2008年4月21日(月)「しんぶん赤旗」

農業再生 共産党がシンポ

自給率向上へ幅広く

パネリストに 小田島農協営農課長・高橋集落営農組合代表・加藤岩手県生協連会長理事

秋田県大仙市


 「あきたこまち」の主要産地で国内有数の穀倉地帯として知られる秋田県大仙(だいせん)市。郊外の水田が、五月中旬にも本格化する田植えを待っています。同市の大曲中央公民館で二十日、日本共産党中央委員会主催のシンポジウム「日本農業の再生を考える」が開かれました。日本共産党から志位和夫委員長が四人のパネリストの一人として参加・発言しました。


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(写真)第3会場まで参加者がつめかけたシンポジウム「日本農業の再生を考える」=20日、秋田県大仙市の大曲中央公民館

 イネの種まきの最盛期で忙しい中、農協、行政、消費者ら、地元と東北各県からマイクロバスや自家用車で八百五十人が参加。第三会場まで人であふれました。

 大仙市の栗林次美市長が「農業・農村をしっかりしたものにしようと施策を講じているが、やはり大きな転換がなければ地方はもたない。皆さんとともに会場の席に座って勉強したい」と歓迎のあいさつ。会場には、鈴木俊夫湯沢市長をはじめ、地元の人々や自治体の幹部職員、農業委員会の幹部、大学教授などの姿もありました。

 日本共産党の高橋ちづ子衆院議員が司会を務めました。米田吉正同県委員長の主催者あいさつのあと、パネリストの小田島博秋田おばこ農協営農課長、高橋康夫横手市集落営農組合代表、加藤善正岩手県生協連会長理事の各氏が発言しました。

 小田島氏は「食は体の健康と心の健康に結びつくもの。それを提供する農業を永続させるためには、所得確保が必要」と発言しました。

 高橋氏は「なんとか若い人に農業をつなぎたいという切実な思いで集落営農を立ち上げた。しかしまだ赤字。継続的な農業支援を」と求めました。

 中国製冷凍ギョーザ中毒事件にふれた加藤氏は「食料と農業・農村の問題は、生産者・農家だけの問題でない。今、すべての国民ができることをやらないといけない」と語りました。

 パネリストの発言のあと、会場から次々と手が上がり十二人が発言しました。「農家は、所得がでるかでないかまで追いこまれた。こんな農政は必ず行き詰まる。転換してほしい」「各政党の政策を見たが、共産党の政策が一番正しい。このプランでこそ、コメの国・日本の農業を立て直せる」―。こんな発言に会場が何度もわきました。志位氏らは、会場からの質問に丁寧に答えました。

 大仙市松倉の農家の男性(65)は「高齢化と後継者不足で農業は崩壊の瀬戸際です。あと十年、十五年先に農村は崩壊します。『再生プラン』の新規就農者への月十五万円、三年間の支援、価格保障や所得補償は農村に若者を呼び戻すものになるでしょう。食料自給率向上は待ったなしの課題です。会場の熱い討論、発言を聞いて勇気づけられました」と語りました。


志位委員長が発言

 志位氏は日本共産党の「農業再生プラン」の最大の要は、食料自給率39%、穀物自給率27%という世界でも異常な自給率水準をいかに引き上げるかにあると指摘。「いま食料不足と食料高騰は世界的危機にある」として三月以来、アジア、アフリカなどの多くの途上国で食料暴動が起きている深刻な事態についてのべました。

 その上で、(1)わが国が食料を安定的に確保する保障はいまやなくなった(2)日本が他国から大量の穀物を買い付けていることが、世界の飢餓を深刻にしている―という二つの点を指摘。「自給率向上は文字通り待ったなしだ」と強調しました。

 志位氏は「食料は外国から安く買えばいい」という発想の自民党農政の根本的転換を訴え、「再生プラン」の「四つの提言」を紹介しました。

 二〇〇七年産で見込まれる生産者米価では、生産費を大きく割り、農家の労働報酬はゼロか赤字になるとの実態を示し、価格保障・所得補償の抜本的充実で、一俵あたり一万八千円程度の収入を確保する提言を紹介しました。

 「これは世界の流れからすれば当たり前」とのべた志位氏は、農業所得に占める直接支払い(価格保障+所得補償)の割合が米国では46%、ドイツでは50%、英国では71%なのに、日本はわずか15%だと指摘。コメも、アメリカでは、政府の手厚い価格保障などが行われていることを紹介しました。

 農業の担い手育成策について、規模の大小で農家を選別する政府の「経営所得安定対策」(「品目横断対策」)は実際には「経営所得破壊対策だ」と批判。すべての農家を応援する農政への転換を訴えました。

 また、食料輸入にかんし、「関税など国境措置を維持・強化することは、欧米でも当たり前に行っている」と指摘。WTO(世界貿易機関)で決められたミニマム・アクセスについても日本は米の消費量の7・2%という枠いっぱいの輸入をしているが、欧米諸国では多くの品目の枠が未消化となっている実態をのべ、ミニマム・アクセスの中止は当然だとしました。

 最後に志位氏は「食料・農業の問題は、農業者だけの問題ではない。日本国民全体の存亡がかかった大問題だ」と力説。農業者と消費者の共同を広げ、自給率向上にとりくもうと訴えました。