2004年2月5日付「しんぶん赤旗」近畿版に掲載

〔HP限定〕

京都市長選

京都をよくしたい――共同の輪を広げ広原さんの勝利を

志位委員長の訴え(大要)京都駅前〔2004年2月3日〕


 八日投票の京都市長選で三日、京都駅前で「市民ネット」の広原もりあき候補の応援にたった日本共産党の志位和夫委員長は、大要次のように訴えました。

「まちこわし」でなく、「まちづくり」の専門家に交代を

 みなさんこんばんは。日本共産党の志位和夫でございます。いよいよ全国が注目する市長選挙も最終盤ですが、みなさんのお力で広原もりあきさんを必ず市長に押し上げていただきたい、このことをお願いするために、駆けつけてまいりました。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)

 広原さんは、都市計画の専門家で、「まちづくり」という言葉を、長い歴史をもつ建築学会で学術論文で初めて使い、いま全国的にこの言葉が当たり前のように使われ定着する、そういう仕事をやってこられた方です。大きな建物をつくれば、そこに「まち」ができるわけじゃありません。生きた人間のにぎわいがあってこそ、「まち」と言えます。さらに、長い歴史や文化を大切にし、それを生かしてこそ本当の「まち」と言えます。私は、本当の「まちづくり」の専門家、広原さんこそ、千年の歴史をもつこの美しい都、京都の市長にふさわしい方だと思います。(拍手)

 私はきょう、こちらにうかがう前に、京都の市民の方からファクスをいただきまして、そこにはこう書かれておりました。

 「京都が京都でなくなっていく。全国どこの町とも変わらん町になっていく。京都が京都の誇りを失っては、良くなるはずがない」

 これは多くの市民のみなさんの気持ちだと思います。広原さんが「まちづくり」の専門家だとしますと、いまの市長さんは、「まちこわし」の専門家≠セと思います(拍手)。これは交代してもらおうじゃありませんか(拍手)。広原さんで京都の誇りをとりもどそうではありませんか。(拍手)

京都から平和の声を世界に発信しよう

 さてみなさん、どういう情勢のもとでの選挙でしょうか。きょう、イラクへの陸上自衛隊本隊の派兵が強行されました。しかし国会での議論では、派兵の根拠がすべて崩れてしまっています。

 まず、戦争と占領の「大義」が、大もとから崩れました。米英軍が、あの戦争を始める最大の理由としたのは、「大量破壊兵器」だった。しかしみなさん、見つからないじゃありませんか。見つからないだけじゃありません。米国の捜索チームを率いていたデビッド・ケイ団長が、最近アメリカ議会で証言して、「もともと大量破壊兵器はなかった」と、明言しました。そうしましたら、ブッシュ大統領は、「私も真実が知りたい」と言った。みなさん、何という言いぐさでしょう。罪ない人々を一万人以上も殺して、一番の「大義」とされたものが見つからない。何の「大義」もない侵略戦争だった。こんな世紀の大ウソはないではありませんか。(拍手)

 もう一つ、日本の政府が、そのイラクに自衛隊を派兵するうえで、前提にしていたイラクの状況についての説明が、偽りだったということが、ハッキリしました。私たちが入手した政府内部文書があるんです。自衛隊の先遣隊の報告案という文書です。防衛庁と外務省がやりとりして、先遣隊の報告案をつくっていた。これをいつつくったか。ファクスの日時で特定できるんですね。これを見ましたら、なんと陸上自衛隊の先遣隊が現地で調査を始める前に、報告書案ができていた。おかしいでしょ。報告書というものは、調査してからつくるものですよ。調査する前からできていたって、こんなむちゃくちゃな話はない。

 しかもこれをよく見ますと、都合の悪いことは隠せと書いてある。サマワの周辺で起こっている銃撃事件、バスラで起こっている銃撃事件、隠しなさいとここに書いてあります。そして、サマワの人たちはいまや遅しと自衛隊を待っている、そのコメントをとってこいと書いてある。みなさん、報告書自体が、偽りのうえにつくられている。都合のいいことだけ出して、悪いことは隠す。戦前の大本営発表と同じじゃありませんか。(拍手)

 みなさん、大義なき戦争への大義なき派兵は、ストップをかけましょう。その声を、京都から世界に向けて発信していきましょう。相手候補は、イラク派兵支持といって恥じない候補です。負けるわけにはいきません(拍手)。広原さんのように、キッパリこれに反対し、憲法九条を守ろうと言っている候補に、みなさんの平和の願いをどうか託してください。よろしくお願いいたします。(拍手)

財政破たん――大型公共事業と同和行政の無駄にきっぱりメスを

 さて、市政をめぐる争点ですが、私は、もうハッキリしていると思います。

 読売新聞が市長選挙を前に連載を書きました。その第一回目の書き出しはこういう書き出しです。「古都があえいでいる。深刻な財政事情、景観問題…」。こういう書き出しなんです。

 現市長の選挙母体は、前回までの二回は「健康都市京都をつくる会」という名前でした。ところが、「健康都市」どころか、財政破たんと景観破壊という二つの病気に「あえぐ」京都にしてしまった。これが現職市長のやってきたことです。この「健康都市」という名前を今度はやめて「光り輝く京都をつくる会」というものに変更したそうですが、名前だけ変えても病気は治るものじゃない。みなさん、この二つの病気を大もとからなおし、市民の暮らしと京都のかけがえのないまちなみを守る市政をつくる道筋をしっかり示しているのは、広原さんだということを私は訴えたいと思うのであります。(拍手)

 第一に、財政破たんの問題はどうでしょう。市の借金をみますと、この八年間でなんと三千億円増え、一兆円をこえました。ところが現市長は「たいしたことはない」と言い放ったそうです。みなさん、この借金、問題はなんでこんなに膨れたか。原因がどこにあるかが問題です。福祉や暮らしにたくさんお金を使ったからでしょうか。そうでないことはみなさんが一番よくご存じだと思います。

 統計を見ましても、増やした借金の内訳は、九割以上が土木事業です。五大プロジェクトと称して、前の市政から現市政が引き継ぎ、推進してきた開発仕事――京都御池地下街、京都醍醐センター、京都二条開発、山科駅前再開発、加えて京都駅南口再開発、総事業費をあわせますと二千三百二十九億円。これだけのお金をつぎ込んで、ことごとく破たん、行き詰まっている。

 朝日新聞が今年一月九日付でこういう記事を書いています。「二条駅周辺整備 挫折三度」。三回失敗してるんです。二百八億円を投じたが駅前は更地のままで、まともな建物も建たない=Bこれが借金地獄をつくった大もとじゃありませんか。

 だったらみなさん、借金地獄から抜け出す道は明りょうです。広原さんの言うように、大型公共事業を見直す、そして同和行政のムダはきっぱりやめる。これが一番の道ではないでしょうか。(拍手)

国保料と水道料金――市民の「ライフライン」断ち切る政治を変えよう

 ところが、現市長がやっていることは、財政危機を理由に市民のみなさんの暮らしを切り捨てる、そういう政治です。

 こちらに来ますと、いつも高すぎる国保料が問題になっています。そして今度うかがうと、それがさらに値上げされたということを聞きました。なんでこんなに国保料が高くなるかと言いますと、もちろん国の責任もある、府の責任もある、しかし何といっても市がまともにお金の手当てをしないからです。市には国保会計というものがある。この国保会計に、一般会計からお金を繰り入れて、できるだけ値上げを抑えるというのは、どこの市でもやっています。しかし政令十三市を比べてみますと、京都市はこの繰り入れが下から三番目。一人当たりたった一万七千円。トップの名古屋市は、四万円入れていますから、名古屋市の二分の一以下です。これが高すぎる国保料の原因になっている。

 ところがみなさん、高すぎて国保料を払えない人から、保険証を取り上げているでしょ。保険証を取り上げて、短期保険証とか資格証明書とかに置き換えて、お医者さんに行けなくする。現市政で取り上げられた人がどんどん増えて、それまでの五倍もの方が保険証を取り上げられて、一万八千二百三十七世帯から保険証を取り上げている。こういう事態になっているとうかがいました。

 もう一つ、私が驚いたのは水道料金です。八年間で二回値上げされた。水道というのは生きていくうえで本当に欠かせないものですから、どの政令市でもどうしても払えない人のためには、福祉減免制度というのをつくって、まず止めるなんていうことはしないんです。ところが、驚くことに現市政では、こういう減免制度がない。無慈悲にどんどん止めていく。止められた世帯は、現市政で四倍となり五千九百七十二世帯です。

 みなさん、医療と水道――これは本当に「ライフライン」、命綱でしょ。医療を取り上げられた世帯が一万八千二百三十七。水道を止められた世帯が五千九百七十二。みなさん、「ライフライン」を止めて、痛みを感じないような市長を続けさせておいていいのでしょうか。

 みなさん、憲法をも踏みにじって、「水のためだ」「医療のためだ」という名目で、武装した自衛隊をイラクに派兵しておきながら、京都のみなさんの水を止めてしまう。こんなバカげた話が、どこにあるでしょうか。(拍手)

 開発仕事で借金地獄をつくったあげく、そのツケを暮らしを痛めつけることにまわす。二重の意味で、いまの市政は失格です(拍手)。この「逆立ち」市政を広原さんでただしていこうではありませんか。(拍手)

景観破壊――高層ビル野放し、高速道路の市内引き入れにストップを

 さて、第二の問題、景観破壊の問題はどうでしょう。

 この京都のまちなみが壊れていくのに心を痛めているのは、京都のみなさんだけではありません。京都を訪れる日本国民みんなが心を痛めている。世界の人々が心を痛めている。私も京都を訪れるたびに、まず六十bの京都ホテルが建ち、つぎにこの後ろにある、四百六十bの幅の京都の駅ビル、「墓石」とも呼ばれているそうですが、航空母艦みたいなものが建ち、すっかりまちなみをふさいでしまい、本当に胸のつぶれる思いがします。

 そして、今度こちらにうかがいましたら、最大の問題になっているのが高層ビルだということを聞きました。京都の歴史的なまちなみを形づくってきた市の中心部に、どんどん高層ビル、高層マンションが建つ。たった六年間で、百十二もの高層マンションが建ったと聞きました。この問題、実はバブル経済のあとの時期に、「まちこわし」が問題となったときに、京都市の「まちづくり審議会」が、高層ビルの規制をしなければならないという答申を出していました。ところがいまの市長になって、フランス橋をかけようなんていうことを平気で持ち出す市長ですから、この規制を無視してどんどん建てなさい、そういう方向に持っていったあげく、百十二もの高層マンションが林立した。

 いまの市長は「京都の保全は京都だけではできない」と言ったそうでありますけれども、この高層ビルの規制などは、京都市の判断でできることであります。市の判断でできることをやらないでおいていて、京都だけではできないと言う。やる気になればできる仕事をできないという市長には、やめてもらうしかないではありませんか。(拍手)

 この高層ビルについで、高速道路を市内に引き入れ、車で市内をいっぱいにする、こういう計画を次々にすすめている。「まちこわし」の専門家≠ノはお引き取り願って、「まちづくり」の専門家・広原さんにバトンタッチをさせようではありませんか。どうか、お力添えをよろしくお願いいたします。(拍手)

反共攻撃――民主主義まもる市民の大同団結で打ち破ろう

 最後にみなさん、相手陣営は今度の選挙、「共産党をたたきつぶす選挙」と言っているそうであります。相手陣営の演説会では、最後に「共産党をぶっつぶせ」というシュプレヒコールをあげているそうであります。しかし、これはおかしいですね。選挙で問われているのは、市民のみなさんの暮らしを守るかどうか、この古都の景観を守るかどうか。これが選挙で問われている争点であります。

 その選挙に、「共産党をたたきつぶす」という党利党略を持ち込むのは、私は、市民のみなさんに語るべき政策をまったく持たないということを、自ら証明するものだと考えるものであります。(拍手)

 みなさん。さらに言いますと、ここには、自分たちと立場が違うものはその存在を認めないという民主主義否定の立場が表れているのではないでしょうか。相手陣営の中心に座っている宗教団体――自分だけが「仏」なんです、自分に反対するものはみんな仏の敵――「仏敵」、そして「撲滅」の対象にする。これはみなさん、民主主義とあいいれない、ファシズムと通じる考え方ではありませんか。

 私は、蜷川さんの言葉を思い出します。蜷川さんは、地方自治の本質についてこう言われた。「憲法九二条における自治体の本旨は、住民自身が住民の暮らしを、自分たちで守ることにある」。暮らしを守るということが大事なところですが、同時に住民が自分自身でつくりあげるのが地方自治だと、蜷川さんは言われた。つまり、地方自治の命は民主主義だということを蜷川さんは言われた。私は、民主主義のイロハがわからないような勢力には、およそ自治体をあずかる資格はないということを、はっきり言いたいと思うのであります。(拍手)

 広原さんの立場は、これとはまったく違う。立場の違いはあっても、京都をよくしようとする思いで一致しようとする政党・団体・個人、みんな立場の違いをこえて大同団結をはかろうじゃないか、これが広原さんの立場であります。そういう大同団結の姿が、この壇上にも示されているということを、私はたいへんうれしく思います(拍手)。これこそ民主主義の精神ではないでしょうか。

 日本共産党の立場もいっしょであります。共産党はこの大同団結の一翼をになって、広原市長誕生のために、残る数日間、最後の最後まで共同の輪を広げに広げてがんばりぬくことを最後にお約束し、私の訴えにかえさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(大きな拍手)