2007年5月22日(火)「しんぶん赤旗」

政治を変え、若者の未来を開こう

全国青年大集会 志位委員長のあいさつ(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が二十日、都内で開かれた「全国青年大集会」でおこなったあいさつ(大要)は次のとおりです。


写真

(写真)あいさつする志位和夫委員長=20日、東京・明治公園

若者が声をあげ、たたかう姿に、社会的注目があつまっている

 みなさん、こんにちは。私は、日本共産党を代表して若いみなさんに熱い連帯のあいさつをおこないます。

 全国青年大集会は、今回で四回目と聞きました。私は二〇〇三年に開かれた第一回、二〇〇四年の第二回につづいて三回目の参加で、常連で参加させてもらってきましたが(拍手)、今日は、これまでのとりくみをはるかに上回るこんなに多くのみなさんが参加していることに感動しています。(拍手)

 参加者が多いだけではありません。みなさんのたたかいに、社会的注目が注がれているのが今回の特徴です。主要なメディアが、この大集会に注目し、事前にも報道しました。そしてメディアの注目点も変化しています。これまでは、若者の雇用の悲惨な実態を伝えていました。しかし、いまはそれだけではなく、若者がひどい雇用の実態に対して、みずから声をあげ、立ち上がり、たたかっている姿を伝えるようになりました(「そうだ」の声、拍手)。そこに日本の未来への希望を見いだし、メディアが注目をよせている。

 私は、みずからの力で、みずからの前途を切り開くたたかいを発展させてきた若いみなさんに、心からの敬意の気持ちをのべるとともに、みなさんの運動のいっそうの発展を期待するものです(拍手)。そして、日本共産党が、みなさんと固いスクラムをくんで、たたかいぬく決意をのべるものです。(拍手)

勇気をもって告発することが、たたかいの出発点

 全国各地でのたたかいの様子をうかがい、私が大切だと感じた点が三つあります。

 第一は、勇気をもって社会的告発をおこなうことの大切さです。

 若者の雇用の劣悪な実態は、多くの場合、法律違反―無法に支えられています。「偽装請負」、「サービス残業」、一方的な解雇など、どれもみんな無法です。ところが無法だと知らないまま苦しんでいる若者が多い。まだまだ実態は社会に知られていません。それを具体的に告発する。無法は告発に弱いのです。世間に知られたら、いいわけはきかないことをやっている。その実態を勇気をもって告発することが、たたかいの出発点となり、力となることは全国の経験がしめしていると思います。

「ネットカフェ難民」――政府に「実態調査」を約束させた

 たとえば「ネットカフェ難民」の実態の告発です。さきほど詳しい報告があったように、青年大集会の実行委員会のみなさんが、全国規模で実態調査をおこないました。記者会見でその結果を発表すると、あるメディアの記者が「サンプル数が少ないのでは」と聞いたといいます。これにたいして、実態調査に同行していた他のメディアの記者は、「ネットカフェの実態調査はたいへんな調査だった。これは値打ちのある調査だ」とのべたといいます。私もそのとおりだと思う。値打ちのある調査です。

 調査結果をみて、あまりの深刻な実態に胸が痛くなりました。

 「お金がなくてアパートすら借りられず、働いても働いても、ネットカフェ暮らしから一年たっても、二年たっても抜け出せない」、「長時間労働や急な出張命令などで、家に帰る時間もなくネットカフェに泊まる」などの若者の声が告発されました。

 わが党の小池晃参院議員が、この問題について国会でとりあげました。そうすると柳沢伯夫厚生労働大臣も「そういうことがあるとすれば、まったく望ましくないことであり、まず実態を把握する必要がある」と答弁せざるをえなかった。みなさんの告発が、政府を動かし、「実態把握」を約束させたのです。(「そうだ」の声、拍手)

「偽装請負」――人間の尊厳をかけた告発が政府を動かした

 「偽装請負」問題も、若者たちが勇気をもって実態を告発していったことから、解決に向かう動きがはじまりました。光洋シーリング、日亜化学など、どこでも最初は少数でも、若者が勇気をもって無法を告発したことが、その是正の動きにつながりました。

 松下プラズマで「偽装請負」を告発してたちあがっている若者は、「人間をまるで奴隷のように、モノのように扱うやり方を許せない。人間としての尊厳をかけてたたかっているから、負けることができない」と語りました。それをきいて胸が熱くなりました。

 私は、いま職場の無法とたたかっている若者たちの怒りは、給料が安い、有給休暇が取れないなどのことだけではないと思います。一番の怒りは、人間扱いされていない、モノのように使い捨てにされていることへの、人間の尊厳をかけた怒りではないでしょうか。(大きな拍手、「そうだ」の声)

 「偽装請負」は無法そのものですから、事実が明るみに出れば、政府も動かざるをえません。厚生労働省に、二度の是正の「通達」をださせ、直接雇用の拡大という成果も勝ち取りつつあります。若者の勇気ある告発が、政府を動かしたことに自信をもって、誇りをもって、さらにたたかいを発展させようではありませんか。(拍手)

「格差社会」の本質は貧困問題――「貧困隠し」の安倍政権は許せない

 いま「格差社会」が問題になっています。いま問題になっている「格差社会」とは、国民生活の全体が豊かになるもとでの格差の拡大ではありません。働くものの所得が全体として減るもとでの格差の拡大です。そのもとで、人間らしい生活ができない貧困が広がっていることにこそ、一番の問題があります。すなわち「格差社会」といわれている、問題の本質は、貧困問題なのです。(「そうだ」の声、拍手)

 ところが、政府は、貧困の存在を認めようとしません。なかなか調べようともしません。「ワーキングプア」―働く貧困層の問題が、これだけ一大社会問題になっているのに、その実態すら政府は調べようともしません。なにが「美しい国」でしょうか。私は、安倍政権は、「貧困隠し」政権だといいたい。(「そうだ」の声、拍手)

 みなさん、隠すなら、告発しようではありませんか(拍手)。いま、若いみなさんが、貧困の実態、職場の無法の実態を、勇気をもって告発していることは、ほんとうに勇気ある、大義あるたたかいだと思います。(大きな拍手)

労働組合運動の新たな広がり――若者が憲法の権利を行使しはじめた

 第二に、若者の連帯の大切さです。私は、とくにいま若者の中で労働組合運動が、新しい広がりを見せているのはすばらしいことだと思います。

 大手牛丼チェーンの「すき家」のアルバイト従業員のみなさんが、首都圏青年ユニオンに加入し、解雇を撤回させ、不払い残業代の一部を支払わせました。東京・渋谷発のこのニュースが全国に流れたら、その直後から労働組合の仲間の輪が全国に広がりつつあると聞きました。仙台では「店舗丸ごと加入した」ところも生まれたという話がされました。相手はチェーン店ですから、労働組合も全国チェーンで広がるといいですね。

 「偽装請負」告発のたたかいも、全労連(全国労働組合総連合)、地域労組、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)など労働組合と協力し、また職場のなかに労働組合をつくり、仲間づくりのなかでたたかいを前進させているところが、すばらしいところだと思います。

 働くものが団結してたたかうことは、憲法にのっとった侵すことのできない権利であります。憲法二八条には、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と明記しています。「団体交渉」と明記していることがとくに重要です。憲法によって、労働者は、労働組合をつくり、企業と対等な立場で「団体交渉」をおこなう権利が保障されている。この権利を、若いみなさんたちが、柔軟で、しなやかで、強靭(きょうじん)なやり方で行使しはじめた。私は、これは、それが若者たちの全体に大きく広がるならば、日本の歴史を変える巨大な力となる画期的出来事になると信じて疑いません。(拍手)

若者を分断する攻撃にたいして、「社会的連帯で反撃を」

 政府や財界は、国民をバラバラにし、若者をバラバラにすることによって、ひどい労働条件を押し付けようとしています。厚生労働省の諮問機関の委員をつとめる、ある人材派遣会社の社長は、こう言い放ちました。

 「弱者には、自分ではどうにもできない弱者と、そうでない弱者がいる。本来の意味での弱者を社会的に支援するのは当然のことである。だが、いまのニートやフリーターは、自分ではどうにもできない弱者といえるだろうか。職安に行けば、嫌というほど求人情報が出ている。努力すれば、いくらでもチャンスはあるのに、誰かが与えてくれるのを、ただ口を開けて待っている。そんな人まで弱者という必要はない」

 これは心ある人間のいう言葉ではありません。弱者にまで分断を持ち込み、たがいに足をひっぱりあうようにしむける。さらに責任は一人ひとりの青年にあるかのように説教する。なんというひきょうなやり方でしょうか。「職安に行け」というけれども、パート、アルバイト、派遣、請負など、使い捨て労働で苦しんでいる若者が、職安に行けばすぐに正社員に採用されるとでもいうのでしょうか。

 みなさん、国民を分断し、若者を分断する攻撃にたいして、「社会的連帯で反撃を」――このスローガンを掲げて、仲間をつくり、労働組合をつくり、団結の力で打ち破ろうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

若者使い捨ての政治と財界――この根源みすえ、大本から解決を

 第三は、問題の根源をみすえ、大本から解決することの大切さです。

 深刻な若者の雇用問題は、けっして自然現象ではありません。もちろん青年に責任があるのではありません。若者に使い捨て労働をしいている政治と財界にこそ責任があります。(「そうだ」の声、拍手)

 いま若い世代を襲っている雇用破壊のはじまりは、一九九五年に当時の日経連(現・日本経団連)が発表した「新時代の『日本的経営』」報告にあります。ここでは、これからは雇用は三つにわけると宣言しました。一つは、長期雇用の正社員。二つ目は、有期雇用の契約社員。三つ目は、パート・アルバイト・派遣です。こうして正社員を減らし、非正規雇用への大規模な置き換えがはじまりました。

 これを応援したのが、政府による一連の労働法制の規制緩和でした。正社員には裁量労働制などによって過労死をもたらす際限のない長時間労働がおしつけられました。その一方で、派遣労働が自由化されたことは、若者をモノ扱いする労働を劇的に拡大しました。

 その結果、いま財界は空前の大もうけです。「偽装請負」を摘発された光洋シーリングの親会社のトヨタは、なんと年間二兆二千億円という空前の利益をあげています。大企業全体のもうけは、九五年と〇五年を比べると、十四兆円から二十九兆円へと二倍にもなりました。若者を使い捨てにし、若者の涙と犠牲のうえに、空前の大もうけをむさぼる。こうした道にはけっして未来はありません。(大きな拍手)

 異常な大企業中心主義の政治――ここにこそ若者の雇用問題の根源があります。「政治を変えて、若者の未来を開こう」。この立場で奮闘しましょう。(拍手)

 勇気をもって告発し、仲間をつくって連帯を広げ、政治を変えることで未来を開こうではありませんか(拍手)。私たち日本共産党も若いみなさんとともにがんばりぬく決意です。ともにがんばりましょう。(大きな拍手)