2008年7月27日(日)「しんぶん赤旗」
労働者派遣法の抜本的改正を実現しようと、野党四党の幹部を招いた集会、「各党トップに聞く」が二十五日、東京都内で開かれ、日本共産党の志位和夫委員長が出席しました。その発言のなかから、冒頭の発言、途中と結びの発言を紹介します。他党からの出席者は、民主党が山田正彦衆院議員、社民党が福島瑞穂党首、国民新党が亀井亜紀子副幹事長です。
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みなさん、こんばんは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます。人間らしい労働を求めて奮闘されているみなさんに、心からの敬意と連帯を込めて発言します。
派遣法制は、一九八六年に派遣労働が解禁され、一九九九年に派遣対象業種の「原則自由化」がおこなわれ、二〇〇四年に製造業への解禁がおこなわれ、ともかく規制緩和の連続だったわけです。さらに、日本経団連などは、(派遣労働の)期間制限の撤廃など、「もっと規制緩和をやれ」という横暴勝手なことを求めてきました。
ところが、この間、一定の変化が起こってきました。野党四党が、それぞれ立場に違いはありますが、派遣法の改正案を提起しています。いま四党で協議を始めているところです。そして、政府・与党も、内容にはさまざまな問題点がありますが、「日雇い派遣の原則禁止」を言い出さざるを得なくなってきています。そういう点では、規制緩和から規制強化への「潮目の変化」が生まれています。労働者のみなさんのたたかいが一歩前に動かしたということが言えるのではないかと思います。
ただ、ここまできたからには、中途半端な見直しでなく、人間らしい労働を保障する方向への抜本的な法改正が必要です。そのさい、私たちが目指すべきは何かといえば、「いつでも首にできる、使い捨て自由の不安定雇用」を一掃するということに置かれるべきだと考えます。そうした法改正をぜひ、みなさんとご一緒に力をあわせて実現させたいと決意しています。
日本共産党が提案している労働者派遣法の改正法案について、大まかな考え方をご説明させていただきたいと思います。
まず私たちの法案では、法律の目的に、「労働者派遣は、臨時的・一時的業務について行われるものであり、常用代替として行われてはならない」という大原則を明記し、法律の条文でもそれを保障する措置を盛り込んでいます。
もともと、労働基準法、職業安定法では、人貸し業は禁止されています。ですから、政府は、派遣労働を導入するときに、「これはあくまで例外」であり、「臨時的・一時的な場合に限る」とし、「常用雇用の代替は禁止する」――リストラで正規労働者を派遣労働者に置き換えることをしてはならないという条件をつけてきました。私は、二月の衆院予算委員会の質疑で、福田首相に対し、「常用代替禁止の原則は今日においても変わらないのか」とたずねましたところ、首相自身も「変わりはございません」と答えました。
派遣労働は、「臨時的・一時的業務」に限定し、「常用代替を禁止する」――これは政府も認めざるを得ない大原則です。にもかかわらず、実態は、大規模な「常用雇用の代替」がおこなわれている。ただ、ともかくも政府が「常用代替禁止」という大原則を認めているわけですから、誰も否定できないこの大原則から出発して、「常用代替禁止」ということを法律にもまず明記して、この大原則に反する現実をただしていくためには、どういう法改正が必要かというアプローチをしていくことが合理的ではないかと、私たちは考えています。
それでは具体的にどうするか。私たちの法案の中身の核心部分は、「労働者派遣は、常用型派遣を基本とし、登録型派遣を例外として厳しく規制する。日雇い派遣は禁止する」というところにあります。抜本的改正というならば、どうしてもこれが必要になってくると考えます。
なぜ、「常用代替禁止」という大原則に反する事態が生まれたのか。それは、一九九九年の派遣法大改悪によって、それまで労働者派遣は専門業種に限定されていたものを、対象業種を「原則自由化」したからにほかなりません。私たちは、「原則自由化」という法改悪をおこなえば、正規労働者を派遣労働者に置き換えるリストラがすすみ、大量の無権利・低賃金の使い捨て労働者をつくりだし、「常用代替禁止」という大原則が崩されることになるとして反対しましたが、現実はその通りになったと思います。
ですから、日本共産党の提案の根本は、現実によって、一九九九年の法改悪の害悪が証明された以上、九九年の前に戻せということであります。具体的には登録型派遣は、専門的業務(ソフトウエア開発、機械設計、通訳、翻訳など)、臨時的・一時的業務に厳しく限定して、原則禁止にする。二〇〇四年から始まった製造業も派遣労働の禁止対象にする。やはり、九九年で道を決定的に間違えたわけですから、元に戻すという抜本的な改正が必要だと思います。
この措置によって、今日問題になっている日雇い派遣は禁止されることになります。そして、「いつでも首にできる、使い捨て自由の不安定雇用」を派遣労働からなくす道も開けてきます。日雇い派遣の禁止というのは、もちろん急務でありますが、私たちは日雇い派遣だけを禁止すればよいという考えではありません。「使い捨て自由の不安定雇用」を一掃する必要がある。それは、例えば雇用期間の制限だけをしてもなくせるわけではありません。派遣業種の「原則自由化」をあらためて、対象業種の抜本的規制に踏み込むことがどうしても必要になるということが、私たちの提案の核心部分であります。
同時に、この法改正をしたとしても、専門的業務にたずさわる登録型派遣は残りますし、常用型派遣は残りますから、そうした派遣労働者の権利を保護する規定が必要になります。
そのために、わが党の提案では、「派遣受け入れ期間の上限を一年とする」、「派遣期間をこえた場合や違法行為があった場合、派遣先が直接雇用したものとみなす(みなし雇用)」、「均等待遇を実現する」、「マージン率の上限を政令で定める」などの、派遣労働者の権利保護規定を設けることを提案しています。こうした保護規定は、常用代替を防止する措置としても有効になると考えています。
最後に、いま、大手製造業の現場では、派遣労働を解消して、期間社員や請負に置き換える動きが出てきています。私は、国会質問でキヤノンの派遣労働の問題を取り上げましたが、その後、キヤノンの長浜工場に六月三十日に調査に入りましたら、キヤノン側は、「今年中に製造派遣を解消する」と表明しました。長浜工場では、私が行った六月三十日に、偶然かどうかわかりませんが、「派遣はゼロにした」ということでした。派遣解消の動きは、労働者のたたかいの一歩前進だと思います。
同時に、期間社員は直接雇用ですけれども、最初は五カ月、あとは六カ月の契約更新で、最長でも二年十一カ月で雇い止めにされる。キヤノン側は「正社員への登用の道がある」といいますが、その計画も規模もまったく定かではありません。これでは、「いつでも首にできる、使い捨て自由の不安定雇用」は形を変えて残ることになります。
ですから、派遣法の抜本改正とともに、わが党の提案は最後に、労働基準法を改正して、有期雇用は合理的な理由のあるもののみに厳しく制限する。たとえば海の家のアルバイトや、ある一定期間のみのプロジェクトなどに厳しく制限することを提案しています。
いま、大手製造業の現場では、派遣労働が続けられなくなって、有期雇用(期間工)に逃げ込もうとしています。しかし、これも非常に不安定な雇用ですから、労働基準法の改正をあわせておこなう必要があることを言いたい。この逃げ道をふさいで、正社員化への道を太く切り開くために頑張っていきたいと決意しています。(拍手)
私は、きょうの議論をずっと聞いていて、派遣法の抜本改正というさいに、何がいちばんの中心かをしっかりおさえてかかることが大切だと思います。やはり、一九九九年の派遣法改定で、派遣労働を「原則自由化」にしてしまった。このことがいまの諸悪の根源だということは、事実の問題として広く認識の一致があるのではないでしょうか。この法改定が間違っていたのだとしたら、その前に戻すということが、合理的な解決の方策だと思うのです。
この点では、お話を聞いていますと、共産党、社民党、国民新党の間で一致があるようです。この集会の主催団体のみなさんとも一致していると思います。ですから、ここで大同団結をはかることが大切ではないでしょうか。派遣労働の「原則自由化」がこれだけの登録型派遣のとんでもない広がりをつくり、ついには究極の使い捨て労働というべき日雇い派遣までつくってしまった以上、やはり「原則自由化」前に戻すというところで、みんなが団結してたたかっていくことが大切でないかというのが、私たちの考えであります。
ただ、一九九九年より前に戻しても、専門業務の登録型派遣や常用型派遣は残るわけですね。そういう労働者をどうやって守るのかは必要になってきます。その保護規定として、期間上限を一年以内とすることや、「みなし雇用」、均等待遇、マージン率などの提案をしているわけです。
派遣労働は、使い捨て労働の中でもいちばんひどい働かせ方だと思います。
人間をモノのように使い捨てにすることを許さないということは、派遣労働で苦しんでいるみなさんのみならず、こういうことを許したら社会全体の未来がない。経済の未来もない、企業だって未来がなくなるという問題として、国民全体の問題として取り組むべきだと考えています。
正規労働者と非正規労働者、派遣労働者との連帯がたいへんに大切だと思います。正社員の組合で頑張っている方が、仮に、隣で働いている派遣労働者にたいして無関心であったら、自らの生活と権利も守ることはできないということになります。
派遣労働者が使い捨てのひどい労働を強いられていることは、正規労働者の長時間・過密労働、過労死、過労自殺、メンタルヘルス、こういう問題と一体の問題です。ですから、正規労働者と非正規労働者が連帯し、国民全体が連帯して、社会的連帯でこの問題を解決することが大事だと考えます。
派遣法抜本改正にむけて、労働者のたたかい、国民の世論と運動を大きく高めていくことが何より大切です。力をあわせて頑張りましょう。