2006年8月2日(水)「しんぶん赤旗」

基地強化の押しつけ 全国的連帯で打ち破ろう

岩国・演説会での志位委員長の訴え(詳報)


 日本共産党の志位和夫委員長は七月三十一日、山口県岩国市で開かれた党演説会で岩国基地問題を五つの角度から解明しました。


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(写真)訴える志位委員長=7月31日、岩国市

 志位氏は冒頭、岩国基地強化計画に対し、山口県民・岩国市民が広島県民とともに、自治体ぐるみの勇気あるたたかいを前進させてきたことに敬意を表明しました。

 このなかで岩国市で、住民投票と市長選挙の二度にわたって、反対の民意を下したことの歴史的意義を強調。また、広島県の五市との共同のたたかいが発展していることは素晴らしいと指摘し、こうした自治体ぐるみのたたかいの発展を大切にする党の立場を述べました。そのうえで、岩国基地問題について、五つの角度から解明しました。

今の計画が押しつけられたらどうなるか

 第一は、いまの計画が押しつけられたらどうなるのかです。

 米軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機と沖縄の空中給油機の移転で、常駐の軍用機が米軍機と自衛隊機を合わせ百三十六機になります。米軍が海外に展開している航空基地では最大規模です。

 さらにFA18戦闘攻撃機の一体運用によって海兵隊と空母打撃群という、二つの「殴り込み」部隊の根拠地になります。両方が居座るのは世界でも日本だけ、一つの基地で両方の部隊が一体化されようとしているのは岩国基地だけ。まさに異常の中の異常な事態になります。

 また日米両政府は、移転の目的を「長期にわたる前方展開の能力を確保するため」=つまり未来永劫(えいごう)にわたって、世界中に殴り込む態勢を確保するためだと強調しています。また、「(厚木に比べ)周辺地域への影響がより少ない」ようにするとも述べています。志位氏が「人数の問題でない。人の命はみなひとしく尊い。厚木でダメなものは、岩国でもダメ。アメリカに帰ってもらうしかありません」と力を込めると、会場から拍手がわき起こりました。

許しがたい三つの「だまし討ち」

 第二として志位氏は、基地強化を県民・市民をだますやり方で押しつけようとしているとして、三つの「だまし討ち」を告発しました。

 一つは、「騒音問題を解決する」といって、滑走路の沖合移設=巨大滑走路建設を国民の税金で進めながら、つくった後には、空母艦載機の移転で騒音悪化を押しつけようとしていることです。

 二点目は、艦載機を受け入れる代わりに空中給油機部隊移転をとりやめる方針だったのが、今年五月になって、空中給油機十二機の移転を突如押しつける方針を宣言したことです。

 三点目は、NLP(夜間離着陸訓練)の危険です。政府はこれまで、NLPを岩国基地で行うことはないと説明してきました。しかし市田忠義書記局長の国会追及(三月)で、E2C早期警戒機のNLP実施や、「事前訓練」と称する無通告訓練が行われることなどが明らかになっています。

 さらに「米軍再編」の「最終合意」(五月)では、NLPのための「恒常的な施設」を本土に建設することで日米合意しました。建設先について米側が、岩国も視野に入れた「西日本」方面との意向を持っているとも伝えられています。

 志位氏は「『だまし討ち』を重ねるやり方は、絶対に許せません」と厳しく批判しました。

中国、四国、瀬戸内海全体にかかわる二つの重大な危険

 第三として志位氏は、この計画には、中国、四国、瀬戸内海全体にかかわる二つの重大な危険の可能性があると強調しました。

 一つは、米軍機による低空飛行訓練が増加する危険です。

 このなかで志位氏が、米大使館のメア安保部長(当時)が、地元紙の取材に「中国山地の谷間の地域に住民がいることは承知している」としながらも「低空飛行訓練はパイロットに必要な訓練」と開き直っていることを紹介すると、会場にどよめきが起きました。

 もう一つは、原子力空母の寄港の危険性です。

 防衛施設庁は、地元自治体の質問に、米国籍艦船の寄港について否定していません。軍事評論家の中には、原子力空母が空母航空団の人員の乗船・下船のために、岩国基地の沖合に来る危険を指摘する声もあります。

 志位氏は、原子力空母が持つ「軍事優先の論理」ゆえの危険を解き明かし、「東京湾だろうが、瀬戸内海だろうが、原子力空母は日本の海に入れさせるわけにはいかない」と力説しました。

「恒久戦争」をともにたたかう――絶対に許されない

 第四として、そもそも「米軍再編」とは何かについて話を進めた志位氏は、その狙いと日本の位置付けについて詳しく解明。このなかで米政府が「長い戦争」を強調し始めたことをあげ、「『恒久平和』の憲法を持つ国を『長い戦争』=恒久戦争をともにたたかう国にする――断じて許せない」と訴えました。

自治体ぐるみ、全国的な連帯のたたかいを発展させよう

 最後に、たたかいに勝利する展望として、次の二点を強調しました。

 一つは、自治体・住民ぐるみのたたかいを揺るがず発展させることです。岩国基地をめぐるたたかいは、先駆的な姿を示しています。

 もう一つは全国的な連帯の重要性です。

 自衛隊の元統幕議長は、再編計画が「パッケージ」になっていることをあげ、「一部が進展しない場合は、全体としての計画が頓挫する恐れがある」と述べています。つまり、焦点となっている首都圏、岩国、沖縄などの計画の一つが頓挫すれば、計画の全体がつぶれることになるのです。

 岩国と神奈川では、どうか。厚木から岩国への艦載機移転には、神奈川での、キャンプ座間への米陸軍新司令部移設と横須賀への原子力空母配備押しつけの見返りという性格があります。岩国が移転を許さなければ、空母が横須賀に来ようにも、艦載機の羽を休める飛行場がなくなり、座間への移設も困難になります。横須賀が母港化を許さなければ、艦載機自体が来なくなります。

 本土と沖縄という点でも、空中給油機移転には、海兵隊の巨大基地を沖縄に押しつける見返りという性格があります。移転拒否で困るのは沖縄県民ではなく、巨大基地を押しつけようとする米軍なのです。

 日米両政府はこれまで「沖縄の負担はたしかに過大だ。本土も負担せよ」といって、運動を分断し、結局は沖縄の基地も強化してきました。しかし今回は沖縄も本土も耐え難い基地強化が押しつけられ、たたかいの一体的な発展が力強く進んでいます。

 志位氏は「相手は『厚木のために』『沖縄のために』といって、基地強化を押しつけてくる。この分断に対し、全国的連帯で打ち破ろう」と呼びかけ、会場は大きな拍手に包まれました。