2007年9月21日(金)「しんぶん赤旗」

志位委員長の記者会見 (要旨)


 日本共産党の志位和夫委員長が二十日、国会内でおこなった定例記者会見の要旨は次のとおりです。


国連安保理決議と報復戦争支援問題での対応について

 ――国連安保理が十九日、海上自衛隊が参加する「不朽の自由作戦」(OEF)の海上阻止行動への「謝意」を盛り込んだ決議を採択したことをどうみますか。

 志位 採択された決議は、アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)の活動を継続することを主題とした決議の前文に、米軍中心の「不朽の自由作戦」――報復戦争への「謝意」を書き入れたというものですが、もともと前文は法的拘束力をもたないものであり、そこに「謝意」を書き入れたことをもって、国連が米国などに対して、報復戦争を遂行する権限を与えたことには、とうていなりません。日本政府が「謝意」を書き込むために奔走したようですが、姑息(こそく)で見苦しい小細工です。

 国連安保理は、本来、国際社会の平和と安定のための活動をする場です。そこに自民党政権の延命という党略を持ち込み、利用しようというのは、国際社会で批判されるべき恥ずかしい行為です。ロシアは決議案に棄権し、「今回の決議案は日本というある特定の国の国内事情のためである。国際社会全体の課題を協議する安保理の性格にそぐわない」と、強い不満を表明しました。中国は決議案に賛成しましたが、「こうした採択のしかたが悪(あ)しき前例にならないよう期待する」と表明しました。当然の声だと思います。

 アフガン戦争にさいしても、イラク戦争にさいしても、国連安保理にたいして国連憲章を守るためのまともな働きかけは何一つしてこなかった日本政府が、政権の延命のためにだけ安保理を熱心に利用しようというのは、国際的なひんしゅくをかう行為です。

 ――安保理決議は、共産党の立場に影響しますか。

 志位 日本共産党が、報復戦争への支援の継続に強く反対している最大の理由は、テロにたいして報復戦争という手段で対応したことが、根本から間違っているということにあります。それはこの六年間のアフガンでの情勢悪化で証明されています。戦争でテロはなくせない。この事実は、あれこれの文章の小細工によって消しさったり、ごまかしたりすることはできません。この事実のうえにたって、わが党は報復戦争支援の活動の中止を求めているのです。

 いま一つの理由は、海外での米軍の戦争を支援することは、日本国憲法に違反しているからです。国連の決議があるものであれ、国連の決議がないものであれ、海外での武力行使の支援に日本が参加することは憲法違反であり、許されません。

 ですから、今回の安保理決議が、わが党の対応に、いささかなりとも影響を与えることはありません。

自民党総裁選――自民党の政治的衰退を象徴

 ――自民党総裁選をどうご覧になっていますか。

 志位 一言でいって、自民党の政治的衰退を象徴する選挙になっていると思います。

 まず反省がありません。あれだけ参院選で国民の厳しい「自公政治ノー」の審判が下ったわけですから、この審判をどう受けとめるかが真剣に議論されてしかるべきなのに、それがまったくありません。双方の候補者ともに国民の声をどう受け止めるかという立場もなければ、反省もありません。安倍首相の「続投」をいったん自民党全体で認め、前代未聞の政権投げ出しという事態となり、国会が大空転に陥り、国民に大変な被害を与えていることへの反省もない。反省が全く論じられないというのは、驚くべき政治的衰退というほかありません。

 もう一つは、政策的選択肢がなくなってしまっているということです。貧困と格差を広げた「構造改革」「新自由主義」の路線を継続するという点でも、アメリカいいなりにアフガンやイラクへの派兵を続けるという点でも、双方の候補者の間に政策的違いはありません。多少のパフォーマンスの違いがあるくらいで、政策の違いがない。従来の政策に代わる多少なりとも別の政策的選択肢がなくなってしまっているところにも、自民党政治の政治的衰退が深刻な形であらわれています。

 たとえば、これまでの自民党は、経済政策をみても、一定の政策的選択の幅をもって、政権の延命をはかってきました。橋本内閣が「構造改革」路線で国民負担増と社会保障切り捨てで日本経済を大不況に突き落とすと、代わって登場した小渕内閣は一定の「手直し」をやって、減税や公共事業のバラマキをおこなうというように。大まかにみて中曽根内閣以降の時代は、ケインズ主義的政策と「新自由主義」的な政策を使い分けて、また並存させながら、自民党は延命をはかってきました。ところがいまや取りうる政策手段は、「構造改革」「新自由主義」しかなくなっている。政策的選択の幅がなくなり、「新自由主義」という貧困と格差を広げ、破綻(はたん)が明りょうになった細い行き詰まった道をすすむしかない。ここにも衰退の深刻さがあらわれています。

 アメリカとの関係でも、日米安保条約という条約で定められた権利、義務の枠組みさえ無視して、「世界のなかの日米同盟」といって海外での米国の戦争支援にどこまでもつきしたがう。それがどこでも破綻している。ここでも政治的節度を失い、政策的選択の幅もなくなってしまっています。

 もう一点、小泉・安倍政権が残した「靖国」派政治の負の遺産――靖国参拝問題、「従軍慰安婦」問題、沖縄戦「集団自決」の教科書検定問題などを、清算できるのかどうかが、どちらが首相になっても問われてきます。

 全体として、どちらが首相になろうと、こういう政権が早晩、政治的に行き詰まり、解散・総選挙に追い込まれることは必定です。わが党は、そのために大いに力をつくすとともに、自公政治に代わる新たな政治はいかにあるべきかについて大いに明らかにしていきたいと思います。

首相指名選挙への対応について

 ――二十五日の首相指名選挙で、日本共産党は、参院で決選投票になった場合、民主党の小沢一郎代表に投票すると決めたが、一九九八年には、当時の菅直人代表に一回目から投票した経過がありますが、当時の対応は間違いだったということですか。

 志位 当時の民主党と、今日の民主党には違いがあります。当時の民主党は、たとえば憲法改定をすすめるという立場も、消費税増税をすすめるという立場も、表明していませんでした。九八年の場合は、そうしたもとでの対応として、適切だったと思っています。現在は、そうした路線上の問題で、双方に大きな違いがあります。

 ですから、今回の場合の首相指名選挙では、参院において第一回の投票では、わが党独自の立場で対応します。すなわち日本共産党に投じます。首相指名は、政権協力にかかわる問題であり、現状においては民主党との間で政権協力をおこなう条件はありません。そうしたもとで独自の対応をとります。

 ただし参院で決選投票になった場合には、反自公という立場の意思表示として、民主党の代表に投票します。参院選では、「自公政治ノー」という国民の圧倒的な審判が下りました。その審判もふまえて、自公政治に反対する意思表示として、首相指名選挙が決選投票となったさいには、いまのべた対応をとることを決めました。

新しい総選挙方針について

 ――日本共産党は、五中総で、次期総選挙にむけた方針として、すべての小選挙区での擁立をめざすとしていた従来の方針の見直しを決めましたが、これは民主党との協力という一面もあるのですか。

 志位 それはありません。私たちが第五回中央委員会総会で、「すべての小選挙区での候補者擁立を目指す」という従来の方針を見直し、一定の条件のもとで擁立することを決めたのは、何よりもわが党の現在の力量をリアルに判断し、そのうえにたって比例代表での得票と議席をのばすために、いかにして党のもつ力を効率的、効果的、積極的に生かすかという見地から決めたことです。

 すなわち、何らかの政局的な狙いをもってこの方針を決めたとか、民主党を考慮して決めたというものでは、いっさいありません。国会内での野党間の共闘の問題とか、今回の首相指名での対応の問題なども、総選挙の新しい方針とはまったく別の問題です。

 ――民主党の側からの何らかの協力要請はあったのでしょうか。

 志位 ありません。