2006年9月12日(火)「しんぶん赤旗」

韓国との交流、北東アジアの平和について

志位委員長、韓国メディアとの会見(一問一答)


 五日から十日まで韓国を訪問した日本共産党の志位和夫委員長は九日、韓国メディアを対象にした記者会見で、初の韓国訪問での交流について報告するとともに、その成果について「韓国と日本共産党との交流の太い道が開かれたと思います。韓国政界、各界のみなさんにどこでも温かく歓迎していただいたことに、心から感謝しています」と述べました。

 志位氏は、第四回アジア政党国際会議(七―十日)について「アジアの政党が与野党の別なく一堂に会し、平和と進歩を語り合う重要な意義をもつ会議として成果をおさめつつあると思います」と語り、「会議の成功のために、参加者の一員として最後まで力をつくしたい」と述べました。

 会見での一問一答の大要は次のとおりです。

北朝鮮問題

平和的・外交的解決に徹して

 ――北朝鮮の核実験がとりざたされていますが、この核実験が東アジアや朝鮮半島にどういう影響を与えるでしょうか。日本の核武装につながるという話がありますが、どのように考えますか。

 志位委員長 北朝鮮がこの間、ミサイルを発射したことについて、私たちは強く抗議しました。これは、国際的取り決めへの違反であり、国際法への違反です。この問題では、国連安保理で一致した決議があげられています。日本共産党はこれを支持しています。北朝鮮が、この決議を受け入れて、六カ国協議に速やかに復帰することを強く求めます。

 北朝鮮が、核兵器開発の道を進むことにも私たちは絶対に反対です。私たちは核不拡散条約(NPT)の枠組みについて、特定の核保有国が特権的な位置を占めるという点で批判していますが、新しい核保有国が生まれることを、私たちはもちろん認めるわけにいきません。私たちは、地球的規模での核兵器廃棄に速やかに決断することを、各国政府に被爆国の政党として強く求めています。

 もちろん日本の核武装にも断固反対です。軍事に対して軍事という軍事的対応の悪循環が、もっとも悪いことです。平和的・外交的な問題の解決に徹するという姿勢を、この地域の問題解決にあたって、原則として堅持すべきです。

 私は、北朝鮮政府にも言いたいことがあります。北朝鮮政府は「先軍思想」を掲げています。すなわち軍事力を強めることが、安全保障の最大の鍵だという考えです。しかし、北朝鮮の安全保障にとって、一番の問題点は、軍事力が足らないことにあるのではありません。周辺諸国との信頼関係が確立していないというところに一番の問題があるのです。北朝鮮が世界のルールを守り、国際社会の責任ある一員として復帰する、そのために働きかけることが大切だと考えます。

憲法九条

国民多数派結集し、国際誓約守り抜く

 ――日本共産党は、憲法九条を守る運動で有名と承知しています。次の首相(が有力な自民党総裁選の)候補は、みんな改憲派です。日本共産党は、これにどう対処するおつもりですか。

 志位 日本共産党は、日本の国民の過半数を、憲法改定反対で結集することに一番の力をそそいでいます。日本の憲法の改定は、国会だけでできるものでありません。国民投票が必要になってきます。すなわち、国民の多数が「ノー」といえば、改定はできません。

 日本の有名なノーベル賞受賞作家の大江健三郎さんなどを中心に、「九条の会」が日本全国に広がっています。日本共産党は、この運動の一翼を担っています。「九条の会」は、全国に五千以上つくられました。日本全国のあらゆる場所につくられています。こうした国民多数結束の運動を広げていくことがカギだと考えています。

 憲法九条は、日本の国民だけのものではありません。日本は過去、侵略戦争と植民地支配という誤りをおかしました。この反省のうえに二度と戦争を繰り返さないという国際的な誓約が憲法九条なのです。

 もしこれを破棄するならば、日本はアジアでの信頼、世界での信頼を大きく失うことになるでしょう。日本共産党は、党創立以来、反戦平和を貫いた党として、憲法九条を守りぬくために全力をつくすことを、この場でもお約束いたします。

「しんぶん赤旗」支局開設について

 ――今回の訪韓の目的の一つが、機関紙「しんぶん赤旗」のソウル支局開設にあるという話を聞きました。開設のためにどのような方に会い、どういう反応がありましたか。

 志位 私たちは、ソウルでの「赤旗」支局開設を願っていますが、今回のミッション(代表団)の目的はそこにあるのではありません。これは、実務レベルで解決すべき問題であって、今回の訪韓にあたって、そういう交渉は特別にしていません。やがて時間が解決するものだと確信しています。

 ただ、韓国政府との関係では、常駐特派員でない取材は「どうぞ自由に」と言われているので、記者を韓国に随時派遣しています。ソウルに行くのは、東京から沖縄へ行くよりは近いですから。いずれ、この問題は解決されると思います。

朝鮮労働党と日本共産党との関係について

 ――北朝鮮と日本共産党との関係はどうなっていますか。昔は、よかったが、今はそうでなくなったと承知しているが、どうしてそうなったのでしょうか。

 志位 日本共産党と朝鮮労働党との関係は、一九五〇年代後半ごろから始まりました。しかし、一九六〇年代後半からさまざまな問題があらわれてきました。

 最初に問題を私たちが感じたのは、一九六七年から六八年の時期でした。この時期、青瓦台襲撃事件など、いわゆる「武装遊撃隊」の問題が韓国で頻発しました。私たちは事態をたいへん憂慮し、北朝鮮に代表団を送りました。当時、書記長だった宮本顕治氏が金日成主席と会談しました。

 そこで私たちが言ったのは、武力「南進」は絶対に認められない。絶対に反対だということです。もし、そんなことをしたら、日本の民主勢力はだれも支持しない、反対することになると強く伝えました。金日成主席からは「当面、そういうことを考えていない」という回答を引き出しました。ただ、この時、私たちは、北朝鮮において異常な事態が進んでいるという危惧(きぐ)の念をもちました。

 その次は、一九七〇年代の問題です。この時期には、金日成主席を礼賛する運動を日本に押しつけるという問題が起こりました。私たちは、特定の外国の個人の崇拝を押し付ける運動には絶対に反対です。そういう立場を表明しました。

 両党の関係が、断絶におちいったのは一九八〇年代前半のことです。一九八三年に、ラングーンで爆弾テロ事件が起こりました。一九八四年に、日本漁船への不法な銃撃事件が起こりました。私たちは、「これは社会主義とは無縁な誤りだ」と批判しました。北朝鮮からは、「そうした批判は敵に加担するものだ」と激しい攻撃が加えられました。これを機に両党関係は断絶に陥り、今日にいたっています。

 同時に、今日、北朝鮮問題が東アジアの平和と安定にとって重大な問題となるもとで、日本共産党は、その解決は、平和的・外交的手段でおこなうべきだと強く主張しています。朝鮮半島に、戦争も動乱も絶対に起こしてはならないというのが、私たちの一貫した立場です。

 私たちは、そういう立場から、日本と北朝鮮の政府間に交渉ルートがないことを憂慮し、一九九九年の国会で、わが党の不破委員長(当時)が、無条件に交渉ルートを開くべきだと二度にわたって提起しました。

 それがやがて、二〇〇二年の「日朝平壌宣言」につながってきました。私は、野党のリーダーとして小泉首相とあらゆる問題で対立し、対決する立場をとっています。しかし、「日朝平壌宣言」を結んだ時は、これを高く評価し、協力を惜しまないと述べました。

 その後の日朝関係は、さまざまな逆流や曲折もあります。しかし「日朝平壌宣言」は、拉致問題、核・ミサイル問題、過去の歴史問題の清算を、包括的に解決するロードマップ(行程表)として重要な意義を持っています。これを日朝両国政府が堅持し、問題解決にあたることが何よりも大切です。

 日本共産党が、北朝鮮の不法行為をもっとも厳しく批判してきた政党であること、同時にこの問題を外交的・平和的に解決するという点で一貫した立場をもち行動してきた政党であることを、どうかご理解いただければと思います。

今後の韓国との交流について

 ――今回の訪韓で、党としては「歴史的に窓が開かれた」と位置づけられると思います。志位委員長は「交流を深める」とおっしゃっていますが、今後具体的にどのような交流が考えられるのか、何かイメージしているものがあれば教えてください。

 志位 今後、さまざまな分野で、韓国の方々と交流を深めたいと願っています。

 まず、政界の方々との交流を拡大したいと思っております。開かれたウリ党の金槿泰議長とは、両党の地方議員の交流をおこなうことで合意しました。

 また、民間レベルでの交流も広げたいと願っています。

 今回は延世大学でしたが、韓国の未来をになう若い方々との交流は、今後もさまざまな形で進めたいと思います。

 姜萬吉・高麗大名誉教授、趙b・高麗大文科大学学長、延世大学の金聖甫教授など、韓国の歴史を深く内面から研究している研究者にお会いし、突っ込んで意見交換することができたのは、私にとって大きな幸せでした。日韓が過去の歴史についての認識の基本点を共有していくことは、未来にこの地に平和の共同体をつくる上でも非常に重要だと思います。ぜひ学術分野にたずさわる方々との交流も、さまざまな形で行っていきたいと思っています。

 最後に、私は、日韓の文化の面での交流が大きく発展することを願っています。日本ではいま、たいへんな韓流ブームです。私もドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」の大ファンです(笑い)。両国の文化交流のために、私たちの党としても可能な努力をしたいと思っています。

 (韓国語で)ありがとうございます。これからわが党と貴国の交流が発展することを願います。(拍手)