税勢力の大キャンペーンにもかかわらず、国民世論は増税反対が世論の多数となっていることは重要です。先日、NHKが実施した世論調査では、「増え続ける社会保障費の財源を確保するため」という条件付きでも、増税賛成はわずか22%、反対が51%と過半数に達しました。国民は、これまでも何度も「福祉のため」という口実で増税をおしつけられながら、福祉切り捨てが続いた事実を体験しています。またどんな理由をもってしても、こんなに貧困が深刻化し、生活の明日への展望がみえないもとで、消費税増税などとんでもないという気持ちが、多くの国民の実感だと思います。

 福田首相は、「国民世論がどう反応するか、一生懸命に考えている」とものべました。草の根からの運動を広げ、消費税増税反対の圧倒的世論をつくりだし、増税勢力を包囲する国民的たたかいを大きく広げることを、中央委員会総会として、強くよびかけるものです。

投機マネーと物価高騰――国際的規制と生活防衛の緊急対策を求める

 つぎに投機マネーと物価高騰についてのべます。原油と穀物、物価高騰が、庶民の生活に深刻な打撃をあたえています。今日の事態は、米国のサブプライムローンの破たんにつづき、株価とドルの下落で行き場を失った投機マネーが、原油や穀物市場に流れ込み、その価格をつり上げることによってもたらされているものであります。

 事態打開のための対策が必要です。まず国際的には、この問題の“主犯格”であるヘッジファンドに対して国際社会が一致して直接規制にのりだすこと、原油や穀物など人類の生存の土台となる商品に対する投機の規制をおこなうことが緊急に必要です。短期的に移動を繰り返す投機マネーに適正な課税をおこなうことも検討されるべきです。アメリカに追従して、投機マネーの国際的規制に背をむけつづけている日本政府の態度を、根本から転換することを、わが党は強く求めます。

 同時に、国民生活防衛の緊急対策が必要です。最も深刻な被害をうけている農業関係者、漁業関係者、中小・零細企業などにたいして、直接補てんで燃油の価格を下げること、減税措置をおこなうことなど、緊急対策を求めます。福祉・医療・教育などの分野にも、政府としての負担軽減策を要求するものです。

マクロ経済政策―「大企業から家計へ軸足を移せ」の主張が広く共鳴しあう

 経済問題の最後に、マクロの経済政策についてのべます。内閣府が発表した六月の「月例経済報告」は、景気は「足踏み状態」であり「一部に弱い動きがある」と、事実上、景気後退が始まったことを認めるものとなりました。景気後退への暗転は、「外需頼み、内需ないがしろ」という日本経済の脆弱(ぜいじゃく)な体質と深くかかわっています。この間、「戦後最長の経済成長」が続いたといわれますが、それは輸出頼みの「成長」であり、「繁栄」したのは一握りの輸出大企業でした。内需とくに家計部門は低迷がつづき、国民の暮らしは苦しくなる一方でした。その結果、アメリカ経済の失速とともに、日本経済も後退局面に入りました。

 こうした「外需頼み」の経済は、「構造改革」路線がつくったものにほかなりません。この間、自公政権は、「強いものをより強くすれば日本経済も強くなる」といって、大企業には、労働法制などの規制緩和、法人税減税など、いたれりつくせりの応援をしながら、国民には賃下げ、庶民増税、社会保障切り捨てなど、容赦なく犠牲をおしつけてきました。「大企業が栄えれば、いずれ家計におよぶ」といいつづけてきたわけですが、家計は少しも良くならないまま、景気後退へと暗転しました。すなわち「内需と家計を犠牲にして大企業の競争力を高める」という「構造改革」路線がゆきづまったのが、今日の姿にほかなりません。

 日本経済の健全な発展のためには、「外需頼み」から内需主導に、そして大企業から家計・国民へ――経済政策の軸足の転換が強く求められています。そのことの重要性は、経済人からも、また少なくない経済専門家からも、共通して主張されるようになってきつつあります。ここでもわが党の綱領と情勢との響きあいを実感いたします。

 雇用、社会保障、食料と農業、地球環境、消費税、投機マネー、マクロ経済政策――どの問題でも、「こんな社会でいいのか」というわが党の根本的な問いかけ、綱領の立場にたったわが党の提言・主張が、国民多数の気持ちと合致し、情勢と響きあっています。日本の前途を真剣に考えるならば、綱領に明記された経済的民主主義にたった改革は避けて通れません。そのことが、この十カ月の情勢の進展のなかで、生き生きと実証されていることを全党の確信にし、総選挙勝利にむけて意気高く奮闘しようではありませんか。

大きく変わる世界―アメリカいいなり政治をつづけていいのか

 第二に、アメリカ従属政治から脱却し、平和日本への転換を求めるたたかいについて報告します。

一国覇権主義の破たんと孤立――戦争と平和の力関係が大きく前向きに変化

 この問題を考えるさいに、まず広く目を向ける必要があるのは、戦争と平和をめぐる世界の力関係が、大きく前向きに変化しているということであります。

 アメリカの一国覇権主義の政策と行動が、世界で孤立し、力を弱めています。とくにアフガニスタンとイラクでの先制攻撃戦略の破たんは、きわめて深刻です。

 アフガニスタンでは、軍事力によってタリバン政権を打倒したものの、テロと暴力の悪循環は深刻化し、タリバン勢力が復活し、アフガニスタン政府自身がタリバンとの対話路線をすすめるなど、米国の軍事支配は深刻な破たんをきたしています。イングランド米国防副長官は、「アフガニスタンの状況を鑑みれば、例えて言えば、朝鮮戦争からベルリンの壁崩壊に至る期間(四十年間)と匹敵するほど長く続く」と前途を嘆きました。

 イラクではどうか。侵略戦争とそれに続く軍事占領は五年をこえ、アメリカの歴史上、ベトナム戦争につぐ二番目に長い戦争となり、戦費支出は第二次世界大戦につぐものとなりました。しかし、テロと暴力の連鎖は続き、米国世論の大多数が求める米軍撤退の糸口さえ見えません。さらに、米軍主導の多国籍軍駐留の根拠となってきた国連安保理決議が今年十二月で期限切れになります。ブッシュ政権は、米軍駐留を継続するために、イラク政府との間で米軍の地位協定を締結するための交渉をすすめていますが、イラク連邦議会の過半数の議員が、米軍撤退を断固として求める書簡を米国議会に送るなど、イラク国民との矛盾は深まる一方であります。

 アメリカは、アフガニスタンとイラクを軍事力で支配することに失敗したばかりか、自らが後ろ盾になってつくった政権・議会との関係でも、大失敗をとげつつあるのであります。

広がる平和の地域共同体――ユーラシア大陸でも、南北アメリカ大陸でも

 その一方で、国連憲章にもとづく平和秩序をめざす流れが、世界の広大な地域を覆う巨大な流れとなっています。

 アジアでは、ASEAN(東南アジア諸国連合)が平和の地域共同体の基礎に位置づける「東南アジア友好協力条約」(TAC)への参加国が、イラク戦争開始の二〇〇三年以後、ASEANの域外の諸国に急速に拡大し、地球人口の57%を占める二十四カ国が参加し、ユーラシア大陸のほとんどを覆う巨大な平和の流れをつくりだしています。

 南北アメリカ大陸でも、米国の孤立と平和の地域共同体への動きがすすんでいます。今年三月に、コロンビア軍によるエクアドル国境侵犯事件がおきました。コロンビアと米国がこの越境攻撃をコロンビアで武装闘争を続ける「テロ集団」にたいする「自衛権」だと主張したのに対し、南北アメリカ大陸のすべての諸国が参加する米州機構(OAS)外相協議会は、主権尊重、内政不干渉などの原則を強調し、コロンビアの行動を「拒否する」との決議を採択しました。最後はコロンビア自身までこの決議に賛成の態度に転換するなかで、無法行為の擁護に固執しつづけたのはアメリカただ一国になりました。南北アメリカ大陸でも、米国の孤立は無残をきわめています。

 アメリカの有力外交シンクタンク「外交問題評議会」のハース会長は、外交専門誌の論文で、「一極支配の時代は終わった」と断言するとともに、新しい世界秩序は、いくつかの国が覇権を争う「多極化」でもなく、多数の国々が世界政治の担い手になる「無極化」を特徴としていると主張しています。どんな超大国も一国の力をもって世界を支配できる時代ではない、すべての国々が世界政治の担い手として生き生きと活動するところに、二十一世紀の特質があるというのが、わが党の綱領が明らかにしている世界論ですが、そのことがアメリカの有力外交シンクタンクからも言われているのは注目されます。

 世界はここまで大きく変わっているのです。こういう世界にあって、異常なアメリカ追従、軍事偏重の政治をいつまでもつづけていいのか。このことを正面から問うときであります。

海外派兵――世界の流れに逆らい、憲法を踏みにじるくわだてに反対する

 いくつかの直面する問題について報告しますが、まず海外派兵の問題です。アフガン戦争を支援する新テロ特措法は来年一月十五日、イラク特措法は来年七月末に期限切れになりますが、自公政権は、戦争支援の活動継続のための特措法延長の策動をすすめるとともに、海外派兵の恒久法を制定する動きを強めています。

 アフガン戦争支援をめぐっては、ゲーツ米国防長官がアフガニスタン本土で自衛隊が活動することへの強い期待をのべ、それに呼応して町村官房長官は、「海上自衛隊の給油活動だけでなく、陸上も含めて考える」と表明しました。しかし、アフガニスタンの陸上で国際治安支援部隊(ISAF)がおこなっていることは、タリバンへの武力による掃討作戦であり、自衛隊派兵は憲法が禁止した海外での武力行使そのものとなります。

 イラク戦争支援をめぐっては、航空自衛隊による米軍支援活動を憲法違反と断じた画期的な名古屋高裁判決が下され、これが確定判決となりました。さらに、国連安保理決議が今年末に失効すれば、多国籍軍の一員として活動している自衛隊の派兵根拠もなくなります。自公政権は、米国政府に追従してイラク政権と地位協定を締結することを模索していますが、それはイラク国民の圧倒的多数が願っている外国駐留軍撤退にまっこうから逆らう立場に日本を置くことになります。

 海外派兵をめぐっては、アメリカの要求にこたえて、自民党と公明党、さらに民主党もくわえた恒久法をつくる動きに対しても、強い警戒が必要です。

 アメリカの一国覇権主義が世界で無残な破たんをとげているもとで、アフガニスタンであれ、イラクであれ、世界のどこであれ、破たんした軍事的覇権主義につき従って海外派兵をすすめることが、いかに世界の流れにさからうものであるか、これは明りょうです。憲法を踏みにじる海外派兵のあらゆるくわだてに反対し、自衛隊の撤退を求めるたたかいの発展に力をつくそうではありませんか。

米軍基地――追い詰められているのは日米両政府、連帯したたたかいの発展を

 つぎに米軍基地問題についてのべます。日米両政府による「米軍再編」の「最終報告」から二年が経過しました。自公政権は、「再編交付金」という「札束の力」で、基地を抱える自治体と住民を分断、懐柔、屈伏させて、基地強化をおしつけようとしています。しかし、曲折はありますが、こうした圧力に屈せず、全国各地で、基地強化反対の粘り強いたたかいがすすんでいます。

 このなかで、「米軍再編」協議の米側代表を務めたローレス前米国防副次官が、「福田政権になってから同盟変革(再編)の実施が漂流している。普天間飛行場の移設がその例だ。……この合意はすべてが連動する複雑な機械のようなもので、一つのパーツが凍結すれば、全体が凍結してしまう」とのべるなど、思い通りにならないいら立ちと危機感が、「米軍再編」推進勢力からも伝わってきます。「米軍再編」が漂流しているのだったら、そのままアメリカに帰ってもらいたいものであります。

 こうして大局で見れば、追い詰められているのは、日米両政府です。沖縄県内の基地たらい回しを決めたSACO合意から十二年たちますが、あの名護の海に予定されている新基地建設のための杭(くい)一本も打たせて来なかった沖縄県民のたたかいは素晴らしいものです。曲折をへながら頑強に基地強化反対闘争を発展させている山口県岩国、神奈川県横須賀、座間のたたかいなど、全国のたたかいが連帯して、基地のない日本をめざすたたかいを大きく発展させるときだということを訴えるものであります。

憲法・教育問題――国民世論の画期的変化を確信に、憲法擁護の多数派結集へ

 つぎに憲法・教育問題についてのべます。

 この間の画期的な変化は、憲法擁護の声が、国民多数派になりつつあることであります。四月に発表された読売新聞の憲法に関する連続世論調査の結果は、改憲反対が43・1%、改憲賛成は42・5%と、反対が賛成を実に十五年ぶりに上回りました。九条については、改憲反対が60%と、賛成の31%の実に二倍に達しました。

 憲法をめぐる世論動向のこうした前向きの変化は二〇〇四年から始まっていますが、二つの要因が根本にあります。

 一つは、二〇〇四年に「九条の会」が結成され、七千をこえる草の根の会をもつ一大潮流に成長したことが、世論に大きな変化をおよぼしていることであります。

 いま一つは、二〇〇三年に開始されたイラク戦争が破たんをとげるもとで、国際紛争の平和解決の理念を極限にまでおしすすめた日本国憲法第九条の値打ちが内外で再認識されていることであります。

 自公民が憲法審査会を始動させる動きを合作で強めるなど、逆流はいささかも軽視できませんが、国民がつくりだした画期的変化に確信をもって、憲法擁護のゆるがない多数派を結集するために、さらにたたかいを前進させることをよびかけるものです。

 改悪教育基本法にもとづく、関連法の改悪、全国いっせい学力テスト、新学習指導要領、「教育振興基本計画」のおしつけは、教育現場での矛盾と困難を深めています。教育基本法改悪反対で発揮された国民的運動の広がり、そのエネルギーは、たいへんに素晴らしいものがありました。このエネルギーに確信をもって、憲法と教育の条理にたった民主的教育をめざすとりくみを、さらに発展させることが重要だということも強調したいと思います。

核兵器廃絶――世界の本流に逆らう日本政府、核固執勢力を包囲するたたかいを

 つぎに核兵器廃絶の問題についてのべます。わが党が原水爆禁止運動とともに一貫して掲げてきた核兵器廃絶の声は、国際的な反核平和運動、非同盟諸国、新アジェンダ連合諸国とも連帯して、世界の大きな本流となっています。このなかで、かつてアメリカの核戦略を推進した多数の元米高官や、NATO加盟国政府首脳のなかからも、「核兵器のない世界」のために行動をおこそうという声がくり返しあがっていることは注目されます。

 こうした平和の激流がおこるもとで、被爆国の政府でありながら、「核抑止力」論にしがみつき、米国の「核の傘」依存を正当化し、核兵器廃絶を正面から掲げようとしない日本政府の逆行ぶりはきわだっています。原爆症認定問題で、国が敗訴をつづけながら、あくまでも被爆者と争うという情けない態度をとりつづけている背景にも、核兵器固執の姿勢があります。核兵器廃絶のたたかいをさらに前進させ、核固執勢力を日本でも世界でも包囲・孤立させるために、ひきつづき力をつくそうではありませんか。

北朝鮮問題――国際社会の努力と、日本政府のとるべき基本姿勢について

 外交問題の最後に、北朝鮮問題について報告します。北朝鮮は六月二十六日、六カ国協議の議長国である中国にたいして、核開発計画の申告書を提出しました。これを受けて米国政府は、北朝鮮をテロ支援国家指定から解除する手続きに入りました。わが党は、この動きについて、「朝鮮半島の非核化に向けた一歩として歓迎する」とのべるとともに、「これが北朝鮮の核兵器の完全放棄につながることを強く期待する」と表明しました。

 この動きにかかわって、「核問題が先行すると、拉致問題が取り残される」とする議論があります。しかし、これは国際社会が努力している方向を誤解したものであります。

 いま各国が努力している基礎にあるのは、二〇〇五年九月の六カ国協議の合意ですが、そこには六カ国協議の目標として、(1)平和的な方法による朝鮮半島の非核化、(2)米朝の国交正常化、日朝平壌宣言にもとづく日朝の国交正常化、(3)北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の三点を明記しています。そして、それを達成する方法は、「六者が『行動対行動』の原則に従い、意見が一致した事項について段階的に実施する」ことだとされています。すなわち、一方が前向きの行動をとれば、他方も前向きの行動でこたえる。すべての懸案の同時解決を目指すのではなく、一致した問題から段階的解決をはかる。そうした方法で問題の包括的な解決をはかり、北東アジア地域の永続的な平和の枠組みをつくりあげる。この立場で努力することが、関係各国に強く求められていることであります。

 この合意にてらせば、今回の米朝の動きは、朝鮮半島の非核化と、米朝の国交正常化にむけた一歩前進であり、これらの課題が先行して前進することは、拉致問題を含む日朝間の懸案を解決する妨げになるものでなく、その解決を促進しうるものであります。

 わが党は、日本政府が、つぎの基本的立場で外交交渉にのぞむことが大切であると考えます。

 第一は、いま進みつつある朝鮮半島の非核化への前向きの流れを積極的に促進する姿勢をとることであります。北朝鮮の核兵器開発で最も脅威を受けるのは日本です。日本がこの問題の解決に率先してとりくむ姿勢をしめすことは、拉致問題にたいする国際的理解と支援を高めるうえでも役立つでしょう。

 第二は、日朝平壌宣言にもとづいて核、拉致、過去の清算などの諸懸案を包括的に解決する外交戦略をもつことであります。この点では、米国政府が、「圧力一辺倒」から転換し、「行動対行動」「段階的解決」という原則にたった外交戦略をもち、事態を一歩前進させたことは、注目すべきであります。

 わが党は、早くから、六カ国協議の枠組みを、当面する核問題の解決だけで任務を終わりとせず、北東アジア地域の平和と安定を保証する枠組みに発展させることが重要だと指摘してきましたが、関係各国の努力によってそうした方向への前進がはかられていることは、重要であります。この努力がさらに前進し、「平和の北東アジア」への展望が開かれることを、心から願うものであります。

 平和をめぐっても、異常な対米従属を打破するとともに、国連憲章にもとづく平和秩序をめざす綱領の立場が、世界と日本の動きと響きあい、北東アジアで進展している流れとも響きあう、劇的な情勢が展開していることに、大いに目をむけて奮闘しようではありませんか。

「資本主義の限界」論と党綱領の立場

 つぎに、いわゆる「資本主義の限界」論と党綱領の立場について報告します。

背景には世界と日本の大きな変化がある

 この間、わが党が、アメリカ・財界中心という自民党政治の古い枠組みを問う論戦をすすめるなかで、そうした古い枠組みのさらに土台にある資本主義そのものの是非が問われる状況が生まれてきました。

 心ある財界人から「資本主義もゆきつくところまできた。新しい社会主義を考えなければならない」ということが言われ、『蟹工船』が若者を中心にブームとなり、マルクスに新しい関心が集まり、テレビ局が「資本主義は限界か」という企画をたて、その答えを日本共産党に求めてくる状況が生まれました。これは、わが党がこれまで体験したことのない新しい状況であります。そして、こうした動きがおこってきたことは偶然でなく、つぎのような世界と日本の大きな変化が背景にあります。

〈資本主義の矛盾が、 世界的な規模でかつてなく深いものに〉

 一つは、資本主義の矛盾が、世界的な規模でかつてなく深いものとなっていることです。綱領は、二十一世紀の世界情勢にかかわって、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」が、「かつてない大きな規模と鋭さをもって現われている」とのべていますが、そのことが、世界的規模での貧困と飢餓の拡大、投機マネーの暴走による原油と穀物の高騰、英国政府の報告書が「いまだかつて見られなかった市場の失敗」と断じた地球温暖化問題など、多くの人々にとって身近な目に見える問題となって実感されています。

 北海道洞爺湖サミットでの主要八カ国の合意は、最大の焦点となった温暖化問題について、先進国としての削減目標は、中期目標はおろか、長期目標も示せず、先進国としての責任を放棄するものとなりました。投機マネーも規制に踏み込むことはできませんでした。人類の生存にかかわる重大問題に、処方せんを示しえない姿が浮き彫りとなりました。

〈ニセの「社会主義」の看板を掲げていたソ連の崩壊〉

 二つめは、ニセの「社会主義」の看板を掲げていたソ連が崩壊したことによって、「ソ連=社会主義」という誤解と偏見をとりのぞく基盤が広がり、資本主義の矛盾がみえやすくなったということです。ソ連が存在していた時代には、資本主義の矛盾に直面していた人々の関心が、マルクスや科学的社会主義に向かわずに、「ソ連を見よ」と目が曇らされていたのが、ソ連の崩壊によってこの曇りが晴れ、見晴らしが良くなった。

 日本共産党が、ソ連の覇権主義と不屈にたたかい、科学的社会主義の立場に立脚して元気に活動していることが、世界の資本主義の矛盾の深まり、ソ連崩壊という状況のもとで、新しい注目をあびているのであります。

〈日本では「ルールなき資本主義」「新自由主義」で資本主義の害悪がむきだしに〉

 三つめに、とくに日本では、「新自由主義」「市場原理主義」の経済政策が強行されるもとで、貧困が拡大し、投機マネーは野放しにされ、環境問題では無為無策など、「ルールなき資本主義」がいっそう野蛮な姿をとってあらわれ、資本主義の本性と害悪がむき出しになっています。

 経済政策をめぐっても、国家が経済に介入することで資本主義の矛盾を緩和しようとしたケインズ主義がゆきづまり、それに代わった「新自由主義」も破たんを深めるもとで、その指導理論を失ってさまよう状況があります。

綱領はこの問題でも抜本的回答をしめしている

 このように、いま起こっている「資本主義の限界」という議論、それと結びついた日本共産党への新しい注目は、一過性のものではなく、世界と日本の大きな変化を背景としたものであり、社会と経済の枠組みを根本から問う新しい時代が始まったことを予感させるものであります。こうした情勢の奥深い進展を大きくとらえて、それへの抜本的な回答をしめす綱領の立場を大いに語るときであります。

〈日本――民主的改革で「ルールある経済社会」を
世界――主権尊重の民主的な国際経済秩序を〉

 第一に、日本で、まずめざすべきは、資本主義の枠内での民主的改革であります。経済の分野では、「『ルールなき資本主義』の現状を打破し、……ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点も踏まえつつ、国民の生活と権利を守る『ルールある経済社会』をつくる」ことにあります。

 国際的には、綱領に明記している「多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざす」という立場が重要になってきます。いま焦点となっている貧困、投機、環境などの問題の解決も、まずこうした立場にたって、国際社会が共同して多国籍企業・国際金融資本への規制をはかることが、強く求められます。また、すでに世界の現状とあわなくなっているIMF(国際通貨基金)、世界銀行、WTO(世界貿易機関)などの民主的改革も、重要な課題となっています。

〈地球的規模で資本主義の是非が問われる時代〉

 第二に、二十一世紀が、資本主義という社会体制のあり方が地球的規模で問われる時代となっていることであります。

 発達した資本主義の国々には、「世界と地球の管理能力」が問われています。これらの国々が、貧困、投機、環境などの問題に対して、資本主義のもとでぎりぎりの努力をすすめたとしても、その限界はおのずと明らかになり、そのなかから資本主義を乗り越えた新しい社会をめざす流れが成長してくるでしょう。

 資本主義の枠内では経済的発展の前途を開きえないでいる発展途上国のなかからは、ラテンアメリカの一連の国々に見られるように「新しい社会主義」への模索が始まっていますが、これらは選挙によって国民の多数の支持をえて社会主義をめざす人類史上初めての試みとして、注目すべきであります。

 一方、中国、ベトナム、キューバなど、社会主義への独自の道を探究する国々には、貧困や環境問題など、新しく提起されている人類的課題をどう解決するか、いわば資本主義に代わる「体制交代能力」が問われてきます。

綱領がしめす未来社会論、党名に込めた理想を大いに語ろう

 それぞれの流れの中から資本主義を乗り越えた未来社会への流れがうまれてくるだろうというのが綱領の展望です。党綱領はその最後の章を、「日本共産党は、それぞれの段階で日本社会が必要とする変革の諸課題の遂行に努力をそそぎながら、二一世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進の世紀とすることをめざして、力をつくす」という力強い言葉で結んでいます。「ルールなき資本主義」のもとで生起している問題の解決の方途をしっかりとしめすとともに、綱領がしめす未来社会論、日本共産党という党名に込められた理想とロマンを大いに語ろうではありませんか。

二、総選挙勝利をめざす活動の到達点と強化方向

解散・総選挙にのぞむ姿勢と、次期党大会の時期について

 報告の第二の主題は、総選挙勝利をめざす活動の到達点と、強化方向についてであります。

 解散・総選挙の時期は、予断をもっていえません。いついかなる時の解散となっても対応できる態勢をととのえつつ、選挙が延びれば延びただけ、選挙勝利をめざす活動を末広がりに発展させ、地に足をつけてやるべきことをやりきる姿勢でのとりくみが大切であることを、まず強調しておきたいと思います。

 次期党大会の時期について提案します。党大会は、規約では「二年または三年のあいだに一回ひらく」とされています。来年の一月で、第二十四回党大会から三年が経過することを考慮し、第二十五回党大会は、来年の一月に開催することを提案します。規約では、大会の招集日と議題は、おそくとも三カ月前に全党に知らせることとされており、正式の招集は、つぎの中央委員会総会でおこないます。もちろん、年内の解散・総選挙、来年初頭の解散・総選挙などの可能性も排除できません。来年一月の党大会開催と矛盾する情勢の展開となったさいには、規約にそくして招集の延期の措置をとることになります。

 今年の後半を、総選挙勝利をめざす活動を飛躍させるとともに、第二十四回党大会決定にもとづく実践の総仕上げをはかるという見地で奮闘したいと思います。

 総選挙をたたかう方針は、ひきつづき五中総決定が基本的指針になります。報告では、総選挙勝利をめざす政治的構え、五中総決定にもとづく実践の教訓、打開すべき問題点、活動の強化方向などについてのべます。

総選挙勝利をめざす政治的構え―政権の担い手の選択でなく、政治の中身の変革を

 まず総選挙勝利をめざす政治的構えについて報告します。

自公政権に正面から対決するとともに、政治の中身の変革を大いに語ろう

 きたるべき衆議院選挙では、政権交代の現実的な可能性もはらむもとで、「自民か、民主か」の「政権選択選挙」の大キャンペーンは、これまでのどの選挙よりも激しいものとなるでしょう。こうしたもとで、わが党は、総選挙で問われる焦点は、政権の担い手の選択ではなく、政治の中身の変革だ、日本共産党をのばしてこそ国民の利益にかなった政治の中身の変革の道が開ける、ということを、攻勢的に押し出してたたかいます。

 福田・自公政権の特徴は、自民党なりに「日本をこう変える」という旗印を何も示せなくなっているところにあります。

 これまでの政権は、「構造改革」、「美しい国」など、その内実は反動的なものでしたが、まがりなりにも「日本をこう変える」という旗印を掲げて選挙をたたかいました。ところがそうした旗印もないまま、自民党政治をここまで行き詰まらせたアメリカ・財界中心の政治にしがみつき、暮らしと平和を壊す間違った政治をつづけている。これが政治的衰退を極めた今日の自公政権の姿であります。

 それだけに、自公政権にのぞむ姿勢としては、わが党が、この政権に対する国民の怒りの代弁者になって、自公政治にきっぱりと反対をつらぬくのは当然ですが、それだけではたりません。

 「日本共産党は、日本の政治をこう変える」という、政治の中身の変革を、直面する熱い問題での打開策でも、日本の政治の大きな針路についても、「攻めの姿勢」で大いに語ってこそ、自公政治に怒りをつのらせ、この閉塞(へいそく)状況からの脱出を願っている国民の気持ちをつかむことができます。わが党は、この間、雇用、社会保障、農業、環境、税制、教育、平和、憲法などあらゆる分野で、綱領に立って日本改革の方針を豊かに発展させてきましたが、この努力をさらにつづけ、多くの国民のものにすることが重要であります。

民主党の政治的立場への批判も、日本改革の方針を太く語ることと一体で

 民主党の最大の問題点は、自公政権との「対決」を口にしても、自民党政治に代わる政治の中身を示すことができないことにあります。

 昨年秋におこった「大連立」の動きは、この党が、自民党と政治路線において「同質・同類」の党であること、自民党との「連立政権」を選択肢とする党であることを、みずから示すものとなりました。

 その後、民主党は、「対決」戦術を前面に押し出し、「政権交代をすれば政治は変わる」ということを、党の唯一の「売り」としていますが、「政権交代」によって政治がどう変わるのか、その中身は明らかにできません。そこから、国会対応でも、国民要求に立った国会論戦で政府・与党を追い詰めるのではなく、審議拒否、参議院での数の力を頼んだ強行採決、党略的な思惑を優先させた問責決議など、「政局」最優先の対応に終始しています。また「対決」戦術と同時並行で、自公と民主とが水面下の談合によって宇宙基本法など憲法違反の悪法を強行し、憲法改定の動きを推進するといった危険な動きもおこっています。

 ですから、ここでも日本共産党の日本改革の方針を太く語ることと一体に、民主党のこうした政治的立場の批判をすすめてこそ、国民の共感を広げることができます。

 たとえば、民主党は「国民の生活が第一」と主張していますが、それが真実であるかどうかの試金石は、財界・大企業への態度にあります。ところが、六月におこなわれた民主党と日本経団連の「政策を語る会」で、民主党側がのべたのは、「法人税の引き下げ」、「消費税の引き上げ」、「農産物輸入自由化」など、財界の要求に迎合することでした。こんな姿勢でどうして「国民の生活が第一」といえるか。こうした民主党の姿勢にたいして、大企業に社会的責任と負担を果たさせることによって、国民生活の向上をめざす日本共産党の立場を大きく押し出しながら、事実にもとづいた批判をすすめていくことが必要であります。

 また、民主党は「平和」を口にしますが、それが本物であるかどうかの試金石になるのは、「日米同盟」絶対論への態度にあります。民主党は、インド洋に自衛隊を派兵する新テロ特措法に反対しましたが、海外派兵の恒久法の制定などを規定した政府案以上に危険な「対案」を提出し、自公政権を助ける役割を果たしました。アフガンへの陸上自衛隊派兵という構想を民主党が最初に打ち出したことが、政府・与党に陸上自衛隊派兵にむけた検討をうながす結果となりました。憲法改定をめざす「新憲法制定議員同盟」の役員に、自民・民主の現職幹事長がそろって名を連ねていることも重大であります。これらの根底にあるのは、「日米同盟」絶対論という古い政治の枠組みから、民主党が一歩も出ることができない党であるということであります。ここでも、日米安保条約を解消し、独立・平和の日本をきずくという綱領の立場を大きく押し出しながら、民主党への批判をすすめることが大切であります。

 政権の担い手の選択でなく、政治の中身の変革を――きたるべき総選挙の焦点はここにあることを正面から訴え、自民、民主が政治の中身を変える意志も能力もないということを事実で示しながら、わが党のめざす政治の中身の変革を、直面する熱い問題での打開策でも、日本の政治の大きな針路についても、「攻めの姿勢」で大いに語りぬいて、勝利をこの手につかもうではありませんか。

「大運動」が生命力にあふれ大きく発展―100万をこえる規模をめざそう

「大運動」のとりくみの到達点について

 五中総決定にもとづく総選挙勝利をめざすとりくみとして、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」は、生命力あふれる運動として豊かに発展しつつあります。「大運動」の到達点は、支部主催の「集い」は、開催支部が53・9%、開催数がのべ一万九千九百四十九回、参加人数は約三十六万八千人となりました。都道府県・地区主催の演説会は、農業シンポジウムなども含めて、七百四十回の開催で、約二十一万七千人が参加しました。「集い」と演説会の合計で、「大運動」の参加者は約五十八万五千人となりました。わが党の歴史の中でも、綱領そのものの内容を広く国民と語りあう運動が、こんなにも大きな規模で発展したのは初めてのことであり、画期的な意義をもつ到達点であります。

「大運動」が生み出した3つの変化

 この運動からくみだすべき教訓は、きわめて多面的で豊かなものですが、この運動に全党がとりくんだことで、つぎの三つの変化が生まれていることを報告しておきたいと思います。

〈党と国民の関係――深い理解、信頼、絆が広がる〉

 第一は、党と国民との関係で生まれている変化であります。「集い」は、どこでも国民の切実な関心・要求を入り口にしながら、綱領と党そのものを丸ごと理解してもらう運動として発展しています。とりわけ自由な対話が大きな力を発揮しています。そのことをつうじて、党への深い理解、信頼、絆(きずな)が広がっているのが、特徴です。

 さらに、「集い」の内容が、情勢の進展とともに発展していることも、重要です。雇用、医療、農業、環境、憲法、さらに「資本主義の限界」の問題まで、わが党がこの間、つぎつぎと打ち出してきた新しい政策的・政治的提起が、国民的な共感を広げる、それが「集い」でも受け止められ、新たな対話がはずむ。「大運動」は、「綱領と情勢との響きあい」という情勢の新しい劇的な進展を受け止め、草の根でさらに豊かにする運動としても、今日の情勢にかみあったものであり、国民もそれを求めている運動であります。

〈党活動の変化――国民とともに強く大きな党をつくる運動〉

 第二は、党活動に生まれている変化です。「集い」を開催した多くの支部で共通して語られているのは、「これは面白い。またやろう」と元気になり、どこでも新鮮な活力が生まれていることであります。

 ――「集い」は、「支部が主役」の自覚的な活動の出発点となっています。「集い」にとりくんだ多くの支部が、国民の切実な要求をつかみ、「政策と計画」に位置づけ、実現にむけて足をふみだしています。

 ――「集い」は、党への理解のひろがり、党とのむすびつきの強まりの契機となり、読者や党員の拡大を無理なく推進する条件を大きく広げています。

 ――「集い」は、支部がかかえる困難を打開する大事な糸口ともなっています。「集い」を開けば、党員が元気になり、国民との接点も生まれる。困難といわれてきた職場支部でも、「集い」の開催で次々と大きな変化がおこっていることは重要であります。

 こうして「大運動」は、国民とともに強く大きな党をつくる運動としても、素晴らしい力を発揮しています。

〈選挙活動の日常化――その威力は中間地方選挙でも発揮された〉

 第三に、選挙活動の日常化という変化です。「集い」を軸に、創意をこらしたさまざまな宣伝がおこなわれ、党への支持が広がり、党員と読者がふえ、後援会員を拡大するなど、立体的に活動が推進されています。わが党は、選挙間際にならないと、なかなか宣伝・組織活動が本格化しないという根深い弱点がありましたが、それが克服されつつあります。

 選挙勝利にとって「大運動」がどんなに大きな力を発揮するかを証明したのが、三議席から五議席への躍進を勝ち取った沖縄県議選です。ここでは、六つの選対・タテ線で、「集い」「懇談会」が二百五十回開かれ、四千七百二十九人が参加しました。「集い」で、「米軍への『思いやり予算』をやめれば、社会保障切り捨てはストップできる」、「安保条約をなくせば、米軍基地は一気になくせる」など、党の綱領的展望とむすびつけて、切実な要求実現の道を語り合ったことが大きな力となりました。また、「集い」の参加者が、選挙戦でも支持を広げるうえで大きな協力をしてくれたことが、勝利につながりました。

総選挙勝利とともに、綱領実現をめざす日常活動としても発展させよう

 「集い」は、やる気にさえなり、機関の適切な援助さえあれば、どんな支部でもとりくめます。四月の「大運動」全国交流集会の発言はどれも素晴らしいものでしたが、事実上、夫婦二人だけの「日本一小さい支部」が、市委員会の援助を受け、繰り返し「集い」を開くなかで、四人の支部に成長した長崎県南部地区崎戸支部の経験は、その発言を視聴した全国のみなさんの心を打つものだったと思います。

 ほんらい、すべての党員が綱領を学び、綱領を手に国民と語り合い、「国民が主人公」の日本への国民的合意をつくることは、直面する総選挙勝利にとって重要な活動であるだけでなく、綱領路線の実現――日本革命をめざす党が、うまずたゆまずとりくむべき日常活動の根本であります。「大運動」を、総選挙勝利とともに、綱領実現をめざす日常的活動としても位置づけ、すべての支部のとりくみにして、百万をこえる規模に発展させようではありませんか。

新しい選挙方針の実践の到達点と課題について

 つぎに新しい選挙方針の実践の到達点と課題について報告します。五中総決定で提起した新しい選挙方針の要は、(1)比例ブロックごとの議席目標と「六百五十万票以上」という全国的な得票目標を明確にしてその達成をめざすこと、(2)比例代表での前進に力を集中する新しい選挙方針にとりくむこと、の二つの点にあります。

議席目標と得票目標――「支部が主役」の選挙戦にしていく要

 まず議席目標、得票目標を明確にしたとりくみについてのべます。

 全国すべての比例ブロックで、議席目標にみあった政治スローガンが決められました。そのことがどこでも意欲的な力を引き出しています。そして、六百五十万票にみあう得票目標を決めたことが、機関でも支部でも、あらゆる活動に生きた魂を吹き込み、自覚的活動をすすめる大きな契機となった経験が、全国各地に生まれています。

 長野県では、北陸信越ブロックで議席を必ず奪還する、そのために十六万五千の県の得票目標を必ず突破する構えを確立し、その実現にむけて県内八十一市町村のすべてで得票目標を明確にし、支部への援助を強めるなかで、85%の支部が対話・支持拡大にとりくみ、党員では十一カ月、読者拡大では九カ月連続前進をかちとり、党員、日刊紙、日曜版とも、五中総時点を上回る地歩を築いています。

 全国的には、得票目標を決めた支部は66・4%、対話・支持拡大にとりくんだ支部は58・1%です。得票目標をすべての支部の自覚にしていく仕事は道半ばであり、この仕事を急いでやりきることを、「支部が主役」の選挙戦にできるかどうかの要の問題として重視したいと思います。

比例代表選挙に力を集中する新しい方針の実践について

 つぎに比例代表選挙に力を集中する新しい方針の実践について報告します。

〈早い段階からの候補者決定と日常的・系統的活動が大きな力を発揮〉

 比例代表選挙では、「ブロック全域で活動する候補者にくわえて、全県からそれぞれの県で日常的な活動をおこなう候補者を擁立する」という方針にもとづいて、七十三人の予定候補者を擁立しました。小選挙区では、五中総方針にもとづいて、百三十人の予定候補者を擁立しています。

 比例代表、小選挙区とも、早い段階で、日常的・系統的に活動できる力量ある候補者を擁立し、候補者が街頭宣伝にたち、「集い」の弁士もつとめ、幅広い団体・個人と懇談・対話にとりくみ、住民要求実現の先頭にたって生き生きと活動していることが、党の元気な姿を国民に伝え、支部と党員を励まし、大きな力を発揮しています。

〈後援会活動の強化――総選挙を「国民とともにたたかう選挙」に〉

 「大運動」の発展とならんで、後援会活動が強化されつつあることが、選挙活動の日常化をすすめる一つの要となっています。五中総決定は、後援会員を「『六百五十万票以上』という得票目標にみあう」ところまで増やそうとよびかけましたが、各県の後援会員の拡大目標の合計は六百三十万人と、得票目標にほぼ匹敵するものとなっています。昨年十月末に二百九十五万人だった後援会員が、現在三百四十八万人をこえ、毎週、過去最高を更新していることは重要であります。

 この間の中間地方選挙の大きな特徴は、多くのところで、「住民とともにたたかう選挙」となっていることです。五中総後の中間選挙で、議席目標を達成しただけでなく、得票目標を突破する躍進をとげた選挙区が七つありますが、そのほとんどで得票目標に匹敵する後援会員をつくり、後援会ニュースをとどけ、結びつきを強め、協力をお願いするなかで、飛躍的な得票増をかちとっていることは、重要な教訓です。

 全国で六百三十万人という後援会員拡大の目標をやりとげ、後援会員と日常的に協力を強め、総選挙を「国民とともにたたかう選挙」とするために力をつくそうではありませんか。

〈いかに「自らの選挙」にするか――全国すべての自治体で「集い」「演説会」を〉

 五中総決定は、総選挙を「比例を軸に」「自らの選挙」としてたたかうことを、「支部が主役」で全党の姿勢として確立し、国政選挙に強い党をつくることを提起しました。その方針の具体化の一つとして、わが党は、今年一月〜三月に全県規模の演説会にとりくみ、その成功の上に立って、四月以降は、これまであまり演説会をやったことがない地方の中小都市や農村部での演説会・シンポジウムを連続的におこなってきました。

 小選挙区単位でみると、わが党はすでに二百二十八選挙区で演説会・シンポジウムを実施し、そのうち百二十選挙区は小選挙区で候補者を擁立せず比例一本に力を集中してたたかうところです。くわえて二十九選挙区で演説会・シンポジウムが計画され、そのうち二十一選挙区は比例一本に力を集中してたたかうところです。

 全国各地で、その地域で初めて本格的にとりくんだ演説会が、空前の規模でつぎつぎと画期的な成功をおさめています。どこでも自治体首長、保守系地方議員、町内会長、老人会長、商工会や農協、医師会の幹部、中小企業家などが数多く参加し、歓迎してくれる状況があります。演説会をつうじて党勢拡大の飛躍的前進をかちとった経験も各地で生まれています。一連の演説会の成功は、「比例で何としても勝ちたい」という地元党組織の大奮闘とともに、「共産党の話を聞いてみたい」という機運が国民のなかに広がる情勢の変化を反映したものだと思います。

 この新しい試みは大いに発展させたいと考えます。中央と地方が一体に、九月から十一月にかけて、第二波の全国遊説をすすめます。全有権者を対象にした大量政治宣伝、対話・支持拡大を強め、すべての支部で「大運動」にとりくむとともに、全国すべての自治体・行政区で「集い」「演説会」を開催することをよびかけるものです。

〈中間地方選挙の最大の教訓――党づくりが選挙の立派な結果につながる〉

 五中総後の中間地方選挙で、わが党は全体として、上げ潮の流れをつくりだしています。中間選挙は、この間、二百九自治体でおこなわれ、わが党は百七十五自治体に三百十九人が立候補し二百九十二人が当選しました。ほかに補選で五人が当選しています。議席占有率は7・22%から8・23%に、1・01ポイント前進しました。政党別の当選者数は、自民党百二人、公明党二百二十八人、民主党七十八人、社民党三十五人で、わが党は二百九十二人ですから、第一党であります。

 五議席への躍進をかちとった沖縄県議選、矢野市長の四選をかちとった東京・狛江市長選、定数一で自民、民主との三つどもえのたたかいを制した埼玉県議再選挙など、重要な勝利があいつぎました。「オール与党」陣営との一騎打ちで九百五十一票差まで迫った京都市長選挙の結果も、今後につながる大善戦であります。

 この結果からは豊かで多面的な教訓がくみとれます。どこでも「大運動」が大きな力になっていること、「住民とともにたたかう選挙」という新しい特徴が生まれていること、党を大きくして選挙に勝ち、選挙後もさらに党を大きくする経験が生まれていることなど、これまでにない特徴が生まれています。

 最大の教訓として強調しておきたいのは、得票を飛躍的に伸ばしている選挙区では、ほとんど例外なく、党員と読者を増やして選挙をたたかっているということであります。初の党県議を獲得した沖縄県の浦添(うらそえ)市では、候補者を先頭に、七年間で党員を二倍化し、読者も前回選挙時を維持・拡大してたたかっています。定数一で見事再選をかちとった新潟県の上越市・吉川区、得票を一・七倍に伸ばして定数二でトップ当選を果たした上越市・頚城(くびき)区でも、党勢を大きく拡大しています。

 この間の定例中間地方選挙で、読者数を前回選挙時比で回復、前進させて選挙をたたかった選挙区が二十四選挙区ありますが、ここでは候補者は全員当選、得票も前回比で124・3%まで増やしています。

 他方で、党建設の遅れなどから、後継候補者を擁立できずに議席を失った経験もあることに警鐘をならさなければなりません。

 うまずたゆまず党づくりをすすめることが、選挙の立派な結果に必ずつながる――このことを最大の教訓として銘記したいと思います。

選挙で勝てる党づくり―年内に党勢拡大の大きな高揚を

 つぎに党建設について報告します。

党建設の到達点――全党の奮闘で新しい前進への流れが築かれつつある

 五中総決定をふまえ、全党は、「選挙で勝てる強く大きな党」をつくるためのとりくみに、大きな力をそそいできました。十カ月の奮闘によって、党勢拡大でも、党の質的強化でも、新しい前進への流れが築かれつつあることは、きわめて貴重であります。

 党建設の根幹である党員拡大では、三割をこえる支部が新入党員を迎え、五中総後、全党で九千人近い新入党員を拡大し、八カ月連続前進をつづけています。新入党員を迎えたところでは、どこでも大きな喜びが広がり、新鮮な活力をえて、党活動を前進させる大きなきっかけをつかんでいます。中央委員会総会として、社会変革の道をともに歩む決意をした新しい同志のみなさんに心からの歓迎をのべたいと思います。

 「しんぶん赤旗」の読者拡大では、五中総後の通算(〇七年九月から〇八年六月)で日曜版読者では全党的に前進をかちとりました。日刊紙読者では残念ながら前進にはいたっていません。ただ、五月、六月は、日刊紙を「『しんぶん赤旗』発展の大黒柱」としてその位置づけをとくに重視する努力のなかで、日刊紙、日曜版とも、全党的に連続前進をかちとっており、六月は日刊紙で四十四道府県、日曜版で四十五道府県が前進しています。また、長野、石川、富山、福井、三重、奈良、岡山、香川、高知、福岡、佐賀、長崎、大分の十三県で、五中総後の通算で日刊紙、日曜版とも前進をかちとっており、このとりくみから教訓を学ぶことが重要です。読者拡大は、いちばん苦労もし、力もそそいできた分野ですが、ここでも上げ潮の流れをつくりだしつつあることは、大いに確信にすべきであります。

 党の質的な強化という点では、とりわけ五中総決定を読了・徹底するとりくみに大きな力をそそぎ、しかるべき責任のある同志が決定の中心点をつかんで報告・議論すれば徹底とみなすという新しい措置をとりました。こうした努力によって、支部討議率は96・5%、読了・徹底は43・2%となりました。全党員への徹底という目標からすれば初歩的ですが、党員への徹底率では十二年ぶり、支部の討議率では三十五年ぶりの高い到達点となりました。

 党建設の仕事は、党活動のなかでも、自然発生的には絶対に前進しない、特別の目的意識性、不屈性が求められる分野ですが、粘り強い奮闘によって貴重な成果をあげた全党の奮闘にたいして、幹部会を代表して心からの敬意をのべるものです。

総選挙勝利、大会成功をめざす党勢拡大の目標の提案

 同時に、党建設、とくに党勢拡大は、一定の前進への流れをつくりだしたとはいえ、党活動全体のなかでは最も遅れた分野となっていることを、私たちは直視しなければなりません。

 とりわけ、「しんぶん赤旗」の読者数の現状は、〇五年総選挙時比で日刊紙は89・9%と約三万部下回っており、日曜版でも89・9%と約十三万八千部下回っています。こうした到達点、従来のとりくみの延長線上では、総選挙に勝利する保障はありません。

 私たちは、二十一世紀にはいって五回の国政選挙をたたかいました。その結果は、比例代表で四百万票台の得票をえて踏みとどまっているものの、「二大政党づくり」という財界主導の大がかりなキャンペーンのもとで、議席数は後退ないし現状維持という残念な結果がつづいています。それぞれの国政選挙には、政治戦のうえで改善すべき問題点もあり、私たちは実践を検証し、率直に教訓をひきだしてきました。同時に、五回のすべての国政選挙で共通して、私たちが最大の教訓としてくりかえし確認してきたのは、「党の実力が足らない」ということでした。「しんぶん赤旗」の読者数をみても、過去五回の国政選挙は、すべて前回時比で八割台から九割台の前半という水準でたたかっています。つぎの総選挙では、この苦い教訓を絶対にくりかえすわけにはいきません。

 そこで、中央委員会総会として、党勢拡大のつぎの目標を全党が掲げ、年内にそれをやりきって次期党大会をむかえ、さらに前進して総選挙をたたかうことを提案するものです。

 第一は、すべての党支部が新たな党員をむかえようということです。すでに新入党員をむかえた三割の支部がさらに拡大をすすめるとともに、まだむかえていない七割の支部が必ず新しい同志を党にむかえ、新鮮な活力をえてともに選挙をたたかいましょう。この目標をやりきれば、全党的には二万人をこえる党員を新たにむかえることになります。

 第二に、「しんぶん赤旗」読者では、年内に、日刊紙で三万人以上、日曜版で十三万八千人以上を拡大し、前回総選挙時を上回る峰をきずくということです。この目標をやりきれば、第二十四回党大会比でも、日刊紙で約五千人、日曜版で約三万人の読者増となり、次期党大会を党勢の大きな上げ潮のなかでむかえることができます。

 すべての党機関と党支部が、この全党的目標にみあった年内の党勢拡大の目標を、それぞれの到達点にそくして自主的に決定し、その実現にむけて奮闘しましょう。

 この目標を年内に達成することは、容易ならざる仕事です。しかし、総選挙に勝利しようとするならば、他に安易な道はありません。それならばこの目標に全党が正面から挑戦しようではありませんか。

 この目標は、大きいようにみえても、かりに一支部の平均にすれば、年内に一人以上の党員をむかえ、増減差し引きで、一人から二人の日刊紙読者を増やし、六人から七人の日曜版読者を増やせば達成可能なものです。全党が、「全国は一つ」の立場で、心ひとつに目標達成のために全力をあげることを心から訴えるものです。

客観的、主体的条件を生かし、法則的教訓に学べば、目標をやりきる道は開かれる

 この仕事をやりきる条件はあるでしょうか。大いにその条件はあると考えます。つぎの点に目をむけてこの課題に意気高くとりくむことをよびかけるものです。

 第一は、客観的情勢がはらむ条件です。すでにのべてきたように、この間、綱領と情勢が響きあう新しい劇的な進展が、あらゆる分野で生まれています。保守の人々もふくめこれまでにない広い国民が、日本の前途を憂い、その打開の展望を求め、わが党への注目と期待を強めています。そうした情勢の変化は、日本のどの地域でも実感されていると思います。壁は党と国民の間にはありません。呼びかけるならば国民は必ず応えてくれる。いま強く大きな党をつくる絶好のチャンスが目の前に広がっているということを強調したいと思います。

 第二は、五中総決定にそくして全党の奮闘でつくりだしてきた変化であります。私たちが、綱領の立場にたって展開してきた一連の論戦と政策提起は、どれも国民のなかに共感を広げています。また私たちは、「大運動」という、今日の情勢にかみあって、党綱領への理解と支持を広げる画期的な運動を開始し、大きく前進させつつあります。比例代表での前進をめざす新しい総選挙方針が積極的に受け止められ、党に新たな前進への意欲と活力をよびおこしています。これらは党勢拡大の大きな条件を広げています。

 第三は、党建設の分野でも、五中総以降、顕著な前進の流れをつくりだしている党組織が存在することであります。私たちは、七月一日時点で、日刊紙、日曜版ともに、五中総時を上回った十三県からその教訓の聞き取りをおこないました。そこからは共通した教訓が確認できました。

 なかでも前回総選挙時比で日刊紙読者97・9%、日曜版読者96・6%と全国一の到達を築いている石川県の教訓は、どうすれば強く大きな党への前進がつくれるか、その法則的な方向をしめしていると考えます。県委員長からの聞き取りの中心点を、六点にわたって紹介したいと思います。

 ――住民の苦難に寄り添って解決のためにたたかう機関と支部になろうと、いっかんして努力しています。能登半島地震での被災者支援、「米軍再編」とのたたかい、後期高齢者医療制度、農業問題をはじめ、切実な要求にもとづくあらゆる活動を重視し、革新懇づくりを大きく前進させてきています。

 ――北陸信越ブロックで議席奪還を果たそう、選挙で勝てる党をつくろうということを一貫して追求しています。五中総で紹介された参議院選挙で20%以上の得票率を獲得した地区の経験に学び、大志と気概が欠けていたと反省し、現状安住の惰性を打破しよう、開拓者精神でのぞもうと、機関も支部も決意をかためています。

 ――全党が政治的確信をもって元気に活動できるようにする政治指導、とくに五中総決定の徹底に精魂を傾け、会議に来る人だけでなく、会議に来ない人にまで一人一人足を運び、55・5%の同志にまで読了・徹底がすすんでいます。県常任委員会は、毎週の会議の半分を学習と政治討議にあて、くりかえし決定にたちかえり、綱領路線を学ぶ活動に系統的にとりくんでいます。

 ――支部が「政策と計画」をもって自覚的な活動にふみだすために循環型・双方向型の機関の援助を強めています。「党生活確立の三原則」にそって、すべての党員が日刊紙を読むこと、支部会議に参加すること、党費納入でも、努力を重ねています。補助指導機関を再確立したこと、職場支部援助委員会を確立し、「職場問題学習・交流講座」にそくして粘り強い援助をすすめたことが力になり、職場支部の悩みが見えるようになり、困難をかかえていた職場支部で党勢拡大の成果が広がっています。

 ――党勢拡大の前進への独自追求に執念を燃やしています。党員拡大は、自然成長だったものを「根幹」と位置づけ、意識化されています。読者拡大では、毎月、自主目標を決めてとりくむ支部をこつこつと広げ、「支部が主役」の配達・集金体制の確立に努力しています。機関が決めた目標を割り当てたりせず、あくまでも自主的に支部が決めた目標を尊重し、やりきる援助を強めています。同時に、機関としては毎月全支部成果にこだわり、成果支部を広げるために力をそそいでいます。その結果、五中総後、月々の単位で成果をあげている支部は五割台から六割台に達し、十カ月の単位でみると八割をこえました。

 ――「大運動」と新しい選挙方針が、後援会とともに活動し、自覚的な支部活動をすすめる力となっています。県独自に比例代表予定候補を擁立し、比例代表一本でたたかう二区、三区でも初めて演説会にとりくみ成功させたことが大きな力となっているとのことでした。

 ここには五中総決定を全面的にとらえ、広い視野で総合的な活動にとりくみながら、党勢拡大を前進させる法則的活動方向が、凝縮してのべられていると考えます。石川県は、特別に有利な条件をもつ県ではありません。石川県の経験は、決定にそくして法則的活動方向をつかみとるなら、全国どこでも前進と飛躍をつくることができることをしめしています。

 同時に、私が強調したいのは、この石川県の教訓は、強弱はあっても、この間の全国のみなさんの奮闘によって、全国どこの県・地区委員会、多くの党支部にも、生まれつつある教訓だと思います。全面的とまではいかなくても、断面であっても、どこでも前進の要素は生まれていると思います。石川県の教訓とともに、自らの党組織に生まれている法則的教訓によく学ぶことが大切であります。

すべての党員が「しんぶん赤旗」日刊紙を読み、いまの時代をともに生きる連帯を

 党建設の最後に訴えたいのは、すべての党員が「しんぶん赤旗」の日刊紙を読むことを勧めたいということです。日刊紙を読むことは、党員が、日々の情勢をつかむこと、全国各地での経験を知ること、党の方針を理解すること、国民と結びつく力を得るために、欠かすことのできないものであります。

 さらに、日刊紙には、全国各地で苦労しながら活動する仲間たちの姿が、生き生きと伝えられています。日々の「赤旗」を読んでこそ、この党の一員として、いまの時代をともに生き活動している連帯感を、党員として持つことができます。すべての党員が日刊紙を読み、「全国は一つ」の連帯の絆を強め、総選挙勝利をつかみとることを呼びかけたいと思います。

 みなさん、客観的情勢のはらむ条件をくみつくし、また主体的奮闘でつくりだしてきた変化に確信をもち、さらに先進的経験に学んで、総選挙勝利・大会成功をめざして、選挙で勝てる強く大きな党づくりに、全党の英知と力を結集してとりくもうではありませんか。

三、若い世代のなかでの活動、とくに民青同盟への援助の抜本的強化

若い世代にどういう姿勢で働きかけるか

 報告の第三の主題は、若い世代のなかでの活動、とくに日本民主青年同盟(民青同盟)への援助の抜本的な強化をはかることについてであります。

 まず、若い世代に党としてどう働きかけるか。その基本姿勢として大切だと考えることについてのべたいと思います。

若い世代が直面している「二重の苦しみ」に心を寄せる

 一つは、若い世代のおかれている実態、要求、悩みに心を寄せ、耳を傾け、ともに現状の打開をはかることであります。そのさい、第二十四回党大会の結語でのべた、若い世代が直面している「二重の苦しみ」に心を寄せることをとくに重視したいと思います。

 いま多くの若者を襲っている現実の生活苦は、日本社会として一刻も放置することが許されない深刻なものです。若者は、職場では、派遣、請負、期間社員などの「使い捨て」労働、長時間過密労働と重いストレスのもとにおかれ、学校では、耐えがたい学費負担にあえぎ、「貧困と格差」の一つの集中点とされています。

 同時に、若者の多くが、その生活苦の責任を、「自己責任」のように思いこまされ、人間としての誇りや尊厳を深く傷つけられている苦しみも深刻です。家庭の貧困、学校での過度な競争とふるいわけの教育、職場でのモノあつかいの「使い捨て」労働などのもとで、多くの若者たちが自己肯定感情――自分を尊いと感ずる感情をもてず、豊かな人間関係を築くことを妨げられ、連帯することが困難な状態におかれ、「生きづらい」「居場所がない」と感じていることは、ほんとうに心の痛む事態であります。

 こうした苦しみの深さは、これまでなかったものです。それだけに、党が若い世代に働きかけるさい、若い世代の悩み、願いをとっくりと聞くことを、あらゆる活動の出発点とし、そして悩みと要求にこたえるために力をあわせるという姿勢が大切であります。

 いま注目すべきは、若者たちのなかに、自らの生活苦は「自分の責任ではない」「政治と社会の問題ではないか」との自覚が広がり、仲間をつくり、自ら労働組合をつくって、たちあがる動きがおこりつつあることであります。先ほど『蟹工船』がブームだということをのべましたが、このことは多くのメディアでとりあげられています。NHKが、最近、「今若者が読む『蟹工船』 共感する理由は」と題する特集を放映しました。そこに登場したある若者は「『蟹工船』は社会に声をあげることの大切さを教えてくれた」とのべました。もう一人の若者は「他人のことを自分のことのように考える『蟹工船』の労働者に心を動かされ、自分の生き方を見つめなおした」と紹介されました。番組は、「社会の一員として声をあげる。他人を思いやる――『蟹工船』のメッセージが現在の若者の心を照らしています」と結びました。

 困難をのりこえて人間的連帯、社会的連帯の道を模索し、前途を切り開こうとしている若者のたたかいを心から励まし、ともにたたかう姿勢が大切であります。

関心にそくして、現状打開の科学的展望を広げるとりくみを

 いま一つは、若い世代のなかに、現状打開の科学的展望を広げることであります。

 この間、若者のなかでも「綱領を語り、日本の前途を語り合う集い」がとりくまれ、若い世代をとりまく「生きづらさ」の根源やその大もとからの打開の展望、人間的連帯をきずき、人間らしく生きていく希望を広げていることは重要です。若者たちの「生きづらさ」の根底に、政治のゆがみがあること、わが党の綱領はその打開の道をしめしていることが理解されると、大きな共感が若いみなさんのなかから返ってきます。「集い」を、職場、地域、学園で、大いに若い世代のなかでも開いていくようにしたいと思います。

 さらに世界と日本の資本主義の矛盾の深まりは、若い世代のなかでその打開の科学的羅針盤をつかみたいという思いを広げています。ある大学では新入生歓迎運動で、新入生にアンケートで関心のある民青同盟の活動を聞いたところ、約半数が「『資本論』を読みたい」と答えたそうです。それを受けて「『資本論』ゼミナール」を開講しているということでした。

 若者の関心にそくして、綱領と科学的社会主義を語り、若者が、「居場所がない」「生きづらい」と感じる社会のゆがみの根源をとらえ、それを変える科学的羅針盤をつかみ、若者たちが社会を変える主人公として成長することを励ますとりくみが大切であります。

民青同盟の強化のために、全党的なとりくみをよびかける

 こうした立場に立って報告でよびかけたいのは、民青同盟の強化のための全党的なとりくみであります。

若い世代の民主的結集と成長にとってかけがえのない役割

 若い世代の民主的結集と成長にとって、かけがえのない役割を果たしているのが民青同盟であります。

 民青同盟は、この間、全国青年大集会など働く若者のたたかいと組織化、大学や高校での学費軽減運動、原水爆禁止世界大会や「九条の会」など平和運動をはじめ、若い世代のなかでのあらゆる進歩的運動の発展の先頭に立ってたたかっています。また連帯をめぐる困難をかかえる若者の「居場所」となり、党綱領と科学的社会主義を学び、「自己責任」論をのりこえて社会的連帯をきずき、人間らしい生き方をつかむうえで、他にかえがたい役割を果たしています。

 さらに私が強調したいのは、現在の党を支えている中心的な活動家、民主的組織を支えている活動家の多くが、民青同盟で青春期をすごし、社会進歩の事業の重要な担い手へと成長してきた人びとだということであります。民青同盟の前途は、若い世代の切実な要求の実現と成長にとってのみならず、党と進歩的事業の未来にとってもきわめて重要な意義をもつものであります。

すべての党地区委員会が、対応する民青同盟地区委員会再建のため力をつくそう

 こうした民青同盟のかけがえのない役割を、すべての党機関と党支部が正面からつかみ、民青同盟と協力して、その活動と組織の強化のために知恵と力をつくすことが、強く求められています。

 とくにいま民青同盟は、都道府県委員会の活動を強化するとともに、地区委員会を再建し、「班が主人公」の活動を発展させることを、大方針としてとりくんでいます。すでに全国で五十三の地区委員会が再建され、四十の地域で再建をめざしているとのことであります。

 地区委員会を再建したところでは、班同士の連帯と交流が広がり、班が共同しての要求実現の活動が生き生きと発展し、「班が主人公」の活動が前進しています。党との関係では、民青同盟が地区委員会をつくったことで、党の地区委員会と民青同盟との関係が親密となり、学習を中心に「相談相手」としての援助が強まっています。

 かつての専従同盟員を配置していた地区のイメージではなく、いくつかの班があって、全体のリーダーとなる同盟員が成長しているところでは、班の交流と連帯のセンターとして地区を再建し、その活動を強めながら、班も増やしていくというとりくみが成功しています。

 この流れを、いま思い切って強化するための援助を訴えたいと思います。民青同盟第三十三回全国大会では、「都道府県委員会の活動を確立し、地区委員会の再建を全国で」という方針を決定していますが、この民青同盟の方針を尊重し、都道府県段階での民青同盟への援助を抜本的に強めるとともに、全国すべての党地区委員会が、民青同盟とよく相談し、党支部ともよく協力して、班をつくり育て、対応する民青同盟地区委員会を再建するために、力をつくすことをよびかけるものです。

 大学での民青同盟班、学生党支部の強化・再建には、特別の努力と態勢が必要です。ある大学では、ほとんど組織がなくなりかかっていた事態を打開しようと、党の県委員長が先頭にたって、大学教員、退職教員などの力も総結集して、学ぶ活動への徹底した援助を強め、組織の再建に成功しています。学生のなかでの活動をすすめるうえでは、わが党が発表した政策提言「『世界一高い学費』を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために」も大いに活用していただきたいと思います。

青年支部が果たすべき任務について

 あわせて青年支部への親身な指導・援助を強めます。この十年間の実践をふまえ、青年支部の任務として、あらためて三点を明確にしたいと思います。第一は、青年の切実な要求実現にとりくみ、青年のなかに党をつくることです。第二は、条件に応じて民青同盟に加盟し、その活動の前進と組織の発展の先頭にたつことです。第三は、学習を重視し、各分野の担い手として成長することであります。

 この組織は、過渡的な組織であり、一定の年齢に達したら、地域、職場支部に転籍することが重要です。また可能なところでは党支部の青年班に改組するなど、合理的な組織再編への探求をおこないます。

党と革命運動の未来を展望して、党機関の系統的なとりくみを

 この仕事をやりとげていくうえで最後にのべたいのは、党と革命運動の未来を展望した党機関の系統的なとりくみ、という問題です。

 青年学生分野での前進に「党の総力をあげる」ことをよびかけた二〇〇〇年の第二十二回党大会以来、全国で、系統的な粘り強い努力で、若い世代の結集にとりくんでいる地区委員会が生まれています。その努力方向として重要だと考えることを二つのべておきたいと思います。

 一つは、党機関自身が、若い世代を表面的にとらえず、「二重の苦しみ」に心を寄せる姿勢をつらぬき、それを党全体のものにする努力をはらっていることです。

 昨年、民青同盟地区委員会を再建した福岡西部地区では、若い世代と年配の世代が共同で青年雇用アンケートやシンポジウムにとりくむなかで、青年の悩み、苦しみを、自らの息子、娘の実態とも重ね合わせて深く理解し、共同のとりくみがはじまっています。

 いま一つは、すぐ目に見える成果があがるかどうかではなく、党の未来をしっかりみすえて、うまずたゆまず党全体の力の結集に努力し、この分野の前進をはかろうという不屈性であります。

 京都・乙訓(おとくに)地区では、六月に地域で青年雇用シンポを開き大きく成功させていますが、地区委員長は、「一カ月、二カ月の単位でみずに、青年が参加できる平和や雇用のとりくみを数カ月単位で計画し、そこにむけて地区党の知恵を集め、地区党と青年党員が先頭にたち、民青同盟と共同し、職場支部や地域支部の協力もえて、地区党あげたとりくみを重ねることで、前進がつくられていると実感している」と報告しています。

 みなさん、若い世代がおかれている深刻な生活苦、未来への不安を打開するためにも、党と革命運動の長期的未来を展望しても、いま青年のなかでの活動の抜本的強化に思い切った力をそそぐときであります。わけても党と民青同盟の共同の事業として、若者のなかに強大な民青同盟をつくる仕事に、全党あげてとりかかろうではありませんか。このことを私は心から訴えたいと思うのであります。その努力をすすめることは、直面する総選挙を若い力が輝く選挙とするためにも、大きな力を発揮することは疑いありません。

5中総以降の豊かな前進を 確信に、総選挙にむけた全党の総決起を

 五中総以降の党活動をふりかえりますと、報告でのべてきたように、情勢と綱領の響きあいのなかで、決定にそくしてどの分野でもきわめて豊かな前進がかちとられつつあることを実感します。

 みなさん、総選挙勝利をめざして、この十カ月の活動から教訓と確信をひきだし、党活動を前進から飛躍に発展させましょう。そのなかで若い世代のなかでのとりくみの新たな探究と前進をかちとりましょう。支部を基礎にした全党の総決起を訴えて、報告を終わります。