2007年11月6日(火)「しんぶん赤旗」

密室での連立政権協議は国民の審判をないがしろにするもの

いまこそ日本共産党のがんばりどころの情勢

鳥取 志位委員長の訴えから(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が、四日おこなった、「鳥取県赤旗まつり」での講演のうち、自民・民主の連立政権協議に関してのべた部分を紹介します。


写真

(写真)講演する志位和夫委員長=4日、鳥取市の布勢運動公園

 先週は、十月三十日の火曜日と、十一月二日の金曜日と、連続して福田首相と民主党の小沢代表の党首会談がおこなわれました。テレビをつけるとその話題で持ちきりです。この党首会談はいったい何を示したのか。どこが問題なのか。日本共産党はどう考えているのか。このことからお話をはじめたいと思います。

国会審議をつぶして密室談合におきかえる――こんなやり方は許せない

 まず第一に、この党首会談というのは、すべてが国民に見えない、国民から隠れた密室でおこなわれた、二人だけの密室談合ということが大問題であります。

 しかも、最初の火曜日の党首会談というのは、すでに実施が決まっていた衆議院のテロ対策特別委員会の審議を民主党が一方的に放棄して、つまり委員会の審議を勝手につぶして、その時間を両党の密室談合にあてたのです。そして翌日の水曜日(十月三十一日)に、これもすでに実施が正式に決まっていた党首討論も、(福田・小沢両氏の)二人の相談でやめにしようとつぶしてしまいました。国民に開かれた国会審議をつぶして、二人だけしかわからない密室談合に置きかえるというのは、これは議会制民主主義を蹂躙(じゅうりん)したやり方だと言わなければなりません(拍手)。だいたい小沢代表自身がクローズ――つまり密室での協議はやらないと繰り返し言ってきたではないですか。そうした自分の言明にも反する、こんなやり方は許せるものではありません。(拍手)

 こういう密室談合などをやるから、いろいろな憶測が飛び交うことになる。いったい何が話し合われたのか、そのこと自身がいま議論になっていますが、私は、自民党、民主党の両党の党首に言いたい。いったい何を話し合ったのか。どうしてあの場で両党の「連立政権」などというとんでもない話がでてきたのか。そのいきさつを、国民に納得のいく形で説明すべきだということを、言いたいと思います。(拍手)

恒久的な自衛隊派兵法、憲法破壊法づくりの危険な話し合い

写真

(写真)志位和夫委員長の記念講演を聞く「鳥取県赤旗まつり」の参加者=4日、鳥取市

 第二に、全体として真相がはっきりしない密室談合ですが、そのなかでも福田首相、小沢代表の双方の説明からはっきり見えてくるのは、自衛隊を海外に派兵する恒久法というのをつくろうじゃないかという話し合いがされたということです。

 自衛隊を海外に派兵する恒久法づくりというのは、民主党の小沢代表の年来の主張で、小沢氏が党首だった旧自由党は、二〇〇三年四月に「安全保障基本法案」という法案まで国会に提出しています。この小沢代表の年来の主張に対して、福田首相が同意した。これはどうやら間違いのない事実のようです。それは福田首相自身が、党首会談の後、記者団に「恒久法についての議論は」と問われ、つぎのようにのべていることからも、明らかです。

 「恒久法について、どういう原則でやるのかなということだ。小沢代表はかねがね主張していることもあるので、国連決議とか、国連が承認した活動といったことを原則にしてやっていこうじゃないかという話し合いはした」

 恒久法というのはいったい何か。これまでは、米軍が海外で引き起こした戦争の支援のために自衛隊を派兵するときには、「特別措置法」といって、個々に特別の法律を時限立法の形でつくってきました。米軍がアフガニスタンへの報復戦争を始めたときには、それを支援するためにテロ特措法(特別措置法)をつくりました。米軍がイラク侵略戦争を始めたときには、それを支援するためにイラク特措法をつくりました。海外での戦争を支援するために自衛隊を派兵するのは、もとより憲法違反です。ただともかくも、これまでは個々に法律をつくるというやり方ですすめてきました。しかし、それではまどろっこしい、いざというときに間に合わなくなる。そこでいったんその法律をつくったら、政府の判断で、いつでも、世界のどこにでも、自衛隊が派兵できるような恒久的な法律をつくろう。これがいま問題になっている恒久法なのです。

 こういうきわめて危険な内容で、首相と、野党第一党の民主党代表が、立場が同じだということが話し合われたということは、きわめて重大です。私は、恒久的な自衛隊派兵法、憲法破壊法を許すなという声をどうかあげていただきたいということを、訴えたいのであります。(拍手)

自民・民主の連立政権の協議――国民の審判をないがしろにするもの

 そして第三に、党首会談では、福田首相が、民主党に連立政権への呼びかけを行うという事態が起こりました。どちらが呼びかけたかは、はっきりしません。呼びかけたのは小沢代表だという報道もされていて、密室談合というのはこういう問題が起こってくるわけですが、ともかくも、表向きは福田首相が呼びかけたという形になっています。そして、この呼びかけは、とりあえずは民主党が拒否するという形になりましたけれども、ここには重大な問題があります。

 まず、呼びかけたとされる福田首相の側の問題です。この前の参議院選挙を思い出していただきたい。自公政権は、国民のみなさんから「自公政権ノー」という審判を下されましたでしょう。政権党が、国民からそういう審判が下されたら、これまでやってきた自分たちの政治を反省し、政策を転換するのが当たり前の姿勢ではないでしょうか。貧困と格差を広げた「構造改革」路線を、このまま続けていいのかどうか。憲法を破ってイラクやアフガニスタンに自衛隊を派兵する政治を、このまま続けていいのかどうか。これまでの政治のあり方をしっかり吟味し、反省して、方針を転換するというのが、まともな政治のあり方ではないでしょうか。(拍手)

 ところが自民党にはまともな反省がみられません。間違った道を何がなんでも続けましょう、海外派兵を何がなんでも続けましょう、そのためには国会での数が必要だということで、“数集め”に走った。これが今回の連立政権という話です。みなさん、こういうやり方は、国民の審判をないがしろにした、邪道そのもののやり方ではないでしょうか。(拍手)

 同時にみなさん、連立政権を呼びかけられた民主党の小沢代表の態度にも大きな問題があります。民主党は、この前の参議院選挙であれだけ「自公政治反対」と言って、議席を獲得したわけでしょう。そう言って選挙をたたかった党の党首であるならば、連立政権などというのは国民への裏切りであり、論外の問題であるはずです。連立政権をやりましょうと自民党から言われたら、即座に拒否するのが当たり前ではないですか(拍手)。ところが小沢代表は、その場で拒否しなかった。これは、ほんとうに不可解な行動です。

 しかも小沢代表は、持ちかえっただけでない。連立政権という方向で民主党をまとめようと動いたと報道されています。複数の報道によりますと、党首会談の最後に、小沢代表は、「必ず決めてきます」といって持ちかえったということだそうですから、連立政権で民主党をまとめようとしたのですね。党内の反対にあって拒否する結果になったけど、筋からいえばまったく論外の連立政権に乗り気になった。推進しようとした。これは非常に重大な行動だと思います。これはみなさん、この前の選挙で、民主党に「反自公」の願いを託した国民から見たら、情けないかぎりの姿ではないでしょうか。(拍手)

福田政権と正面対決――いまこそ共産党の頑張りどき

 二回の党首会談の全体を通して見えてきたことが二つあります。

 一つは、自民党政治の深刻な行き詰まりです。自民党政治は、内政でも、外交でも、いよいよ行き詰まってしまった。さらに、行き詰まりの極みに達した政治を、道理がたたない“数集め”によって延命させようとした。ここには政権政党としての、ほんとうに深刻な衰退の姿がみえるではありませんか。

 しかしもう一方で、それだけ自民党政治が行き詰まっているのに、野党第一党である民主党が、自民党政治に対抗するさだかな立場がない。対抗するどころか、自衛隊派兵の恒久法で意気投合する。連立政権という話を持ちかけられると、党首が乗り気になって持ちかえる。「反自公」といったって、その程度の構えしかないのです。

 こういう「二大政党」なるものの姿が、明らかになりました。私は、自民、民主両党に言いたい。この密室談合の真相、ここで何が話し合われたのか、国民に納得いく説明ができないのだったら、「二大政党」などという看板は下ろしたほうがいい。(拍手)

 自民党と民主党がこういうありさまですから、福田政権と正面から対決し、自民党政治にかわる日本改革の方針――アメリカいいなり、大企業中心から、「国民が主人公」の日本への根本的改革の方針を堂々としめす日本共産党が、いよいよ頑張りどころの情勢であります。きたるべき総選挙勝利をめざして、元気いっぱい力をつくす決意を、ここで申し上げるものです。(大きな拍手)

 (この後、志位氏は日本共産党がめざす日本改革の方針について語り、参加者との一問一答に応じました。その最後に、小沢代表の辞意表明のニュースが伝わり、志位氏は、つぎのようにのべて、講演と対話を締めくくりました)

小沢代表の辞意表明――民意に背いた密室での連立協議の破綻

 最後になりますが、一つニュースを報告します。いま、NHKのテロップで「民主党の小沢代表が辞任の意思を固めた」という報道が流れました。(どよめきの声、拍手)

 詳しいことはわかりませんが、これは、さきほどの講演でお話ししたような、密室談合で、民意に背き、自民党との連立政権づくりに足を踏み入れようとした邪道の政治が破綻(はたん)したものだと思います。(拍手)

 日本の政治が、大きな激動のなかにあることを感じる展開です。日本共産党は、福田・自公政権と正面から対決し、国民がほんとうに希望のもてる日本、平和な日本をつくるために、力をつくす決意です。(大きな拍手、歓声)