2007年3月11日(日)「しんぶん赤旗」
|
日本共産党の志位和夫委員長は十日、東京・明治公園でおこなった演説の冒頭、国政の焦点について語り、安倍政権の支持率続落にふれ、「なぜ国民はこの内閣を見放しつつあるか」と問いかけました。
柳沢伯夫厚労相発言や「政治とカネ」問題をめぐる、同政権の最低の政治モラルへの怒りとともに、最大の理由として「自分たちがおしつけている暮らしの痛みにあまりにも鈍感だということへの深い怒りがある」と強調。母子家庭の状況や国民健康保険証の取り上げの深刻な実態などを示し、貧困と格差の実態を見ようともしない安倍政権の姿勢を告発しました。
その上で志位氏が警告したのは、安倍内閣が行き詰まりの打開と延命のため、タカ派・反動派の本性をむき出しにしていることです。
憲法九条改悪への暴走では、その第一歩として改憲手続き法案を五月三日までに成立するよう号令をかけ、歴史問題の逆流では、首相が「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」などと事実をゆがめた発言を繰り返しています。志位氏は、改憲手続き法案阻止の国民的運動で国会を包囲しようと訴えるとともに、「従軍慰安婦」問題での首相発言を撤回するよう強く要求しました。
一方、「格差是正」をいう民主党について志位氏は、同党が派遣労働の原則自由化の法改悪などに賛成してきた事実を紹介。「その反省もなく選挙が近づくと『対決』を叫ぶ。これは国民にたいしてあまりに無責任、不誠実ではないか」と批判し、「たしかな野党」の日本共産党がのびるかどうかこそが選挙戦の最大の焦点だと訴えました。
都政について話をすすめた志位氏は、八年間におよぶ石原都政には“三つの大罪”があると告発しました。
第一の大罪は、都民の福祉と暮らしを切り捨て、巨大開発に税金を注ぎ込むという「逆立ち」都政を、極端なまでにひどくした罪です。
一九九九年に石原知事が就任した当時は、老人福祉手当、老人医療費助成、シルバーパスなど革新都政時代の福祉の制度が生きて働いていました。石原知事は「何がぜいたくかといえば、まず福祉」といい、乱暴極まるやり方で軒並み破壊しました。一方、臨海開発や高速道路建設など大規模開発を中心に年間一兆円も注ぎ、さらに、オリンピック招致を口実に、八兆五千億円もの巨大開発を計画しています。
「ここにこそ、石原都政八年間の最大の罪があり、ただすべき都政の最大のゆがみがある」と力を込める志位氏。聴衆から「そうだ!」の声があがりました。
第二の大罪は、憲法と民主主義を破壊する暴政を進めた罪です。
石原知事は、「私はあの憲法を認めない」と公言、改憲の旗振りをしてきました。卒業式や入学式での「日の丸・君が代」の常軌を逸した強制にたいし志位氏は、「これが子どもたちの心をどれだけ傷つけ、教育への信頼をどれだけ失墜させているかは、はかりしれない」とのべました。
第三の大罪は、都政私物化の罪。税金をつかっての超豪華海外旅行、四男の重用、知事と側近による公費での飲み食い…。これらはすべて日本共産党都議団が膨大な情報公開資料などを分析して明らかにしたものです。志位氏は都民の怒りについて、「福祉では盲導犬のエサ代補助のような、わずかなものまで削りに削り、ガラパゴス旅行とは許せない」という、福祉切り捨てを土台にわきおこった怒りがあると強調しました。
「ここで重要なのは、“三つの大罪”は石原知事が一人でやったことではなく、都議会の自民・民主・公明の『オール与党』が支え、賛美、激励し、チェック機能を放棄するなかでおこなわれたことです」
こうのべた志位氏は、「にわか野党」としての民主党の姿勢も批判。「この選挙を、石原都政とそれを支えた自民、民主、公明の『オール与党』の“三つの大罪”に、きびしい審判を下す選挙にしよう」と訴えると、歓声がわき、大きな拍手が起きました。
では、「逆立ち」都政をただし、「都民が主人公」の都政への転換をはかる立場、政策、資格を持つのはだれなのか。志位氏は、政党では日本共産党、候補者では無党派と共産党が共同で推薦する吉田万三さんだけと強調しました。
“三つの大罪”のどの問題でも、「石原タブー」を打ち破るところまで暴政を追い詰めてきたのが共産党です。志位氏は、石原知事自身が、にわかに予算反対に態度を変えた民主党にたいし、「それなら対案として、共産党のように組み替え動議をだすべき」とのべ、日本共産党の役割を認めざるを得なかったことを紹介すると、聴衆から拍手とともに笑いが広がりました。
志位氏は、都知事選に立候補を表明している浅野史郎前宮城県知事の立場についても解明。四年前に宮城県の選挙の応援演説で、福祉切り捨て、国保証取り上げ、大型開発のムダ遣いなどを平然と進める姿に、「やっている政治の中身をみると、自民党よりも自民党型だ」と“診断”したことを紹介しました。
この“診断”の正しさは、介護保険導入を口実にした介護手当など経済給付的独自施策ののきなみ打ち切り、乳幼児・障害者・母子家庭の医療費助成への一部負担導入など、石原都政と浅野県政がやってきたことが驚くほど同じであることにも表れています。
志位氏は、「障害者自立支援法」という希代の悪法を賛美する態度も共通するなど、石原氏と浅野氏は「逆立ち仲間」であり、「住民福祉の機関」という自治体の原点を冷酷に踏みにじるという点で、どちらかが「よりまし」とはいえないと力説しました。
「マスメディアなどは『石原・浅野対決』などと書くが、それはまったくの偽りだ。この選挙の真実の姿は、二つに分裂した『オール与党』の陣営と、日本共産党と無党派が共同して推薦する吉田万三さんの対決です」
志位氏が力強く訴えると、聴衆は「よし、やるぞ」の声と大きな拍手で応えました。