2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」(九州・沖縄版)

現実政治と切り結び、市政を動かしてきた日本共産党

北九州市で志位委員長が訴え


 北九州市の演説会(十六日)で、日本共産党の志位和夫委員長が訴えた党の役割と値打ちのうち、北九州市政について語った部分を紹介します。


自治体の「本業」そっちのけ、「逆立ち」市政

 北九州市政はどうでしょうか。自治体の仕事は、地方自治法第一条にあるように、住民のみなさんの福祉とくらしをよくすることにあります。こちらが「本業」です。ところが北九州市は「本業」そっちのけで巨大開発に巨額の税金をつぎこむ。この「逆立ち」が全国のなかでも、とりわけひどい市政だと思います。

“開発に注ぎ込むために福祉を削る”を「先進的」と自慢

 私、こんどこちらに伺うにあたって、北九州市のホームページを見てみました。そのなかに「北九州市発 鶴翼の陣形」というサイトがありました。北九州市は上空からみると、鶴が羽を広げたような形に似ているので、そういうタイトルをつけたというそうですが、そこで「北九州市の先進的な取り組み」を全国に紹介しています。その一つが「行財政改革」だということです。いったいどこが「先進的」なのか。こう書いています。

 「『削るべきところは削り、強めるべきところは強める』――単なる一律削減ではなく、都市再生のために必要とされる施策など『強める』施策を検討し、そのために『削る』べきところを考えるという『逆転の発想』で改革に取り組みました」。ここに市政の姿がよくあらわれていると思います。

 「『強める』施策」としてあげられているのが都市再生でしょう。都市再生とは何か。あのAIM(えいむ)ビルのような巨大ビルづくりなど、開発仕事です。

 では、「削るべきところ」は何か。これははっきり書いてありませんが、削られたところを見れば分かります。例えば、お年寄りの医療費の無料化制度。北九州市では、以前は六十六歳からの制度でしたが、一九九八年から段階的に縮小されて、来年四月からはついに対象が六十九歳だけになってしまうとのことです。一歳引き上げるごとに四億五千万円の予算削減だそうです。

 ようするに福祉を削って、開発仕事に回すというのが、「逆転の発想」だということのようです。なんでこれが「逆転の発想」なんでしょうか。“よその自治体では、削るべきところといえば巨大開発のムダづかい。だけどうちは違う。開発仕事は強める、そのために「削るべき」は福祉だ。これこそ「逆転の発想」だ”とでもいうのでしょうか。しかしこれは、「逆立ち」政治というのが、正しい日本語の使い方ではないでしょうか。(大きな拍手)

 この「逆立ち」市政が、日本共産党以外の「オール与党」――自民党、民主党、公明党、そして社民党までくわわってすすめられている。国では「二大政党」といっていますが、北九州市では、仲良く与党に入って、「逆立ち」予算にも全部賛成しています。このなかで、日本共産党の十議席は、一人でも欠けることができない大事な役割を果たしているのです。(大きな拍手)

税金のムダづかいをただす――議会になくてはならない監視役

 まず第一に、税金のムダづかいをただす、議会になくてはならない監視役を、日本共産党議員団が担っている。このことを訴えたいと思います。

目的も、採算の見通しもない事業にあぜん

 自民党のある有力国会議員が、「日本には、二十世紀末の三大バカ事業がある」といったことがあります。本四架橋、東京湾横断道路、関空二期工事。これを「三大バカ事業だ」と批判しました。

 しかし、北九州市にまいりますと、目的もさだかでない、採算の見通しもないという事業は、三つどころではありません。

 ひびき灘の巨大港湾づくり。採算の見通しがありません。それから、紫川の豪華な橋のかざり(笑い)。きょうも見てまいりましたが、「火の橋」とか、「風の橋」とか、「いったい何が目的だったんだろう」と思います。私が四年前に来たときは、「風の橋」が壊れていました(笑い)。「台風がきても大丈夫」といっていた橋が、風速五メートルで壊れたと聞きました。こんど直したら、突風が吹くとビュンビュン回るようになって、危なくてしようがないというのです(笑い)。道楽のためのムダづかいとしかいいようがないのではないでしょうか(笑い、拍手)。それから水環境館。これも四年前に見させていただきました。紫川の魚を観察するためにつくったそうですが、魚が見えないんです。濁ってますから。たまたま一匹、魚が見えたら、「志位さん、運がいいですよ」といわれたぐらいです(笑い)。こちらに伺うたびに、市政のムダづかいにあぜんとさせられます。

AIMビル――赤字の穴埋めがまた赤字

 なかでもいま大問題になっている一つとしてAIM(えいむ)、アジア太平洋インポートマートというビルがあります。小倉駅北口に輸入促進施設として三百十三億円かけてつくった巨大施設です。私は、四年前にここで「これは見通しない」と訴えたことを思い出します。(ビルに)入ろうとしていたヤオハンがつぶれちゃって、週刊誌では「“市営”ゴーストビル」と書かれていました。

 このビルのフロアが埋まらないままです。フロアが埋まらないから、その穴埋めに今年度で十三億円、累計で八十億円以上も税金を入れて、空きフロアになっている三階を市が丸ごと借り上げて、展示場などにして来年度から活用するというのです。ところが、これも採算無視なんです。市自身の試算でも、毎年一億九千万円の赤字が出るというのです。赤字の穴埋めにやる事業が、また赤字なんです。

 しかもこの試算は、隣接している同じ市の第三セクターが運営する西日本総合展示場からお客さんをもってきて成り立つという試算なんです。なんてことはない、市がつくった二つの展示場同士で共食いをやって、共倒れになるというだけの話ではないですか。本当にむちゃくちゃなやり方だと思います。(拍手)

「オール与党」の責任を厳しく問う二つのコラム

 こういうでたらめさがなぜ通るのか。市長の責任は大きいですよ。しかし、「オール与党」のひどさもいわなければなりません。

 AIMへの十三億円の税金投入が決められた、今年三月の市議会がどんなありさまだったか。西日本新聞に「論戦点検」というコラムがあります。大変面白かったので、みなさんに紹介したいと思います。

 まず「経営見通しなぜたださぬ」という見出しのコラムです(「西日本」04年3月18日付)。AIMへの税金投入の是非を問うべき予算特別委員会の質問を取材した記者が書いたものです。

 「『みなさん、お疲れのようですから質問は省き、要望に切り替えます』 まだ、午後三時を回ったばかりというのに、この日の最後の質問者吉尾計議員(緑の会)の言葉に耳を疑った。……熱い論戦を期待していたら、思いきり肩すかしを食らった」――もう質問はやめます、というんですからね。

 「AIMについても、共産党の野依謙介議員が質問しただけ」と書いています。共産党はやってますね、やっぱり。では他党の議員はどんな質問をしたのか。こう書いています。

 「『家庭菜園の野菜を食べる鳥は有害鳥獣か』『観光振興のためには観光課長が海外視察にいけばいい』。そんな質問や要望がだらだらと繰り返される委員会室。執行部席からは溜息と失笑が漏れ、緊張感のかけらもなかった」。

 なかなか痛烈な批判です。これが「オール与党」なんですね。

 もう一つのコラム、これは「『議会』の責任とは」という見出しです(「西日本」04年3月5日付)。公明党の幹事長の代表質問について、こう書いています。

 「市が当初予算案に十三億円を計上したアジア太平洋インポートマート(AIM)をめぐる次の発言を、市民はどう聞くだろうか。

 『報道で厳しい批判がなされているが、責任問題ばかりに議論が終始し、前向きの議論が見えないのは残念だ。AIMの機能強化をはかることが今、われわれの果たすべき責任と考える』。

 同じAIM問題で自民市民クラブの佐々木健吾団長は、……『いつまでも過去にこだわっていても、決してこの街のためにはならない』と語気を強めた」(笑い、どよめき)――責任追及しないっていうんですね。そして、記者はこう締めくくっています。

 「二人の言葉に、末吉興一市長が『(AIMに投入する公金は)行政目的を達成するのに必要な経費であることを、ぜひご理解いただきたい』と答弁したのは、私には共同歩調と映った」。

 この通りだと思います。こういうありさまなんです。

 AIMの問題一つとっても、市議会でムダづかいなくせという正面からの論陣を張っているのは、日本共産党市議団だけです。(大きな拍手)

コムシティ破たん――市長の責任をただしたのはどの党か

 もう一つ、ムダづかいではコムシティの問題があります。「黒崎の再生」の目玉事業として、黒崎駅前に建設した大型複合商業施設です。

 これも、すごいお金を使っています。二百二十一億円もの税金をつぎ込んで、二〇〇一年十一月にオープンした。しかし、テナントが集まらない。バナナのたたき売りのようにテナント料を引き下げた。その結果昨年六月、わずか一年半で破産した。みなさん、一年半というのは、いくらなんでも早すぎますよね(失笑)。全国でいろいろとむちゃくちゃな事業を見てきましたけれど、二百億円も使って、一年半で破産というのは、私は聞いたことがありません。

 この後始末をどうするか。市は、国といっしょに融資した返済を肩がわりするはめになって、昨年と今年で十七億円も税金を注ぎ込みました。これも、ムダがムダをよぶ典型です。

 コムシティが破たんした直後の六月市議会での論戦を、これも西日本新聞が紹介しています。「コムシティ問題で本格論戦」。四段の記事です。上三段は全部、共産党の田村貴昭市議が追及した中身の報道です。「それぞれの立場で、それぞれの責任があり、どなたの責任というものではない」(笑い)という“総ざんげ”の姿勢の市長にたいして、市長の責任を真正面から徹底追及しています。

 他党の二人の質問については、下の一段だけです。こう書いています。

 「『あまりに短く、そこまで深刻だったのか、夏にもつるべ落としがおきたのか』。(自民党議員は)こう驚いて見せた。

 両氏とも市長の責任には触れず、市長も『トップバッターがつまずいても二番、三番、四番でがんばってゆく』と強気に(なった)」。

 冗談じゃありませんよ(「そうだ」の声)。野球だったら、トップバッターがつまずいても、二番、三番、四番でがんばれるけど(笑い)。コムシティをさらに二つも、三つもつくられたら、もう本当に市の財政は破たんどころではすまないじゃありませんか。(拍手)

 ところが、オール与党が応援したり、励ましたりするから、市長は責任を感じるどころか、こういうことを言ってはばからないのです。みなさん、やっぱりムダづかいをただせるのは日本共産党しかない。市議会のありさまをみても、これはあきらかではないでしょうか。(大きな拍手)

市政のムダ遣いをただす3つの実績

 日本共産党市議団は、市民といっしょに市政のムダづかいをただしてきた、たくさんの実績があります。

 門司・白野江人工島計画。「トンネルを抜けると海だった」(笑い)という計画を、いち早く追及して中止させ、二千五百億円のムダづかいをやめさせました。

 それから官官接待。「ひれ酒二十一杯、ひとり二万二千円の料理」で有名になった官官接待ですが、年間一億三千五百万円も使っていた。このムダづかいもやめさせた。

 もう一つ。AIMやコムシティなど、ムダづかいの温床となっていたのは、どれも第三セクターでした。この第三セクターの経営情報を議会に報告させる基準を、他の都市にさきがけて拡大し、議会に情報を公開させる第三セクターを十社から二十四社まで広げさせました。これも、非常に大事な成果ではないでしょうか。

 「税金のムダづかいをただせ」、この声をどうか日本共産党に託してください、よろしくお願いします。(大きな拍手)

国の悪政から、市民のくらしを守る、かけがえのない防波堤

 くらしの問題ではどうでしょうか。国の悪政から市民のくらしを守る、かけがえのない防波堤の役割を果たしているのが、日本共産党の市議団です。

 国が悪い政治をおしつけてきたときに、これにもろ手を広げて立ちはだかるのか、それとも悪い政治の呼び込み役になるのか。ここでも日本共産党と「オール与党」の姿勢の違いはくっきり、明りょうです。

介護保険――市独自の保険料の軽減制度を実現

 たとえば、介護保険の問題です。

 全国どこでも保険料が高すぎる。とくに所得の低い人に重い負担を強いる仕組みになっていますから、これは国政でも大問題になっています。

 共産党の市議団は、「国いいなりではなくて、独自の減免制度をつくれ」と条例案を提案して減免を求めてきました。

 ところが、これにことごとく反対したのが「オール与党」です。四年前の市議選のときには、市民団体のアンケートに候補者の75%が「保険料の軽減策が必要」と答えていたそうです。ところが、共産党が市議会で「保険料の軽減が必要だ」といって条例を出すと、それは「国がやることだ」といって反対する。しかし、国がやらないなら自治体が独自にでも制度をつくって、市民のくらしを守る努力をしてこそ自治体といえるのではないでしょうか。(拍手)

 「オール与党」が妨害しても、市民のみなさんの運動はおさまりませんから、どんどん運動が広がって市内百二十四団体、十万五千人をこえる署名が集まりました。その運動と結んで共産党市議団もがんばりました。そしてついに市も、市独自に保険料を軽減する提案をせざるを得なくなり、昨年から北九州市独自の保険料の軽減措置が実現したと聞きました。まだまだ不十分な制度ですが、この制度で約一千三百人の方々の保険料の軽減がはかられています。ぜひこれを、国の制度としても市の制度としても、もっとしっかりしたものにしていくため、力を合わせていこうではありませんか。(大きな拍手)

国民健康保険――必要な医療を受けられない事態が広がっている

 もう一つ、国民健康保険料の問題です。

 北九州市の国保料は、所得に対する負担の割合が9・2%と非常に重いんです。所得の一割近くです。全国平均が8・2%ですから、全国のなかでもうんと高い。全国十三の政令市のなかで二番目に高い。一人あたり平均、年間八万一千百四十八円。「高すぎて払えない」という痛切な悲鳴があがっています。

 ほんらいなら市は、市民が払えるように保険料を引き下げる努力こそすべきですが、そうではなくて、「払えないなら保険証を取り上げる」と、無慈悲に保険証を取り上げ、どんどん資格証明書におきかえるということをやっています。資格証明書というのはひどいもので、窓口でかかった医療費の十割、全額を払わなければなりません。これでは、とてもまともにお医者さんにかかれません。現に受診抑制がひどいですよ。

 全国の開業医でつくっている全国保険医団体連合会が、全国調査をやりました。福岡県では、資格証明書におきかえられた人の受診率は、一般の人の百分の一だったという結果です。調査したお医者さんたちは、「必要な療養がほとんど抑制されていると言って過言ではない」と断じています。病気をして不安な時にお医者さんにいけない、必要な医療が受けられない、こういう事態がまかり通っているのです。

「オール与党」――国よりも無慈悲なやり方を“もっとやれ”と

 中央社会保障推進協議会という全国組織が一昨年、調査団をつくって、北九州市などの保険証取り上げの実態を調査して報告書を発表しています。たいへん厳しい告発がされています。

 「特に北九州市の冷たい姿勢が明らかになりました。機械的な資格証明書の発行の結果、滞納世帯の六割に資格証明書や短期保険証が発行されているのは異常というほかありません。入院中であっても保険証を取り上げられた事例があり、命や人権よりも保険料の徴収を優先する冷たい市政が明らかになりました」

 保険証の取り上げは国が号令をかけたものです。しかし国の法律でさえ、資格証明書の発行は「滞納が一年をこえた場合」が基準になっている。ところが北九州市では、滞納六カ月で機械的に保険証を取り上げて資格証明書におきかえるという、国よりもひどいやり方がまかりとおっています。六カ月で機械的に取り上げというのは、県内でも北九州市だけ、全国の政令市の中でも北九州市だけです。ひどい話です。

 こういう無慈悲なやり方を推進しているのも「オール与党」です。ここに議事録を持ってまいりました。

 昨年三月二十日の予算特別委員会。自民・市民クラブのある議員です。国保料などの滞納者には「行政サービスの停止や、氏名公表など厳しい措置を求めた……条例制定も検討すべき」と、市長に求めているんです。“滞納者はさらし者にしろ”、こうまでいっているんです。

 さすがに市長も、条例の制定については「慎重な対応が必要ではないか」と即座に「ハイ」とは答弁しませんでしたが、「オール与党」議員に尻をたたかれて「これまで以上に滞納処分を強化する」と約束しています。こういう掛け合いを議会でやっているのが、市長と「オール与党」です。許されない話ではありませんか。(拍手)

 みなさん、「高すぎる国保料は引き下げよ」。「無慈悲な取り上げをやめろ」。この願いを、どうか日本共産党にお寄せください。よろしくお願いいたします。(大きな拍手)

くらしを守る十人の市議団――一人も欠くことはできない

 くらしの問題でも、日本共産党市議団は大きな働きをしてきました。

 乳幼児の医療費助成制度が四歳未満まで拡大されました。小学校の教室暖房も、これまでは寒い日に冷たい牛乳を残す子どもさんが多かったが、少なくなった、と喜ばれています。「おでかけバス」、百円バスも、この四年間で市内四地区にまで広がりました。これらは、みなさんの運動と共産党市議団の共同の成果だと思います。

 やはり、くらしの問題でも十名の共産党市議団、一人も欠かすわけにはいかないのではないでしょうか。どうかよろしくお願いします。(大きな拍手)

 きょうは、北朝鮮の問題、国内政治の焦点、市政の問題と三つの話をしましたが、日本共産党は、どの分野でも、国民のみなさん、市民のみなさんの立場にたって現実政治と切り結び、現実政治を動かす党です。この党の十人全員を、こんどの選挙で必ず勝たせていただいて、ムダづかいのない市政、福祉やくらしを本当に最優先する、人間らしい生活を営める街に生まれ変わらせていくために、みなさんの大きなお力添えを重ねてお願いいたしまして、私の話を終わらせていただきます。(大きな拍手)